チーム戦・7
モニターに映し出された結果に【トリッカー】は安堵の息を漏らし、【スケベ四人衆】は若干悔しそうに、【そっくりさん】のメンバーは悔しそうに画面を見ている。その中でもリクだけは元の姿に戻れずに落ち込んでいるが。
さまざまな表情を見せる3チームに、リラとナナはニヤリと笑っていた。
「チームに混乱と暴走を作るだけなく、隙を突いてタイマーを動かす作戦…見事に成功しましたなぁ、ナナさん…」
「いえいえ、イジメ許可を申請したリラさんのおかげですわぁ…」
明らかに黒い会話をする作者二人に、被害者であるクウとシオンが即座に詰め寄った。
「作者ぁ!! 嵌めやがったなぁ!!!」
「そうだよ、あまりにも卑怯すぎるっ!!!」
「卑怯? フッ、そんなの褒め言葉にしか聞こえないね〜!」
「私達がリッチで極上なバケーションを送れればそれでいいのさー!!」
(((この作者、ウザい…!!)))
もはや開き直る作者二人に殺意が湧き上がるが、キノコまで攻撃してしまえば更に図に乗るので思い留まるしかなかった。
「じゃあ、次は【裏切り者】で〜」
「いきなりか!? ええい、早くメンバーを決めなければ…!」
いきなりのリラの合図に、マールーシャは慌ててメンバーを見回す。
すると、ウィドが自信ありげに前に出た。
「ここは私に任せて貰えませんか? 良い作戦を思いつきましたから」
「あんたが考えた作戦? 本当に大丈夫なんでしょうね?」
「先程の汚名を返上するチャンスですから。まず、アクセル以外の人はこれを鼻に付けてください」
そう言うなり、ポケットから取り出したのは…。
「洗濯バサミ…?」
一見するとこの場にそぐわない代物にサイクスが戸惑いを見せるが、ウィドは迷うことなく一つを鼻に付ける。
まるで匂いを遮断する方法に、アクセル以外のメンバーも同じように鼻に付けた。
「アクセル、片方のブーツを渡してください」
「お、おう…?」
次々に不可解な指示を出すウィドに、アクセルも戸惑いを浮かべつつ言う通りにする。
そうして脱いだブーツを渡すと、ウィドは目を光らせた。
「あとは、コレを嗅がせれば…!」
そう言うなりキノコへ走り、アクセルのブーツを顔へと押し込む。
直後、眠っていた筈のキノコが目を覚ましたと思ったら苦しそうに悶え出す。
その数秒後、キノコは床に失神したように倒れて頭から魂のような物が浮かび上がった。
「キノコが一発でダウンしただとぉ!?」
この光景にマールーシャが驚いてると、モニターに点数が現れる。
ただブーツの臭いを嗅がせただけなのに、何と10点を獲得していた。
「はい、これで私達も10点獲得です♪」
「てめぇ、それオパールが使った作品ネタの俺の声優ネタじゃねーかぁぁぁ!!!」
「ええ、そうですよ? 何でしたら今年の映画(2014年)のようにロボットに改造でも…」
「もう止めてくれぇぇぇ!!?」
これ以上喋らせればとんでもない事になると、アクセルは叫んでウィドの言葉を止める。
「ってか、どんだけの臭さなんだよ…!!」
「うぇえ…!! 鼻が曲がる〜!!」
「あんな足が臭い奴が、キーブレード使いに…!!」
「赤ウニとだけは洗濯物一緒にして欲しくないわ…!!」
どうやらブーツの臭いが広がったらしく、ロクサスとシオンだけでなく、リクとリズにまで鼻を摘まみながらボロクソに言われてしまう。
よく見ると全員、鼻を摘まんで汚物でも見るような目をアクセルに送り付けていた。
「ウィドてめぇ!! 俺の好感度が下がりまくったこの状況どうしてくれるんだっ!?」
「いいじゃないですか、点数は取れましたし。何より、あなたがどう思われ様が私の知った事じゃないですよ」
「俺の靴で倒すよりも、お前の殺人料理を顔面にぶつけたほうがよっぽどうぐぉ!!?」
ウィドに対する悪態を吐いた瞬間、分厚い辞典の角で顔を殴られた。
「アクセル、今なんて言いました? 雑音でよく聞こえませんでした」
「絶対聞こえてるだうごぉ!? げふぉ!?」
「そ、そのくらいで許してやりなよ…!? アタイ達仲間割れしてる場合じゃないだろ…!?」
別名、知識の鉄槌でアクセルを容赦なく殴る黒いウィドに、ラックが冷や汗を垂らして止めに入る。
この言葉が通じたのか、ウィドは殴る手を止めた。
「それもそうですね…。まったく、私の料理の腕前をあなたの親友兼ヒロインと一緒にされるとは、不本意極まりないです」
「ちょっと!! そこでどうしてあたしが殺人料理人扱いされるのよ!!」
(((自覚ないのかよ…)))
売った喧嘩に喰いかかるシオンに、誰もが心の中で呟いた。
「おや? 私は『シオンは殺戮料理を作れる』とは一言も言った覚えはないのですがねぇ。【358/2Days】で悲劇のヒロイン演じたからと言って、そのような被害妄想まで…――ああ、もしかしてちゃんと自覚があったからこその反応ですかね?」
「んなぁ!? 言って置くけど、あんたと違って料理は得意な方なんだよ!! その証拠に、こっちでのリクはちゃんと食べてくれるんだから!!」
『『『リク、お前漢だ』』』
「言葉だけなのに、何でこんなに嬉しいんだろうな…!」
男性陣全員から送られた賞賛に、女の姿なのにリクは泣きそうになったとか。
「だからなんですか。私だって作った料理は全部ルキルが完食してくれるんですから。この前だってお代わりまでして食べてくれましたよー?」
『『『ルキル、お前なんて無茶をっ!!?』』』
「あんな笑顔で迫られたら、な…!!」
男性陣が驚愕の表情で叫ぶ中、ルキルは遠い目でウィドの笑顔とゲテモノ料理を思い出していた。
「むむぅ…!! だったら、今度あたし達の料理でどっちが美味しいか勝負しようじゃないの!! あたしの料理がまともだって証明してあげる!!」
「望む所です。お互いのパートナー入れ替えて審査して貰えば、どっちが美味しいかハッキリ出来ますしねっ!!」
((勝手に俺達の死亡フラグを立てないでくれー!!!))
シオンとウィドがバチバチと火花を燃やす中、リクとルキルは顔を真っ青にして心の中で叫んでいた。
「面白い勝負になりますよー。これで憎っきリクがいなくなる…!!」
「もー、駄目よレイシャ。そうなっちゃったら、こっちでの数少ない恋バナが見れなくなるのよ? まあ、料理勝負となったら私が一番美味しく作れるけど♪」
「俺だって負けませんよ、スピカさん! その気になれば、とびっきりの料理作れるんですから!」
(((こんな性格だから、殺人料理人って自覚がないんだな…)))
更に料理勝負に感化されたレイシャとスピカの会話に、全員もまた心の中で呟いた。
「だが、その料理も役に立つ時はあるぞ。ごらんなさい」
まるで割り込む様にゼノが口を出すと、ある方向を指す。
そこには、【父子家庭】チームのキノコがヘドロ状の物を顔面に付けたまま床に痙攣して倒れている。モニターを見ると、10点を取っている。
「あー!! リズ姉ちゃんと一緒に食べようと思って作ったケーキが!!?」
「あれがケーキか!?」
「ゼノ、何時の間に!?」
「よ、良かった…」
レイシャから発せられた思わぬ言葉にレクセウスとザルディンが驚く中、リズは心からゼノの行動に感謝したとか。
一方、レイシャはキノコの傍にと駆け寄るなり涙目でその場に座り込んだ。
「あぁ、一生懸命作ったのに…しかも何で気絶してんだこのキノコ…!!」
「落ち着いて。あのケーキ、きっとハートレスの口には合わなかったのよ。次は私も一緒に作るから、ね?」
「ありがとうございます、スピカさん…。スピカさんみたいな優しい人間がいてくれて良かった…」
(((何でだろう、微笑ましい会話の筈なのに背筋が凍りつく感じは…!?)))
この二人のやりとりに、会話を聞いた全員が身の毛もよだつ危険を感じたのであった。
「ス、スピカさん!! 次私達の番ですよ!! 一旦戻って来てくださーい!!」
「ではここは私だけでいきましょう。スピカの説得を頼む…!!」
「さすがのあんたも殺人料理には敵わないんだな…」
冷や汗を浮かべて武器を構えるエンに、ウラノスも思わず遠い目になる。
それでもレイシャ共々スピカを説得しようとガイアと一緒にその場を離れる。
この【最強血縁】の様子に、リラはコソコソと耳打ちを始めた。
(ナナさん、どうするんです…? 幾らハンデがあるとは言え、速攻で点を取られてしまいますよ?)
(大丈夫、ちゃんと対策は練ってるから)
小声で言い返すと、また別のボタンを取り出すナナ。
それと同時に、エンがキノコへと一気に走り込み双剣へと変える。
「トワイライト――!」
(ポチッとな!)
《うぇぇえええぇぇえんっ!!!》
キノコに攻撃が当たる直前、壁に取り付けたスピーカーから泣き声が聞こえた。
「何だこの泣き声!?」
突然脈拍も無く聞こえてくる泣き声に、ムーンがスピーカーに目を向ける。
他の人も疑問を浮かべる中、エンが叫んだ。
「リヴァル!?」
『『『はい…?』』』
あとがきや番外編で度々登場する彼の息子の名前に、全員がポカンとなる。
そんな中、ナナだけは呆れたようにエンに話しかけた。
「エンさーん、またリヴァル君連れてきたのー? まったく、夢旅人さんの番外編で一緒に出演出来なかったからってこんな旅館に連れてくるなんて…」
「ち、違う!! 今回はちゃんと妻に預けて来た!!! 確かにリヴァルは連れて行きたかったが、病院送りにまでボコボコにされてはな…」
(((奥さん強いな…)))
その奥さんとは未来のスピカなのだが、口にすれば恐ろしい目に遭う事は一目瞭然だった。
そうこうしてる間に、ナナが取りつけたモニターを見ながらワザとっぽく首を傾げる。
「あれー? リヴァルくん、ここから少し離れた所にある託児所にいるねー。泣いてるからドリームイーター達があやそうと集まってるよー」
「何だとぉ!!? またドリームイーターに子守りさせたとバレたら…――じ、人生が終わる…!!!」
「ラスボスが怯えるって奥さんどんな強さにしてるの!!? 寧ろ、本編でゼアノートに誘拐されても返り討ち出来るじゃない!!?」
頭を押さえて怯えるエンに、カイリは恐怖を浮かべてナナに詰め寄る。
確かに、ラスボスを務めてソラ達を倒したエンをも凌ぐ強さなら、ゼアノートによる事件も勝手に解決している筈である。
しかし、ナナは呆れたような目でカイリを見返した。
「あのね、女性なら妊婦の危険さぐらい分かってよ。臨月ってなったらちょっとの衝撃でもお腹の子に影響与えるし、万が一流産してしまったら子供だけでなく妊婦さえ命を落とす事もあるんだよ? そもそも子供を身籠った状態で戦闘なんて、命捨てる行為と一緒なんだからね!」
「ナナさん…もの凄く痛い言葉だから止めて…!」
「何でリラが落ち込んでるのよ!?」
「将来なんかしでかす気だ…」
珍しく正論を返すナナの横で胸を押さえるリラに、リズとグラッセは不安を覚えたと言う。
「そうだ。折角だから、この可愛い光景を写真に収めて――」
「止めろぉ!!! 待ってろリヴァル!!! 今お父さんが行って泣きやませるからなぁぁぁ!!!」
そう言うなり、エンはわき目も振らずに部屋を出て行ってしまう。
数秒後、物凄い破壊音がここまで響き渡ったと思えば、何とゼアノート達の後方の壁が一気に吹き飛ぶと共にドリームイーター達が飛び出した。
「って、どうして俺達の所にぃ!!?」
「ぐおっはぁ!!?」
「ぶるああああああああっ!!?」
勢いよく飛んできた壁の破片やらドリームーター達に三人(アンセムは隅で治療中)が襲われ、悲鳴を上げながらその場に倒れる。
そして壁に空いた穴からぐずるリヴァルを抱えたエンが現れた。
「怖かったな〜、リヴァル?」
「あぅ…」
『『『あんたの方が怖いわぁ!!?』』』
この親バカのセリフに全員がツッコミを入れる。
ただし、クウは一人だけ「将来あんな大人になるのか…」と嘆いていた。
「それにしても、可愛い男の子ね〜。赤ちゃんの肌は軟らかいからセクハラのし甲斐が――」
いつの間に回復したのか、テルスは怪しい笑みを浮かべリヴァルへとロックオンする。
直後、テルスの首元にダブルセイバーの刃が突きつけられた。
さまざまな表情を見せる3チームに、リラとナナはニヤリと笑っていた。
「チームに混乱と暴走を作るだけなく、隙を突いてタイマーを動かす作戦…見事に成功しましたなぁ、ナナさん…」
「いえいえ、イジメ許可を申請したリラさんのおかげですわぁ…」
明らかに黒い会話をする作者二人に、被害者であるクウとシオンが即座に詰め寄った。
「作者ぁ!! 嵌めやがったなぁ!!!」
「そうだよ、あまりにも卑怯すぎるっ!!!」
「卑怯? フッ、そんなの褒め言葉にしか聞こえないね〜!」
「私達がリッチで極上なバケーションを送れればそれでいいのさー!!」
(((この作者、ウザい…!!)))
もはや開き直る作者二人に殺意が湧き上がるが、キノコまで攻撃してしまえば更に図に乗るので思い留まるしかなかった。
「じゃあ、次は【裏切り者】で〜」
「いきなりか!? ええい、早くメンバーを決めなければ…!」
いきなりのリラの合図に、マールーシャは慌ててメンバーを見回す。
すると、ウィドが自信ありげに前に出た。
「ここは私に任せて貰えませんか? 良い作戦を思いつきましたから」
「あんたが考えた作戦? 本当に大丈夫なんでしょうね?」
「先程の汚名を返上するチャンスですから。まず、アクセル以外の人はこれを鼻に付けてください」
そう言うなり、ポケットから取り出したのは…。
「洗濯バサミ…?」
一見するとこの場にそぐわない代物にサイクスが戸惑いを見せるが、ウィドは迷うことなく一つを鼻に付ける。
まるで匂いを遮断する方法に、アクセル以外のメンバーも同じように鼻に付けた。
「アクセル、片方のブーツを渡してください」
「お、おう…?」
次々に不可解な指示を出すウィドに、アクセルも戸惑いを浮かべつつ言う通りにする。
そうして脱いだブーツを渡すと、ウィドは目を光らせた。
「あとは、コレを嗅がせれば…!」
そう言うなりキノコへ走り、アクセルのブーツを顔へと押し込む。
直後、眠っていた筈のキノコが目を覚ましたと思ったら苦しそうに悶え出す。
その数秒後、キノコは床に失神したように倒れて頭から魂のような物が浮かび上がった。
「キノコが一発でダウンしただとぉ!?」
この光景にマールーシャが驚いてると、モニターに点数が現れる。
ただブーツの臭いを嗅がせただけなのに、何と10点を獲得していた。
「はい、これで私達も10点獲得です♪」
「てめぇ、それオパールが使った作品ネタの俺の声優ネタじゃねーかぁぁぁ!!!」
「ええ、そうですよ? 何でしたら今年の映画(2014年)のようにロボットに改造でも…」
「もう止めてくれぇぇぇ!!?」
これ以上喋らせればとんでもない事になると、アクセルは叫んでウィドの言葉を止める。
「ってか、どんだけの臭さなんだよ…!!」
「うぇえ…!! 鼻が曲がる〜!!」
「あんな足が臭い奴が、キーブレード使いに…!!」
「赤ウニとだけは洗濯物一緒にして欲しくないわ…!!」
どうやらブーツの臭いが広がったらしく、ロクサスとシオンだけでなく、リクとリズにまで鼻を摘まみながらボロクソに言われてしまう。
よく見ると全員、鼻を摘まんで汚物でも見るような目をアクセルに送り付けていた。
「ウィドてめぇ!! 俺の好感度が下がりまくったこの状況どうしてくれるんだっ!?」
「いいじゃないですか、点数は取れましたし。何より、あなたがどう思われ様が私の知った事じゃないですよ」
「俺の靴で倒すよりも、お前の殺人料理を顔面にぶつけたほうがよっぽどうぐぉ!!?」
ウィドに対する悪態を吐いた瞬間、分厚い辞典の角で顔を殴られた。
「アクセル、今なんて言いました? 雑音でよく聞こえませんでした」
「絶対聞こえてるだうごぉ!? げふぉ!?」
「そ、そのくらいで許してやりなよ…!? アタイ達仲間割れしてる場合じゃないだろ…!?」
別名、知識の鉄槌でアクセルを容赦なく殴る黒いウィドに、ラックが冷や汗を垂らして止めに入る。
この言葉が通じたのか、ウィドは殴る手を止めた。
「それもそうですね…。まったく、私の料理の腕前をあなたの親友兼ヒロインと一緒にされるとは、不本意極まりないです」
「ちょっと!! そこでどうしてあたしが殺人料理人扱いされるのよ!!」
(((自覚ないのかよ…)))
売った喧嘩に喰いかかるシオンに、誰もが心の中で呟いた。
「おや? 私は『シオンは殺戮料理を作れる』とは一言も言った覚えはないのですがねぇ。【358/2Days】で悲劇のヒロイン演じたからと言って、そのような被害妄想まで…――ああ、もしかしてちゃんと自覚があったからこその反応ですかね?」
「んなぁ!? 言って置くけど、あんたと違って料理は得意な方なんだよ!! その証拠に、こっちでのリクはちゃんと食べてくれるんだから!!」
『『『リク、お前漢だ』』』
「言葉だけなのに、何でこんなに嬉しいんだろうな…!」
男性陣全員から送られた賞賛に、女の姿なのにリクは泣きそうになったとか。
「だからなんですか。私だって作った料理は全部ルキルが完食してくれるんですから。この前だってお代わりまでして食べてくれましたよー?」
『『『ルキル、お前なんて無茶をっ!!?』』』
「あんな笑顔で迫られたら、な…!!」
男性陣が驚愕の表情で叫ぶ中、ルキルは遠い目でウィドの笑顔とゲテモノ料理を思い出していた。
「むむぅ…!! だったら、今度あたし達の料理でどっちが美味しいか勝負しようじゃないの!! あたしの料理がまともだって証明してあげる!!」
「望む所です。お互いのパートナー入れ替えて審査して貰えば、どっちが美味しいかハッキリ出来ますしねっ!!」
((勝手に俺達の死亡フラグを立てないでくれー!!!))
シオンとウィドがバチバチと火花を燃やす中、リクとルキルは顔を真っ青にして心の中で叫んでいた。
「面白い勝負になりますよー。これで憎っきリクがいなくなる…!!」
「もー、駄目よレイシャ。そうなっちゃったら、こっちでの数少ない恋バナが見れなくなるのよ? まあ、料理勝負となったら私が一番美味しく作れるけど♪」
「俺だって負けませんよ、スピカさん! その気になれば、とびっきりの料理作れるんですから!」
(((こんな性格だから、殺人料理人って自覚がないんだな…)))
更に料理勝負に感化されたレイシャとスピカの会話に、全員もまた心の中で呟いた。
「だが、その料理も役に立つ時はあるぞ。ごらんなさい」
まるで割り込む様にゼノが口を出すと、ある方向を指す。
そこには、【父子家庭】チームのキノコがヘドロ状の物を顔面に付けたまま床に痙攣して倒れている。モニターを見ると、10点を取っている。
「あー!! リズ姉ちゃんと一緒に食べようと思って作ったケーキが!!?」
「あれがケーキか!?」
「ゼノ、何時の間に!?」
「よ、良かった…」
レイシャから発せられた思わぬ言葉にレクセウスとザルディンが驚く中、リズは心からゼノの行動に感謝したとか。
一方、レイシャはキノコの傍にと駆け寄るなり涙目でその場に座り込んだ。
「あぁ、一生懸命作ったのに…しかも何で気絶してんだこのキノコ…!!」
「落ち着いて。あのケーキ、きっとハートレスの口には合わなかったのよ。次は私も一緒に作るから、ね?」
「ありがとうございます、スピカさん…。スピカさんみたいな優しい人間がいてくれて良かった…」
(((何でだろう、微笑ましい会話の筈なのに背筋が凍りつく感じは…!?)))
この二人のやりとりに、会話を聞いた全員が身の毛もよだつ危険を感じたのであった。
「ス、スピカさん!! 次私達の番ですよ!! 一旦戻って来てくださーい!!」
「ではここは私だけでいきましょう。スピカの説得を頼む…!!」
「さすがのあんたも殺人料理には敵わないんだな…」
冷や汗を浮かべて武器を構えるエンに、ウラノスも思わず遠い目になる。
それでもレイシャ共々スピカを説得しようとガイアと一緒にその場を離れる。
この【最強血縁】の様子に、リラはコソコソと耳打ちを始めた。
(ナナさん、どうするんです…? 幾らハンデがあるとは言え、速攻で点を取られてしまいますよ?)
(大丈夫、ちゃんと対策は練ってるから)
小声で言い返すと、また別のボタンを取り出すナナ。
それと同時に、エンがキノコへと一気に走り込み双剣へと変える。
「トワイライト――!」
(ポチッとな!)
《うぇぇえええぇぇえんっ!!!》
キノコに攻撃が当たる直前、壁に取り付けたスピーカーから泣き声が聞こえた。
「何だこの泣き声!?」
突然脈拍も無く聞こえてくる泣き声に、ムーンがスピーカーに目を向ける。
他の人も疑問を浮かべる中、エンが叫んだ。
「リヴァル!?」
『『『はい…?』』』
あとがきや番外編で度々登場する彼の息子の名前に、全員がポカンとなる。
そんな中、ナナだけは呆れたようにエンに話しかけた。
「エンさーん、またリヴァル君連れてきたのー? まったく、夢旅人さんの番外編で一緒に出演出来なかったからってこんな旅館に連れてくるなんて…」
「ち、違う!! 今回はちゃんと妻に預けて来た!!! 確かにリヴァルは連れて行きたかったが、病院送りにまでボコボコにされてはな…」
(((奥さん強いな…)))
その奥さんとは未来のスピカなのだが、口にすれば恐ろしい目に遭う事は一目瞭然だった。
そうこうしてる間に、ナナが取りつけたモニターを見ながらワザとっぽく首を傾げる。
「あれー? リヴァルくん、ここから少し離れた所にある託児所にいるねー。泣いてるからドリームイーター達があやそうと集まってるよー」
「何だとぉ!!? またドリームイーターに子守りさせたとバレたら…――じ、人生が終わる…!!!」
「ラスボスが怯えるって奥さんどんな強さにしてるの!!? 寧ろ、本編でゼアノートに誘拐されても返り討ち出来るじゃない!!?」
頭を押さえて怯えるエンに、カイリは恐怖を浮かべてナナに詰め寄る。
確かに、ラスボスを務めてソラ達を倒したエンをも凌ぐ強さなら、ゼアノートによる事件も勝手に解決している筈である。
しかし、ナナは呆れたような目でカイリを見返した。
「あのね、女性なら妊婦の危険さぐらい分かってよ。臨月ってなったらちょっとの衝撃でもお腹の子に影響与えるし、万が一流産してしまったら子供だけでなく妊婦さえ命を落とす事もあるんだよ? そもそも子供を身籠った状態で戦闘なんて、命捨てる行為と一緒なんだからね!」
「ナナさん…もの凄く痛い言葉だから止めて…!」
「何でリラが落ち込んでるのよ!?」
「将来なんかしでかす気だ…」
珍しく正論を返すナナの横で胸を押さえるリラに、リズとグラッセは不安を覚えたと言う。
「そうだ。折角だから、この可愛い光景を写真に収めて――」
「止めろぉ!!! 待ってろリヴァル!!! 今お父さんが行って泣きやませるからなぁぁぁ!!!」
そう言うなり、エンはわき目も振らずに部屋を出て行ってしまう。
数秒後、物凄い破壊音がここまで響き渡ったと思えば、何とゼアノート達の後方の壁が一気に吹き飛ぶと共にドリームイーター達が飛び出した。
「って、どうして俺達の所にぃ!!?」
「ぐおっはぁ!!?」
「ぶるああああああああっ!!?」
勢いよく飛んできた壁の破片やらドリームーター達に三人(アンセムは隅で治療中)が襲われ、悲鳴を上げながらその場に倒れる。
そして壁に空いた穴からぐずるリヴァルを抱えたエンが現れた。
「怖かったな〜、リヴァル?」
「あぅ…」
『『『あんたの方が怖いわぁ!!?』』』
この親バカのセリフに全員がツッコミを入れる。
ただし、クウは一人だけ「将来あんな大人になるのか…」と嘆いていた。
「それにしても、可愛い男の子ね〜。赤ちゃんの肌は軟らかいからセクハラのし甲斐が――」
いつの間に回復したのか、テルスは怪しい笑みを浮かべリヴァルへとロックオンする。
直後、テルスの首元にダブルセイバーの刃が突きつけられた。