部屋割り&温泉編・1
部屋決めゲームも終わり、いよいよ女性陣にとって待ちに待った温泉が…。
「じゃ、早く着替えましょ♪」
そう言うなり、リズはその場で上着を脱ぎだした。
『『『ブフゥ!!?』』』
「リズ何やってるのよーーーー!!?」
健全な男性陣達が噴き出しながら背中を向ける中、ガイアが大声で下着姿のリズに叫ぶ。
「何って着替え」
「脱衣所で着替えなさい!!」
「えー、だって面倒なんだもん。いいじゃない、何処で着替えようが一緒でしょ?」
『『『一緒じゃない!!!』』』
顔を赤くしてアクアが注意するものの、リズは笑顔でとんでもない事を言い放つ。
これには女性陣達がツッコミを入れると、ラックが脱いだ上着を掴んだ。
「とにかく、脱衣所まで移動する!! 唯でさえ犯罪まがいの事をやらかすバカが四人もいるのよ!!」
「大丈夫、その前に撃退するから!!」
「威張って言うセリフじゃないわよ!!」
ラクシーヌも合わさって怒鳴っていると、冷え切った目をしたスピカがリズの前へと出た。
「リズ、話を聞きなさい」
「何よ、スピカ?」
「いい? ちゃんとした場所で着替えないと…――あそこの四人。いえ、バカ達と同じ目に遭わせるわよ?」
スピカの指した方には――巨大な氷結の中で氷漬けとなったスケベ四人の姿が。
これにはリズだけでなく全員が言葉を失っていると、レイアも杖を持ちながら黒い笑みを浮かべる。
「リズさんがそー言う事してると、彼女である私達が困るんですからねー?」
「わ、分かりました…!! ちゃんと、脱衣所で着替えます…!!」
二人の恐ろしさに、さすがのリズもコクコクと頷く。
こうして場が収まると、ナナが話を進めた。
「それでは、ゲームで決まった部屋に荷物置いてから温泉にしましょうか」
「そう言えば、決まった部屋ってチームのメンバーと一緒じゃないといけないのか?」
チームメンバーが大人数であるルキルが問うと、リラは首を横に振った。
「いえ、そんな事はないですよ。ゲームで決まった部屋のランクが同じなら、誰と一緒でも構いません」
「部屋数は多いから、その辺は自由にしていいよ。では、温泉まで一旦解散〜!」
ナナの解散の合図に、それぞれのキャラは荷物を持って割り当てられた部屋へと向かい出した。
各自割り当てられた部屋へと入った所で、それぞれの部屋を覗いてみよう。
まずは、【竹の間】。一般の旅館にあるような、普通のテーブルに普通の座布団付きの椅子、そして普通の薄型テレビとまさに普通尽くしの部屋だ。
そんな部屋に、ソラとカイリは荷物を置いて寛いでいた。
「どんな部屋かと思ったら、意外と普通の部屋だね」
「はー、それにしても温泉楽しみだよなー!!」
そんな会話をしていると、突然部屋の戸が開けられた。
「二人とも、いるー?」
そう言って顔を覗かせたのは、未だに荷物を持つヴェンだった。
「あれ? ヴェン、どうしたの?」
「ごめん、カイリ。良かったら俺も二人の部屋でいいかな? ヴァニタスとは敵関係だし、ゼクシオン達はあんまり関係性ないし、テラもアクアも別の部屋だから…」
「別にいいよ! な、カイリ?」
「う、うん…ソラが言うなら」
笑顔で承諾するソラに対し、カイリはやや複雑な表情を浮かべる。乙女心としては、邪魔者はいて欲しくないようだ。
そんなカイリの気持ちなど知らずにソラはヴェンを上がらせ、楽しそうに話をしていた。
「ところで、リクは一緒じゃないの? 三人って仲良しだし、てっきり一緒の部屋だと思ってたけど?」
そんなヴェンの疑問に、二人はどう言う訳か黙り込んだ。
「ん」
「何この筒?」
いきなりソラが手渡した何の変哲もない筒に、ヴェンは首を傾げる。
すると、カイリはどう言う訳か隣部屋を隔てる壁を指した。
「ん」
「もしかして…こうすればいいのか?」
恐る恐る筒を耳に当てながら、隣部屋を盗み聞きするようにくっつけた。
『何するのよー!!?』
『だまらっしゃい!! そんな怪しい液体リクに飲ませるなんて明らかに殺す気でしょ!?』
『怪しい液体ってなによ!! そこのティーパックで入れた緑茶なんだから!!』
『オ、オパール…助かる事には、助かるんだが…どうして、俺とシオンの部屋に…?』
『ッ――り、理由は何だっていいでしょ!!? とにかく、あたしもこの部屋にいる事に決めたから!!!』
『決めたって…何勝手に…』
『うっさい!! 危険人物がわんさかいる上に、あんた未だに女のままなのよ!! ここは年長のあたしがビシッと――!!』
『すっかり忘れてたな。シオン、そのポッドからお湯を注いでくれ』
『はーい』
『人の話を聞けぇぇぇーーーーーーー!!!!!』
『ちょ、待てオパール!!? 熱湯はさすがにあじゃああぁ』
リクの悲鳴が聞こえた所で、即座に筒から耳を話した。
「……一緒にいない理由がよく分かりました」
さてさて、そんな彼らの部屋から離れた別の【竹の間】では。
「ごめんな、ウラノス。折角の兄妹水入らずなのに入り込んで…」
「気にするなよ、カヤ。知り合いが誰もいないんじゃ仕方ないさ」
「それにウラノスお兄ちゃんだけじゃなく、カヤとも一緒なんて久々だしね」
お互い知り合いと言う事で、一緒の部屋となったカヤ、ウラノス、ガイアの三人。
荷物を置いて一段落し、備え付けの緑茶で一息吐いていると、カヤはある事を思い出した。
「そういや、お前らと一緒のチームだった二人は?」
「ああ。スピカもエンも俺らに気を使ったようで、別の部屋に泊まる事にしたんだとよ」
「別の部屋と言えば、テルスお姉ちゃん達が割り当てられた【梅の間】ってどんなお部屋なんだろうね…」
そんなガイアの疑問に答える為、【梅の間】へと場所を映しましょう。
「梅って言うより、ボロの間じゃないか…」
「こんな部屋で寝ろと言うの、あの作者ども…!!」
指定された部屋の戸を開けるなり、レイシャとゼノは怒りで全身を震わせる。
何せ部屋中に埃が溜まっており、あちこちにクモの巣も張ってある。壁だけでなくテーブルなどの家具の一部が欠けていたりと、掃除をほったらかした状況となっていた。
怒る子供二人に対し、大人であるレクセウスとザルディンは大きく溜息を吐いていた。
「…掃除をする必要がありそうだな」
「そうだな…レイシャ、ゼノ。お前達も手伝って――」
「何故妾がそんな事をせねばならない? そんな汚れた仕事、貴方達だけでやっておきなさい。さ、温泉の準備も終わったし一足先に行くとしようか」
そう言うなり、ゼノは自分の荷物を持って集合場所へと向かって行った。
「お、おいゼノ!!」
「仕方ない、俺達だけで終わらせるぞ」
手伝う気などまったくないゼノに、レクセウスはザルディンを引き止めつつ近くにあったロッカーから掃除用具を取り出す。
「…あれ? ところでレイアは?」
レイシャはこの場に居る筈の人物がいつの間にかいなくなってる事に気付く。
「ついさっき、『こんなに汚いお部屋なら、クウさんのお部屋をお掃除しませんと!!』と言って、勝手に俺の6本の箒を取って出て行ったぞ」
((何時の間に…))
ザルディンの回答に、男二人はレイアの行動力に唖然とした。
そんな梅の間とは反対の【松の間】では…。
「松なだけあって、結構いい部屋じゃなーい!」
「ママーン、このお菓子美味しいよー!」
「備え付けの饅頭も上手いぜー!」
「お前達、寛ぐのはいいが荷物を整理してからにしろ」
一級品のテーブルに備え付けられた和菓子に、ラクシーヌ、リズ、ムーンが太鼓判を打っていた。近くでは、サイクスが四人分の荷物の整理をしている。
テーブルから座布団等の家具は全て一級品。しかも冷蔵庫も付いていて飲み物もジュースからお酒と一通りそろっている。更に大きな窓からの景色も抜群だ。
こんな豪華な部屋に泊まれるのだ。誰もがリズ達みたいに浮かれてもおかしくないだろう。
―――たった一部屋を除いて。
「――しょうがないよな。本編の設定上俺なんてあいつらの輪の中にすら入れない存在なんだ。きっと近い将来、父さんみたいに俺の記憶は皆の中から消えていく定めなんだ…!!」
「グラッセ…生きていればいいことあるよ…」
負のオーラをまき散らしながらテーブルに俯せになるグラッセを、シャオがどうにか肩を揺すって慰める。
一級品の部屋だと言うのに【梅の間】のように空気が淀んでいると、同じ部屋にいたウィドがシャオの肩を叩いた。
あの黒い笑みで。
「シャオ、無理して慰めても駄目ですよ。仮にも彼は私達の作者すらもフォローを諦めて認めた《ヒロイン》と言う立場なんです。最近のヒロインはいろいろと攫われれ利用されたり闇落ちになったりがありますからねぇ。近い将来、グラッセもそうなる可能性があるでしょう。どうです? この前オルガに無理やり押し付けられたこのアーン○ァルの衣装でも着てみます? これさえ着れば《ヒロイン》のレッテルは剥がれますよ。代わりに《変態》のレッテル張られるでしょうけどぉ…」
「うわああああああああああああん!!!!!」
「グラッセが絶望のあまりに発狂したぁぁぁ!!?」
こうして部屋の一角が騒がしくなる中、グラッセ達と一緒の部屋にいたテラとアクアは顔を引き攣らせていた。
「…どうして、ウィドは俺達の部屋に来たんだろうか…?」
「テラ、私達だけ部屋を変えましょう…精神がおかしくなりそうだわ…!」
「ん? 今誰かの泣き声が聞こえたような…?」
荷物を纏め終わった時に聞こえた何処かからの泣き声に、リラが顔を上げる。
作者達がいるのは極上とも言える【スイートルーム】。液晶大画面のテレビはもちろん、フカフカのベットにソファまでもが取り揃えている。しかもこちらは様々な地方のお菓子だけでなく、新鮮な果物まで備え付けられている。
「それにしても、テレビはでかいし、景色も最高。果物まであるし、凄く豪勢な部屋ですねー。そう思いませ――」
これから過ごす部屋に笑顔になってリラが振り返った瞬間、ビシリと固まった。
「あの、ナナさん…何でここに来てパソコンなんか…?」
そこには、ナナがテーブルに置いたパソコンの画面を見ながら、カチカチとマウスを高速で動かしていたからだ。
「ちょっと黙ってて!! KHχの一周年イベント、豪華なアイテムがわんさかと貰えるんです!! わざわざレイズドローでいらないキャラのカードまで引き寄せているんです、何としてでもゲットしなくてはぁぁぁ…!!!」
「ナナさん…思考が廃人レベルなんですけど…?」
さて、全ての部屋を見た所で…旅館の外へと視点を映そう。
「どうにかテントは完成したが…何なのだ、これは…!!!」
「布は汚れ、穴は空いており、おまけに寝袋も無しとは…あの作者共、儂らを何だと思っておるぅ…!!!」
アンセムとマスター・ゼアノートは、完成したテントに不満を露わにしていた。
何せ完成したテントは穴だらけ、布も錆だらけの金具で汚れており、その金具の所為でキィキィと歯が浮く音をたてている。
「しかも、今の時期は夏ぅ…さすがの私でもぉ、干からびるぞぉぉぉ…」
ジリジリと照りつける太陽。地面から発せられる熱によって生み出される陽炎。ラスボスを務めたゼムナスも汗だくだ。
少なくとも、気温は30℃は余裕で超えている。老人や子供にとっては危険信号だ。
「こんな所で寝るくらいなら、旅館の廊下で寝た方がまだマシだ…!!」
ディスティニーアイランド出身者であるゼアノートも、暑さには勝てないようで全身が真っ赤になっている。
このように、高すぎる温度は身体に害をきたします。良い子の皆は決して真夏日の中で眠ってはいけません。無理をせず、冷房や扇風機等、窓を開けるなどして部屋の温度を調整しましょう。
最下位の四人は、夜は旅館締め出されるのでそんな権利はないけどね♪
「「「「鬼か貴様はぁぁぁーーーーーーーーっ!!!??」」」」
最後の地の分の宣告に、四人全員が涙を流して叫んだそうな。
■作者メッセージ
本編無視しての、こっちのギャグ作品を投下って何でしょうかね私…。
いや、理由はあります。ただ今KHχでは一周年記念と言うイベントがありまして…そのネタを出す為に本編よりも先にこっちを出してしまいました(笑)
更新は遅くなると思いますので、出来れば長い目で待ってくれると嬉しいです。
いや、理由はあります。ただ今KHχでは一周年記念と言うイベントがありまして…そのネタを出す為に本編よりも先にこっちを出してしまいました(笑)
更新は遅くなると思いますので、出来れば長い目で待ってくれると嬉しいです。