CHAPTER33【光無き者】
その後、ソラは闇の力を使う俺に全身全霊で立ち向かったが、一方的に攻められ、攻撃の全てが聞かず、成す統べも無くやられてしまった。ソラは立っているのがやっとで、目の前が暗くなってきた。
「どうしたの?もう終わり?」
その不気味に輝く青い目でソラを見下ろす。ソラとは僅かに身長差があり、俺の方が5p高い為、文字通りソラを見下しているかのようだった。以前の俺ならこんな邪悪な目でソラを見下ろしはしないだろう。だが今では変貌してしまい、光ではなく闇の力を使っている。
「そろそろ、終わりにしよっか!」
ブラックパラデスを両手で握り、天高く振りかざした。俺は悪魔のような微笑みを見せ、キーブレードを降り下ろしソラを襲った。しかし、その攻撃をソラは見事に防いだ。
「まだ、終われない………リクとカイリを、助けるまで!」
「ふぅん。」
ソラの言葉に興味を覚え、ブラックパラデスによる攻撃を止め、キーブレードの姿を消した。どうやら闇の人工キーブレードも収納の仕方は普通のキーブレードと同じようだ。
「なら早く強くなるんだな。まぁもっとも、弱いやつには無理だけどね。」
容赦なくソラを下す侮辱の声。以前の自分からは考えられない言動の数々。光を棄てて暗黒に堕ちたキーブレード。今の俺は、光無き者、『堕天使』と言った所だろう。もはや今までみんなを救ってくれたその手は悪魔の手と化しており、表情も以前とは完全に別人となってしまっている。笑顔は確かに戻ったが、それは以前の明るく純粋な笑顔ではなく、堕天使のように邪悪な微笑みだった。
「……………。」
ソラはもはや言葉が出なくなってしまっている。俺に圧倒的な力の差を見せ付けられた挙げ句、散々侮辱の言葉を浴びせられ、どうしようも無くなっているのだ。俺はそのまま何も言わず去っていった。ソラは一筋の涙を流した。1年前に親友リクを失い、カイリは何故か裏切り、そして彼までも闇に落ち、ソラはこれまで三回も自分の友達を失い、涙を流すほど、あまりにも悔しすぎるのだ。
「……………ソラ。」
何処からか声が聞こえる。しかし、ソラはそれに対応しない。それほどの元気が残っていないのだ。
「ソラ、俺だ。」
その声の主はソラの目の前にいた。これまでシュージとライガ、フィオとダークの前に現れたあの謎の黒コートだった。ソラは顔を上げて、黒コートの男を見上げる。すると黒コートの男が突如フードを外した。その素顔に、ソラは驚愕した。
「ア、アンセム!?」