プロローグ『旅立ち前の物語』 2
ダアト港にてレイノス達と別れたアルセリアとミステリアスは、ダアトへ向けて歩いていた。
道中特に会話はないまま、第四石碑の丘までたどり着いたのだが…
「あ、あの!ミステリアスさん!」
「ん?」
後ろを歩いていたアルセリアに呼び止められ、ミステリアスは振り向く。
「どうした、せっちゃん」
「その、シュレーの丘でのこと、ちゃんと謝れていなかったので…本当に、ごめんなさい」
「シュレーの丘…?ああ、あの時の事か」
アルセリアは、シュレーの丘でアテネとアレンという姉弟と対峙した時、ミステリアスを置いてその場を逃げ出してしまった。
お互いが唯一の肉親である二人と戦うことに迷いを抱いてしまったからだった。
「私は…自分が情けないです。あの二人が、奪う側だって分かってても、刃を向けることに怖気づいてしまって。シノンさんだって、操られたハノンさんを止める為に戦う覚悟を持っていたのに」
「別に悔やむ必要はないさ。人を殺す覚悟なんて持たない方がいい」
「でも、そのせいでミステリアスさんは…!」
ポン
言葉を続けようとしたアルセリアの頭上に、ミステリアスの手が置かれた。
そして頭上に置かれたミステリアスの手は、アルセリアの頭を撫でる。
「あ……」
「あんまり思いつめるなよ」
ミステリアスはアルセリアを励ましながらセリアの頭を撫でる。
アルセリアは頭を撫でられて、心地よさそうな表情となる。
(なんだろ、懐かしい感じ…)
どこかで、こんな風に誰かに撫でられたような気がする。
遠い昔、まだお父さんやお母さんが生きていた頃に。
それが誰だったかは、思い出せないけれど…
ズキッ
「痛っ…」
「お、おい。大丈夫か」
突如頭痛に襲われるアルセリア。
そんな彼女の様子にミステリアスは心配げに声をかける。
「大丈夫です。その、昔のことを思い出そうとすると、たまにこんな風に頭痛に襲われるんです」
「昔の事?」
「はい。私、幼いころの記憶が一部抜けてて…特に、父が殺された時の記憶がはっきりとしないんです」
あの時のことを思い出そうとすると、まるで思い出すのを拒むかのように頭が痛むのだ。
そして、父が殺される以前の記憶にも、どことなく空白や穴があるように感じるのだ。
「…そんな記憶、思い出さない方がいいだろ」
「そう、ですよね」
「まあ、暗い話は終わりだ!さっさとダアトに帰るとしようぜ!」
そして二人は、ダアトへとたどり着いた。
「じゃあ、私はこれで」
「おお、じゃあな」
入り口でアルセリアと別れたミステリアスは、教会へ向けて歩き出す。
そしてその道中、ある人物と出会う事となった。
「お〜、ミステじゃん!おかえり」
「…アニス・タトリン」
目の前に現れた女性を、ミステリアスはジト目で睨む。
「ど、どしたの?そんな目で見つめられたら、アニスちゃん困っちゃうなあ」
「…ロストロに俺がレイノス達の旅に同行するように勧めたの、アンタだろ?」
「ぎ、ギクっ!な、なんのことかなあ。アニスちゃん分かんないよ」
「誤魔化すな。あの子が…セリアが旅のメンバーにいることを知ってて、俺を行かせたんだろ?」
アルセリアと出会ったあの時から、ミステリアスはレイノスの旅への同行がアニスによって仕組まれたものだと察していた。
おそらく、レイノス達の安否を気遣うロストロに、アニスが自分を旅に同行させることを提案したのだろう。
「ありゃあ、ばれちゃってたかあ。…そうだよ、私がロストロにアンタの旅の同行を勧めたの」
「…たく。余計なことしてくれる」
アニスは、ペロッと舌を出して白状した。
そんなアニスに、ミステリアスは悪態をついた。
「な、なによ〜。そんなに怒んなくてもいいでしょ?これでも一応、ミステの為にやったんだよ?あの子が危険な旅に足を突っ込むの、放ってなんかおけないでしょ?」
「…俺は、あの子のそばにいるべきじゃないんだよ」
ミステリアスはそういうと、再び教会に向けて歩き出し、去っていった。
「ミステ…」
そんなミステリアスの後ろ姿を、アニスは悲しそうな表情で見つめていた。
「よ、ロストロ。帰ったぜ」
「あ、ミステ!おかえり」
ダアト教会内にある導師ロストロの私室へやってきたミステリアスは、読書中だったロストロに声をかけた。
ミステリアスの姿を見たロストロは、読書をやめて嬉しそうな様子で駆け寄る。
「良かった、無事に戻ってきて。ミステなら大丈夫だろうとは思ってたけど、少しは心配してたんだよ?」
「はは、俺がそう簡単にやられるかよ」
しばらくそうして二人は談笑していたが、やがてミステリアスは真顔になると、言った。
「ロストロ。報告しておかなきゃいけないことがある」
「? なんですかいったい?」
「ああ…フォルクス・ソレイユと、その背後にいる奴らのことだ」
道中特に会話はないまま、第四石碑の丘までたどり着いたのだが…
「あ、あの!ミステリアスさん!」
「ん?」
後ろを歩いていたアルセリアに呼び止められ、ミステリアスは振り向く。
「どうした、せっちゃん」
「その、シュレーの丘でのこと、ちゃんと謝れていなかったので…本当に、ごめんなさい」
「シュレーの丘…?ああ、あの時の事か」
アルセリアは、シュレーの丘でアテネとアレンという姉弟と対峙した時、ミステリアスを置いてその場を逃げ出してしまった。
お互いが唯一の肉親である二人と戦うことに迷いを抱いてしまったからだった。
「私は…自分が情けないです。あの二人が、奪う側だって分かってても、刃を向けることに怖気づいてしまって。シノンさんだって、操られたハノンさんを止める為に戦う覚悟を持っていたのに」
「別に悔やむ必要はないさ。人を殺す覚悟なんて持たない方がいい」
「でも、そのせいでミステリアスさんは…!」
ポン
言葉を続けようとしたアルセリアの頭上に、ミステリアスの手が置かれた。
そして頭上に置かれたミステリアスの手は、アルセリアの頭を撫でる。
「あ……」
「あんまり思いつめるなよ」
ミステリアスはアルセリアを励ましながらセリアの頭を撫でる。
アルセリアは頭を撫でられて、心地よさそうな表情となる。
(なんだろ、懐かしい感じ…)
どこかで、こんな風に誰かに撫でられたような気がする。
遠い昔、まだお父さんやお母さんが生きていた頃に。
それが誰だったかは、思い出せないけれど…
ズキッ
「痛っ…」
「お、おい。大丈夫か」
突如頭痛に襲われるアルセリア。
そんな彼女の様子にミステリアスは心配げに声をかける。
「大丈夫です。その、昔のことを思い出そうとすると、たまにこんな風に頭痛に襲われるんです」
「昔の事?」
「はい。私、幼いころの記憶が一部抜けてて…特に、父が殺された時の記憶がはっきりとしないんです」
あの時のことを思い出そうとすると、まるで思い出すのを拒むかのように頭が痛むのだ。
そして、父が殺される以前の記憶にも、どことなく空白や穴があるように感じるのだ。
「…そんな記憶、思い出さない方がいいだろ」
「そう、ですよね」
「まあ、暗い話は終わりだ!さっさとダアトに帰るとしようぜ!」
そして二人は、ダアトへとたどり着いた。
「じゃあ、私はこれで」
「おお、じゃあな」
入り口でアルセリアと別れたミステリアスは、教会へ向けて歩き出す。
そしてその道中、ある人物と出会う事となった。
「お〜、ミステじゃん!おかえり」
「…アニス・タトリン」
目の前に現れた女性を、ミステリアスはジト目で睨む。
「ど、どしたの?そんな目で見つめられたら、アニスちゃん困っちゃうなあ」
「…ロストロに俺がレイノス達の旅に同行するように勧めたの、アンタだろ?」
「ぎ、ギクっ!な、なんのことかなあ。アニスちゃん分かんないよ」
「誤魔化すな。あの子が…セリアが旅のメンバーにいることを知ってて、俺を行かせたんだろ?」
アルセリアと出会ったあの時から、ミステリアスはレイノスの旅への同行がアニスによって仕組まれたものだと察していた。
おそらく、レイノス達の安否を気遣うロストロに、アニスが自分を旅に同行させることを提案したのだろう。
「ありゃあ、ばれちゃってたかあ。…そうだよ、私がロストロにアンタの旅の同行を勧めたの」
「…たく。余計なことしてくれる」
アニスは、ペロッと舌を出して白状した。
そんなアニスに、ミステリアスは悪態をついた。
「な、なによ〜。そんなに怒んなくてもいいでしょ?これでも一応、ミステの為にやったんだよ?あの子が危険な旅に足を突っ込むの、放ってなんかおけないでしょ?」
「…俺は、あの子のそばにいるべきじゃないんだよ」
ミステリアスはそういうと、再び教会に向けて歩き出し、去っていった。
「ミステ…」
そんなミステリアスの後ろ姿を、アニスは悲しそうな表情で見つめていた。
「よ、ロストロ。帰ったぜ」
「あ、ミステ!おかえり」
ダアト教会内にある導師ロストロの私室へやってきたミステリアスは、読書中だったロストロに声をかけた。
ミステリアスの姿を見たロストロは、読書をやめて嬉しそうな様子で駆け寄る。
「良かった、無事に戻ってきて。ミステなら大丈夫だろうとは思ってたけど、少しは心配してたんだよ?」
「はは、俺がそう簡単にやられるかよ」
しばらくそうして二人は談笑していたが、やがてミステリアスは真顔になると、言った。
「ロストロ。報告しておかなきゃいけないことがある」
「? なんですかいったい?」
「ああ…フォルクス・ソレイユと、その背後にいる奴らのことだ」