第一日目・2
「グラッセ、早く!! よーし一番乗りー!!」
「ぐえぇ!? ちょ、リズ…首が閉まって…!!」
まず初めにバスから降りて来たのは主人公であるリズ。そして、彼女に襟首を掴まれている幼なじみのグラッセだ。
何処から見ても仲が良い(?)二人に、いち早く友達であるシャオが声をかける。
「久しぶりだね! リズ、グラッセ!」
「あんた、誰だっけ?」
シャオを見てストレートに聞くリズに、思わずグラッセもその場でズッコケた。
「おいリズ、あれだけ暴れてたのにまた忘れたのかよ!!」
「そうだよ、シャオだよ!! いい加減覚えてよ!?」
「冗談よ、冗談♪ シャオ、久しぶり!」
二人がツッコミを入れると、リズは改めて笑顔を浮かべて挨拶する。
こうして三人が再会を喜んでいると、バスからロクサス、ナミネ、シオンが降りてきた。
「ロクサスとナミネもよく来たな!」
「シオンもいらっしゃい。今日はゆっくりして行ってね」
「ああ、少しの間だけどお言葉に甘えさせて貰うな」
「えっと…しばらくお世話になります」
「んー、気持ちいいー! 海もいいけど、山も素敵だねー!」
ソラとカイリが歓迎の言葉を送ると、それぞれ三人は返事を返す。
「来たぜー、親父!」
次に大きなスポーツバックを肩にかけてムーンがバスから降りると、笑顔でリクへと駆け寄っていく。
そんな未来の子供に、リクも笑みを浮かべて出迎える。
「ムーン、よく来――」
その時、バックの紐を持つムーンの手首が突然掴まれた。
まるで犯人を捕まえるように手首を掴んだオパール。そうして不審な目で睨みつけているので、ムーンの笑顔も引き攣る。
「オ、オパールさん…!? どうして、俺の手首を押えてるんですか…!?」
「押えるに決まってるでしょう…が!」
「ぐあっ!?」
ムーンの手首を軽く捻り、後ろに回し込む様に拘束すると持っていたバックがずり落ちた。
―――ゴドン!
地面に落ちたバックから、何やら鈍い金属音が響く。
よく見ると、バックの底には手を入れられる穴が開いており…その中には武器であるリジェクトソードが入っていた。
「…あんた、リクに何をしようとしたのかしら?」
「オ、オパールさん。俺前々からオパールさんの事を美しくて綺麗な人だと思っていたんですよでもそんな外見だけじゃなくって中身も優しくて面倒見が良くて強くて逞しい世間から見たら正に理想の女性と言うかあなたの様な人が母親ならきっと親子で仲良く腕の関節が折れる程に痛いぃぃぃ!!!??」
長々とオパールを褒めちぎる作戦が失敗し、更に手首を動かして腕の関節を捻り上げられてしまった。
「ちょっとー、誰かペンチ持って来てー」
「俺が悪かったです!!! もうしませんから手を放して!!!」
「チッ…」
必死でムーンが謝ると、オパールは渋々と手首を放して関節技を解いた。
(いってぇ…どうにか助かった…!! とにかく、次はあの女のいない所でリクを始末して…!!)
関節技を極められたと言うのに、反省する事なく物騒な事を考えるムーン。
その近くでは、リズが持って来たペンチをオパールに渡していた。
「ねえ、オパール。ペンチを使って何をするつもりだったの?」
「…生爪…!」
((この作品でリクを始末するのは諦めよう…!!))
呪詛のような恐ろしい呟きに、ムーンだけでなくロクサスまで震えあがる。どんな理由があれ、恋する乙女は決して敵に回してはいけない。
何がともあれ、オパールのおかげでこの作品内でのリクの身の安全は最低限守られたのであった。
「おい…何でムーンはあんな事を? 闇に操られているとはいえ、新しい小説じゃちゃんとした親子のはずじゃ…?」
「……いろいろあるんだよ」
「何があるんだ!?」
遠い目になるナナに、今後の設定について何も知らされてないリクに不安が募ったのは言うまでもない。
「お久しぶりです、ウィドさん、スピカさん」
「久しぶりだね、スピカ!」
「ジェダイトとラックもよく来てくださいました」
「久しぶりね、アカム○ルムを倒して以来かしら?」
不吉な会話をしている間にもジェダイドとラックが降りて来て、誕生日企画で共に共闘したウィドとスピカが笑顔で出迎える。
「いやー、俺達までこの場に呼ばれるとはな。作者も粋な事してくれるじゃねーか」
「ああ。休暇を言い渡して正解だな」
ここでなんと、機関メンバーのアクセルとサイクスもバスから降りてくる。
笑いながら話す二人に反応したのは、意外にもヴェンだった。
「うわー! リアもアイザも大人になってる!」
「そりゃ【Bbs】から10年も経ってるから当然だろ? それと、今の俺達の名前はアクセルとサイクスだ。記憶したか?」
「逆に10年経っても成長しないお前に驚くぞ」
10年越しの再会を果たした三人は、久々の会話に花を咲かせる。
え? リラ様の世界での事を考えれば30年じゃないかって? そこは…Dマジックで若返った設定と言う事でお願いします。
「なあ…幾ら三人が【Bbs】に関わってるからって、こんな会話させてもいいのか…?」
「これもネタの一つと言う事で…」
「その一言で終わらせるかぁ!!?」
横目になるナナに、即座にルキルがツッコミを入れる。さすがは数少ないツッコミ役だ。
さて、そうこうしている間にも次々と人は降りてくる。
「こんな良い場所に泊まれるなんて、最高じゃない♪」
「僕達は敵とは言え、前の作品では味方の様な立ち位置ですからね」
「今の作品では私達を敵に仕立て上げているが…今日と言う日には感謝しよう」
ラクシーヌ、ゼクシオン、マールーシャが嬉しそうに旅館を見てる後ろで、カヤも降りてくる。
「いらっしゃい、カヤ。長旅大変だったでしょ?」
「まあな。にしても、こっちでも旅館に来れるとは…景色もいいし、空気も美味いな」
アクアが出迎えの言葉を送ると、次に降りて来たのはゼノだった。
「まさか、妾までもこの場所に呼ばれるなんてね。にしても…本当に腹が立つ光景ね…!!」
何処か憎々しげに、話をしているソラとカイリとグラッセの親子を睨むゼノ。
このままではマズイと感じ、レイアがフィローを入れるように話しかけた。
「え、えーと…どんな事情があるかは知りませんけど、喧嘩は駄目ですよ? みんな仲良く楽しく過ごしてください!」
「ふん、お前に何が分かる。ぺったんこのペチャパイ小娘が」
「何ですか!! ちょーっとスタイルが良いからってバカにしてぇぇぇ!!!」
「レイア!? 三行前のセリフはどうした!?」
杖を取り出して戦闘態勢に入るレイアを、慌ててテラが後ろから押えつける。
結局は戦いの火種が生まれてしまった光景が出来上がると、軽快にバスのステップを飛び越えてレイシャが現れた。
「おー! ウィドさんにスピカさんだー!」
ジェダイドやラックと同じように共闘した二人を見つけ、レイシャが笑顔で近づく。
そんなレイシャに、スピカも笑みを浮かべて声をかけた。
「レイシャもいらっしゃい。今日はゆっくりしていってね?」
「はい! ところで、クウさんはどこにいるんですか?」
そう言って辺りを見回し、クウを探すレイシャ。
そんなレイシャの言葉にようやく、スピカだけでなく旅館の準備をしていたメンバーはここにいない人物に気付いた。
「そう言えば、さっきから見当たらないわね?」
「シグバールもいないぞ」
「デミックスもだ」
スピカも一緒に探していると、ザルディンとルクソードもバスにいなかったメンバーを述べながらヴィクセン、レクセウスと共に降りてくる。
「テルスお姉ちゃんもいない…ウラノスお兄ちゃん、見た?」
「いや…集合場所にはちゃんと集まってたのに、どこにいるんだ?」
ガイアとウラノスも降りるなり、いつの間にかバスに乗ってなかった自分の姉に疑問を浮かべる。
「「「うぎゃあああああああああああああっ!!!??」」」
直後、露天風呂の方から爆発音と共に聞き覚えのある悲鳴が響き渡った。
「な、何ぃ!?」
リズが悲鳴のした方を見ると、上空に黒い人影のような物体が三つある。
すると、その人影はこちらに近づき…綺麗に駐車場へと落下した。
「「「へぶぅ!!?」」」
「シグバール!?」
「デミックス!?」
「テルス姉さん!? 誰だぁ!! テルス姉さんを傷付けた奴はぁ!!!」
黒焦げとなった物体の正体を見破るザルディンとアクセルの横で、ウラノスが武器であるスパークチャクラムを取り出して周りを睨みつける。
「私ですが、何か?」
ザッと地面を踏みしめた音と共に、何者かがウラノスに答える。
目を向けると、何故かクウが拳を鳴らして黒焦げの三人を見下しているではないか。
「クウ、てめぇかぁぁ!!!」
明らかに何かが違うクウだが、怒り心頭のウラノスは高圧電流を纏わせた二つのチャクラムを投げつける。
だが、クウは軽く手を振るい…なんと、ダブルセイバーを取り出してチャクラムを弾き返した。
「誰が、あの馬鹿だと?」
「そのダブルセイバー…まさか…!?」
明らかに不機嫌になるクウに対し、見覚えのある武器にテラは震えあがる。
その間に彼は武器を闇に還して黒のコートを握り、一気に脱ぎ捨てる。
そうして現れたのは、白い服に金色の瞳となったクウ――否、エンだった。
「エン!?」
彼の事を軽く説明すると、彼は別世界のクウのノーバディであり、ラスボスキャラ的存在なのだ。詳しく知りたい方は、本編を読んでください。
話を戻し、最強キャラの登場にソラが驚いていると、勇敢にもウラノスはエンを睨みつけた。
「てめえ!? テルス姉ちゃんに何をしやがったぁ!!!」
「こいつらと共に露天風呂に入って隠しカメラを設置しようとしてたので、止めただけですが?」
「いいじゃない!! 男が女湯を覗くのは犯罪だけど、女が男湯を覗いても罪にならないでしょ!?」
【よくないわぁ!!?】
テルスのスケベ発言に、さすがのウラノスも男性陣達と一緒にツッコミを入れる。幾ら逆でも、ある種のセクハラです。
さて、テルスと同じようにある程度回復したのか、デミックスとシグバールは地面に倒れたまま嘆き出した。
「まさか、クウに変装して俺達を騙してたなんて…」
「そうだ! 俺達の同志は何処に行ったってハナシだぁ!!?」
「あなた達の言う同志と言うのは、そこの草むらで黒焦げになっている奴の事ですか?」
「「「同志よーーーーーーっ!!?」」」
冷ややかな目でエンの指差した方には、全身黒焦げと化したクウが倒れている。どうやら、すでに処刑済みだったようだ。
全員がそう思っていると、スケベ属性を持つ三人は急いでクウに近づいて助け起こす。
「シグバール隊長! クウ隊員が何かを言ってます!」
「何々…『渡し船の代賃は5文に負けてくれ』…って、三途の川の船渡しと交渉してるってハナシだぁ!? すぐに蘇生の準備に取り掛かれ!!」
「「ラジャー!!」」
シグバールの的確な指示にテルスは回復魔法を唱え、デミックスは蘇生装置『AED』を取り出す。
息の合ったスケベ達のコンビネーションに、アクアは顔を引く付かせてナナを見た。
「…あれ、止めた方がいいのでは…?」
「何言ってるの! これもネタの一つになる!」
「それで暴走されたらたまったもんじゃないけどな!!」
目を輝かせるナナに、すかさずグラッセがツッコミを入れる。
その時、バスから一つの声が響いた。
「あの〜、私もう降りて来てもいいですか…?」
「しまった! 今回の為の特別ゲストを忘れてた!! どうぞ、降りて来てくださーい!!」
「一気に腰が低くなったわね…」
頭を下げるナナに、オパールも呆れつつも同じように頭を下げる。
そうしてバスから現れたのは…。
「リラ様、ようこそ御越し下さいましたぁ!!!」
リズ達の生みの親であり、数々の【チルドレンシリーズ】を書き上げている作者、リラ本人だった。
「ぐえぇ!? ちょ、リズ…首が閉まって…!!」
まず初めにバスから降りて来たのは主人公であるリズ。そして、彼女に襟首を掴まれている幼なじみのグラッセだ。
何処から見ても仲が良い(?)二人に、いち早く友達であるシャオが声をかける。
「久しぶりだね! リズ、グラッセ!」
「あんた、誰だっけ?」
シャオを見てストレートに聞くリズに、思わずグラッセもその場でズッコケた。
「おいリズ、あれだけ暴れてたのにまた忘れたのかよ!!」
「そうだよ、シャオだよ!! いい加減覚えてよ!?」
「冗談よ、冗談♪ シャオ、久しぶり!」
二人がツッコミを入れると、リズは改めて笑顔を浮かべて挨拶する。
こうして三人が再会を喜んでいると、バスからロクサス、ナミネ、シオンが降りてきた。
「ロクサスとナミネもよく来たな!」
「シオンもいらっしゃい。今日はゆっくりして行ってね」
「ああ、少しの間だけどお言葉に甘えさせて貰うな」
「えっと…しばらくお世話になります」
「んー、気持ちいいー! 海もいいけど、山も素敵だねー!」
ソラとカイリが歓迎の言葉を送ると、それぞれ三人は返事を返す。
「来たぜー、親父!」
次に大きなスポーツバックを肩にかけてムーンがバスから降りると、笑顔でリクへと駆け寄っていく。
そんな未来の子供に、リクも笑みを浮かべて出迎える。
「ムーン、よく来――」
その時、バックの紐を持つムーンの手首が突然掴まれた。
まるで犯人を捕まえるように手首を掴んだオパール。そうして不審な目で睨みつけているので、ムーンの笑顔も引き攣る。
「オ、オパールさん…!? どうして、俺の手首を押えてるんですか…!?」
「押えるに決まってるでしょう…が!」
「ぐあっ!?」
ムーンの手首を軽く捻り、後ろに回し込む様に拘束すると持っていたバックがずり落ちた。
―――ゴドン!
地面に落ちたバックから、何やら鈍い金属音が響く。
よく見ると、バックの底には手を入れられる穴が開いており…その中には武器であるリジェクトソードが入っていた。
「…あんた、リクに何をしようとしたのかしら?」
「オ、オパールさん。俺前々からオパールさんの事を美しくて綺麗な人だと思っていたんですよでもそんな外見だけじゃなくって中身も優しくて面倒見が良くて強くて逞しい世間から見たら正に理想の女性と言うかあなたの様な人が母親ならきっと親子で仲良く腕の関節が折れる程に痛いぃぃぃ!!!??」
長々とオパールを褒めちぎる作戦が失敗し、更に手首を動かして腕の関節を捻り上げられてしまった。
「ちょっとー、誰かペンチ持って来てー」
「俺が悪かったです!!! もうしませんから手を放して!!!」
「チッ…」
必死でムーンが謝ると、オパールは渋々と手首を放して関節技を解いた。
(いってぇ…どうにか助かった…!! とにかく、次はあの女のいない所でリクを始末して…!!)
関節技を極められたと言うのに、反省する事なく物騒な事を考えるムーン。
その近くでは、リズが持って来たペンチをオパールに渡していた。
「ねえ、オパール。ペンチを使って何をするつもりだったの?」
「…生爪…!」
((この作品でリクを始末するのは諦めよう…!!))
呪詛のような恐ろしい呟きに、ムーンだけでなくロクサスまで震えあがる。どんな理由があれ、恋する乙女は決して敵に回してはいけない。
何がともあれ、オパールのおかげでこの作品内でのリクの身の安全は最低限守られたのであった。
「おい…何でムーンはあんな事を? 闇に操られているとはいえ、新しい小説じゃちゃんとした親子のはずじゃ…?」
「……いろいろあるんだよ」
「何があるんだ!?」
遠い目になるナナに、今後の設定について何も知らされてないリクに不安が募ったのは言うまでもない。
「お久しぶりです、ウィドさん、スピカさん」
「久しぶりだね、スピカ!」
「ジェダイトとラックもよく来てくださいました」
「久しぶりね、アカム○ルムを倒して以来かしら?」
不吉な会話をしている間にもジェダイドとラックが降りて来て、誕生日企画で共に共闘したウィドとスピカが笑顔で出迎える。
「いやー、俺達までこの場に呼ばれるとはな。作者も粋な事してくれるじゃねーか」
「ああ。休暇を言い渡して正解だな」
ここでなんと、機関メンバーのアクセルとサイクスもバスから降りてくる。
笑いながら話す二人に反応したのは、意外にもヴェンだった。
「うわー! リアもアイザも大人になってる!」
「そりゃ【Bbs】から10年も経ってるから当然だろ? それと、今の俺達の名前はアクセルとサイクスだ。記憶したか?」
「逆に10年経っても成長しないお前に驚くぞ」
10年越しの再会を果たした三人は、久々の会話に花を咲かせる。
え? リラ様の世界での事を考えれば30年じゃないかって? そこは…Dマジックで若返った設定と言う事でお願いします。
「なあ…幾ら三人が【Bbs】に関わってるからって、こんな会話させてもいいのか…?」
「これもネタの一つと言う事で…」
「その一言で終わらせるかぁ!!?」
横目になるナナに、即座にルキルがツッコミを入れる。さすがは数少ないツッコミ役だ。
さて、そうこうしている間にも次々と人は降りてくる。
「こんな良い場所に泊まれるなんて、最高じゃない♪」
「僕達は敵とは言え、前の作品では味方の様な立ち位置ですからね」
「今の作品では私達を敵に仕立て上げているが…今日と言う日には感謝しよう」
ラクシーヌ、ゼクシオン、マールーシャが嬉しそうに旅館を見てる後ろで、カヤも降りてくる。
「いらっしゃい、カヤ。長旅大変だったでしょ?」
「まあな。にしても、こっちでも旅館に来れるとは…景色もいいし、空気も美味いな」
アクアが出迎えの言葉を送ると、次に降りて来たのはゼノだった。
「まさか、妾までもこの場所に呼ばれるなんてね。にしても…本当に腹が立つ光景ね…!!」
何処か憎々しげに、話をしているソラとカイリとグラッセの親子を睨むゼノ。
このままではマズイと感じ、レイアがフィローを入れるように話しかけた。
「え、えーと…どんな事情があるかは知りませんけど、喧嘩は駄目ですよ? みんな仲良く楽しく過ごしてください!」
「ふん、お前に何が分かる。ぺったんこのペチャパイ小娘が」
「何ですか!! ちょーっとスタイルが良いからってバカにしてぇぇぇ!!!」
「レイア!? 三行前のセリフはどうした!?」
杖を取り出して戦闘態勢に入るレイアを、慌ててテラが後ろから押えつける。
結局は戦いの火種が生まれてしまった光景が出来上がると、軽快にバスのステップを飛び越えてレイシャが現れた。
「おー! ウィドさんにスピカさんだー!」
ジェダイドやラックと同じように共闘した二人を見つけ、レイシャが笑顔で近づく。
そんなレイシャに、スピカも笑みを浮かべて声をかけた。
「レイシャもいらっしゃい。今日はゆっくりしていってね?」
「はい! ところで、クウさんはどこにいるんですか?」
そう言って辺りを見回し、クウを探すレイシャ。
そんなレイシャの言葉にようやく、スピカだけでなく旅館の準備をしていたメンバーはここにいない人物に気付いた。
「そう言えば、さっきから見当たらないわね?」
「シグバールもいないぞ」
「デミックスもだ」
スピカも一緒に探していると、ザルディンとルクソードもバスにいなかったメンバーを述べながらヴィクセン、レクセウスと共に降りてくる。
「テルスお姉ちゃんもいない…ウラノスお兄ちゃん、見た?」
「いや…集合場所にはちゃんと集まってたのに、どこにいるんだ?」
ガイアとウラノスも降りるなり、いつの間にかバスに乗ってなかった自分の姉に疑問を浮かべる。
「「「うぎゃあああああああああああああっ!!!??」」」
直後、露天風呂の方から爆発音と共に聞き覚えのある悲鳴が響き渡った。
「な、何ぃ!?」
リズが悲鳴のした方を見ると、上空に黒い人影のような物体が三つある。
すると、その人影はこちらに近づき…綺麗に駐車場へと落下した。
「「「へぶぅ!!?」」」
「シグバール!?」
「デミックス!?」
「テルス姉さん!? 誰だぁ!! テルス姉さんを傷付けた奴はぁ!!!」
黒焦げとなった物体の正体を見破るザルディンとアクセルの横で、ウラノスが武器であるスパークチャクラムを取り出して周りを睨みつける。
「私ですが、何か?」
ザッと地面を踏みしめた音と共に、何者かがウラノスに答える。
目を向けると、何故かクウが拳を鳴らして黒焦げの三人を見下しているではないか。
「クウ、てめぇかぁぁ!!!」
明らかに何かが違うクウだが、怒り心頭のウラノスは高圧電流を纏わせた二つのチャクラムを投げつける。
だが、クウは軽く手を振るい…なんと、ダブルセイバーを取り出してチャクラムを弾き返した。
「誰が、あの馬鹿だと?」
「そのダブルセイバー…まさか…!?」
明らかに不機嫌になるクウに対し、見覚えのある武器にテラは震えあがる。
その間に彼は武器を闇に還して黒のコートを握り、一気に脱ぎ捨てる。
そうして現れたのは、白い服に金色の瞳となったクウ――否、エンだった。
「エン!?」
彼の事を軽く説明すると、彼は別世界のクウのノーバディであり、ラスボスキャラ的存在なのだ。詳しく知りたい方は、本編を読んでください。
話を戻し、最強キャラの登場にソラが驚いていると、勇敢にもウラノスはエンを睨みつけた。
「てめえ!? テルス姉ちゃんに何をしやがったぁ!!!」
「こいつらと共に露天風呂に入って隠しカメラを設置しようとしてたので、止めただけですが?」
「いいじゃない!! 男が女湯を覗くのは犯罪だけど、女が男湯を覗いても罪にならないでしょ!?」
【よくないわぁ!!?】
テルスのスケベ発言に、さすがのウラノスも男性陣達と一緒にツッコミを入れる。幾ら逆でも、ある種のセクハラです。
さて、テルスと同じようにある程度回復したのか、デミックスとシグバールは地面に倒れたまま嘆き出した。
「まさか、クウに変装して俺達を騙してたなんて…」
「そうだ! 俺達の同志は何処に行ったってハナシだぁ!!?」
「あなた達の言う同志と言うのは、そこの草むらで黒焦げになっている奴の事ですか?」
「「「同志よーーーーーーっ!!?」」」
冷ややかな目でエンの指差した方には、全身黒焦げと化したクウが倒れている。どうやら、すでに処刑済みだったようだ。
全員がそう思っていると、スケベ属性を持つ三人は急いでクウに近づいて助け起こす。
「シグバール隊長! クウ隊員が何かを言ってます!」
「何々…『渡し船の代賃は5文に負けてくれ』…って、三途の川の船渡しと交渉してるってハナシだぁ!? すぐに蘇生の準備に取り掛かれ!!」
「「ラジャー!!」」
シグバールの的確な指示にテルスは回復魔法を唱え、デミックスは蘇生装置『AED』を取り出す。
息の合ったスケベ達のコンビネーションに、アクアは顔を引く付かせてナナを見た。
「…あれ、止めた方がいいのでは…?」
「何言ってるの! これもネタの一つになる!」
「それで暴走されたらたまったもんじゃないけどな!!」
目を輝かせるナナに、すかさずグラッセがツッコミを入れる。
その時、バスから一つの声が響いた。
「あの〜、私もう降りて来てもいいですか…?」
「しまった! 今回の為の特別ゲストを忘れてた!! どうぞ、降りて来てくださーい!!」
「一気に腰が低くなったわね…」
頭を下げるナナに、オパールも呆れつつも同じように頭を下げる。
そうしてバスから現れたのは…。
「リラ様、ようこそ御越し下さいましたぁ!!!」
リズ達の生みの親であり、数々の【チルドレンシリーズ】を書き上げている作者、リラ本人だった。