プロローグ『旅立ち前の物語』 6
「いやあ、お待たせしてすみませんでした」
レイノス達がグランコクマへやってきて10日ほどが経ったころだろうか。
ジェイド・カーティス元帥が戻ってきた。
「ジェイドさん、そっちから呼び出しといていないなんてひどいぜ」
ジェイドの私室へとやってきたレイノスは、ジェイドに対して不平を漏らす。
彼の隣には、付き添いでルークがいる。
「それでジェイド、俺の息子になんのようがあるってんだ?変なことさせようってんじゃねえだろうな」
ルークは、やや警戒した様子でジェイドに用件をたずねる。
「ハハ、そんなに睨まなくてもいいじゃないですかルーク。なに、ちょっと身体を調べさせてもらうだけですよ」
「か、身体を…!?」
「お、おいジェイド!」
ジェイドの言葉に、レイノスは後ずさり、ルークが慌てた様子で詰め寄る。
「…そんなに怯えないでください。一応真面目な用事ですからね」
そういってジェイドは真顔になる。
「…ルーク、あなたはレイノスやスクルドから聞いてないですか?レイノスの使った力の事を」
「レイノスの力?何のことだよ?」
ジェイドの問いに、ルークは頭に疑問符を浮かべる。
「私はリンから聞かされたのですが…レイノス、あなたはルークやティアに話していないのですか?」
「んなこと言われても…あの時、ゼウスとの戦いの時のことは正直よく覚えてなかったし、話そうにも…スクルドはセネリオの話ばっかだしな」
ジェイドが言っているのは、ゼウス戦で放ったという超振動の事だろうとレイノスは察したが、レイノス自身はあの時の戦いの事をよく覚えておらず、リンやセネリオからの又聞きだったためにルーク達にはその時のことを詳しく話していなかった。
「…少し街の外に出ましょう」
レイノスとルークは、ジェイドに連れられて街の外の開けた場所へとやってきた。
いったい街を出てどうするのだと思いつつも二人はジェイドについていく。
しばらく歩くと、数匹の魔物が現れた。
ルークとレイノスは剣を構えるが、
「待ってくださいルーク。あなたは手出し無用です」
「なにっ!?どういうことだよ!」
「レイノス、オーバーリミッツを発動させてください」
「じぇ、ジェイドさん?」
「あなたがシュレーの丘で放ったという例の技…発動させてみてください」
「なっ!?」
ジェイドの言葉に、レイノスは驚きの言葉をあげる。
「で、でもジェイドさん、俺、あの時は無意識だったし、あれ以来発動したことも…」
「習うより慣れろです!ほら、魔物が来ますよ!」
数匹の魔物は、レイノス目がけて襲い掛かってきた。
「くそ!うおおおおおおお!」
レイノスが雄叫びをあげると、彼の身体は蒼白い闘気に包まれた。
旅を終えてからの特訓の成果で、今では自在にオーバーリミッツを発動できるようになっていた。
レイノスの闘気の解放により魔物達は吹き飛ばされるが、すぐに起き上がるとレイノス目がけて走っていく。
(思い出せ…思い出せ)
魔物がレイノス目がけて体当たりを仕掛けてくる。
レイノスは防御に徹しながら、あの時の感覚を思い出そうとする。
(リンを守ろうと願った…そのための力が欲しいと願った)
魔物の苛烈な攻撃が続くが、意識を集中しているレイノスは痛みなど感じることのない様子で感覚を探る。
(解放しろ…想いを、力を!)
「う、お…うおお…!」
「レイノス!?」
「どうやら来たようですね…!」
そばで見ていたルークとジェイドも、レイノスの様子が変わったことに気づいた。
彼の中に、強い力を感じる。
(…って待てよ、なんだこの感覚!?これは…この感覚は俺と同じ!まさか!)
ルークは、レイノスから感じる力の波動に既視感を感じていた。
そうだ、この力は…
「うおおおおおおおおおおおおお!」
雄叫びと共に、レイノスは剣を地面に突きさす。
―秘奥義発動―
「絞牙鳴衝斬!」
レイノスの周囲に光の粒子が現れ、周りにいた魔物達は一匹残らず全滅した。
「はあ…はあ」
秘奥義を発動させたレイノスは、息を切らしながらもルークとジェイドの所へと向かった。
「ジェイドさん…で、出来ましたよ」
「ええ、上出来ですよレイノス」
見事技を発動させてみせたレイノスを、ジェイドが素直に称讃する。
一方でジェイドの隣にいる父親、ルークは目を丸くしてレイノスを見つめる。
「お、おい!待ってくれよ!どういうことだよ!なんでレイノスが超振動を!?」
「レイノス、あなたはガイの屋敷に帰って休んでてください。明日また私のもとに来るように」
「あ、はい」
レイノスとしても、今の戦闘で疲労していたのでこれ以上付き合わされるのは勘弁だった。
ルークがジェイドを問い詰めている中、レイノスは素直に屋敷へと戻った。
「レイノス」
その夜。
寝ようとしていたところに、ルークが声をかけてきた。
「なんだよ、親父」
「その、昼間のあの力についてだが…ジェイドやリンから事情は聞いた」
「…そっか。つっても、俺も正直あの力がなんなのかよく分かんないんだけどな。意識がはっきりした状態で使ったのも今日が初めてだし」
「お前がなんであの力が使えるのかは、明日ジェイドが調べてくれるらしい。だけど、俺からも一言、言っておきたい事がある」
「なんだよ」
「…あの力は危険だ。使い方を間違えれば、街一つだって滅ぼしかねないほどにな」
ルークの言葉に、レイノスは驚きで目を見開く。
確かにすごい力だとは感じていたが、それほどに強力な力だというのか。
「お、親父…」
「悪いな、怯えさせて。だけど、お前には知っておいてほしいんだ。俺みたいな過ちを…してほしくはないからな」
「過ちって…もしかしてアクゼリュスの」
そういえば、親父はかつてアクゼリュスという鉱山の街を滅ぼしてしまったという話を聞いたことがある。
確か超振動という力で。
昼間自分が使ったあの力で、親父は、ルークは街を一つ滅ぼした…
「俺は本当は英雄なんて大層なもんじゃないんだ…自分の勝手な判断で、大勢の人を殺しちまった大罪人なんだ」
「そ、そんなこというなよ!」
「…レイノス、お前は間違えるなよ。その力を使うなとは言わない。だけど、使いどころは間違えるな。お前のその力は、大切なものを守るために使え」
ルークはそういうと、自分のベッドに入った。
「力の…使いどころ、か」
次の日、レイノスとルークは再びジェイドのもとへ訪れた。
そしてレイノスは、ジェイドに連れられて実験室のような場所へ連れてこられて、身体に機器のようなものを取り付けられる。
ジェイド曰く、音素振動数を綿密に調べたいらしい。
そうして丸一日かけて調査は終了し、終わったころにはすっかり日が暮れていた。
「調査の結果がでました。レイノスの音素振動数を調べたところ、彼の固有振動数は、第七音素とほぼ同等でした」
「第七音素とって、俺と同じって事かよ!?」
「いえ、ルークと違って完全同位体というわけではありません。わずかな誤差があります。その誤差を、レイノスは周囲の第七音素を吸収することで埋めていたようですね」
「その誤差を埋めることで、俺と同じ振動数に近づけたってことか?」
「そういうことですね」
ルークとジェイドが話しているのを、レイノスはぽけーっとした表情で見ていた。
説明されても、なにがなんだか分からない。
「どういうことなんだよ…」
ジェイドの調査が終わり、目的を終えたレイノス一家は、翌日ガイやリンに見送られて船に乗ってバチカルへ帰っていった。
「おいレイノス、帰ったら俺とティアでお前に第七音素や超振動のことを教えてやるからな」
「勉強はちょっと遠慮したいんだけど…」
「お前自身や仲間の身を守るためにも、自分の力の事は知っておいた方がいいだろ。真面目に聞けよ!」
「うぐっ!そんなこといわれたら断れねえじゃねえか…分かったよ!」
レイノス達がグランコクマへやってきて10日ほどが経ったころだろうか。
ジェイド・カーティス元帥が戻ってきた。
「ジェイドさん、そっちから呼び出しといていないなんてひどいぜ」
ジェイドの私室へとやってきたレイノスは、ジェイドに対して不平を漏らす。
彼の隣には、付き添いでルークがいる。
「それでジェイド、俺の息子になんのようがあるってんだ?変なことさせようってんじゃねえだろうな」
ルークは、やや警戒した様子でジェイドに用件をたずねる。
「ハハ、そんなに睨まなくてもいいじゃないですかルーク。なに、ちょっと身体を調べさせてもらうだけですよ」
「か、身体を…!?」
「お、おいジェイド!」
ジェイドの言葉に、レイノスは後ずさり、ルークが慌てた様子で詰め寄る。
「…そんなに怯えないでください。一応真面目な用事ですからね」
そういってジェイドは真顔になる。
「…ルーク、あなたはレイノスやスクルドから聞いてないですか?レイノスの使った力の事を」
「レイノスの力?何のことだよ?」
ジェイドの問いに、ルークは頭に疑問符を浮かべる。
「私はリンから聞かされたのですが…レイノス、あなたはルークやティアに話していないのですか?」
「んなこと言われても…あの時、ゼウスとの戦いの時のことは正直よく覚えてなかったし、話そうにも…スクルドはセネリオの話ばっかだしな」
ジェイドが言っているのは、ゼウス戦で放ったという超振動の事だろうとレイノスは察したが、レイノス自身はあの時の戦いの事をよく覚えておらず、リンやセネリオからの又聞きだったためにルーク達にはその時のことを詳しく話していなかった。
「…少し街の外に出ましょう」
レイノスとルークは、ジェイドに連れられて街の外の開けた場所へとやってきた。
いったい街を出てどうするのだと思いつつも二人はジェイドについていく。
しばらく歩くと、数匹の魔物が現れた。
ルークとレイノスは剣を構えるが、
「待ってくださいルーク。あなたは手出し無用です」
「なにっ!?どういうことだよ!」
「レイノス、オーバーリミッツを発動させてください」
「じぇ、ジェイドさん?」
「あなたがシュレーの丘で放ったという例の技…発動させてみてください」
「なっ!?」
ジェイドの言葉に、レイノスは驚きの言葉をあげる。
「で、でもジェイドさん、俺、あの時は無意識だったし、あれ以来発動したことも…」
「習うより慣れろです!ほら、魔物が来ますよ!」
数匹の魔物は、レイノス目がけて襲い掛かってきた。
「くそ!うおおおおおおお!」
レイノスが雄叫びをあげると、彼の身体は蒼白い闘気に包まれた。
旅を終えてからの特訓の成果で、今では自在にオーバーリミッツを発動できるようになっていた。
レイノスの闘気の解放により魔物達は吹き飛ばされるが、すぐに起き上がるとレイノス目がけて走っていく。
(思い出せ…思い出せ)
魔物がレイノス目がけて体当たりを仕掛けてくる。
レイノスは防御に徹しながら、あの時の感覚を思い出そうとする。
(リンを守ろうと願った…そのための力が欲しいと願った)
魔物の苛烈な攻撃が続くが、意識を集中しているレイノスは痛みなど感じることのない様子で感覚を探る。
(解放しろ…想いを、力を!)
「う、お…うおお…!」
「レイノス!?」
「どうやら来たようですね…!」
そばで見ていたルークとジェイドも、レイノスの様子が変わったことに気づいた。
彼の中に、強い力を感じる。
(…って待てよ、なんだこの感覚!?これは…この感覚は俺と同じ!まさか!)
ルークは、レイノスから感じる力の波動に既視感を感じていた。
そうだ、この力は…
「うおおおおおおおおおおおおお!」
雄叫びと共に、レイノスは剣を地面に突きさす。
―秘奥義発動―
「絞牙鳴衝斬!」
レイノスの周囲に光の粒子が現れ、周りにいた魔物達は一匹残らず全滅した。
「はあ…はあ」
秘奥義を発動させたレイノスは、息を切らしながらもルークとジェイドの所へと向かった。
「ジェイドさん…で、出来ましたよ」
「ええ、上出来ですよレイノス」
見事技を発動させてみせたレイノスを、ジェイドが素直に称讃する。
一方でジェイドの隣にいる父親、ルークは目を丸くしてレイノスを見つめる。
「お、おい!待ってくれよ!どういうことだよ!なんでレイノスが超振動を!?」
「レイノス、あなたはガイの屋敷に帰って休んでてください。明日また私のもとに来るように」
「あ、はい」
レイノスとしても、今の戦闘で疲労していたのでこれ以上付き合わされるのは勘弁だった。
ルークがジェイドを問い詰めている中、レイノスは素直に屋敷へと戻った。
「レイノス」
その夜。
寝ようとしていたところに、ルークが声をかけてきた。
「なんだよ、親父」
「その、昼間のあの力についてだが…ジェイドやリンから事情は聞いた」
「…そっか。つっても、俺も正直あの力がなんなのかよく分かんないんだけどな。意識がはっきりした状態で使ったのも今日が初めてだし」
「お前がなんであの力が使えるのかは、明日ジェイドが調べてくれるらしい。だけど、俺からも一言、言っておきたい事がある」
「なんだよ」
「…あの力は危険だ。使い方を間違えれば、街一つだって滅ぼしかねないほどにな」
ルークの言葉に、レイノスは驚きで目を見開く。
確かにすごい力だとは感じていたが、それほどに強力な力だというのか。
「お、親父…」
「悪いな、怯えさせて。だけど、お前には知っておいてほしいんだ。俺みたいな過ちを…してほしくはないからな」
「過ちって…もしかしてアクゼリュスの」
そういえば、親父はかつてアクゼリュスという鉱山の街を滅ぼしてしまったという話を聞いたことがある。
確か超振動という力で。
昼間自分が使ったあの力で、親父は、ルークは街を一つ滅ぼした…
「俺は本当は英雄なんて大層なもんじゃないんだ…自分の勝手な判断で、大勢の人を殺しちまった大罪人なんだ」
「そ、そんなこというなよ!」
「…レイノス、お前は間違えるなよ。その力を使うなとは言わない。だけど、使いどころは間違えるな。お前のその力は、大切なものを守るために使え」
ルークはそういうと、自分のベッドに入った。
「力の…使いどころ、か」
次の日、レイノスとルークは再びジェイドのもとへ訪れた。
そしてレイノスは、ジェイドに連れられて実験室のような場所へ連れてこられて、身体に機器のようなものを取り付けられる。
ジェイド曰く、音素振動数を綿密に調べたいらしい。
そうして丸一日かけて調査は終了し、終わったころにはすっかり日が暮れていた。
「調査の結果がでました。レイノスの音素振動数を調べたところ、彼の固有振動数は、第七音素とほぼ同等でした」
「第七音素とって、俺と同じって事かよ!?」
「いえ、ルークと違って完全同位体というわけではありません。わずかな誤差があります。その誤差を、レイノスは周囲の第七音素を吸収することで埋めていたようですね」
「その誤差を埋めることで、俺と同じ振動数に近づけたってことか?」
「そういうことですね」
ルークとジェイドが話しているのを、レイノスはぽけーっとした表情で見ていた。
説明されても、なにがなんだか分からない。
「どういうことなんだよ…」
ジェイドの調査が終わり、目的を終えたレイノス一家は、翌日ガイやリンに見送られて船に乗ってバチカルへ帰っていった。
「おいレイノス、帰ったら俺とティアでお前に第七音素や超振動のことを教えてやるからな」
「勉強はちょっと遠慮したいんだけど…」
「お前自身や仲間の身を守るためにも、自分の力の事は知っておいた方がいいだろ。真面目に聞けよ!」
「うぐっ!そんなこといわれたら断れねえじゃねえか…分かったよ!」
■作者メッセージ
レイノスの超振動の設定について軽く触れた
この設定は一応レイノスのキャラ作成をした花霞さんの提案によるものです
あんま上手く説明できた気はしないけど、まあこんな感じで
この設定は一応レイノスのキャラ作成をした花霞さんの提案によるものです
あんま上手く説明できた気はしないけど、まあこんな感じで