第一日目・1
海岸沿いに近い山の中腹。そこに、一つの大きな旅館が存在した。
建っている場所が場所なだけに見える景色は抜群。最近建てたおかげで設備も真新しく温泉だって用意されている。
さてさて。話を戻して、旅館前の入口にて何やら作業をする人物がいた。
「えーと、看板をここに置いて。それから…」
「くす玉って、ここにかけるのかな?」
「何で俺達がこんな事を…」
そう言いながら玄関前に今回のゲストの為の出迎え用ステージを組み立てているのは、KHでお馴染みの幼なじみコンビ。ソラ、カイリ、リクの三人である。
そんな三人の傍には、何故か一緒に出迎えの準備をしている作者であるナナがいた。(この作品では読みやすいようにローマ字でなくカタカタ表記にしています)
「そりゃあ、リラ様には普段からいろいろお世話になっているし、別の所で旅館作品まで書いてくれたんだから、こっちも何かしとかないと申し訳が立たないでしょう?」
「でも、それならどうしてあなたまで出るの? 普通に私達だけで書けばいいじゃない」
カイリの言う事は尤もだ。今回の話ではKHキャラやナナとリラ様のオリキャラだけで出演者は十分いるのに、わざわざ作者であるナナまで出る必要などないはずだ。
「この作品はあとがきテイストで送るからねー。本編設定関係なし! ギャグ満載でお届けしてこそ作品に親しみが持てると言うもの!」
(((この作品じゃ、あのドタバタがすぐ身近となるのか(ね)…)))
拳を握って意気揚々と宣言するナナに対し、あとがきでの事を思い出しながら三人は心底不安になる。
この気持ちを例えるのなら、勢いよく敵陣に乗り込んだらすでに第三者によってドンチャン騒ぎになっている状態に遭遇して置いてけぼりになってしまったのと同じ心境だろう。
「ちょっと、その例え酷くない!!?」
「まったく、騒がしいと思って様子を見に来れば…」
「早く準備しないと、彼らが来てしまいますよ?」
三人の考えにナナがツッコミを入れていると、玄関口から呆れ声と一緒に《リク=レプリカ》であるルキル(ただし、一年後の姿)と、こちらでのオリキャラであるウィドが現れる。
本編では一緒に暮らしている設定であるため、よく共に行動する事が多いのだ。
「二人とも、何でここに? 確かこの旅館の準備をしてた筈じゃ?」
「ええ。私も張り切って手伝っていたんですが、どう言う訳か全員から『手伝わなくていい』と言われてしまって…――仕方なく、ルキルと一緒に出迎えの方に回ったんです」
「ふーん、どうしてだろ? 人数は多い方が楽なのになー」
カイリの質問の答えにソラが疑問を口にしていると、隣にいたルキルの目に影が差した。
「お前…先生が手伝おうとした場所知ってるか? 厨房だぞ?」
「「「「ウィドはここで出迎えしてください」」」」
「何故でしょうか、私に対して失礼極まりない気がするんですが…?」
息の合った四人のセリフに、ウィドは複雑な表情を浮かべる。
だが、作品を読んでいる方はお分かりだろう…彼の作る料理は殺戮兵器。そんな彼が厨房に立ってしまえば、あとがき特有の「死なない設定」でも唯ではすまない。
「それにしても、二人とも随分と今回の話に乗り気なんだな。あとがきテイストな話なんだから、普通は攻撃して反抗する筈なのに」
リクの言う通り、ウィドとルキルは真面目キャラとツッコミ担当キャラである。そんな二人が、こんなドタバタあとがき延長のギャグ作品に出るとなると作者に攻撃を仕掛けてもおかしくない。
すると、何やらウィドとルキルの目つきが変わり始めるではないか。
「それが何だと言うんです…? 私は最近の本編では教師らしい一面もギャグの要素も出てない。しかも合同編に入ってからは仲間としての描写は全然ですよ!? ここで少しでも原点に戻って人気を集めなければ!!!」
「先生はまだいい方だ!! 俺なんて最終章も合わせた合同編でもセリフはまだ一つもないんだぞ!! ようやく来た出番を無駄にして堪るかぁぁぁ!!!」
そう言って拳を握るなり、二人の背後に激しい炎が燃え上がる。
まあ、現時点(【Re:開闢の宴 SPIRAL TALE/Chronice Key】『CROSS CAPTURE54』)までの話を見直せばそれも当然だろう。
「そうは言うけど、周りの声を聞かない程クウを憎んだり、【COM】でもロクな扱いされてなか「『空衝撃』」「『ダークファイガ』」」
リクが最後まで言い終わらない内に、真横を衝撃波と闇の気弾が通り過ぎた。
「「な・に・か、言いましたか(言ったか)?」」
「な、なんでもありませんっ!!?」
(((黒いな…)))
黒い笑みを浮かべながら剣先を突き付ける義兄弟に、残された三人は心の中で呟いた。
「って、ちょっと待て!? どうしてウィドはシルビアを持っているんだ!? 最終章で敵側に取られた筈「この作品はあとがき設定だよ。撮影した後にエンがちゃんとウィドに返したって事で」なんだそれはぁぁぁ!!!」
何処となく納得いかないナナの説明に、思わずツッコミを入れるリク。【3D】ではボケ担当だった彼が嘘のようだ。
ちなみに補足を入れるが、今ウィドの持つ細剣は《シルビア》と呼ばれており、いろいろと特殊な武器でもある。どういう事か分からないと言う方はお手数ですが今すぐ本編を読んでください。
「我の紹介がめんどくさいからと、その一言で済ますでなーい!!」
「うぉ!? モップを振り回して暴れるなシルビア!」
「放せアウルムっ!!! 裏方に回れと風呂掃除させられただけでなく、キーパーソンでもある我の説明まで省きおってぇぇぇ…!!! 奴の頭蓋骨、粉々に噛み砕くっ!!!」
「待て!? どうして俺に掴みかか――ぐわぁあああああああっ!!!??」
そうして旅館に配備された露天風呂から、ボキボキと言う不吉な音が入口にいる全員の耳に届いてしまった。
「…今、お風呂場の方から聞き覚えのある声と一緒に何かが砕かれる音が聞こえたんだけど?」
「気のせいでしょう」
「よく言い切れますね…」
冷汗を垂らすカイリに何の戸惑いも無く言い切るナナ。これにはさすがのウィドも頭を押さえる。
と、その時。旅館への道である坂の下の方から微かにエンジン音が聞こえ出した。
「マズイ!? 早く準備しなければ着いてしまう!! ソラ達は急いでステージを組み立てて!!」
そう指示するなり、ナナはトランシーバーを取り出してボタンを押した。
「裏方スタッフ以外のキャラに次ぐ!! 今すぐ玄関前に集まれー!! ゲストキャラを御出迎えするぞー!!」
この号令を合図に、旅館内から複数の慌ただしい足音がこちらに向かってくる。
だが、次の瞬間旅館の玄関をぶち壊すほどの破壊音が辺りに響き渡った。
「よし、間に合ったな!」
「あれ? ソラ達もういたの?」
「私達が一番だと思ったのに…まだまだ修行が足りないみたいね」
「あんたらキーブレードライダー使ってまで来るかー!!?」
キーブレードを乗り物に変形させて入口に突撃したテラ、ヴェントゥス、アクアの三人に思わずツッコミを入れるナナ。
何故過去の時代に登場する彼らがソラ達と一緒なのかは、本編を読んで頂ければ――。
「結局はそれかいっ!!」
「何度も何度も宣伝するなぁ!!」
「はぎゃああああっ!!?」
何度も同じ説明を繰り返すナナに、リクとルキルは同時に攻撃する。
そんな中、三人の突撃に巻き込まれたのか壊れた入口の残骸から何人かが起き上った。
「どうして、初っ端からボクこんな扱いなの…?」
「テラさん達、酷いです…」
そう言いながら瓦礫を押しのけて現れたのは、年少組であるシャオとレイアだ。
「あたしのデジカメ…10万もしたのに…」
そんな二人の後ろでブツブツ言ってるのは、今の騒動に巻き込まれた所為かオパールが見るも無残に壊れたデジカメを持っている。
彼女の周りに漂う負のオーラに、さすがの弟子三人も罪悪感が生まれてしまった。
「す、すまん…! ちゃんと弁償はするから!」
「え、ええ! それより性能の良いデジカメ買ってあげるから!」
「ほら、もうすぐお客さんも来るから! 元気出してよ!」
必死になって立ち直らせようとする三人に対し、オパールは暗い影を落としたまま顔を俯かせている。
「メモリーカードが…内臓データも修復不可能な程の破損……旅館の手伝いそっちのけでこっそりリクの写真何十枚も撮ってたのにぃぃ…」
(((壊して正解かもしれない…)))
ブツブツと呟くオパールの言葉に、他の人達は心の中で呟く。
幾らリクに惚れているとはいえ、本人に内緒でそれだけの量を取ってしまえば、それはストーカー行為に等しい。愛の力、恐るべし。
「何と言うか…――始まってそんなに経ってないのに、もう悲惨な光景になってるのね」
テラ達のライダーに巻き込まれなかったのか、何処からともなく無傷の状態でスピカが現れる。
「姉さん、どうやってここに?」
「旅館の裏口から回って来たの。この作者が書くギャグ作品よ? 普通に行動なんてしても、どうせ何らかの騒動に巻き込まれるのは目に見えてるでしょ?」
(((納得だ…)))
弟であるウィドに答えるスピカに、思わず全員が納得してしまった。
そうこうして居る内に、遠くからゆっくりと大人数を乗せる大型バスが見えてくる。
「ぬあー!! マズイ、いろんな騒動でステージの準備が出来てないままなのに!? こうなったら…!!」
リクとルキルの攻撃から解放されるなり、ナナは地面に手を置いて…赤い生物を引き抜いた。
「引っこ抜かれて、戦って、たべーられてー。でーも私たーちあなたに従いつくーしーますー♪」
『『『ピ○ミン!!? しかもスマ○ラX仕様!!?』』』
とあるゲームのテーマ曲を歌いながら頭に草を付けた細長い生物を次々と引っこ抜くナナに、全員がツッコミを入れる。
その間にも、引っこ抜かれたピ○ミン達は中途半端に作られたステージに走ってせっせと組み立て行くではないか。
「え!? なあ、KHに関係無い作品をネタにしていいのぉ!!?」
「この作品のタグは『総合』だよ? 最初の部分にだって、注意書きで『KH以外のネタも使っています』と書いてるでしょ? 何より、笑い取れればそれで良しだ!!」
「それで何でも許される訳ないだろ、ボケ作者ぁぁぁ!!!」
あっけらかんと答えるナナに、さすがのソラも光の勇者にあるまじきセリフを吐いてしまう。
何だかんだでピク○ン達のおかげでお出迎え用のステージは完成し、大型バスも旅館の駐車場へと停車した。
「初っ端からツッコミ所満載だったけど、いよいよだね」
「ああ。ようやくだな」
カイリとルキルが一息吐きながら大型バスの扉を見ると、丁度いいタイミングで入口が開く。
そして…今回の企画になくてはならない“彼ら”が現れた。
建っている場所が場所なだけに見える景色は抜群。最近建てたおかげで設備も真新しく温泉だって用意されている。
さてさて。話を戻して、旅館前の入口にて何やら作業をする人物がいた。
「えーと、看板をここに置いて。それから…」
「くす玉って、ここにかけるのかな?」
「何で俺達がこんな事を…」
そう言いながら玄関前に今回のゲストの為の出迎え用ステージを組み立てているのは、KHでお馴染みの幼なじみコンビ。ソラ、カイリ、リクの三人である。
そんな三人の傍には、何故か一緒に出迎えの準備をしている作者であるナナがいた。(この作品では読みやすいようにローマ字でなくカタカタ表記にしています)
「そりゃあ、リラ様には普段からいろいろお世話になっているし、別の所で旅館作品まで書いてくれたんだから、こっちも何かしとかないと申し訳が立たないでしょう?」
「でも、それならどうしてあなたまで出るの? 普通に私達だけで書けばいいじゃない」
カイリの言う事は尤もだ。今回の話ではKHキャラやナナとリラ様のオリキャラだけで出演者は十分いるのに、わざわざ作者であるナナまで出る必要などないはずだ。
「この作品はあとがきテイストで送るからねー。本編設定関係なし! ギャグ満載でお届けしてこそ作品に親しみが持てると言うもの!」
(((この作品じゃ、あのドタバタがすぐ身近となるのか(ね)…)))
拳を握って意気揚々と宣言するナナに対し、あとがきでの事を思い出しながら三人は心底不安になる。
この気持ちを例えるのなら、勢いよく敵陣に乗り込んだらすでに第三者によってドンチャン騒ぎになっている状態に遭遇して置いてけぼりになってしまったのと同じ心境だろう。
「ちょっと、その例え酷くない!!?」
「まったく、騒がしいと思って様子を見に来れば…」
「早く準備しないと、彼らが来てしまいますよ?」
三人の考えにナナがツッコミを入れていると、玄関口から呆れ声と一緒に《リク=レプリカ》であるルキル(ただし、一年後の姿)と、こちらでのオリキャラであるウィドが現れる。
本編では一緒に暮らしている設定であるため、よく共に行動する事が多いのだ。
「二人とも、何でここに? 確かこの旅館の準備をしてた筈じゃ?」
「ええ。私も張り切って手伝っていたんですが、どう言う訳か全員から『手伝わなくていい』と言われてしまって…――仕方なく、ルキルと一緒に出迎えの方に回ったんです」
「ふーん、どうしてだろ? 人数は多い方が楽なのになー」
カイリの質問の答えにソラが疑問を口にしていると、隣にいたルキルの目に影が差した。
「お前…先生が手伝おうとした場所知ってるか? 厨房だぞ?」
「「「「ウィドはここで出迎えしてください」」」」
「何故でしょうか、私に対して失礼極まりない気がするんですが…?」
息の合った四人のセリフに、ウィドは複雑な表情を浮かべる。
だが、作品を読んでいる方はお分かりだろう…彼の作る料理は殺戮兵器。そんな彼が厨房に立ってしまえば、あとがき特有の「死なない設定」でも唯ではすまない。
「それにしても、二人とも随分と今回の話に乗り気なんだな。あとがきテイストな話なんだから、普通は攻撃して反抗する筈なのに」
リクの言う通り、ウィドとルキルは真面目キャラとツッコミ担当キャラである。そんな二人が、こんなドタバタあとがき延長のギャグ作品に出るとなると作者に攻撃を仕掛けてもおかしくない。
すると、何やらウィドとルキルの目つきが変わり始めるではないか。
「それが何だと言うんです…? 私は最近の本編では教師らしい一面もギャグの要素も出てない。しかも合同編に入ってからは仲間としての描写は全然ですよ!? ここで少しでも原点に戻って人気を集めなければ!!!」
「先生はまだいい方だ!! 俺なんて最終章も合わせた合同編でもセリフはまだ一つもないんだぞ!! ようやく来た出番を無駄にして堪るかぁぁぁ!!!」
そう言って拳を握るなり、二人の背後に激しい炎が燃え上がる。
まあ、現時点(【Re:開闢の宴 SPIRAL TALE/Chronice Key】『CROSS CAPTURE54』)までの話を見直せばそれも当然だろう。
「そうは言うけど、周りの声を聞かない程クウを憎んだり、【COM】でもロクな扱いされてなか「『空衝撃』」「『ダークファイガ』」」
リクが最後まで言い終わらない内に、真横を衝撃波と闇の気弾が通り過ぎた。
「「な・に・か、言いましたか(言ったか)?」」
「な、なんでもありませんっ!!?」
(((黒いな…)))
黒い笑みを浮かべながら剣先を突き付ける義兄弟に、残された三人は心の中で呟いた。
「って、ちょっと待て!? どうしてウィドはシルビアを持っているんだ!? 最終章で敵側に取られた筈「この作品はあとがき設定だよ。撮影した後にエンがちゃんとウィドに返したって事で」なんだそれはぁぁぁ!!!」
何処となく納得いかないナナの説明に、思わずツッコミを入れるリク。【3D】ではボケ担当だった彼が嘘のようだ。
ちなみに補足を入れるが、今ウィドの持つ細剣は《シルビア》と呼ばれており、いろいろと特殊な武器でもある。どういう事か分からないと言う方はお手数ですが今すぐ本編を読んでください。
「我の紹介がめんどくさいからと、その一言で済ますでなーい!!」
「うぉ!? モップを振り回して暴れるなシルビア!」
「放せアウルムっ!!! 裏方に回れと風呂掃除させられただけでなく、キーパーソンでもある我の説明まで省きおってぇぇぇ…!!! 奴の頭蓋骨、粉々に噛み砕くっ!!!」
「待て!? どうして俺に掴みかか――ぐわぁあああああああっ!!!??」
そうして旅館に配備された露天風呂から、ボキボキと言う不吉な音が入口にいる全員の耳に届いてしまった。
「…今、お風呂場の方から聞き覚えのある声と一緒に何かが砕かれる音が聞こえたんだけど?」
「気のせいでしょう」
「よく言い切れますね…」
冷汗を垂らすカイリに何の戸惑いも無く言い切るナナ。これにはさすがのウィドも頭を押さえる。
と、その時。旅館への道である坂の下の方から微かにエンジン音が聞こえ出した。
「マズイ!? 早く準備しなければ着いてしまう!! ソラ達は急いでステージを組み立てて!!」
そう指示するなり、ナナはトランシーバーを取り出してボタンを押した。
「裏方スタッフ以外のキャラに次ぐ!! 今すぐ玄関前に集まれー!! ゲストキャラを御出迎えするぞー!!」
この号令を合図に、旅館内から複数の慌ただしい足音がこちらに向かってくる。
だが、次の瞬間旅館の玄関をぶち壊すほどの破壊音が辺りに響き渡った。
「よし、間に合ったな!」
「あれ? ソラ達もういたの?」
「私達が一番だと思ったのに…まだまだ修行が足りないみたいね」
「あんたらキーブレードライダー使ってまで来るかー!!?」
キーブレードを乗り物に変形させて入口に突撃したテラ、ヴェントゥス、アクアの三人に思わずツッコミを入れるナナ。
何故過去の時代に登場する彼らがソラ達と一緒なのかは、本編を読んで頂ければ――。
「結局はそれかいっ!!」
「何度も何度も宣伝するなぁ!!」
「はぎゃああああっ!!?」
何度も同じ説明を繰り返すナナに、リクとルキルは同時に攻撃する。
そんな中、三人の突撃に巻き込まれたのか壊れた入口の残骸から何人かが起き上った。
「どうして、初っ端からボクこんな扱いなの…?」
「テラさん達、酷いです…」
そう言いながら瓦礫を押しのけて現れたのは、年少組であるシャオとレイアだ。
「あたしのデジカメ…10万もしたのに…」
そんな二人の後ろでブツブツ言ってるのは、今の騒動に巻き込まれた所為かオパールが見るも無残に壊れたデジカメを持っている。
彼女の周りに漂う負のオーラに、さすがの弟子三人も罪悪感が生まれてしまった。
「す、すまん…! ちゃんと弁償はするから!」
「え、ええ! それより性能の良いデジカメ買ってあげるから!」
「ほら、もうすぐお客さんも来るから! 元気出してよ!」
必死になって立ち直らせようとする三人に対し、オパールは暗い影を落としたまま顔を俯かせている。
「メモリーカードが…内臓データも修復不可能な程の破損……旅館の手伝いそっちのけでこっそりリクの写真何十枚も撮ってたのにぃぃ…」
(((壊して正解かもしれない…)))
ブツブツと呟くオパールの言葉に、他の人達は心の中で呟く。
幾らリクに惚れているとはいえ、本人に内緒でそれだけの量を取ってしまえば、それはストーカー行為に等しい。愛の力、恐るべし。
「何と言うか…――始まってそんなに経ってないのに、もう悲惨な光景になってるのね」
テラ達のライダーに巻き込まれなかったのか、何処からともなく無傷の状態でスピカが現れる。
「姉さん、どうやってここに?」
「旅館の裏口から回って来たの。この作者が書くギャグ作品よ? 普通に行動なんてしても、どうせ何らかの騒動に巻き込まれるのは目に見えてるでしょ?」
(((納得だ…)))
弟であるウィドに答えるスピカに、思わず全員が納得してしまった。
そうこうして居る内に、遠くからゆっくりと大人数を乗せる大型バスが見えてくる。
「ぬあー!! マズイ、いろんな騒動でステージの準備が出来てないままなのに!? こうなったら…!!」
リクとルキルの攻撃から解放されるなり、ナナは地面に手を置いて…赤い生物を引き抜いた。
「引っこ抜かれて、戦って、たべーられてー。でーも私たーちあなたに従いつくーしーますー♪」
『『『ピ○ミン!!? しかもスマ○ラX仕様!!?』』』
とあるゲームのテーマ曲を歌いながら頭に草を付けた細長い生物を次々と引っこ抜くナナに、全員がツッコミを入れる。
その間にも、引っこ抜かれたピ○ミン達は中途半端に作られたステージに走ってせっせと組み立て行くではないか。
「え!? なあ、KHに関係無い作品をネタにしていいのぉ!!?」
「この作品のタグは『総合』だよ? 最初の部分にだって、注意書きで『KH以外のネタも使っています』と書いてるでしょ? 何より、笑い取れればそれで良しだ!!」
「それで何でも許される訳ないだろ、ボケ作者ぁぁぁ!!!」
あっけらかんと答えるナナに、さすがのソラも光の勇者にあるまじきセリフを吐いてしまう。
何だかんだでピク○ン達のおかげでお出迎え用のステージは完成し、大型バスも旅館の駐車場へと停車した。
「初っ端からツッコミ所満載だったけど、いよいよだね」
「ああ。ようやくだな」
カイリとルキルが一息吐きながら大型バスの扉を見ると、丁度いいタイミングで入口が開く。
そして…今回の企画になくてはならない“彼ら”が現れた。