CHAPTER29【求むる力】
午後5時。
デスティニーアイランドに帰ってきたソラは、信じられない光景を目の当たりにしていた。デスティニーアイランドの町は崩壊していたのだ。恐らくあのときだ。ベクセスがここを襲撃したときに崩壊したと思われる。今ソラがいる離れ小島を除いて、ほとんどのエリアに大量のアンチネスが我が物顔でうろついている。空色もなんだか悪い。今にも雨が降りそうなくらいの曇り空。ソラは不気味に曇った空を見上げていた。その後ろでは何故か鈴神の力で人間の姿になったセイ改めディアがソラの後ろ姿を見つめている。
「そう言えば、」
ディアは右手をかざし、そこに力を集中してみる。するとセイの時に使っていたキーブレード――ダークネスギアが現れた。
「一応キーブレードは使えるらしいな。」
人間の姿になってもなおキーブレードが使える事を確認し、キーブレードは闇の炎に包まれ消えた。キーブレードは持ち主の意思で現れ、そして消える。それはディアの闇のキーブレードも同様である。
「なぁ、」
ソラは振り向かず、曇り空を見上げたままディアに話し掛ける。
「お前を信用した訳じゃないけど、1つ聞いていいか?」
「なんだ?」
ソラがやっとディアの方を向き、静かに口を開いた。
「なんでディアって名前にしたんだ?」
「あぁ、その事か。」
そう言うとディアも曇り空を見上げ、1つ深呼吸してから言った。
「俺はあのとき、レイから世界の可能性を教わった。」
ディアはセイとして俺と戦っていた当時の事を思い出しながら語る。
「何にでも心が芽生える事、例え俺のような闇であっても。それも教わった。
「…………。」
「だから、俺は変わりたいんだ。生まれ変わって、自分の目で何かに心が芽生える瞬間を見てみたい!だから、生まれ変わる為に、まずは名前を変えようと思った。」
「それがディアって事か………。」
ディアは頷く。ディアはもうあのときのような闇の存在ではない。立派な光の存在になれている。ソラはディアを仲間として認め、右手を差し出す。それをディアは同じ右手で取り、二人は固い握手を交わした。
その頃、俺はアースにある自宅の自分の部屋のベッドに横たわっていた。相変わらずつまらなさそうに半分目を開けている。
扉が開く音と共に部屋にリアスが入ってきた。ベッドの近くまで歩き、その場に座り込む。
「どうしたの?ディアス君。」
「俺のせいだ………。俺の力が足りなかったばかりに、黒みみやグーフィーを負傷させ、さらにはカイリまで敵にまわしてしまった………!」
俺はあのときのアンチネスの襲撃が自分の責任だと思う。しかし、これは俺だけの責任ではない、だが俺は昔から責任感が強い、全て自分のせいだと思い込んでしまう癖があると言う事をヒナタから聞いたことがある。こう言った不安は普段は表に出さないのだが、一人でいるときはよく泣いたりしているのだとか。
「そうか………。」
リアスは立ち上がり、ベッドで寝転がっている俺を見下ろすとこう言った
「ディアス君、一緒に来てくれ。」
そう言うとリアスは部屋から出ていった。俺はリアスの言葉に疑問を持ち、すぐに起き上がり、リアスの後を追いかける事にした