演劇イベント編・7(殆どがオマケです)
舞台はリングのある会場。その周りでは大勢の観客が歓声を上げている。
彼らの視線の先は、赤と青のグローブを嵌め、上半身裸で無言で殴り合う二人の男。ゼアノートとアンセムだ。
お互いに殴り、殴られ、時たまクロスカウンターがヒットする。二人がボロボロに殴り合う中で、カンカンカンとゴングが鳴り響く。
「試合終了ー!!」
審判役であるルクソードが間に割り込み、殴り合う二人を止める。
アンセムは反対側の席に運ばれ、シグバールも駆け付け声を駆ける。そんな中、ゼアノートは天井に設置された眩しい程の照明を見上げていた。
「もえた…もえつきたよ…」
今にも掻き消えそうな声で呟き、目を細める。
「まっしろにな…」
「どうだ、このネタ。懐かしいだろってハナシ」
リング状の舞台から元の白いステージに戻るなり、監督風だったシグバールも元の衣装に戻って作者二人にニヤニヤと笑いかける。
説明が遅れたが、今やった演目はあ○たの○ョー。これに役者として出たのはシグバール、ゼアノート、アンセム、ルクソードの四人である。
「チョイスしたのはあんたか…オッサンらしいと言えばオッサンらしいけど」
「実写版映画じゃKHでの歌手も携わっているとはいえ…古いネタだから若者、あんまり分かってないですよ?」
演じたのは有名な台詞所とは言え、リラが苦笑する横でナナは首を傾げている一部の若者を指差す。
「だがその他は分かっているんだ。別に問題ないってハナシ。なあ、ゼアノー…ト?」
シグバールが主役を演じたゼアノートに振り返ると、急に凍りつく。
そこには、原作の如く真っ白に燃え尽きて座布団に座っているゼアノートの姿が合った。
「おい、何やってんだ…!? 立て、立つんだ○ョーーーー!!?」
「む? 少し殴り過ぎたか」
「殴り過ぎた所の問題じゃないよねこれ!?」
「これヤバくない!? 誰か救護はーん!!」
演目は終わったと言うのにこのままラストまで突入してしまいそうな雰囲気を醸し出すゼアノートに、作者達も大慌てしたそうな…。
「さて、ゼアノート組も落ち着いた所で――まずはKHV新PV及び新衣装発表おめでと〜!!」
ゼアノートの治療も終わり、ナナは用意していたクラッカーを鳴らす。
いよいよ新しい情報も出始めたKHV。今回少しでも宣伝したいと、新衣装を着たソラが前に出た。
「今まで長かったけど、ようやく発売が見えてきたよなー」
「と言っても作者、未だにリマスタークリアしてないけどね」
「それを言うなら、こっちの投稿なんて数カ月ぶりだろ。ネタはあるのに本編重視に春夏の忙しいイベントに参加。おまけに別サイトでの投稿で完全にここ疎かにして…」
「それは言うなぁぁぁ!!!」
折角ソラが良い事を言ったのに、カイリやリクが余計な事を言う物だからナナは思わず絶叫してしまう。
だが、全て事実なだけに反論なんて出来る筈がない。ゲームは全てプラウドで挑戦中もあるが…さまざまなゲームに手を出したり、再度一部のアニメ放送に嵌りで少々、と言うかかなり疎かになった部分がある。
「ええい、地の分まで! ゲームに関しては昔の攻略本はあるしネットも使えるんだ!! その気になればちゃちゃっとクリアしてやるぅぅ!!!」
(((ああもうこいつダメだ…)))
一度クリアしているとはいえ完全に攻略法便りに、全員は心の中で呆れかえってしまった。
ゲームをしている読者の皆、遊び方は人それぞれとは言え何でもかんでも攻略サイトに頼る様な事は止めようね。
「ほら、折角の祝い事なんですからそこまでにしましょう」
「ええ。今日はお祝いの席なんだからみんな楽しくね」
「先生、それにスピカさん」
宥めるように声をかけたウィドとスピカの登場に、ルキルが振り返る。同じように他の皆も目を向ける。
「…って、何を持っているんですかそれぇぇぇ!!?」
二人の姿と共にあり得ない物体を見てしまい、ガイアが絶叫する。
それもそうだ。笑顔を浮かべるスピカの手には――皿の上に巨大な口をした赤黒い物体が乗っているのだから。
「何ってケーキよ。お祝い事には必ず食べるでしょ?」
『『『それの何処がケーキっ!!?』』』
どこからどう見ても食べ物ではない物体に全員がツッコミを決める中、リクは青白い顔でケーキと言う名の怪物を見ていた。
「何だ…このデジャヴは…?」
「それより何で料理なんて…!!」
恐る恐るジェダイトが訊くと、スピカはニッコリと笑う。
「『祝い事するならあいつらに料理を作ってやったらどう?』ってゼノが言ったの。だからウィドと一緒に作ったのよ」
「お前が原因かゼノーーーーー!!!!!」
誕生日企画ではガイアのおかげで一度は潰えた筈の姉弟の恐ろしいタッグ再来に、クウはゼノに怒鳴りつける。しかし、彼女は涼しい顔で耳を塞いで軽く受け流した。
「ちなみに、リズから貰ったレシピを元にフルーツタルトを作ったの。人から教えて貰ったんだから、いつもより自信はあるわ」
「リズ…お前までレイシャと同類に…」
「なってないよ、ロクサス!! と言うか、私こんな悍ましい物体を作るレシピなんて渡してない筈だけど!?」
今にも泣きそうなロクサスに、さすがのリズも誤解を解こうと必死で弁解したとか。
「そう言う訳で、はいどーぞ。温かい内に食べてね♪」
「あの、ケーキもタルトも温かくないはずだけど…!!」
ソラにフルーツタルト(怪物)を差し出すスピカに、ナミネは冷や汗を流しながら尤もな常識を呟く。
一方、口から紫の煙を吐き出した怪物を眼下に曝されたソラは涙目でスピカに訊く。
「あ、あのぉ…味見は…?」
「もちろんちゃーんとしたわよ。私とウィドだけじゃなく、二人にもね」
『『『二人?』』』
思わぬ言葉に全員が訊き返し、厨房の近くにある入口に目を向ける。
そこには確かに、スピカの言う“二人”がいた。
「ああ、あれから腕を上げたな(ヌチョ、ゴリッ)」
「女性が作る物はどれも上手いよなー(ボリ、ネチャ)」
『『『普通に食ってるぅぅぅ!!?』』』
あり得ない音を出しながら液体とも固形とも言えぬ黒い物体を、師匠コンビであるセヴィルとクロトスラルが平然と食べていた。
「いや、よく見ろ! 目が、死んでる…!」
そんな中、ヴァニタスは二人の目に生気が宿っていない事に気付き声を上げる。すると、セヴィルとクロトスラルは尚も食べる口を動かしたまま話し出した。
「心頭滅却すれば火もまた涼し。キーブレードマスターたるもの、全てに対して無心になるくらい出来なくてはな」
「そう言うこった。最初は大変だったぜ、今ではもう慣れたけど」
「ああ…この人確かにマスターと呼べる人物だ」
「誤解してたけど、あの人相当な強さ持ってるんだな…」
涼しい顔(?)で殺人料理を食べ進める師匠キャラ二人に、思わずヴェンとカヤは尊敬の眼差しを向けてしまう。
この光景に、黙っていたウィドが得意げに鼻を鳴らし胸を張った。
「今回は味見だって完璧です。さあ、食べなさい」
「お前ら二人に味覚さえも無くしている奴らが食っても説得力皆無なんだが…?」
呆れ顔でウラノスが訊き返すが、この姉弟…いや、殺人料理人達に何を言っても無駄なのはとっくに経験済みである。
「あ。そう言えば、もう一人食べた人がいた筈だけど…どこに行ったのかしら?」
「もう、一人?」
何やらスピカの口から出た言葉に、オパールが反応する。
そして、嫌な予感が襲い掛かる。彼女だけじゃない…全員だ。
「ええ。甘いのが好きって言ってたからこのタルトを食べさせたの。確か黒髪で爽やかそうな青年で――…エラクゥスって言ってたかしら?」
「エラクゥスーーーーーーーーーーっ!!?」
「「「マスタァァァァァ!!?」」」
直後、血相を変えてゼアノートだけでなく弟子三人も厨房へと駆け込んでしまった。
「既に犠牲者がいただと…!?」
「KHVの幸先が…!?」
「おい、KHχでの確定された未来になったも同然じゃ…!?」
これにはムーン、グラッセ、クウが顔を青ざめている中、姉弟はソラに怪物を差し向けた。
「「さあ、め・し・あ・が・れ?」」
「おっ…俺用事思い出したー!?」
まじかに迫った命の危険に、ソラは即座に逃走を図る。
「グラビガン・ディプラヴィティ」
だが、ソラを中心に重力が襲い掛かりその場にいる殆どの人物が膝をついてしまった。
「ぐえぇ!?」
「ゼ、ゼノ…!? お前…!!」
「折角二人が貴様の為に作ったケーキ。食べるのが当然ではないか。貴様の信じる仲間や友の絆で身を滅ぼすがいいわぁ!!」
「本音駄々漏れなんですけどぉ!!?」
リクが睨む中、見下しながら吐き出したゼノの建前と本心に反射的にグラッセがツッコミを入れる。
「タ、タスケテ…!!」
動きを封じられ、涙目でソラは助けを求めるが。
「無理だ」
「ごめん」
「が、頑張って…」
「うわーーーーーーーーんっ!!!!!」
アクセル、ラック、レイアが目を逸らす様子に、ソラはとうとう泣いてしまった。
さすがに可哀想に思えたのか、同じく床に倒れて動けないクウは師匠達を見る。
「し、師匠…あんた、食べれるんなら代わりに」
「味を感じないだけで、好き好んで食えるかよ。正直顎が限界だ」
「俺もクロと一緒だ。お前達でどうにかしろ」
唯一食べられる二人にも見捨てられてしまった。
このままではKHVの前に主役がいなくなってしまう。そんな思考を抱いていると、大広間に黒い影が勢いよく入り込んだ。
「ワ、ワンダニャン…って、リヴァル!?」
そこには主人の危機を感じて入ってきたワンダニャンに背中に乗っているリヴァル。
リヴァルは器用にワンダニャンの背中から降りると、何故か驚くソラとスピカの間に割り込んだ。
「ちゃぁ! まぁ、まぁ!」
「リヴァル? そう言えば、料理の時に厨房の人に預けっぱなしだったわね――もしかして、お腹空いたの?」
「あ…あぅ!」
『『『っ!?』』』
若干声を上ずりながら頷くリヴァルに、広間内に戦慄が走った。
「あいつ、まさかソラの為に…!!」
「なんて健気な子なんだ…!! 未来じゃあんなにツンツンしてるのに!!」
「グラッセ、何があったの?」
赤ん坊なのに助けようとする心にルキルが目を見開く。それとは別にグラッセは成長した性格と違う事に驚くものだから、ラクシーヌが心配そうな目で見てしまう。
「ダメだ、リヴァル!! 俺、やっぱりそのケーキを――!!」
「それじゃあリヴァル、あ〜ん♪」
スプーンで黒い部分を掬うなり、スピカは目の前のリヴァルに差し出す。
リヴァルは僅かに涙目になるが、ソラを守る為に震えながら口を開。
「止めろスピカァァァ!!!」
無拓な息子を死守せんと、エンが勢いよくスピカの手から暗黒物体の乗った皿とスプーンを取り上げた。
「エン?」
「ぱぁぱぁ…?」
「息子の未来の為にも…――ここで死んでたまるかぁ!!! うおおおおおおおおおおおおおおぉ!!!!!」
カッと目を見開くなり、暗黒物体を口の中へと掻き込むエン。
敵対する関係だが、ソラは不安の眼差しで料理を食べるエンを見守る。
「エ、エン…?」
「がつむぐはぶボリメギぬちゅガリぐちゅヌチャネチョゴリもごも――ごふあああぁ!!?」
『『『お父さーーーーーーーーーーーーーーんっ!!!??』』』
血反吐を吐き出すような悲鳴を出して力尽きたエンに、誰もが叫んでしまう。
そうこうしていると丁度ゼノの魔法も解け、その場にいる人達は一斉にエンへと駆け寄った。
「誰か回復魔法を!?」
「蘇生装置(AED)を持ってこい!!」
「有りっ丈のラストエリクサー用意しろぉ!!」
青白い顔で生死を彷徨うエンに、ソラとサイクス、更にはクウも指示を出し広間は一種のパニック状態となってしまう。
そんな中で、ロクサスは離れた所で一人静かに尊敬の涙を流していた。
「いい父親だよ、あんた…!!」
「チッ。折角妾の願いが叶う算段だったのに、邪魔してくれて……あの親子も対象にするべきか」
一方、こんな状況だと言うのにゼノはゼノで恐ろしい企みを企てていたとか。
彼らの視線の先は、赤と青のグローブを嵌め、上半身裸で無言で殴り合う二人の男。ゼアノートとアンセムだ。
お互いに殴り、殴られ、時たまクロスカウンターがヒットする。二人がボロボロに殴り合う中で、カンカンカンとゴングが鳴り響く。
「試合終了ー!!」
審判役であるルクソードが間に割り込み、殴り合う二人を止める。
アンセムは反対側の席に運ばれ、シグバールも駆け付け声を駆ける。そんな中、ゼアノートは天井に設置された眩しい程の照明を見上げていた。
「もえた…もえつきたよ…」
今にも掻き消えそうな声で呟き、目を細める。
「まっしろにな…」
「どうだ、このネタ。懐かしいだろってハナシ」
リング状の舞台から元の白いステージに戻るなり、監督風だったシグバールも元の衣装に戻って作者二人にニヤニヤと笑いかける。
説明が遅れたが、今やった演目はあ○たの○ョー。これに役者として出たのはシグバール、ゼアノート、アンセム、ルクソードの四人である。
「チョイスしたのはあんたか…オッサンらしいと言えばオッサンらしいけど」
「実写版映画じゃKHでの歌手も携わっているとはいえ…古いネタだから若者、あんまり分かってないですよ?」
演じたのは有名な台詞所とは言え、リラが苦笑する横でナナは首を傾げている一部の若者を指差す。
「だがその他は分かっているんだ。別に問題ないってハナシ。なあ、ゼアノー…ト?」
シグバールが主役を演じたゼアノートに振り返ると、急に凍りつく。
そこには、原作の如く真っ白に燃え尽きて座布団に座っているゼアノートの姿が合った。
「おい、何やってんだ…!? 立て、立つんだ○ョーーーー!!?」
「む? 少し殴り過ぎたか」
「殴り過ぎた所の問題じゃないよねこれ!?」
「これヤバくない!? 誰か救護はーん!!」
演目は終わったと言うのにこのままラストまで突入してしまいそうな雰囲気を醸し出すゼアノートに、作者達も大慌てしたそうな…。
「さて、ゼアノート組も落ち着いた所で――まずはKHV新PV及び新衣装発表おめでと〜!!」
ゼアノートの治療も終わり、ナナは用意していたクラッカーを鳴らす。
いよいよ新しい情報も出始めたKHV。今回少しでも宣伝したいと、新衣装を着たソラが前に出た。
「今まで長かったけど、ようやく発売が見えてきたよなー」
「と言っても作者、未だにリマスタークリアしてないけどね」
「それを言うなら、こっちの投稿なんて数カ月ぶりだろ。ネタはあるのに本編重視に春夏の忙しいイベントに参加。おまけに別サイトでの投稿で完全にここ疎かにして…」
「それは言うなぁぁぁ!!!」
折角ソラが良い事を言ったのに、カイリやリクが余計な事を言う物だからナナは思わず絶叫してしまう。
だが、全て事実なだけに反論なんて出来る筈がない。ゲームは全てプラウドで挑戦中もあるが…さまざまなゲームに手を出したり、再度一部のアニメ放送に嵌りで少々、と言うかかなり疎かになった部分がある。
「ええい、地の分まで! ゲームに関しては昔の攻略本はあるしネットも使えるんだ!! その気になればちゃちゃっとクリアしてやるぅぅ!!!」
(((ああもうこいつダメだ…)))
一度クリアしているとはいえ完全に攻略法便りに、全員は心の中で呆れかえってしまった。
ゲームをしている読者の皆、遊び方は人それぞれとは言え何でもかんでも攻略サイトに頼る様な事は止めようね。
「ほら、折角の祝い事なんですからそこまでにしましょう」
「ええ。今日はお祝いの席なんだからみんな楽しくね」
「先生、それにスピカさん」
宥めるように声をかけたウィドとスピカの登場に、ルキルが振り返る。同じように他の皆も目を向ける。
「…って、何を持っているんですかそれぇぇぇ!!?」
二人の姿と共にあり得ない物体を見てしまい、ガイアが絶叫する。
それもそうだ。笑顔を浮かべるスピカの手には――皿の上に巨大な口をした赤黒い物体が乗っているのだから。
「何ってケーキよ。お祝い事には必ず食べるでしょ?」
『『『それの何処がケーキっ!!?』』』
どこからどう見ても食べ物ではない物体に全員がツッコミを決める中、リクは青白い顔でケーキと言う名の怪物を見ていた。
「何だ…このデジャヴは…?」
「それより何で料理なんて…!!」
恐る恐るジェダイトが訊くと、スピカはニッコリと笑う。
「『祝い事するならあいつらに料理を作ってやったらどう?』ってゼノが言ったの。だからウィドと一緒に作ったのよ」
「お前が原因かゼノーーーーー!!!!!」
誕生日企画ではガイアのおかげで一度は潰えた筈の姉弟の恐ろしいタッグ再来に、クウはゼノに怒鳴りつける。しかし、彼女は涼しい顔で耳を塞いで軽く受け流した。
「ちなみに、リズから貰ったレシピを元にフルーツタルトを作ったの。人から教えて貰ったんだから、いつもより自信はあるわ」
「リズ…お前までレイシャと同類に…」
「なってないよ、ロクサス!! と言うか、私こんな悍ましい物体を作るレシピなんて渡してない筈だけど!?」
今にも泣きそうなロクサスに、さすがのリズも誤解を解こうと必死で弁解したとか。
「そう言う訳で、はいどーぞ。温かい内に食べてね♪」
「あの、ケーキもタルトも温かくないはずだけど…!!」
ソラにフルーツタルト(怪物)を差し出すスピカに、ナミネは冷や汗を流しながら尤もな常識を呟く。
一方、口から紫の煙を吐き出した怪物を眼下に曝されたソラは涙目でスピカに訊く。
「あ、あのぉ…味見は…?」
「もちろんちゃーんとしたわよ。私とウィドだけじゃなく、二人にもね」
『『『二人?』』』
思わぬ言葉に全員が訊き返し、厨房の近くにある入口に目を向ける。
そこには確かに、スピカの言う“二人”がいた。
「ああ、あれから腕を上げたな(ヌチョ、ゴリッ)」
「女性が作る物はどれも上手いよなー(ボリ、ネチャ)」
『『『普通に食ってるぅぅぅ!!?』』』
あり得ない音を出しながら液体とも固形とも言えぬ黒い物体を、師匠コンビであるセヴィルとクロトスラルが平然と食べていた。
「いや、よく見ろ! 目が、死んでる…!」
そんな中、ヴァニタスは二人の目に生気が宿っていない事に気付き声を上げる。すると、セヴィルとクロトスラルは尚も食べる口を動かしたまま話し出した。
「心頭滅却すれば火もまた涼し。キーブレードマスターたるもの、全てに対して無心になるくらい出来なくてはな」
「そう言うこった。最初は大変だったぜ、今ではもう慣れたけど」
「ああ…この人確かにマスターと呼べる人物だ」
「誤解してたけど、あの人相当な強さ持ってるんだな…」
涼しい顔(?)で殺人料理を食べ進める師匠キャラ二人に、思わずヴェンとカヤは尊敬の眼差しを向けてしまう。
この光景に、黙っていたウィドが得意げに鼻を鳴らし胸を張った。
「今回は味見だって完璧です。さあ、食べなさい」
「お前ら二人に味覚さえも無くしている奴らが食っても説得力皆無なんだが…?」
呆れ顔でウラノスが訊き返すが、この姉弟…いや、殺人料理人達に何を言っても無駄なのはとっくに経験済みである。
「あ。そう言えば、もう一人食べた人がいた筈だけど…どこに行ったのかしら?」
「もう、一人?」
何やらスピカの口から出た言葉に、オパールが反応する。
そして、嫌な予感が襲い掛かる。彼女だけじゃない…全員だ。
「ええ。甘いのが好きって言ってたからこのタルトを食べさせたの。確か黒髪で爽やかそうな青年で――…エラクゥスって言ってたかしら?」
「エラクゥスーーーーーーーーーーっ!!?」
「「「マスタァァァァァ!!?」」」
直後、血相を変えてゼアノートだけでなく弟子三人も厨房へと駆け込んでしまった。
「既に犠牲者がいただと…!?」
「KHVの幸先が…!?」
「おい、KHχでの確定された未来になったも同然じゃ…!?」
これにはムーン、グラッセ、クウが顔を青ざめている中、姉弟はソラに怪物を差し向けた。
「「さあ、め・し・あ・が・れ?」」
「おっ…俺用事思い出したー!?」
まじかに迫った命の危険に、ソラは即座に逃走を図る。
「グラビガン・ディプラヴィティ」
だが、ソラを中心に重力が襲い掛かりその場にいる殆どの人物が膝をついてしまった。
「ぐえぇ!?」
「ゼ、ゼノ…!? お前…!!」
「折角二人が貴様の為に作ったケーキ。食べるのが当然ではないか。貴様の信じる仲間や友の絆で身を滅ぼすがいいわぁ!!」
「本音駄々漏れなんですけどぉ!!?」
リクが睨む中、見下しながら吐き出したゼノの建前と本心に反射的にグラッセがツッコミを入れる。
「タ、タスケテ…!!」
動きを封じられ、涙目でソラは助けを求めるが。
「無理だ」
「ごめん」
「が、頑張って…」
「うわーーーーーーーーんっ!!!!!」
アクセル、ラック、レイアが目を逸らす様子に、ソラはとうとう泣いてしまった。
さすがに可哀想に思えたのか、同じく床に倒れて動けないクウは師匠達を見る。
「し、師匠…あんた、食べれるんなら代わりに」
「味を感じないだけで、好き好んで食えるかよ。正直顎が限界だ」
「俺もクロと一緒だ。お前達でどうにかしろ」
唯一食べられる二人にも見捨てられてしまった。
このままではKHVの前に主役がいなくなってしまう。そんな思考を抱いていると、大広間に黒い影が勢いよく入り込んだ。
「ワ、ワンダニャン…って、リヴァル!?」
そこには主人の危機を感じて入ってきたワンダニャンに背中に乗っているリヴァル。
リヴァルは器用にワンダニャンの背中から降りると、何故か驚くソラとスピカの間に割り込んだ。
「ちゃぁ! まぁ、まぁ!」
「リヴァル? そう言えば、料理の時に厨房の人に預けっぱなしだったわね――もしかして、お腹空いたの?」
「あ…あぅ!」
『『『っ!?』』』
若干声を上ずりながら頷くリヴァルに、広間内に戦慄が走った。
「あいつ、まさかソラの為に…!!」
「なんて健気な子なんだ…!! 未来じゃあんなにツンツンしてるのに!!」
「グラッセ、何があったの?」
赤ん坊なのに助けようとする心にルキルが目を見開く。それとは別にグラッセは成長した性格と違う事に驚くものだから、ラクシーヌが心配そうな目で見てしまう。
「ダメだ、リヴァル!! 俺、やっぱりそのケーキを――!!」
「それじゃあリヴァル、あ〜ん♪」
スプーンで黒い部分を掬うなり、スピカは目の前のリヴァルに差し出す。
リヴァルは僅かに涙目になるが、ソラを守る為に震えながら口を開。
「止めろスピカァァァ!!!」
無拓な息子を死守せんと、エンが勢いよくスピカの手から暗黒物体の乗った皿とスプーンを取り上げた。
「エン?」
「ぱぁぱぁ…?」
「息子の未来の為にも…――ここで死んでたまるかぁ!!! うおおおおおおおおおおおおおおぉ!!!!!」
カッと目を見開くなり、暗黒物体を口の中へと掻き込むエン。
敵対する関係だが、ソラは不安の眼差しで料理を食べるエンを見守る。
「エ、エン…?」
「がつむぐはぶボリメギぬちゅガリぐちゅヌチャネチョゴリもごも――ごふあああぁ!!?」
『『『お父さーーーーーーーーーーーーーーんっ!!!??』』』
血反吐を吐き出すような悲鳴を出して力尽きたエンに、誰もが叫んでしまう。
そうこうしていると丁度ゼノの魔法も解け、その場にいる人達は一斉にエンへと駆け寄った。
「誰か回復魔法を!?」
「蘇生装置(AED)を持ってこい!!」
「有りっ丈のラストエリクサー用意しろぉ!!」
青白い顔で生死を彷徨うエンに、ソラとサイクス、更にはクウも指示を出し広間は一種のパニック状態となってしまう。
そんな中で、ロクサスは離れた所で一人静かに尊敬の涙を流していた。
「いい父親だよ、あんた…!!」
「チッ。折角妾の願いが叶う算段だったのに、邪魔してくれて……あの親子も対象にするべきか」
一方、こんな状況だと言うのにゼノはゼノで恐ろしい企みを企てていたとか。
■作者メッセージ
はい。何だかんだでこちらの投稿もかなり遅くなりました。両立って難しい。
今回こうして出せたのは、読んで分かると思いますが新たに発表されたKHVの情報のおかげです。新しい情報をネタにする…筈が、なんやかんやで殺人料理の方になってしまった。まあ、まだ情報は少ないから…ね。
一応温めていた演劇イベントも出しましたが、オマケが予想以上に多くなってしまい、大部分がカットと言う有様に。このシリーズではこんな扱いですが、決してゼアノート軍団が嫌いな訳ではないですよ、隠しボスや強化ボスで苦戦させられるけど嫌いではないです本当に。
次の投稿は…まだしばらくはかかります。ネタはあります。でも本編進めるのとイベントごとで時間が上手く取れないだけです。完成次第、ちゃんと出す予定です。
今回こうして出せたのは、読んで分かると思いますが新たに発表されたKHVの情報のおかげです。新しい情報をネタにする…筈が、なんやかんやで殺人料理の方になってしまった。まあ、まだ情報は少ないから…ね。
一応温めていた演劇イベントも出しましたが、オマケが予想以上に多くなってしまい、大部分がカットと言う有様に。このシリーズではこんな扱いですが、決してゼアノート軍団が嫌いな訳ではないですよ、隠しボスや強化ボスで苦戦させられるけど嫌いではないです本当に。
次の投稿は…まだしばらくはかかります。ネタはあります。でも本編進めるのとイベントごとで時間が上手く取れないだけです。完成次第、ちゃんと出す予定です。