バックトラック&エンディングフェイズ1
GM「ここからはバックトラックの時間だよー」
SM「それじゃ、浸食率とロイスの数を確認するわよ」
恋火153% ロイス5
小暮124% ロイス6
愛星153% ロイス4
切嗣146% ロイス4
雷神148% ロイス5
ガイア「皆、浸食率がマズイね…」
テルス「私は全く減らなかったわー」
スピカ「ホント、支援って浸食率上がりやすいのよね…」
ウィド「これ以上ロイスが減らなかっただけマシですね…」
ウラノス「倍振りは確定だな…」
GM「それじゃあ、まずはEロイスの確認だ。今回使ったのは、『楔の呪い』『殺戮衝動』『超越活性』の3つ。この他にもう一つ、シヴァは『尽くせぬ力』も持っていたよ。『楔の呪い』はダイス2個分だから、計5個振れるよ。振らない人はいる?」
テルス「私はいいわ。Dロイスの効果で1個減るだろうけど、この浸食率ならギリギリ等倍で帰れそうだし」
ガイア「あたし達は振るよね」
ウィド「当然です。振らないと駄目ですよこれ…!」
GM「では、四人だけ振ってくれ」
《浸食率減少》
恋火5D→25 153%→128%
愛星5D→27 153%→126%
切嗣5D→26 146%→120%
雷神5D→33 148%→115%
ウラノス「よし、これなら帰れる!」
ウィド「私は微妙な所です…」
スピカ「2倍は確定ね…」
ガイア「あたしも等倍は厳しいかな…経験値は考えずに、素直に帰る事だけ考えた方が良さそう」
GM「それじゃあ、本番はここからだ。まずは誰から振る?」
ウラノス「俺から行かせて貰うぜ。これなら等倍で帰れるしな」
雷神5D→29 115%→86%
ウラノス「余裕の生還だな!」
テルス「なら、次は私が行くわね。私も等倍で戻らせて貰うわ!」
ガイア「だ、大丈夫なの!?」
テルス「皆25以上は出てるでしょ? 大丈夫よ!」
小暮5D→30 124%→94%
テルス「ほら大丈夫だった!」
ウラノス「ちょっとヒヤヒヤしたがな。お帰り、小暮姉さん」
テルス「ええ、ただいま雷神!」
ウィド「なら、次に浸食率が少ない私が行きましょう。ロイスは4つ…20以上出せる可能性があるなら等倍ですが…――あえて私も等倍でやってみましょう」
切嗣4D→19 120%→101%
全員『ア…!』
ウィド「つ、追加振り! まだ追加振りが出来るのでそれに挑戦です!」
切嗣4D→15 101%→86%
テルス「ど、どうにか戻れたわね!」
ウィド「…こんな事なら、欲を出さず二倍にしておけばよかった…!!」
ウラノス「ま、まあなんだ。ジャームにならずに戻れたんだから気を落とすなって!」
ガイア「つ、次はあたしが行くね! 切嗣の二の舞になりたくないから、2倍で挑戦するよ!」
恋火10D→52 128%→76%
ガイア「無事生還!」
テルス「お帰り、恋火」
ウラノス「これで俺達の日常は取り戻せたな」
スピカ「それじゃあ、最後は私ね。私も2倍で挑戦するわよ」
ウィド「ダイスは8個。もう余裕ですね」
愛星8D→26 126%→100%
全員『えええええええええっ!!!??』
SM「なにこれ!? 何でこんなに1と2ばっかり出たの!?」
GM「しかもどのダイスも平均に届いてないよ!? 唯一高い目は5だけだよ!?」
スピカ「…誰か妖怪ウォッチとSランク妖怪メダル持ってない?」
ガイア「うん妖怪の仕業だよね! 妖怪イチタリナイの仕業だけど誰もそんなの持ってないから!?」
テルス「あなたのダイス、確かにムラがありすぎるわね…!! シーンに登場する時の浸食率は凄かったのに…!」
スピカ「と、とにかく追加振り! 私も追加振りよ!!」
愛星4D→24 100%→76%
スピカ「あ、危なかった…!!」
ウラノス「あんたら姉弟のダイスどうなってるんだよ…?」
ガイア「で、でも! みんな戻れて良かったね!」
GM「ロイスに余裕があるから大丈夫と思っていたけど、まさか追加振りする羽目になるとは思ってなかった…」
SM「私もよ…――さて、それじゃあエンディングと行きましょうか」
ウィド「GM、ちょっといいですか?」
GM「ん、何?」
ウィド「いえ。実はエンディングで、このような演出をして欲しいのですが――」(ボソボソ)
GM「…ほほう?」(目を光らせる)
エンディングフェイズ1〈事件の真相、忍び寄る刃〉
シーンプレイヤー 神影恋火
恋火の渾身の蹴りにより、闇一は倒れ込んだまま動かない。
もう戦えないだろうと判断し、愛星は《ワーディング》を解いた。
「終わったわね…」
「羽粋!」
即座に恋火は獣化を解くと、羽粋の元へと駆け出す。
《ワーディング》の影響で気絶はしているが、目立った外傷はない。ようやく恋火は一安心してほぅと息を吐く。
一方、そんな妹と打って変わって、雷神は闇一と大湖の傍に立ってチャクラムの刃を突きつけた。
「さて――死ぬ準備は出来たな、お前ら?」
「雷神、待ちなさい!」
「いいよ…俺達じゃ羽粋姉ちゃんを護れない。その事が嫌って程身に染みたから…それなら、UGNに預けた方がまだマシかもしれない」
小暮が止めようとした直後、このまま殺されるのを受け入れるように闇一が呟く。
悟るような表情をした少年に、愛星は羽粋を軽く一瞥してから二人へ質問した。
「…あなた、一体彼女とどう言う関係なの?」
「…俺はセルからある命令を受けていた。羽粋姉ちゃんの持つ“光”を手に入れるようにね」
「彼女は非オーヴァードだが、両親はUGNの中でも歴戦のエージェントだ。強奪なんかしたら、俺達が危ない。だから俺達は家族として成り済ます事で、羽粋から“光”を手に入れようとした」
「作戦は順調だった。俺を『狭川闇一』と言う弟として記憶を操作して家族として溶け込み、大湖は補佐としてノイマンの能力で周りの様子を常に伺ってくれた」
「最初は目的の為に家族に成り済ました。だが、何時しか離れられなくなったと言う訳か…人の繋がりに」
最終的にどうなったか。彼らの行きついた話の行く末を、先に切嗣が導き出す。それは当たっていたようで、大湖は倒れたまま大きく頷く。
「そうさ…羽粋はもちろん、おっかないと評判だった両親も闇一に家族として凄く優しく接してくれた。潜入捜査も忘れて闇一も心を開いて“普通”を満喫してさ、遠巻きに見ていた俺も何だか嬉しくなったんだ」
「だけど、長くは続かなかった…何時まで経っても計画を実行しない俺達を不審に思ったメンバーの一人が、視察に来ていてさ。それで命令されたんだ…『家族全員殺して“光”を奪え。さもなくば俺達を始末する』って」
「俺達の所為で三人が始末対象にされた以上、“光”だけ奪っても意味がない…そこで俺達は“光”を持つ羽粋だけでも、出来るだけ遠く離れた地に逃がす事を計画した。闇一の力で両親や周りの人達の記憶から羽粋の事を消し、この地へ逃がしたんだ」
「けど、逃がしても時間を稼いだだけに過ぎない。そんな時に、オーヴァード適合者を探す春日と出会ってさ…羽粋姉ちゃんをオーヴァードにすれば、追手をどうにか出来るかもって考えたんだ。今思えば、焦っていたのかもしれないな…」
「そんな事が…」
二人の話を聞いて、恋火が羽粋と闇一達を交互に見遣る。
気持ちは一緒なのか、愛星も目を逸らす。だが、支部長と言う立場上感傷に流されてはいけない。軽く眼鏡をかけなおし、厳しく二人に問い詰める。
「あなた達の事情は分かったわ。でも、それならどうして彼女の両親に、UGNに相談しなかったの? 事前に話をしていれば、助けを求めればこんな事件起こす必要なんてなかった筈よ?」
「本当の事なんて、言える訳ないだろ…それに言った所で、FHの言う事を信用するのか?」
「………」
逆に質問しかえた大湖に、今度こそ愛星は黙るしかなかった。
世界の守護者とは言え、UGNは敵であるFHの人物がが亡命したとしても、簡単には信用など出来ない。特に今は立て続けに大きな事件があり裏切り者に関して厳戒態勢を取っている状態。新入こそ歓迎するが、敵を受け入れる程寛大ではないのだ。
愛星が黙り込んだのを見て、小暮も今の話で何かを感じ取ったのだろう。この話を終わらせようと、弟に目くばせした。
「…雷神」
「ここでお前らを始末しても意味がないって事はよーく分かった…だがな、俺はお前らを許した訳じゃない」
チャクラムはしまうが、まだその目には怒りが宿っている。その証拠に、拳をゴキゴキと鳴らしている。
殴られる。そう思い二人が目を閉じると、雷神は拳を振り上げて――目の前に指を突きつけた。
「これ以上お前らが悪い事しないよう、俺が目を光らせて面倒見てやる! 羽粋に何かしやがったら、今度こそ抹殺してやるからな!!」
「「………エ?」」
言われた事を理解できず、二人は目を開けたまま固まってしまう。
すると、切嗣は肩を竦め愛星へと話し掛ける。
「これで二人の処遇は決まったな。支部長、彼女の件だが」
「それはこっちでどうにかするわ。非オーヴァードでFHに命を狙われているとなると…出来るだけ日常に支障を来さない様に護衛を付ける必要があるわね」
「え、えっと…」
勝手に話が進み闇一が戸惑っていると、恋火と小暮が笑いかけた。
「許してあげるって事だよ」
「そうね…。やり方は褒められる事じゃないけど、あなた達なりに羽粋を護りたい為に行動していたようだしね。それにあなた達はジャームじゃないし、命を狙われる存在である…私達でよければ、手を貸すわよ?」
敵として戦った彼らの手が、自分達に伸ばされる。
彼らは既に傷つける為の武器は握ってない。信用し、助けようとする純粋な心のままに差し出す手に闇一の口から言葉が漏れた。
「あ、ありが――」
「それは困りますね――そんな事をされては…
任務を遂行できない裏切り者を始末できないじゃないですかー」
直後、光る何かが闇一へと飛ばされる。
それを見切り、切嗣は即座に銃を構えて銃弾を命中させる。
キィンと甲高い音と共に弾き返り、弧を描いて地面に突き刺さったのは一本のナイフだった。
「このナイフは…!」
「誰!?」
恋火が警戒してナイフが飛んできた方向を見る。
そこには、短い銀髪に黒いロングスーツと帽子を被った男性が悠然と立っていた。
「あ、あんたは…!」
「風切冷牙(かざぎりれいが)…!」
顔見知りなのか、大湖と闇一は顔を真っ青にして男性――冷牙を見ている。そんな二人に対し、冷牙は冷めた笑いを浮かべている。
「いやー、UGN共が始末してくれるだろうと思って傍観させて頂いたのですが…敵を許し、更には保護までするとは本当に甘い連中ですねぇ」
「許して何が悪いの!! それより、闇一達と仲間だったんでしょ! 何で殺そうとするの!!」
「仲間? 笑わせないでください、任務をまともに遂行出来ない能無しなどいる価値ありませんよ」
「あなた…!!」
非常な言葉を浴びせる冷牙に、恋火はもちろん小暮も怒りを露わにする。
「まあ、私としてはそこのゴミを引き取って貰っても構いませんよ? ただ…そこの小娘は邪魔なので死んで貰いますがね!」
軽く手を振るって同じナイフを取り出すと、未だに気絶したままの羽粋へと駆け出す。
「羽粋ィ!!」
明らかに殺す気の冷牙に、恋火が悲鳴を上げて手を伸ばす。
しかし、冷酷な刃は羽粋に届く前に雷神がチャクラムで受け止めた。
「羽粋に手は出させないぞ…切嗣ゥ!!」
吼えると同時に、切嗣は答えずに銃の引き金を引き銃弾を放つ。
この追撃には冷牙も一旦距離を取り、飛んでくる幾つもの弾丸をナイフで弾き返した。
二人の隙のない動き、残りの三人も攻撃の体制を取る。分が悪いと判断したのか冷牙は静かにナイフを仕舞い帽子を深く被った。
「…いいでしょう。どうせそちらに関しては私の管轄外ですし、ここで引き上げましょう」
それだけ言うと、冷牙はその場から消え失せる。
敵が引いた事で一気に緊張の糸が解ける中、小暮が闇一に目を向けた。
「あの男、何者なの?」
「…あいつは、その…」
「無理に言わなくていいわ。皆、新手が来ない内に早々に引き上げましょう」
言いにくそうにする闇一に、愛星は話を切り上げるように指示を出す。誰も異存はなく、羽粋と負傷した闇一、大湖を連れてその場から引き上げた。
様々な謎を残す形になったが、こうして黄昏市で起きた事件は終息を迎えた…。
SM「それじゃ、浸食率とロイスの数を確認するわよ」
恋火153% ロイス5
小暮124% ロイス6
愛星153% ロイス4
切嗣146% ロイス4
雷神148% ロイス5
ガイア「皆、浸食率がマズイね…」
テルス「私は全く減らなかったわー」
スピカ「ホント、支援って浸食率上がりやすいのよね…」
ウィド「これ以上ロイスが減らなかっただけマシですね…」
ウラノス「倍振りは確定だな…」
GM「それじゃあ、まずはEロイスの確認だ。今回使ったのは、『楔の呪い』『殺戮衝動』『超越活性』の3つ。この他にもう一つ、シヴァは『尽くせぬ力』も持っていたよ。『楔の呪い』はダイス2個分だから、計5個振れるよ。振らない人はいる?」
テルス「私はいいわ。Dロイスの効果で1個減るだろうけど、この浸食率ならギリギリ等倍で帰れそうだし」
ガイア「あたし達は振るよね」
ウィド「当然です。振らないと駄目ですよこれ…!」
GM「では、四人だけ振ってくれ」
《浸食率減少》
恋火5D→25 153%→128%
愛星5D→27 153%→126%
切嗣5D→26 146%→120%
雷神5D→33 148%→115%
ウラノス「よし、これなら帰れる!」
ウィド「私は微妙な所です…」
スピカ「2倍は確定ね…」
ガイア「あたしも等倍は厳しいかな…経験値は考えずに、素直に帰る事だけ考えた方が良さそう」
GM「それじゃあ、本番はここからだ。まずは誰から振る?」
ウラノス「俺から行かせて貰うぜ。これなら等倍で帰れるしな」
雷神5D→29 115%→86%
ウラノス「余裕の生還だな!」
テルス「なら、次は私が行くわね。私も等倍で戻らせて貰うわ!」
ガイア「だ、大丈夫なの!?」
テルス「皆25以上は出てるでしょ? 大丈夫よ!」
小暮5D→30 124%→94%
テルス「ほら大丈夫だった!」
ウラノス「ちょっとヒヤヒヤしたがな。お帰り、小暮姉さん」
テルス「ええ、ただいま雷神!」
ウィド「なら、次に浸食率が少ない私が行きましょう。ロイスは4つ…20以上出せる可能性があるなら等倍ですが…――あえて私も等倍でやってみましょう」
切嗣4D→19 120%→101%
全員『ア…!』
ウィド「つ、追加振り! まだ追加振りが出来るのでそれに挑戦です!」
切嗣4D→15 101%→86%
テルス「ど、どうにか戻れたわね!」
ウィド「…こんな事なら、欲を出さず二倍にしておけばよかった…!!」
ウラノス「ま、まあなんだ。ジャームにならずに戻れたんだから気を落とすなって!」
ガイア「つ、次はあたしが行くね! 切嗣の二の舞になりたくないから、2倍で挑戦するよ!」
恋火10D→52 128%→76%
ガイア「無事生還!」
テルス「お帰り、恋火」
ウラノス「これで俺達の日常は取り戻せたな」
スピカ「それじゃあ、最後は私ね。私も2倍で挑戦するわよ」
ウィド「ダイスは8個。もう余裕ですね」
愛星8D→26 126%→100%
全員『えええええええええっ!!!??』
SM「なにこれ!? 何でこんなに1と2ばっかり出たの!?」
GM「しかもどのダイスも平均に届いてないよ!? 唯一高い目は5だけだよ!?」
スピカ「…誰か妖怪ウォッチとSランク妖怪メダル持ってない?」
ガイア「うん妖怪の仕業だよね! 妖怪イチタリナイの仕業だけど誰もそんなの持ってないから!?」
テルス「あなたのダイス、確かにムラがありすぎるわね…!! シーンに登場する時の浸食率は凄かったのに…!」
スピカ「と、とにかく追加振り! 私も追加振りよ!!」
愛星4D→24 100%→76%
スピカ「あ、危なかった…!!」
ウラノス「あんたら姉弟のダイスどうなってるんだよ…?」
ガイア「で、でも! みんな戻れて良かったね!」
GM「ロイスに余裕があるから大丈夫と思っていたけど、まさか追加振りする羽目になるとは思ってなかった…」
SM「私もよ…――さて、それじゃあエンディングと行きましょうか」
ウィド「GM、ちょっといいですか?」
GM「ん、何?」
ウィド「いえ。実はエンディングで、このような演出をして欲しいのですが――」(ボソボソ)
GM「…ほほう?」(目を光らせる)
エンディングフェイズ1〈事件の真相、忍び寄る刃〉
シーンプレイヤー 神影恋火
恋火の渾身の蹴りにより、闇一は倒れ込んだまま動かない。
もう戦えないだろうと判断し、愛星は《ワーディング》を解いた。
「終わったわね…」
「羽粋!」
即座に恋火は獣化を解くと、羽粋の元へと駆け出す。
《ワーディング》の影響で気絶はしているが、目立った外傷はない。ようやく恋火は一安心してほぅと息を吐く。
一方、そんな妹と打って変わって、雷神は闇一と大湖の傍に立ってチャクラムの刃を突きつけた。
「さて――死ぬ準備は出来たな、お前ら?」
「雷神、待ちなさい!」
「いいよ…俺達じゃ羽粋姉ちゃんを護れない。その事が嫌って程身に染みたから…それなら、UGNに預けた方がまだマシかもしれない」
小暮が止めようとした直後、このまま殺されるのを受け入れるように闇一が呟く。
悟るような表情をした少年に、愛星は羽粋を軽く一瞥してから二人へ質問した。
「…あなた、一体彼女とどう言う関係なの?」
「…俺はセルからある命令を受けていた。羽粋姉ちゃんの持つ“光”を手に入れるようにね」
「彼女は非オーヴァードだが、両親はUGNの中でも歴戦のエージェントだ。強奪なんかしたら、俺達が危ない。だから俺達は家族として成り済ます事で、羽粋から“光”を手に入れようとした」
「作戦は順調だった。俺を『狭川闇一』と言う弟として記憶を操作して家族として溶け込み、大湖は補佐としてノイマンの能力で周りの様子を常に伺ってくれた」
「最初は目的の為に家族に成り済ました。だが、何時しか離れられなくなったと言う訳か…人の繋がりに」
最終的にどうなったか。彼らの行きついた話の行く末を、先に切嗣が導き出す。それは当たっていたようで、大湖は倒れたまま大きく頷く。
「そうさ…羽粋はもちろん、おっかないと評判だった両親も闇一に家族として凄く優しく接してくれた。潜入捜査も忘れて闇一も心を開いて“普通”を満喫してさ、遠巻きに見ていた俺も何だか嬉しくなったんだ」
「だけど、長くは続かなかった…何時まで経っても計画を実行しない俺達を不審に思ったメンバーの一人が、視察に来ていてさ。それで命令されたんだ…『家族全員殺して“光”を奪え。さもなくば俺達を始末する』って」
「俺達の所為で三人が始末対象にされた以上、“光”だけ奪っても意味がない…そこで俺達は“光”を持つ羽粋だけでも、出来るだけ遠く離れた地に逃がす事を計画した。闇一の力で両親や周りの人達の記憶から羽粋の事を消し、この地へ逃がしたんだ」
「けど、逃がしても時間を稼いだだけに過ぎない。そんな時に、オーヴァード適合者を探す春日と出会ってさ…羽粋姉ちゃんをオーヴァードにすれば、追手をどうにか出来るかもって考えたんだ。今思えば、焦っていたのかもしれないな…」
「そんな事が…」
二人の話を聞いて、恋火が羽粋と闇一達を交互に見遣る。
気持ちは一緒なのか、愛星も目を逸らす。だが、支部長と言う立場上感傷に流されてはいけない。軽く眼鏡をかけなおし、厳しく二人に問い詰める。
「あなた達の事情は分かったわ。でも、それならどうして彼女の両親に、UGNに相談しなかったの? 事前に話をしていれば、助けを求めればこんな事件起こす必要なんてなかった筈よ?」
「本当の事なんて、言える訳ないだろ…それに言った所で、FHの言う事を信用するのか?」
「………」
逆に質問しかえた大湖に、今度こそ愛星は黙るしかなかった。
世界の守護者とは言え、UGNは敵であるFHの人物がが亡命したとしても、簡単には信用など出来ない。特に今は立て続けに大きな事件があり裏切り者に関して厳戒態勢を取っている状態。新入こそ歓迎するが、敵を受け入れる程寛大ではないのだ。
愛星が黙り込んだのを見て、小暮も今の話で何かを感じ取ったのだろう。この話を終わらせようと、弟に目くばせした。
「…雷神」
「ここでお前らを始末しても意味がないって事はよーく分かった…だがな、俺はお前らを許した訳じゃない」
チャクラムはしまうが、まだその目には怒りが宿っている。その証拠に、拳をゴキゴキと鳴らしている。
殴られる。そう思い二人が目を閉じると、雷神は拳を振り上げて――目の前に指を突きつけた。
「これ以上お前らが悪い事しないよう、俺が目を光らせて面倒見てやる! 羽粋に何かしやがったら、今度こそ抹殺してやるからな!!」
「「………エ?」」
言われた事を理解できず、二人は目を開けたまま固まってしまう。
すると、切嗣は肩を竦め愛星へと話し掛ける。
「これで二人の処遇は決まったな。支部長、彼女の件だが」
「それはこっちでどうにかするわ。非オーヴァードでFHに命を狙われているとなると…出来るだけ日常に支障を来さない様に護衛を付ける必要があるわね」
「え、えっと…」
勝手に話が進み闇一が戸惑っていると、恋火と小暮が笑いかけた。
「許してあげるって事だよ」
「そうね…。やり方は褒められる事じゃないけど、あなた達なりに羽粋を護りたい為に行動していたようだしね。それにあなた達はジャームじゃないし、命を狙われる存在である…私達でよければ、手を貸すわよ?」
敵として戦った彼らの手が、自分達に伸ばされる。
彼らは既に傷つける為の武器は握ってない。信用し、助けようとする純粋な心のままに差し出す手に闇一の口から言葉が漏れた。
「あ、ありが――」
「それは困りますね――そんな事をされては…
任務を遂行できない裏切り者を始末できないじゃないですかー」
直後、光る何かが闇一へと飛ばされる。
それを見切り、切嗣は即座に銃を構えて銃弾を命中させる。
キィンと甲高い音と共に弾き返り、弧を描いて地面に突き刺さったのは一本のナイフだった。
「このナイフは…!」
「誰!?」
恋火が警戒してナイフが飛んできた方向を見る。
そこには、短い銀髪に黒いロングスーツと帽子を被った男性が悠然と立っていた。
「あ、あんたは…!」
「風切冷牙(かざぎりれいが)…!」
顔見知りなのか、大湖と闇一は顔を真っ青にして男性――冷牙を見ている。そんな二人に対し、冷牙は冷めた笑いを浮かべている。
「いやー、UGN共が始末してくれるだろうと思って傍観させて頂いたのですが…敵を許し、更には保護までするとは本当に甘い連中ですねぇ」
「許して何が悪いの!! それより、闇一達と仲間だったんでしょ! 何で殺そうとするの!!」
「仲間? 笑わせないでください、任務をまともに遂行出来ない能無しなどいる価値ありませんよ」
「あなた…!!」
非常な言葉を浴びせる冷牙に、恋火はもちろん小暮も怒りを露わにする。
「まあ、私としてはそこのゴミを引き取って貰っても構いませんよ? ただ…そこの小娘は邪魔なので死んで貰いますがね!」
軽く手を振るって同じナイフを取り出すと、未だに気絶したままの羽粋へと駆け出す。
「羽粋ィ!!」
明らかに殺す気の冷牙に、恋火が悲鳴を上げて手を伸ばす。
しかし、冷酷な刃は羽粋に届く前に雷神がチャクラムで受け止めた。
「羽粋に手は出させないぞ…切嗣ゥ!!」
吼えると同時に、切嗣は答えずに銃の引き金を引き銃弾を放つ。
この追撃には冷牙も一旦距離を取り、飛んでくる幾つもの弾丸をナイフで弾き返した。
二人の隙のない動き、残りの三人も攻撃の体制を取る。分が悪いと判断したのか冷牙は静かにナイフを仕舞い帽子を深く被った。
「…いいでしょう。どうせそちらに関しては私の管轄外ですし、ここで引き上げましょう」
それだけ言うと、冷牙はその場から消え失せる。
敵が引いた事で一気に緊張の糸が解ける中、小暮が闇一に目を向けた。
「あの男、何者なの?」
「…あいつは、その…」
「無理に言わなくていいわ。皆、新手が来ない内に早々に引き上げましょう」
言いにくそうにする闇一に、愛星は話を切り上げるように指示を出す。誰も異存はなく、羽粋と負傷した闇一、大湖を連れてその場から引き上げた。
様々な謎を残す形になったが、こうして黄昏市で起きた事件は終息を迎えた…。