演劇イベント編・4
演目の話し合いに用意された別室の一つ。
そこには呆れるリズと、思いっきり落ち込んでいる暗いオーラを漂わせているロクサスがいた。
「ねえ、ロクサス。いい加減立ち直ってよー。レイシャもルキルもあっちに戻ったんだよ?」
「立ち直れる訳ないだろ…!! なんで、なんでよりによってあんなシーンを選ぶんだよ…!! どうせなら剣術稽古とか、決闘とか、そう言うシーンの方が…!!」
「それだと人数少ないし、決闘だと大人数でしなきゃいけないじゃない。大丈夫、ロクサスならやれるよ!!」
「そう言う問題じゃないんだよ…!!」
娘であるリズの輝かしい笑顔を見せられても尚、どう言う訳かロクサスは立ち直る事はなかった。
さて、みんなが集まっている大広間へと視点を戻そう。
その入口から前回別の部屋で作戦会議をしていたラック達一行が戻って来た。
「ただいまー! って、あれ…?」
元気よく声をかけて入って来た瞬間、ラックはその場で固まってしまう。
「さすがは姉さんです! あの華麗な戦闘、見事でした!」
「ふふ、そう言ってくれて嬉しいわ。私も久々に身体を動かせて楽しかったし」
「格闘にキーブレード、更にあのような斧まで使えるとは。なかなか見どころがあるな、俺でよければ指南してもいいぞ」
「え、遠慮させて貰うわ…」
「凄いね、カイリ! 何だか小悪魔っぽくて可愛かったよ!」
「ありがとう、私も演じてて楽しかった!」
ウィドと会話するスピカ。レクセウスに言い寄られるクウ。目を輝かせるシオンに笑いかけるカイリ。そんな彼らの周りに人が集まっているのは、まあ至って普通だ。
部屋の片隅で膝を抱えて座り込んでいるグラッセの姿を見ない限り。
「……何で、誰も俺の事を言ってくれないの…? 姿なかったし一言だけだけどさ…それでも誰か一人くらい…!」
「グラッセくん、大丈夫ですか…?」
今にもキノコが生えてきそうなオーラを纏うグラッセに、さすがにジェダイトが声をかける。
そうこうしていると、ようやくリラがラック達の存在に気が付いた。
「あ、ラック。戻って来たって事は…」
「ああ、演目についての話し合いも軽い練習も終わったよ! それで、この後誰もいないならアタイ達でいい?」
「構いませんよー。丁度一組終わりましたから」
ナナが許可を出すと、ラックは笑いながら腕を組んで後ろにいたソラ達に指示を出した。
「よーし! さあ、あんた達! 急いでステージに上がって準備しな!」
「なんか緊張するなぁ…!」
「ちゃんと出来るかな…!」
「「あぁ…とうとう悪夢の時間が…!」」
「二人とも落ち込むなって。すぐに終わるだろ」
緊張を露わにしつつも嬉しそうにステージに上がるソラとヴェンに対し、リクとテラは絶望しきった表情で上がっていく。そんな二人をアクセルが宥めている。
まさしく光と闇を象徴している光景に、ウラノスは不安そうに彼らを見送った。
「…何だ、あの対極のオーラは?」
「ところで、ラック。何をするの?」
リラが質問すると、ラックは自信満々に胸を張り出した。
「ふっふっふ…それは、コレさぁ!! ジェダイト!!」
「はい!」
グラッセの所から戻って来たジェダイトに声をかけるなり、いつの間にか手に持った大きな紙を広げて中に書いてある文字を全員に見せつけた。
『『『ア…アイドルゥゥゥーーーーーーーーーー!!!??』』』
予想を上回ったラック達の演目に広間一帯に絶叫が上がる。
すると、ラックがどこからかメンバーの顔写真が張り付けられた団扇やらТシャツ。更にはペンライトや鉢巻などのグッズを大量に取り出した。
「そうさ! グッズもジェダイトが作って用意したよ!! 欲しい人はアタイの所に「「「「くださーーーーいっ!!!」」」」ってぎょええええええええええ!!?」
(((女ってすげぇ…!!!)))
ラックの台詞が言い終わらない内に、カイリ、アクア、オパール、リリィが我先にと飛び付いてグッズを奪い取り始める。
やがて彼女達の暴走が収まると、ラックは少々ボロボロになっていたがどうにか立ち上がった。
「あ、あいだだ…――さぁて、それでは歌って貰うよぉ!!! 曲名はもちろん、《マ○LOVE1000%》!!!」
「尚、読者の皆様。歌の方は宮野・藤原・置鮎・鈴村・入野・内山ボイスで好きなようにご想像ください。あ、知らないなら適当で全然構いませんので」
「ジェダイトがとんでもない事をぶっこんできたぞオイ!!?」
ジェダイトのメタ発言にムーンがツッコミを入れていると、ステージのカーテンが開いた。
ステージは既に、先程演出したあちこち破壊された宮殿の中ではなかった。
背後には大きなスクリーン。そして、大量に設置された照明器具。
中央には、華やかな衣装に着替えた六人がマイクを持っていた。
《ドキドキで壊れそう1000%LOVE》
そして、彼らによるコンサートが幕を開けた。
「キャアアアアアアァ!!!」
「テラー!! ヴェンー!! 私は最後まであなた達を見てるわぁ!!」
「「リクーーーー!!!」」
「少数の筈なのに、悲鳴が凄さまじい…!?」
ステージの一番前に陣取って叫ぶ女性四人に、ゼクシオンだけでなく全員が耳を押えている。尚、誰がどの歓声を上げているかは描写しなくてもお分かりだろう。
《さあ、レッツゴー! 夢を歌おう、空に歌おう――!》
元々乗り気だった四人だけでなく、嫌がっていたリクとテラまでもがステージの上でノリノリになって歌っている。ある意味でこのステージは万能であり恐ろしい。
もはやステージの周りだけが別空間になっている中、レイシャとゼノだけは広間の入口に避難して忌々しい表情で歌っている六人を睨んでいた。
「ちっ、あんな奴の出ているステージなんてどこがいいんだよ…!」
「全くレイシャの言う通りね。あんな奴らのステージ、騒音どころか公害レベルだ」
「ふん、あなた達二人とは気が合うわ。たまたま広間を覗いてみたら、まさか復讐相手のライブとは…」
入口にいたからか、旅館の手伝い係であるリリスも一緒になって二人の会話に加わる。
のだが。
「…貴方、その手に持ってる物は何?」
リリスの姿を見た途端、ゼノが即座に哀れの眼差しを送る。
腕を組んでいる両手にはペンライト。いつもの服装の上から羽織っている濃い青色の法被。しかも頭には『LOVE』の鉢巻を巻いている。
もはや最前列で騒いでいる女子達と変わらぬ格好になっているリリス。それに追い打ちをかけるように、厨房にいたセヴィルも声をかけた。
「リリス、お前も意地を張らずに行ってくればどうだ?」
「なっ!? なぜ私がステージの最前列で応援しないといけないのよ!? そもそもあいつは私にとって目の仇!! 殺したいほど憎き相手よ!!」
「そうだぜ、セヴィル…だっけ。リリスさんの復讐心は俺にはとてもよく分かる。リリスさん、この後俺達と一緒に奴を始末しましょう!! そりゃあもうこっ酷く――!!」
直後、レイシャのすぐ真横に青い槍が垂直に突き刺さった。
「エ…!? リ、リリス、サン…!?」
同志であるにも関わらず突然命の危険が襲い掛かり、全身が冷や汗塗れになったレイシャは恐る恐るリリスに声をかける。
リリスは槍を握ったまま、只ならぬ怒りが湧きあがっているのか背後に黒い陽炎を立ち上らせてレイシャを睨んでいた。
「誰かに手を貸してもらうつもりは毛頭ないわ。あいつは私がこの手で始末すると決めているの。私が作り出す傷、真っ赤に染めあげる身体…フフフ、誰にも邪魔はさせない…! リクは私が甚振って弄って殺せればそれで――!!」
《クラクラしちゃうくらい1000%LOVE》
「キャーーーーーーーーー!!!」
(((一瞬で瞬殺された!!? それよりもあんた誰だぁ!!?)))
歪んだ笑みから一変してカイリ達の輪の中に入り込んで黄色い歓声を上げるリリスに、この場にいる誰もが心の中で叫んだ。
「あのやろ、俺達に負けず劣らずの殺意持ってるリリスさんに何したんだ…!?」
「っていうかあの女、二重人格か…?」
殺意が完全に消え去って満面の笑みで悲鳴を上げるリリスに、レイシャは歯軋りしウラノスが呆れた表情を浮かべてしまう。
「まあ、なんだ。気にするな…」
「気にするなと言われても滅茶苦茶気になるのですが!?」
廊下にいたセヴィルも広間に入って会話すると、ジェダイドが思わずツッコミ入れてしまう。
「あれ? さっきまでそこにいたはずの作者がいないんだが?」
そんな時、さっきまでいた筈の作者達がいない事にクウは気付いて辺りを見回す。すると、ウィドが半目である方向を指した。
「あそこです」
《さあ、レッツダンス! 夢を踊ろう、空に踊ろう! やりすぎなくらいがいいさ、準備はOK?》
「ふおおおおおおおおぉ!!! 私も愛してるぜーーーーーーーーーーー!!!」
「イヤーーーー!!! こっち向いたーーーー!!!」
なんと、ナナもリラもリリスと同じようにカイリ達の中に紛れ込んで雄叫びに近い歓声を上げていた。もちろん、両手には団扇やペンライトを装備している。
「あいつらまで野次馬と化してるぞ…」
「イケメンだから許される事だな…」
黄色い悲鳴を上げて興奮する作者二人に、マールーシャとゼアノートが遠い目で呟いた。
《愛をチェンジザスター、チェックイットアウト!! 今宵はほら二人で1000%LOVE》
『『『ヤァァァーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!』』』
そうして曲が終わると同時に、女性陣の歓声がこれでもかと上がった。
「はぅ…完全燃焼って、この事を言うんですね…」
「私、今ようやくコンサート会場でキャーキャー悲鳴を上げるファンの気持ちがすっごく分かった気がする…」
ライブも終わり、ステージも元に戻るなりリラとナナは燃え尽きたように座布団の上に座っていた。他の女性陣達も全力を出しきったのか疲れたように座ったり飲み物を飲んだりしている。
疲れているが満足している作者二人の様子に、ラックは手応えありとばかりに拳を握った。
「これは高得点間違いなしだね!!」
「イケメンキャラを揃えただけの事はありました」
一方、ステージ裏では…。
「サイコーのライブだったな!!」
「いやー、俺もう大満足だよ!!」
「たまにはこう言うのも悪くねーな!!」
「ああ、すっごく楽しかった!! な、リクっ!!」
ステージの効果が消えて元の衣装に戻ったヴェン、デミックス、アクセルが騒いでる中、ソラは隣にいたリクに笑いかける。
が。
「俺、もの凄く死にたい気分だ…」
「どんな顔をして皆の所に戻ればいいんだ…」
ちゃんと人前で踊って歌っていた記憶があったようで、リクとテラは絶望のオーラを全身に漂わせて片隅に座り込んでいた。
同時に、最初に焦りを浮かべ、怒りを露わにしたエンの気持ちが嫌と言う程分かったと言う。
「どうしよー、トイレに行ってたらすっかり遅くなっちゃった」
丁度その頃、廊下をパタパタ走りながらシャオが広間に向かっていた。
もう演目も決まり、後はするだけの状態で急にトイレに行きたくなり広間を抜け出したのだ。
「もうそろそろボク達の出番になるよねー。早くしないと…」
待っているであろうメンバーの事を考えながら走っていると、ふとシャオの背後に影が差した。
「ん?」
この現象に、シャオは思わず足を止めて後ろを振り返る。
直後、大きく目を見開いた。
「え、ちょ――ぎゃああああああああああああぁ!!!」
そこには呆れるリズと、思いっきり落ち込んでいる暗いオーラを漂わせているロクサスがいた。
「ねえ、ロクサス。いい加減立ち直ってよー。レイシャもルキルもあっちに戻ったんだよ?」
「立ち直れる訳ないだろ…!! なんで、なんでよりによってあんなシーンを選ぶんだよ…!! どうせなら剣術稽古とか、決闘とか、そう言うシーンの方が…!!」
「それだと人数少ないし、決闘だと大人数でしなきゃいけないじゃない。大丈夫、ロクサスならやれるよ!!」
「そう言う問題じゃないんだよ…!!」
娘であるリズの輝かしい笑顔を見せられても尚、どう言う訳かロクサスは立ち直る事はなかった。
さて、みんなが集まっている大広間へと視点を戻そう。
その入口から前回別の部屋で作戦会議をしていたラック達一行が戻って来た。
「ただいまー! って、あれ…?」
元気よく声をかけて入って来た瞬間、ラックはその場で固まってしまう。
「さすがは姉さんです! あの華麗な戦闘、見事でした!」
「ふふ、そう言ってくれて嬉しいわ。私も久々に身体を動かせて楽しかったし」
「格闘にキーブレード、更にあのような斧まで使えるとは。なかなか見どころがあるな、俺でよければ指南してもいいぞ」
「え、遠慮させて貰うわ…」
「凄いね、カイリ! 何だか小悪魔っぽくて可愛かったよ!」
「ありがとう、私も演じてて楽しかった!」
ウィドと会話するスピカ。レクセウスに言い寄られるクウ。目を輝かせるシオンに笑いかけるカイリ。そんな彼らの周りに人が集まっているのは、まあ至って普通だ。
部屋の片隅で膝を抱えて座り込んでいるグラッセの姿を見ない限り。
「……何で、誰も俺の事を言ってくれないの…? 姿なかったし一言だけだけどさ…それでも誰か一人くらい…!」
「グラッセくん、大丈夫ですか…?」
今にもキノコが生えてきそうなオーラを纏うグラッセに、さすがにジェダイトが声をかける。
そうこうしていると、ようやくリラがラック達の存在に気が付いた。
「あ、ラック。戻って来たって事は…」
「ああ、演目についての話し合いも軽い練習も終わったよ! それで、この後誰もいないならアタイ達でいい?」
「構いませんよー。丁度一組終わりましたから」
ナナが許可を出すと、ラックは笑いながら腕を組んで後ろにいたソラ達に指示を出した。
「よーし! さあ、あんた達! 急いでステージに上がって準備しな!」
「なんか緊張するなぁ…!」
「ちゃんと出来るかな…!」
「「あぁ…とうとう悪夢の時間が…!」」
「二人とも落ち込むなって。すぐに終わるだろ」
緊張を露わにしつつも嬉しそうにステージに上がるソラとヴェンに対し、リクとテラは絶望しきった表情で上がっていく。そんな二人をアクセルが宥めている。
まさしく光と闇を象徴している光景に、ウラノスは不安そうに彼らを見送った。
「…何だ、あの対極のオーラは?」
「ところで、ラック。何をするの?」
リラが質問すると、ラックは自信満々に胸を張り出した。
「ふっふっふ…それは、コレさぁ!! ジェダイト!!」
「はい!」
グラッセの所から戻って来たジェダイトに声をかけるなり、いつの間にか手に持った大きな紙を広げて中に書いてある文字を全員に見せつけた。
『『『ア…アイドルゥゥゥーーーーーーーーーー!!!??』』』
予想を上回ったラック達の演目に広間一帯に絶叫が上がる。
すると、ラックがどこからかメンバーの顔写真が張り付けられた団扇やらТシャツ。更にはペンライトや鉢巻などのグッズを大量に取り出した。
「そうさ! グッズもジェダイトが作って用意したよ!! 欲しい人はアタイの所に「「「「くださーーーーいっ!!!」」」」ってぎょええええええええええ!!?」
(((女ってすげぇ…!!!)))
ラックの台詞が言い終わらない内に、カイリ、アクア、オパール、リリィが我先にと飛び付いてグッズを奪い取り始める。
やがて彼女達の暴走が収まると、ラックは少々ボロボロになっていたがどうにか立ち上がった。
「あ、あいだだ…――さぁて、それでは歌って貰うよぉ!!! 曲名はもちろん、《マ○LOVE1000%》!!!」
「尚、読者の皆様。歌の方は宮野・藤原・置鮎・鈴村・入野・内山ボイスで好きなようにご想像ください。あ、知らないなら適当で全然構いませんので」
「ジェダイトがとんでもない事をぶっこんできたぞオイ!!?」
ジェダイトのメタ発言にムーンがツッコミを入れていると、ステージのカーテンが開いた。
ステージは既に、先程演出したあちこち破壊された宮殿の中ではなかった。
背後には大きなスクリーン。そして、大量に設置された照明器具。
中央には、華やかな衣装に着替えた六人がマイクを持っていた。
《ドキドキで壊れそう1000%LOVE》
そして、彼らによるコンサートが幕を開けた。
「キャアアアアアアァ!!!」
「テラー!! ヴェンー!! 私は最後まであなた達を見てるわぁ!!」
「「リクーーーー!!!」」
「少数の筈なのに、悲鳴が凄さまじい…!?」
ステージの一番前に陣取って叫ぶ女性四人に、ゼクシオンだけでなく全員が耳を押えている。尚、誰がどの歓声を上げているかは描写しなくてもお分かりだろう。
《さあ、レッツゴー! 夢を歌おう、空に歌おう――!》
元々乗り気だった四人だけでなく、嫌がっていたリクとテラまでもがステージの上でノリノリになって歌っている。ある意味でこのステージは万能であり恐ろしい。
もはやステージの周りだけが別空間になっている中、レイシャとゼノだけは広間の入口に避難して忌々しい表情で歌っている六人を睨んでいた。
「ちっ、あんな奴の出ているステージなんてどこがいいんだよ…!」
「全くレイシャの言う通りね。あんな奴らのステージ、騒音どころか公害レベルだ」
「ふん、あなた達二人とは気が合うわ。たまたま広間を覗いてみたら、まさか復讐相手のライブとは…」
入口にいたからか、旅館の手伝い係であるリリスも一緒になって二人の会話に加わる。
のだが。
「…貴方、その手に持ってる物は何?」
リリスの姿を見た途端、ゼノが即座に哀れの眼差しを送る。
腕を組んでいる両手にはペンライト。いつもの服装の上から羽織っている濃い青色の法被。しかも頭には『LOVE』の鉢巻を巻いている。
もはや最前列で騒いでいる女子達と変わらぬ格好になっているリリス。それに追い打ちをかけるように、厨房にいたセヴィルも声をかけた。
「リリス、お前も意地を張らずに行ってくればどうだ?」
「なっ!? なぜ私がステージの最前列で応援しないといけないのよ!? そもそもあいつは私にとって目の仇!! 殺したいほど憎き相手よ!!」
「そうだぜ、セヴィル…だっけ。リリスさんの復讐心は俺にはとてもよく分かる。リリスさん、この後俺達と一緒に奴を始末しましょう!! そりゃあもうこっ酷く――!!」
直後、レイシャのすぐ真横に青い槍が垂直に突き刺さった。
「エ…!? リ、リリス、サン…!?」
同志であるにも関わらず突然命の危険が襲い掛かり、全身が冷や汗塗れになったレイシャは恐る恐るリリスに声をかける。
リリスは槍を握ったまま、只ならぬ怒りが湧きあがっているのか背後に黒い陽炎を立ち上らせてレイシャを睨んでいた。
「誰かに手を貸してもらうつもりは毛頭ないわ。あいつは私がこの手で始末すると決めているの。私が作り出す傷、真っ赤に染めあげる身体…フフフ、誰にも邪魔はさせない…! リクは私が甚振って弄って殺せればそれで――!!」
《クラクラしちゃうくらい1000%LOVE》
「キャーーーーーーーーー!!!」
(((一瞬で瞬殺された!!? それよりもあんた誰だぁ!!?)))
歪んだ笑みから一変してカイリ達の輪の中に入り込んで黄色い歓声を上げるリリスに、この場にいる誰もが心の中で叫んだ。
「あのやろ、俺達に負けず劣らずの殺意持ってるリリスさんに何したんだ…!?」
「っていうかあの女、二重人格か…?」
殺意が完全に消え去って満面の笑みで悲鳴を上げるリリスに、レイシャは歯軋りしウラノスが呆れた表情を浮かべてしまう。
「まあ、なんだ。気にするな…」
「気にするなと言われても滅茶苦茶気になるのですが!?」
廊下にいたセヴィルも広間に入って会話すると、ジェダイドが思わずツッコミ入れてしまう。
「あれ? さっきまでそこにいたはずの作者がいないんだが?」
そんな時、さっきまでいた筈の作者達がいない事にクウは気付いて辺りを見回す。すると、ウィドが半目である方向を指した。
「あそこです」
《さあ、レッツダンス! 夢を踊ろう、空に踊ろう! やりすぎなくらいがいいさ、準備はOK?》
「ふおおおおおおおおぉ!!! 私も愛してるぜーーーーーーーーーーー!!!」
「イヤーーーー!!! こっち向いたーーーー!!!」
なんと、ナナもリラもリリスと同じようにカイリ達の中に紛れ込んで雄叫びに近い歓声を上げていた。もちろん、両手には団扇やペンライトを装備している。
「あいつらまで野次馬と化してるぞ…」
「イケメンだから許される事だな…」
黄色い悲鳴を上げて興奮する作者二人に、マールーシャとゼアノートが遠い目で呟いた。
《愛をチェンジザスター、チェックイットアウト!! 今宵はほら二人で1000%LOVE》
『『『ヤァァァーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!』』』
そうして曲が終わると同時に、女性陣の歓声がこれでもかと上がった。
「はぅ…完全燃焼って、この事を言うんですね…」
「私、今ようやくコンサート会場でキャーキャー悲鳴を上げるファンの気持ちがすっごく分かった気がする…」
ライブも終わり、ステージも元に戻るなりリラとナナは燃え尽きたように座布団の上に座っていた。他の女性陣達も全力を出しきったのか疲れたように座ったり飲み物を飲んだりしている。
疲れているが満足している作者二人の様子に、ラックは手応えありとばかりに拳を握った。
「これは高得点間違いなしだね!!」
「イケメンキャラを揃えただけの事はありました」
一方、ステージ裏では…。
「サイコーのライブだったな!!」
「いやー、俺もう大満足だよ!!」
「たまにはこう言うのも悪くねーな!!」
「ああ、すっごく楽しかった!! な、リクっ!!」
ステージの効果が消えて元の衣装に戻ったヴェン、デミックス、アクセルが騒いでる中、ソラは隣にいたリクに笑いかける。
が。
「俺、もの凄く死にたい気分だ…」
「どんな顔をして皆の所に戻ればいいんだ…」
ちゃんと人前で踊って歌っていた記憶があったようで、リクとテラは絶望のオーラを全身に漂わせて片隅に座り込んでいた。
同時に、最初に焦りを浮かべ、怒りを露わにしたエンの気持ちが嫌と言う程分かったと言う。
「どうしよー、トイレに行ってたらすっかり遅くなっちゃった」
丁度その頃、廊下をパタパタ走りながらシャオが広間に向かっていた。
もう演目も決まり、後はするだけの状態で急にトイレに行きたくなり広間を抜け出したのだ。
「もうそろそろボク達の出番になるよねー。早くしないと…」
待っているであろうメンバーの事を考えながら走っていると、ふとシャオの背後に影が差した。
「ん?」
この現象に、シャオは思わず足を止めて後ろを振り返る。
直後、大きく目を見開いた。
「え、ちょ――ぎゃああああああああああああぁ!!!」