第一日目・4
「ナナさん。本当にありがとうございます」
「いえいえ。私の方もリラさんにはキャラを貸し借りしてるので、お礼の一つにでもなればと…」
企画が始まり、改めて作者二人がペコペコとお辞儀をしながら言い合っていると、リズが不満げに会話の中に入ってきた。
「あのさ〜? そんな社交辞令はどうでもいいから、早く旅館に入らせてくれない?」
「そんなって…こんな企画に参加させてもらうんだから、普通はナナさんにお礼言うのが当然でしょう?」
「今まで参加した番外編の事考えれば、こっち作者にお礼なんて言う気起きないじゃん。大体、なんでリラまでここにいる訳? 私達に対して不幸や迷惑や怒りしか生まないクセに」
「企画に参加させて貰っているのにナナさんに何て言う暴言吐いてるの!? しかも、それが生みの親に対して言う事!?」
リズの毒舌にリラさんがツッコミを入れるが、聞き入れるどころか反論する人が増える。
「いいからさっさと案内しろ。こっちは長旅で疲れてるんだよ」
「そうだよなー。俺達だってスタッフって立場だけど旅館に泊まれるんだろ?」
「何時までもこんな所で長話しないで、早く入ろうよ」
ムーン、ソラ、カイリの言葉に、ナナも諦めたように溜息を吐いた。
「はいはい、分かりましたよ…――それではっ! リラ様の世界の]V機関の方々とオリキャラ達をお部屋へごあんなーい!!」
旅館に向かって手を大きく上げた途端、全員に振り返って笑顔を見せた。
「――する訳ないじゃん」
『『『『『はああああああああああああああああっ!!!??』』』』』
ナナから宣言された思いがけぬ言葉に、全員がシンクロして叫んだ。
「どうしてそうなるのよ!?」
「これは俺達の為の企画だろぉ!?」
即座にリズとグラッセが詰め寄るが、逆に首を傾げられた。
「何か勘違いしてませんか? 今回、私が御持て成しするのは……リラ様ただ一人ですっ!!!」
リラさんを指しながら言い切るナナに、不満の声は止まらない。
「ふざけんなぁ!!」
「こう言うのは、私達がいてこその作品でしょ!?」
ロクサスとナミネが反論を繰り出すと、自信満々だったナナが顔を俯かせた。
「確かに、二次創作と言うのは原作キャラ。時にオリキャラいてこそ作品が成り立つモノ」
「ならば!!」
この語りにウィドが迫ると、急に全員に向かって指を突き付けた。
「だからそこ、あえて聞こう!! この中であとがきや番外編で私達に“一度でも”攻撃したり脅したり文句言ったりした事の無い人居たら、今すぐ手を上げてみなさいっ!!!」
『『『あっ…』』』
だーれも手を上げられない。
それもそうだろう。誰もが書き上げる話で何らかの不満がある度に、作者をボッコボコしているのだから。
「私も何度この人達に酷い目にあったか…うううっ…」
「ようやくお分かりになった所で、改めてネタ晴らし…――この企画はリラ様と行うあなた達のリベンジ企画でっす!!!」
リラさんが泣く横で、ナナは看板に近づくなり手を当てる。
そうして文字が書いてある紙の部分を引っ張っると、そこには【リベンジ(Revenge)企画!! 始動!!】と言う文字が書いてあった。
「リベンジィィィ!!?」
「ちょっと待て…まさか『R企画』って、“旅館”じゃなくて“リベンジ”の『R』だったのかぁぁぁ!!?」
作者二人による真の目的が明らかとなり、レイシャとムーンがそれぞれ絶叫を上げる。
すると、我先にアクセルが旅館から背を向けた。
「ふざけんなぁ!!! そんな企画なら、今すぐ帰らせて貰う!!!」
「おっと、そうはいきませんよ。ポチッと」
それを見たリラはポケットから一つのボタンを取り出して親指で押す。
直後、ここまでリズ達を運んでくれたバスが炎を上げて爆発した。
「バスが爆発したぁ!?」
突然の反撃にソラが驚いていると、ボタンに手を掛けたままリラは黒い笑みを浮かべる。
「折角、ナナさんの協力の下でリベンジ出来る場所を作ったんです…このまま逃がすほど甘くなーい!!」
「バスなんて無くても、闇の回廊で「更に、魔法カード発動!! 『サイ○ロン』!!」んなぁ!?」
ザルディンが闇の回廊を作り出すと、ナナはどっかで見た事あるカードを取り出して発動させる。
すると竜巻が現れ、一瞬で闇の回廊を掻き消した。
「フフフ…合同活動している夢旅人さんから教えて貰った遊○王カードを前に、あなた達に逃げ場など存在しない!! 今回の企画、じっくりとその身で味わって貰う!!」
全員に向かって恐怖の宣言を行い、ビシッと指に挟んだカードを突き付けるナナ。
この二人に、今まで傍観していたシグバールは震えあがった。
「この二人、何時の間にドSになったんだってハナシっ!?」
「ラクシーヌが二人も追加されたんじゃ、俺の命が持たないよぉ!!」
「デミックス…相当殺されたいみたいね…!!」
シグバールの横でデミックスも泣いていると、ナイフを握ったラクシーヌがバチバチと全身に電流を纏う。
別の意味で恐ろしい光景が生み出されるが、それを無視してアクアがナナに喰いかかった。
「大体、リベンジって何する気なの!?」
「リベンジ企画と行っても、一応これは旅館ネタ。さすがの私達も無差別で貴方達をボコボコにはしないさ。……ただ、部屋決めはそうもいかない」
『『『部屋決めぇ?』』』
「百聞は一見にしかず。さあ、旅館内に作られた特設ルームへまずはゴー!!」
「おー!!」
上機嫌で旅館へと入っていく作者二人を見て、全員は茫然となるしかなかった。
「どうする…?」
「行くしかないだろ…」
カヤとウラノスの呟きに、全員は二人の後を追いかけるように旅館の中に入る。
ロビーを通り過ぎ、掃除の行き届いた綺麗な廊下を歩くと大きな広間に辿り着いた。
「到着!! 皆さん、あれをご覧ください!」
「あれ…]Vキノコ…?」
ソラが呟く先には、Xと書かれた大きなキノコ型ハートレスが幾つも立っている。しかもハートレスの間には一つ一つテープで作った仕切りがあり床には番号も振られている。
摩訶不思議な光景に全員の目が丸くなっていると、ナナが振り返って説明した。
「これから皆さんが泊まる部屋は―――ゲームで決めさせて貰います!!」
『『『ゲームゥゥゥ!!?』』』
「ここで改めて説明しよう! 今回のゲームは…――Xキノコのデュエルのチーム戦! 各チーム内から二人一組を決めた後、あちらのキノコの体力を削って貰います。計10回行い、得点の高い方から豪華な部屋が決まります」
「尚、得点は30秒以内に倒せば10点。倒せなかったとしても、減らした分のHPに応じて得点を与えます…とのことです」
リラもカンペ用のメモを見ながら説明をし終えると、シャオが抗議の声を上げる。
「ちょ!? 30秒って少なくない!? デュエルは1分40秒で終わる「ノルマクリアは10秒ですよ? その3倍何だから文句言わない」確かにそうだけど!!」
正論の筈なのに納得できない何かを感じ、尚もツッコミを入れるシャオ。
そんな中、頭脳派でもあるゼクシオンとウィドはこのゲームについて考えていた。
「確か、XキノコのHPは1000でしたよね? 倒して10点取れると言う事は、100ずつ減らす事に1点はゲット出来る訳ですね」
「時間終わりにHPを0に出来なくても、ある程度減っていればポイントは貰える訳ですか」
「でもさ〜、それならバンバン大技使っちゃえば余裕で取れるよね〜」
二人の考えを聞いていたデミックスは、嬉しそうにガッツボーズを作る。
ここにいるキャラ全員、大技をそれなりに持っている。連発してしまえば、30秒所か10秒もいらないだろう。
しかし、これはリベンジ企画。そんな甘い作戦が通用する訳がない。
「そうはいきませんよ? あなた達が一度でも技を使えば…それは《コマンド封印》される!!」
「まさか、俺達の『リミットブレイク』や『リミットカット』もか!?」
胸を張るナナにサイクスが詰め寄ると、リラさんが大きく頷く。
「そりゃもちろん。あと制限ルールの為、ここにあるキノコは『ストップ状態』にしているので…自分達のチーム以外のキノコに攻撃当てたら、スタートと同時に攻撃した分のダメージがくるんですよね〜?」
更なるルールを聞かされ、オパールとムーンも目を見開く。
「技は一回きりしか使えない上に、大技放ったら相手側が有利になる仕組み!?」
「制限ありまくりじゃねーか!!」
二人を筆頭に限定ルールにざわつく中、レイシャとロクサスが歯軋りをする。
「くそぉ…!! これじゃあ、ふざけた計画考えたあの作者二人をうっかりで攻撃出来ないじゃないかぁ…!!」
「こんなバカげたゲーム作りがやってぇ…!! ゼアノート並みに性質が悪いなぁ…!!」
「あんたらがそんな考えだから、こう言った対策作ったんじゃんっ!!!」
親子の不吉な会話にナナがツッコミを入れていると、スピカが一つの疑問を投げかけた。
「ところで、さっき《得点の高い方から豪華な部屋が決まる》って言ってたけど……得点が低いとどんな部屋を割り当てられるの?」
「そりゃあ、得点が一番高ければスイートルーム。一番低い方は…こちらになります」
そう言うなり、ナナは一つのアイテムを取り出した。
「なに…これ?」
「テント」
「いや、それは分かるが…なんか埃被ってないか?」
「『ポーション』と違ってメニューでしか使えないアイテムって、大抵は取っといたまま最後まで使わないって事多いでしょ? 回復だってセーブポイントで出来るし」
冷汗を掻くナミネとルキルの問いに平然と答えるナナに、我慢の限界が来たヴェンが大声を上げた。
「最下位になったら野宿な上に、そんな古びたアイテム使わせる訳!?」
「よく見たらこのテント、穴空いてるぞ!?」
「金具も錆び付いちゃってるじゃん!?」
テラとラックも、ゲームクリアまで使われなかったであろう古いテントに不満をぶつける。
「野宿が嫌なら、このゲームに参加して勝つ事だ!! まあ、このゲームは私達作者も参加するけどね!!」
「そう言う事、勝てる者なら勝ってみろー!!」
そんなセリフを吐き捨て、高笑いするナナとリラさん。
もはや悪役に成り下がった二人を、主人公がほおって置く訳がない。
「ウラノス!!」
「分かってるぜ、リズゥ!!!」
リズとウラノスは即座に武器を取り出すなり、激しい電流を纏わせる。
確実に抹消する気満々の二人に、さすがのナナとリラも血の気が引く。
「あ、あんたら…いいのか? そんな技したら、全部のキノコに攻撃喰らっちゃうよ!?」
「そ、その通り!! それにあんたらの大事な人にも被害が及ぶし――!!」
「私はノーバディよ!! どうせ一人で生きていくんだから、他人なんて知った事じゃねぇ!!!」
「どうせここにいる大多数は赤の他人も同然だ!! てめえら巻き添えに消そうが何の問題もねえよぉ!!!」
「「本編の話使って開き直ったーーーーーーーっ!!!??」」
現在人間不信状態も同然の二人の言葉に、作者二人は叫びながらガクガクと震える。
そんな二人に、更に追い打ちがかけられる。
「いいわよ、リズ!! 全力でやりなさい!!」
「そんな作者達、黒焦げにしてしまいなさい!!」
「ええ!! 今回はアクアやスピカと言った大から、シオン、レイアの小とさまざまなスタイルのキャラが参加しているのよ!! せっかくのんびりセクハ…セクシュアルハラスメント出来るのに、こんなのに付き合い切れないわ!!」
「テルスお姉ちゃん、長く言えばいいってものじゃないと思うよ…」
『リフレガ』を張ってKHキャラと自分達のオリキャラを守るスピカ、本を使って機関全員を守るゼクシオン、更に闇のバリアを張ってグラッセ達を守るテルスにツッコミを入れるガイア。
完全にピンチの作者がどうなるかは…次回明らかに。
■作者メッセージ
皆さん、お久しぶりです。投稿遅くなってしまってすみません。
実は、3月中盤から諸事情により5月中盤までネットが使えなくなってしまいまして…。今回はある方法を使って投稿することができました。
そういう訳なので、更新は更に停滞します。待ってくださる読者の皆さんには本当に申し訳ありません。
実は、3月中盤から諸事情により5月中盤までネットが使えなくなってしまいまして…。今回はある方法を使って投稿することができました。
そういう訳なので、更新は更に停滞します。待ってくださる読者の皆さんには本当に申し訳ありません。