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時空の狭間の物語(あとがき追記しました)

NANA

INDEX

  • あらすじ
  • 01 第一話
  • 02 第二話
  • 03 第三話
  • 04 第四話
  • 05 第五話
  • 06 第六話
  • 07 第七話
  • 08 第八話
  • 09 第九話
  • 第六話


    「お前…何で異世界を知ってる?」

    「そんなの話す気はない。あったとしても…――ここで終わりだ、鴉野郎ぉ!!! 轟け雷ぃ!! メガヴォルトォ!!!」

     チャクラムに雷の力を溜めこむと、ドスッと音を立てて地面に突き刺す。
     すると、ウラノスの前方に広範囲の雷が激しく放出されてクウを巻き込む。

    「舐めんなよ電撃野郎がぁ!!!」

     この強力な攻撃を前に逃げる事はせず、クウはキーブレードを地面に突き刺す。
     すると、激しい雷の中でクウを中心に白黒の魔方陣が構築される。
     すると、魔方陣内部の雷は威力を弱めると共にクウへと吸収され、攻撃が収まると全身に電気を纏っていた。

    「俺の力を吸収しただと!?」

    「これでもダメージはあるぜ…だが、その分融合させた属性に強くなる!! ヘルズナックル!!」

     バッと間合いを詰めると、闇だけでなく雷を纏った拳を放つ。
     二つの属性を宿した攻撃に、さすがのウラノスも距離を取って避ける。

    「吸収した属性まで付いてやがるのか…!?」

    「まだ終わりじゃねえぜぇ!! ウィングノクターン!!」

     クウは黒い翼を羽ばたかせ、雷を纏った大量の羽根をウラノスへと投げつける。

    「こんな羽根、黒焦げにしてやるよ!!」

     軽く腕を振い、ウラノスは雷を前方に放つ。
     そうして黒い羽根を焦がす…直前、放った雷が霧散し一部の羽根へと吸収されていく。

    「悪い、攻撃用ともう一つ…羽根に魔力を融合させる『アスピルフェザー』を混ぜてたの言ってなかったわ」

    「なぁ…ぐわああぁ!?」

     魔法を無効にされた事で、無数に飛んでくる羽根がウラノスの身体に突き刺さる。
     だが、威力は低いのかすぐに体制を立て直してクウを睨みつける。

    「卑怯だぞ…てめぇ!! ライジングレイ!!」

    「ブラッティ・ウェーブ!!」

     全身に雷を纏うと猛スピードで突進するウラノスに、クウは黒い衝撃波をぶつける。
     クウの放った衝撃波が諸に当たるが、ウラノスはスピードを緩める事無く衝撃波の中から飛び出した。

    「レヴィンスソード!!」

    「ぐあぅ!?」

     そのまま雷の力を纏ったチャクラムで、クウの右腕目掛けて一閃する。
     辛うじて直撃を避ける事で、右腕は切断される事はなかった。そんなクウに、ウラノスは思いっきり舌打ちした。

    「チィ、斬り損ねたか…!!」

    「てめ…!!」

    「俺はなぁ。大事な家族と生き別れてから今まで、この手を沢山の血で染めたんだ…――どう足掻いたって、甘い人生送ってきたあんたに俺は殺せねえよ!!!」

     そう叫ぶと、再び迫るウラノス。
     命を絶とうと両手で振るう武器を、クウも対抗するように一瞬で双剣に変えると火花を散らす様にぶつけあって抑え込んだ。

    「甘くなんて、ねえさ…!! 寧ろ…てめえと一緒だぁ!!」

     鍔迫り合いの形に持ち込むと、彼もまた本音をぶつける。
     すると、距離を離す様にウラノスを弾き飛ばし、自傷的な笑みを浮かべ出す。

    「俺はなぁ…子供の頃に自分を売った所為で、育った孤児院の奴らを殺された。生き残った恋人は姿を変えてまで俺を追ってくれたのに、最後まで気づかずにこの手で殺した。闇を暴走させてその弟を傷付けた。それだけじゃない…あの弟子の両親に手を下して意識不明にさせたし、俺の生徒や新しい恋人を言葉で傷付けたし…本当に数え上げたらキリねぇよ」

     彼の口から吐き出される思わぬ過去に、さすがのウラノスも動きを止める。
     それを見て、彼は右手に剣を握りしめたまま叩く様に胸に当てる。

    「そんな俺がこうして真っ直ぐでいれるのは…周りの奴らが受け入れてくれたから。信用して、信頼して、俺の心にこびり付いた闇を拭ってくれるんだ。何度も傷付けて、何度も選択を間違えて…その度に、あいつらは俺の闇を拭ってくれた」

     そう語りながら、彼は自身の記憶を引き出す。
     闇の道を歩む自分を光へと導いてくれた、復讐を叶えようと殺される覚悟だったのに逆に諭された、闇に染まった過去を知っても受け入れてくれた、昔の恋人と重ねるだけの曖昧な繋がりでも大切にしてくれた、守るべき存在を守れなくても許してくれた、騎士としての約束を忘れていたのに心から信じてくれた。
     今身体を借りているもう一人の自分とは違う自身の絆を感じると、真っ直ぐにウラノスに視線を合わせる。

    「胸張って綺麗な存在とは決して言えねえ。けど…俺は人として、どん底にまでは落ちてはいねえんだよ!!」

    「綺麗事抜かしてんじゃねぇ!!! 闇の存在なのに、そうやって現実から目を逸らす奴に…説教なんぞ受けて堪るかぁ!!!」

    「てめえこそ、理由付けて正当化してんじゃねーよ!!! 誰かを殺すのが仕方ないとか、ただの逃げじゃねーか!!!」

    「黙れぇ!! 連閃!!」

    「ソロアルカナム!!」

     連続でチャクラムを振り回すウラノスに、クウも負けじとキーブレードに変えて連続切りを繰り出す。

    「天鳴万雷!!!」

    「当たるかよぉ!! ブレイズローカス!!」

     その場に浮き上がってウラノスが大量の雷を落とすと、その間を潜り抜けて足を振り上げて炎の衝撃波を打ち上げる。
     だが、クウの放つ炎はウラノスの周りを回るチャクラムによって防がれる。それでもキーブレードで斬り込むが、すぐにウラノスはチャクラムで防御した。

    「説教じみた事言った割に決定打与えられてないぜ、鴉野郎? いい加減くたばったらどうだ?」

    「正直言えば、確かに辛いな…だがよ――」

     それと同時に、クウの右腕の刻印が突然輝きだした。


    「俺は一人で戦っている訳じゃない」


     自信のある声で宣言すると、武器を弾いて間合いを取る。
     すると、クウは輝く刻印に手を当てて一つの魔石を取り出した。

    「召喚石だと!?」

     光輝く魔石の正体にウラノスが目を見開く。
     召喚石。それは、世界に司る特別な神獣を使役して呼び出す幻のアイテムだ。ウラノスでさえ滅多にお目に掛かれないアイテムなのに、何故彼が持っているのか。
     驚いている間にも、クウは召喚石を砕いて破片を地面へと叩き込む。すると、巨大な魔方陣と共に巨大な壁の様なモノがクウの前へと現れた。

    「【アレキサンダー】か…やっかいな召喚獣呼び出したな!! だが、これでお前は敗北したも同然だ!!」

    「なに?」

    「召喚を行うには、大量の魔力を必要とする。例え防御に適した召喚獣でも――今のお前には全力の攻撃を防ぐ手立てはない!!」

     今のクウは、体力は残っていても魔力は殆ど無い状態。逆に勝機を見出したウラノスは、残っている全ての魔力をチャクラムへと注ぎ込み、呼び寄せた召喚獣に残虐な笑みを見せつける。
     チャクラムだけでなくウラノス自身も夥しく放電している。これを召喚獣を盾にして見ていたクウは背を向けて離れようとする。

    「無駄だぁ!! 召喚者と召喚獣は一定以上離れる事は出来ない!! 仮に戻した所で何も出来はしない!!!」

     上空高く飛び上がると、チャクラムをアレキサンダーの近くに落として一気に魔力を解放する。

    「雷撃よ、我が力と成りて全てを無に還せぇ!!! トール…ハンマァァァ!!!」

     アレキサンダーを巻き込むほどの巨大な雷の球体を作り上げると、何と上空へと浮かす。
     そうして上げていた腕を思いっきり振り下ろし、大きく地面へと叩きつけて大爆発を起こした。
     さすがのウラノスも今の攻撃に全力を使ったようで息切れを起こす。そうして爆発の起こった地点を見ると、アレキサンダーが崩れ落ちて光と共に消えていく。
     そうやって召喚獣が消えるとすぐに辺りを見回すが、クウの姿はどこにもなかった。

    「ハっ…ハハ、ハハハハ! 召喚獣諸共黒焦げになったかぁ!!」

     始末出来た事にウラノスは高らかに笑っていたが、やがて残念そうに上空を見上げた。

    「あの鴉野郎の力は奪えなかったが……リズは守れ――」



    「闇に喰われろ――!!」



     突然、背後からウラノスは巨大な闇の手に掴まれる。
     目を向けると、たった今始末した筈の人物が、闇の中から現れていた。

    「ダーク・オブ・イーター!!!」

    「ぐわあああぁ!!」

     瞬間、ウラノスを掴んだクウの鋭利な右手から奔流した闇のエネルギーが襲い掛かる。
     しかし、クウの攻撃は留まらず、元の手に戻るなり即座にキーブレードを取り出して上空へと吹き飛ばす。

    「うおらぁあああぁぁ!!!」

     翼で飛びながら、ウラノスに何度も力強い斬撃を繰り出す。
     やがて攻撃を終えると、クウは一旦上空で静止して落ちていくウラノスにキーブレードを投げつけた。

    「斬光天翔翼!!!」

     投げつけたキーブレードは一つの大きな刃となり、ウラノスを切り裂く。
     そのまま地面に落下すると、攻撃の余韻か多くの黒と白の羽根がヒラヒラと辺りを舞っている。
     攻撃を出し終えたクウもゆっくりと地面に着地する。そんなクウを、ウラノスは激痛の身体で立ち上がろうとした。

    「う、ぐおぁ…!!」

    「――終わりだ」

     尚も戦意を失わないウラノスに背を向けながら、クウは手を光らせてキーブレードを戻すと軽く振り下ろす。
     その直後、散っていた羽根が黒と白の光となって辺り一帯に爆発を起こす。
     爆発が収まると、クウはゆっくりと振り返って大の字に倒れているウラノスに近付いた。

    「てめぇ…!! なん、だって…!?」

     連続で喰らった大技にウラノスも立ち上がれ無いようで、仰向けになったままクウを睨むしか出来ない。
     そんなウラノスに、クウは力なくニッと口の端を上げて笑みを浮かべた。

    「言った筈だぜ…? 『一人で戦ってる訳じゃない』ってな」

     握っているキーブレードを肩に担ぎ、そのまま召喚獣が消え去った場所に目を向ける。

    「あの召喚獣は俺が呼び出したものじゃない…そもそも俺が呼び出した所で、あんな攻撃耐えきれねーよ」

    「道理でピンピンしてた、訳か…てめえが、呼んじゃものじゃないから…魔力は減ってないし、攻撃の届かない遠くの場所に離れる事も可能だ…」

    「ついでに言えば、もしお前が全力で攻撃してこなかったらこっちがヤバかった。今の俺の反撃、体力残ってたら防がれてただろうからな」

     そう言うと、クウは担いでいたキーブレードをウラノスに向かって持ち上げる。
     何も出来ない自分に止めを刺す様に、悔しそうに表情を歪ませる。

    (くそっ、ここまでなのか…!! リズ…テルス姉さん…ガイア…本当にすまない…!!)

     故郷が闇に呑まれ、離れ離れになった姉と妹を探した日々。再会する為に何だってしてきた。
     そうしてリズと出会った時、彼女は自分に優しくしてくれただけでなく理解までしてくれた。心から信頼出来る人を見つけ、姉とも再会できた。しかし、それももう終わりだ。

    (折角“この世界”で一緒になれたのにな…また、次の世界で一緒に――)

     覚悟を決めると、風を斬る音が耳に入り―――肉を貫く音ではなく、甲高い音が響いた。

    14/02/20 12:21 NANA   

    ■作者メッセージ
    ウラノスvsクウの戦闘シーンも終わった所で、お昼の投稿の分は一旦終了です。
    この後もまだまだ続きがありますが、夜の投稿までにはキチンと完結させます。
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