チーム戦・9
「な、何だ…あの強さは…?」
「いつものグラッセじゃない…」
僅か数秒で悪役諸共キノコに満点を与えたシラッセの強さに、ヴィクセンはもちろん、カイリでさえも唖然とする。
もちろん他の人達も茫然とする中、シラッセは腕を組んで笑い出した。
「フフ……ハハハ、アーハハハハっ!!! どうだ、これが俺の真の力だ!! 文句がある奴は前に出て来い、あいつらみたいに返り討ちにしてやる!!!」
「な、なんか性格変わってない?」
「そういや、フュー○ョンって本人とは別人格になるって話だよなぁ…」
本人の性格からは考えられない傲慢さを見せるシラッセに、元ネタの事をテルスとクウが言い合う。
「でもさー、変身する時って結構ダサいポーズだったよな」
グサリ
「名前もなんかシラスっぽいし」
グサグサッ!
「こんな男らしくて自信過剰な奴なんてグラッセじゃない!! シャオだって対して強くもない口煩い小姑な奴よ!! 早くヘタレでザコでヒロインな二人に戻りなさいっ!!!」
ソラ、ムーン、リズの感想に、シラッセに纏っている気が急速に下がる。
そのまま全身を光らせると、合体が解除されたのかグラッセとシャオが暗いオーラで両手を地面に付けていた。
「ヒロイン…」
「強くもない…」
リズの言葉にショックを受けた可哀想な二人に誰もが同情する中、【そっくりさん】だけは無視していた。
「よーし、次は私達の番だね! ソラ、最後なんだからちゃんと決めてね!」
「もちろん!!」
「こうなったら大技で決めるぞ!!」
自信満々にソラとリクが答えると、キーブレードを持って駆け出す。
そんな時、ウラノスとスピカは何やらコソコソと話していた。
(ほれ。頼まれてた奴持って来たぜ)
(ありがと……あの子達には悪いけど、ここからはゼアノート達のように邪魔させて貰わないとね…)
スピカは目を光らせるなり、ウラノスから貰った宝玉のような物を後ろに隠す。
同時に、ソラとリクがキノコへ攻撃した。
「ラグナ――!!」
「ダークバラ――!!」
(変身魔法!! トー○!!)
スピカが宝玉――マテ○アに魔力を込めるなり、一つの魔法を発動する。
同時に、攻撃しようとした二人の足元から怪しい煙が立ち上った。
「何だ、あの煙!?」
「ソラ!?」
「リク!?」
ヴェントゥスが驚く横で、カイリとシオンが叫ぶ。
だが、二人の心配を余所に煙はすぐに払われた。
彼らの目に飛び込んだのは、床に落ちている二人のキーブレード。その傍には…。
「「…ゲコ?」」
『『『カエルーーーーーっ!!?』』』
二匹のカエルに変わってしまったソラとリクに、誰もが絶叫を上げる。
もちろん、姿を変えられた二人も例外ではなかった。
「ゲコ!? ゲココ!?」
「ゲゴゲゴ!? ゲーゴ!?」
何を言ってるかは分からないが、パニックになっているようで二匹はワタワタと鳴きながら手足をバタつかせている。
「よし…今ならあいつを殺れるチャンスだ…!!」
「ええ…妾も心置きなく奴を始末出来るわ…!!」
((止めるべきか、止めないべきか…))
黒い笑みを浮かべて武器を取るレイシャとゼノに、ザルディンとレクセウスは難しい顔で腕を組んだとか。
「と、とにかくエスナで治さなきゃ!?」
そんな中、ヴェンは二人を戻そうとキーブレードを取り出す。
だが、成り行きを見ていたレイアが突然大声を上げた。
「いいえ!! こういう魔法はですね、『乙女のキッス』を使えば治せるんです!! カイリさん、オパールさん!! 今こそ愛の力をぉ!!」
「「あ、愛ぃ!?」」
このレイアの爆弾発言に、嫌でも二人の顔が真っ赤になる。同じように二匹のオス&メスカエルも全身がほんのり赤くなっている。
「ハン。愛だか何だか知らんが、レイシャ。あんなツルペタの言葉無視してさっさと始末――」
「ゼノさぁん…? ちょっと愛や胸について裏で語り合いましょうか…!!」
レイアはゼノに負けないくらいの黒いオーラを纏い、怪しく目を光らせる。
いつもとは様子の違うレイアに、隣のチームであるガイアが勇気を出して話しかけた。
「ねえ、レイアちゃん…? もしかして、こう言うの好きなの?」
「はいっ!! 大好物でっす!!!」
「も、燃えてますね…」
全身だけでなく目からも炎を出すレイアに、ジェダイトがどうにか言葉を返す。
「もちろんです!! 最初の【開闢の宴】では恋する人達との会合は少なく、ようやく『合同編』で夢旅人キャラのカップルを見れると思ったのに、私とクウさんばっかり弄られる上に、そんな暇も時間もこの作者は与えてくれなかったんですからぁ!!」
作者であるナナの不満を吐き出しつつも、レイアの燃える目はカイリ達にしっかりと向けられている。
レイアから放たれる期待の眼差しに、オパールは更に顔を真っ赤にして動揺した。
(あぁ…リリリリクと、キキキキススス…!! やりたいけどやりたくない…ううんこういうのは人工呼吸の一環だと思えば…!!)
「オパール。分かってると思いますが、あのチームにはいかせませんからね?」
「クゥッ…!!」
肩を掴んで忠告するゼクシオンに、悔しそうにオパールは歯軋りした。
「な、何だかよく分からないけどカイリ! ソラにキスして元に戻さないと!」
「わ、私ぃ!? いい、いきなり言われても…!!」
「えーと、とにかくリクとキスすればいいんだよね? あたしやってくるー!」
急かすナミネに両手を振るカイリに対し、シオンは真っ直ぐにリクの元へと向かう。
乙女のキスで、リクを元に戻す為に。
「オパール、行ってよし」
「させるくぅあぁぁぁーーーーーーーーーっ!!!!!」
ゼクシオンが手を放すと同時に、オパールはシオンへと飛び掛かった。
「え、ちょ!?「ファイヤストーム!! フラッシュフラッド!!「アクエリアスフィア」」いやああぁぁああぁ!!?」
「ん? 今何か別の魔法が加わった気が…」
シオンを中心に火柱と水柱が襲い掛かる中、途中で水の球体が現れたのをカヤは見逃さなかった。
こうして誰もソラとリクを元に戻せないまま、時間は8秒を切ってしまう。
「おい、もう時間僅かだぞ!? ルキル、呑気にノートに落書きしてないであいつらの収集を――!!」
「大丈夫だ、問題ない」
慌てるヴァニタスに対し、ルキルは静かに答えると共に開いていた一冊の黒いノートを閉じる。
直後、残り一秒となった所でキノコがHP0となって床に倒れた。
「急にキノコが倒れたぁ!?」
「倒れたと言うか…昇天した?」
突然の事にヴェンが目を見開く横で、キノコの頭から魂の様な何かが浮かび上がるのが見えたロクサス。
この奇怪な現象に、ヴァニタスは恐る恐るルキルに問いかけた。
「な…何をしたんだ…?」
「俺は何もしてないさ。心臓麻痺でも起こしたんだろ」
「あれ? ルキルの持ってるノートって、確かデスノむごっ!?」
リズが何かを言おうとしたが、ムーンの手で封じられた。
「でもよかった、私達も20点は獲得出来たね」
「それより、こんな事した人物は…!!」
ナミネがホッと息を吐くと、カイリは思い出したように【ダブル作者】と【悪役軍団】のメンバーを睨みつける。
やってもいない事で疑われ、慌ててナナとアンセムが弁解する。
「え!? 違う!! これは私達じゃない!?」
「そうだ、濡れ衣だ!!」
「黙れ、この外道ども!!」
「あんた達以外に、誰がするっていうのよ!?」
『『誤解だー!!!』』
ロクサスとシオンが怒鳴ると、メンバー全員が無実を訴える。
そんな中、真の元凶はと言うと…。
「どうだ、この紅茶? ガイアが入れてくれたハーブティーなんだが」
「とても美味しいわ。気が利くのね、ウラノス」
(((あんたらが元凶かよ…!!)))
こんな時に優雅にティータイムをするウラノスとスピカに、残りの人達は心の中で呟いた。
「それより、次は私達の番だけど…どうする?」
「正直、技は尽きてしまっているのが現状だ…」
「アタイも数少ない技は全部使ったし…! こうなったら、直接攻撃で――!」
ラクシーヌとサイクスが頭を押さえ、誰もが技を使い切った状況に追い詰められる。
仕方なくラックが鎌槍を握っていると、ウィドが片手を上げた。
「いえ、一つ方法を思いつきました」
「本当か…?」
ウィドの案の所為で被害者となったアクセルが訝しる中、何故か作者達に目を向けた。
「そこの作者。攻撃さえしなければ、他のメンバーは何をしても構いませんか?」
「へ? どういう事?」
「どうせこれが最後なんです。それなら、マールーシャとラックの扱う花弁で美しく演出したいなー、と思いまして♪」
(あれ、絶対何か企んでますよ…)
(私も産み親ながらそう思う…)
笑顔を見せて訳を話すウィドに、リラとナナはコソコソと言い合った。
「例え攻撃じゃなくても、ルール上は禁止です。まあ、どちらか一人が使うのなら全然構わないけど」
作者だって馬鹿ではない。すぐにナナは提案を斬り捨てると、ウィドは内心で舌打ちした。
(やはり駄目か…アクセルの炎の牢獄も使ってしまっているし、妨害用に手に入れた『アレ』を使う訳には行かない。一人の力では隠せないからと言って姉さんのような事をすれば許可を取ってないから作者が煩いし、声優ネタも正直微妙な所ですし――ん? そう言えば…)
悶々と打開策を考えてた時、ウィドの脳裏に何かが閃く。
そんな中、黙り込んだウィドに不安を感じてアクセルが声をかけた。
「お、おい…さっきからずっと黙ってるが、まさか万策尽きたとか言うんじゃないよな?」
「万策尽きた? この私が?」
ニヤリと笑みを浮かべると、腰に付けている剣を取るウィド。
そのまま両手で剣を握りキノコに向かって突き出すと、指示を出した。
「私がキノコに大技で攻撃します。万が一があるので……その時はマールーシャ、ラスボスであるあなたに任せます」
「大技? お前も技は使い切った筈では…」
不可解な作戦にマールーシャが訝しる中、ウィドは抜刀することなくその場にしゃがみ込んで床に剣を突き刺す。
直後、キノコが巨大な氷結の中に閉じ込められると共に部屋全体を冷気が包み込んだ。
「凍れ――煉獄氷夜」
「なぁ…!?」
見た事も無い大技にサイクスが絶句していると、ウィドは剣と鞘をそれぞれ両手に持ってキノコに背を向ける。
その状態で背中越しに鞘に刃を収めると、キノコを閉じ込めている氷結が音を立てて破壊された。
「まだだ、マールーシャ!!」
「はああぁ!!!」
それでも僅かに体力が残っていたようで、ウィドの言葉にすぐにマールーシャがワープすると共に鎌を振るってキノコを攻撃する。
通常コンボだがHPを0にするには十分で、キノコから花火が打ちあがった。
「やった!! アタイらも満点獲得だよ!!」
「まさかあんな大技持ってたなんて…」
ラックとラクシーヌが思い思いに感想を言っていると、何処か焦った様子でナナが身を乗り出した。
「ちょっとぉ!? その技、ブレイ○ルーのジ○が使うアスト○ル○ートじゃん!! あんた何でそんな技が――!!」
「いやー、よくよく思い出したら私……本編のあとがきで使ってましたからー♪」
「そうだったぁぁぁ!!?」
笑顔で理由を答えるウィドに、ナナは頭を押さえて絶叫を上げる。
【開闢の宴】での最終章のあとがき(前編)で、技名は出さなかったもののウィドは確かにその技を使ってナナを制裁していた。
一本取られて悔しがるナナに、あとがき設定を逆手に取ったウィドに向けてチーム仲間から拍手が送られたのは言うまでもない。
「いつものグラッセじゃない…」
僅か数秒で悪役諸共キノコに満点を与えたシラッセの強さに、ヴィクセンはもちろん、カイリでさえも唖然とする。
もちろん他の人達も茫然とする中、シラッセは腕を組んで笑い出した。
「フフ……ハハハ、アーハハハハっ!!! どうだ、これが俺の真の力だ!! 文句がある奴は前に出て来い、あいつらみたいに返り討ちにしてやる!!!」
「な、なんか性格変わってない?」
「そういや、フュー○ョンって本人とは別人格になるって話だよなぁ…」
本人の性格からは考えられない傲慢さを見せるシラッセに、元ネタの事をテルスとクウが言い合う。
「でもさー、変身する時って結構ダサいポーズだったよな」
グサリ
「名前もなんかシラスっぽいし」
グサグサッ!
「こんな男らしくて自信過剰な奴なんてグラッセじゃない!! シャオだって対して強くもない口煩い小姑な奴よ!! 早くヘタレでザコでヒロインな二人に戻りなさいっ!!!」
ソラ、ムーン、リズの感想に、シラッセに纏っている気が急速に下がる。
そのまま全身を光らせると、合体が解除されたのかグラッセとシャオが暗いオーラで両手を地面に付けていた。
「ヒロイン…」
「強くもない…」
リズの言葉にショックを受けた可哀想な二人に誰もが同情する中、【そっくりさん】だけは無視していた。
「よーし、次は私達の番だね! ソラ、最後なんだからちゃんと決めてね!」
「もちろん!!」
「こうなったら大技で決めるぞ!!」
自信満々にソラとリクが答えると、キーブレードを持って駆け出す。
そんな時、ウラノスとスピカは何やらコソコソと話していた。
(ほれ。頼まれてた奴持って来たぜ)
(ありがと……あの子達には悪いけど、ここからはゼアノート達のように邪魔させて貰わないとね…)
スピカは目を光らせるなり、ウラノスから貰った宝玉のような物を後ろに隠す。
同時に、ソラとリクがキノコへ攻撃した。
「ラグナ――!!」
「ダークバラ――!!」
(変身魔法!! トー○!!)
スピカが宝玉――マテ○アに魔力を込めるなり、一つの魔法を発動する。
同時に、攻撃しようとした二人の足元から怪しい煙が立ち上った。
「何だ、あの煙!?」
「ソラ!?」
「リク!?」
ヴェントゥスが驚く横で、カイリとシオンが叫ぶ。
だが、二人の心配を余所に煙はすぐに払われた。
彼らの目に飛び込んだのは、床に落ちている二人のキーブレード。その傍には…。
「「…ゲコ?」」
『『『カエルーーーーーっ!!?』』』
二匹のカエルに変わってしまったソラとリクに、誰もが絶叫を上げる。
もちろん、姿を変えられた二人も例外ではなかった。
「ゲコ!? ゲココ!?」
「ゲゴゲゴ!? ゲーゴ!?」
何を言ってるかは分からないが、パニックになっているようで二匹はワタワタと鳴きながら手足をバタつかせている。
「よし…今ならあいつを殺れるチャンスだ…!!」
「ええ…妾も心置きなく奴を始末出来るわ…!!」
((止めるべきか、止めないべきか…))
黒い笑みを浮かべて武器を取るレイシャとゼノに、ザルディンとレクセウスは難しい顔で腕を組んだとか。
「と、とにかくエスナで治さなきゃ!?」
そんな中、ヴェンは二人を戻そうとキーブレードを取り出す。
だが、成り行きを見ていたレイアが突然大声を上げた。
「いいえ!! こういう魔法はですね、『乙女のキッス』を使えば治せるんです!! カイリさん、オパールさん!! 今こそ愛の力をぉ!!」
「「あ、愛ぃ!?」」
このレイアの爆弾発言に、嫌でも二人の顔が真っ赤になる。同じように二匹のオス&メスカエルも全身がほんのり赤くなっている。
「ハン。愛だか何だか知らんが、レイシャ。あんなツルペタの言葉無視してさっさと始末――」
「ゼノさぁん…? ちょっと愛や胸について裏で語り合いましょうか…!!」
レイアはゼノに負けないくらいの黒いオーラを纏い、怪しく目を光らせる。
いつもとは様子の違うレイアに、隣のチームであるガイアが勇気を出して話しかけた。
「ねえ、レイアちゃん…? もしかして、こう言うの好きなの?」
「はいっ!! 大好物でっす!!!」
「も、燃えてますね…」
全身だけでなく目からも炎を出すレイアに、ジェダイトがどうにか言葉を返す。
「もちろんです!! 最初の【開闢の宴】では恋する人達との会合は少なく、ようやく『合同編』で夢旅人キャラのカップルを見れると思ったのに、私とクウさんばっかり弄られる上に、そんな暇も時間もこの作者は与えてくれなかったんですからぁ!!」
作者であるナナの不満を吐き出しつつも、レイアの燃える目はカイリ達にしっかりと向けられている。
レイアから放たれる期待の眼差しに、オパールは更に顔を真っ赤にして動揺した。
(あぁ…リリリリクと、キキキキススス…!! やりたいけどやりたくない…ううんこういうのは人工呼吸の一環だと思えば…!!)
「オパール。分かってると思いますが、あのチームにはいかせませんからね?」
「クゥッ…!!」
肩を掴んで忠告するゼクシオンに、悔しそうにオパールは歯軋りした。
「な、何だかよく分からないけどカイリ! ソラにキスして元に戻さないと!」
「わ、私ぃ!? いい、いきなり言われても…!!」
「えーと、とにかくリクとキスすればいいんだよね? あたしやってくるー!」
急かすナミネに両手を振るカイリに対し、シオンは真っ直ぐにリクの元へと向かう。
乙女のキスで、リクを元に戻す為に。
「オパール、行ってよし」
「させるくぅあぁぁぁーーーーーーーーーっ!!!!!」
ゼクシオンが手を放すと同時に、オパールはシオンへと飛び掛かった。
「え、ちょ!?「ファイヤストーム!! フラッシュフラッド!!「アクエリアスフィア」」いやああぁぁああぁ!!?」
「ん? 今何か別の魔法が加わった気が…」
シオンを中心に火柱と水柱が襲い掛かる中、途中で水の球体が現れたのをカヤは見逃さなかった。
こうして誰もソラとリクを元に戻せないまま、時間は8秒を切ってしまう。
「おい、もう時間僅かだぞ!? ルキル、呑気にノートに落書きしてないであいつらの収集を――!!」
「大丈夫だ、問題ない」
慌てるヴァニタスに対し、ルキルは静かに答えると共に開いていた一冊の黒いノートを閉じる。
直後、残り一秒となった所でキノコがHP0となって床に倒れた。
「急にキノコが倒れたぁ!?」
「倒れたと言うか…昇天した?」
突然の事にヴェンが目を見開く横で、キノコの頭から魂の様な何かが浮かび上がるのが見えたロクサス。
この奇怪な現象に、ヴァニタスは恐る恐るルキルに問いかけた。
「な…何をしたんだ…?」
「俺は何もしてないさ。心臓麻痺でも起こしたんだろ」
「あれ? ルキルの持ってるノートって、確かデスノむごっ!?」
リズが何かを言おうとしたが、ムーンの手で封じられた。
「でもよかった、私達も20点は獲得出来たね」
「それより、こんな事した人物は…!!」
ナミネがホッと息を吐くと、カイリは思い出したように【ダブル作者】と【悪役軍団】のメンバーを睨みつける。
やってもいない事で疑われ、慌ててナナとアンセムが弁解する。
「え!? 違う!! これは私達じゃない!?」
「そうだ、濡れ衣だ!!」
「黙れ、この外道ども!!」
「あんた達以外に、誰がするっていうのよ!?」
『『誤解だー!!!』』
ロクサスとシオンが怒鳴ると、メンバー全員が無実を訴える。
そんな中、真の元凶はと言うと…。
「どうだ、この紅茶? ガイアが入れてくれたハーブティーなんだが」
「とても美味しいわ。気が利くのね、ウラノス」
(((あんたらが元凶かよ…!!)))
こんな時に優雅にティータイムをするウラノスとスピカに、残りの人達は心の中で呟いた。
「それより、次は私達の番だけど…どうする?」
「正直、技は尽きてしまっているのが現状だ…」
「アタイも数少ない技は全部使ったし…! こうなったら、直接攻撃で――!」
ラクシーヌとサイクスが頭を押さえ、誰もが技を使い切った状況に追い詰められる。
仕方なくラックが鎌槍を握っていると、ウィドが片手を上げた。
「いえ、一つ方法を思いつきました」
「本当か…?」
ウィドの案の所為で被害者となったアクセルが訝しる中、何故か作者達に目を向けた。
「そこの作者。攻撃さえしなければ、他のメンバーは何をしても構いませんか?」
「へ? どういう事?」
「どうせこれが最後なんです。それなら、マールーシャとラックの扱う花弁で美しく演出したいなー、と思いまして♪」
(あれ、絶対何か企んでますよ…)
(私も産み親ながらそう思う…)
笑顔を見せて訳を話すウィドに、リラとナナはコソコソと言い合った。
「例え攻撃じゃなくても、ルール上は禁止です。まあ、どちらか一人が使うのなら全然構わないけど」
作者だって馬鹿ではない。すぐにナナは提案を斬り捨てると、ウィドは内心で舌打ちした。
(やはり駄目か…アクセルの炎の牢獄も使ってしまっているし、妨害用に手に入れた『アレ』を使う訳には行かない。一人の力では隠せないからと言って姉さんのような事をすれば許可を取ってないから作者が煩いし、声優ネタも正直微妙な所ですし――ん? そう言えば…)
悶々と打開策を考えてた時、ウィドの脳裏に何かが閃く。
そんな中、黙り込んだウィドに不安を感じてアクセルが声をかけた。
「お、おい…さっきからずっと黙ってるが、まさか万策尽きたとか言うんじゃないよな?」
「万策尽きた? この私が?」
ニヤリと笑みを浮かべると、腰に付けている剣を取るウィド。
そのまま両手で剣を握りキノコに向かって突き出すと、指示を出した。
「私がキノコに大技で攻撃します。万が一があるので……その時はマールーシャ、ラスボスであるあなたに任せます」
「大技? お前も技は使い切った筈では…」
不可解な作戦にマールーシャが訝しる中、ウィドは抜刀することなくその場にしゃがみ込んで床に剣を突き刺す。
直後、キノコが巨大な氷結の中に閉じ込められると共に部屋全体を冷気が包み込んだ。
「凍れ――煉獄氷夜」
「なぁ…!?」
見た事も無い大技にサイクスが絶句していると、ウィドは剣と鞘をそれぞれ両手に持ってキノコに背を向ける。
その状態で背中越しに鞘に刃を収めると、キノコを閉じ込めている氷結が音を立てて破壊された。
「まだだ、マールーシャ!!」
「はああぁ!!!」
それでも僅かに体力が残っていたようで、ウィドの言葉にすぐにマールーシャがワープすると共に鎌を振るってキノコを攻撃する。
通常コンボだがHPを0にするには十分で、キノコから花火が打ちあがった。
「やった!! アタイらも満点獲得だよ!!」
「まさかあんな大技持ってたなんて…」
ラックとラクシーヌが思い思いに感想を言っていると、何処か焦った様子でナナが身を乗り出した。
「ちょっとぉ!? その技、ブレイ○ルーのジ○が使うアスト○ル○ートじゃん!! あんた何でそんな技が――!!」
「いやー、よくよく思い出したら私……本編のあとがきで使ってましたからー♪」
「そうだったぁぁぁ!!?」
笑顔で理由を答えるウィドに、ナナは頭を押さえて絶叫を上げる。
【開闢の宴】での最終章のあとがき(前編)で、技名は出さなかったもののウィドは確かにその技を使ってナナを制裁していた。
一本取られて悔しがるナナに、あとがき設定を逆手に取ったウィドに向けてチーム仲間から拍手が送られたのは言うまでもない。