2-11 俺達の戦いはこれから、だと思ったら既に始まっていた。
放課後だ。クラスの皆が、鞄をもって帰り始める中。
「ユウジー帰ろ」
ユキが、声を掛けてきた。しかし……
「あっ、すまん。今日は一緒に帰れないや」
「え?」
「実は姉貴に待ってろって言われてるんだよな」
「ユウジ何かしたの?」
「……いや」
姉貴はあんなでも生徒会役員。それも副会長。姉モードと副会長モードをきちんと使い分け出来ている訳で。
以前廊下で生徒会関係の仕事の打ち合わせをしていたその時の姉貴は的確に指示し打ち合わせをスムーズに進行させていた。
普段俺の見る姉貴からは想像できないが、この学校内では姉貴は頼れるしっかり者の副生徒会長なのだ。
「……まぁ副会長のお達しなら仕方ないよね! うん、わかった! じゃあ、先に帰ることにするよ!』
「ああ、ほんとすまんな。また明日」
「じゃあねーユウジー」
「じゃあなーユキー」
……さてと。教室前で待っていればいいのか?
しばらく経った。二〇分前後は待っているだろう。既に生徒で溢れた廊下は静まりかえっている。
時々通る体操服姿の運動部員が用具を取りに走り通り過ぎるだけ。そうして壁にもたれながら姉貴を待つ。
「ごめんねー!」
息を切らしながら駆けてくる姉……走らなくても良かったのに。
「HRで、遅れちゃったんだ……ごめんね!」
「いや別に構わないぞ。で、用件はなんなんだ?」
姉に問う。まぁ、出来るだけ早く終わって欲しいのだけど
「えっと……ね」
急に姉貴は俯いた。
「ユウくんに……伝えたいことがあるの」
「!」
……なんだ、この姉貴の雰囲気。いつもの姉貴じゃない!? なんというか、別人だ。
なんなんだこのしんみりムード。まず浮かんだのはギャルゲの告白シーン。なんでだよ! おかしいだろ俺の脳内回路!
なんか凄い「神曲」とか、後に呼ばれそうなBGMが流れてる感じもしてきたぞ!? 廊下の窓からは夕焼けの朱が眩しい……ここまでシュチエーションがそれっぽいなんて!
告白……?
んなぁことなぁいはずだ。姉弟だぜ? そんな告白じゃないとすると……
私ユウくんの本当のお姉さんじゃないの。
まさかの義姉宣言!? そっちの告白の方がはっきり言って驚きだ!
いや、落ち着け俺。このしんみり空間に頭をやられてギャルゲ発想しかできなくなってるぞ。これじゃまるでユイみたいじゃあないか。
「あのね……」
何が来る……どきどきどき。心臓の鼓動が速くなってきた。やべぇなんかハズカシイ!
「私……」
さぁ来い! どんと来い!
「私の……私の入ってる生徒会に入って!」
…………へ? まさに拍子抜けだった。ああ、なんだ生徒会か。そうかそうか、うんうん――生徒会?
「皆の者かかれぇっー!」
『イエッサァー!』
すると突然近くで聞こえる怒声。それは姉の声ではない、少し男勝りな女子と男達の声。その次の瞬間だった。
「なんだ!? 一体なんなんだ!?」
知り合い以前に見たこともない生徒に囲まれた俺。
「ていやぁっ!」
「ぶっ!?」
ま、また首を狙って……チョップを――ああ……また拉致られた(桐の金縛りの時から3回目)その思考を最後に、俺の意識は落ちて行った――