第2章『集いし仲間』 2
「わあ、ここがシェリダンですか」
シェリダン港へは船に乗って数時間ほどで着いた。
そこから、3人は道中の魔物を蹴散らしながら職人の街シェリダンへとやってきた。
初めてシェリダンにやってきたスクルドは、興味深げに辺りを見回す。
「とりあえずまずは、集会所へ向かうぞ」
セネリオに促され、集会所を目指す。
以前も訪れたことがあるので、場所は既に分かっている。
「こんにちはー」
相変わらずやや重い集会所の扉を開けたレイノスは、挨拶する。
すると、奥でなにやら作業をしていた男女が振り向き、こちらにやってきた。
「おお、あんた達は」
「久しぶりね、レイノス」
レイノス達を出迎えたのは、ギンジとノエルの兄妹だった。
彼らは、かつてルーク達の旅にも協力したシェリダンの若き職人だ。
特にノエルは、当時はまだ歳が二十を超えるか否かという若輩ながらルーク達六英雄の足としてアルビオールを操縦し続けた、いわばルーク達一行の7人目のパーティといってもいい存在なのだ。
一方ギンジも、ルーク達と共に戦ったアッシュと呼ばれる――ルークやナタリアにとっては生涯忘れることのできない存在であることだろう――をアルビオールで乗せていたが、こちらはさほど知られていない。
そんな二人は、レイノス達を笑顔で出迎え、歓迎してくれた。
「クノンはいないんですか?」
「ああ、あいつなら…」
レイノスは辺りを見回し、クノンがいないことに疑問を持ち、たずねる。
それに対しギンジが答えようとしたその時、
「ヒャッホォォォォォ!!」
「「「!!!???」」」
頭上から聞こえてきた叫び声にレイノス達三人は上を見上げる。
その声の主は、地面から落ちてきたかと思うと、バッチリ着地して見せ、へらへらした表情を見せる。
「ヤッホー、お坊ちゃん久しぶりダねえ」
「クノン、お前どっから出て来てんだよ!」
「いやあ、坊ちゃんたちを驚かせようと思ってネ♪ニャヒハッ♪」
声の主は案の定…レイノス達の旅の仲間であったクノンだった。
その見た目は、十代前半の、旅の仲間でいう所のシノン・エルメス(12歳)と同年代にしか見えないのだが、驚くべきことに彼は27歳なのだ。
しかし見た目に反してその体術はかなりのものであり、スクルド奪還の旅においても大きく役立ってくれた。
「御令嬢も久しぶりー。いやあ、相変わらず可愛いネ」
「クノンさん、お久しぶりです。お元気そうでなによりです」
「漆黒…は久しぶりでもナイカ」
「2週間ほど前に会ったばかりだからな」
スクルドとセネリオにも挨拶する。
その喋り方はやはりどこか口調がおかしい。
いつものことなので誰も気にしないが。
「それで、今日来たのはやはりアルビオールの件ですよね?」
「そっちのセネリオさんに依頼されてから、あんた達がいつ来てもいいように整備しておいたからな。明日の朝には出発できるよ」
ノエルとギンジが、レイノス達がここにやってきた意図を察し、アルビオールは明日にでも出発できると伝えた。
やはり、セネリオが事前に話をつけていたのがよかったようだ。
「って、ギンジさん今セネリオって…!?」
と、ここでレイノスが、ギンジがセネリオの名前を出したことに驚く。
セネリオは指名手配されているため正体を明かすわけにはいかず、前にシェリダンに来た時も名乗っていなかったのだが。
「彼らにはアルビオールの貸し出しを依頼した際に正体を明かした。さすがに名前も名乗らない奴に貸し出しを承諾してくれるとは思わなかったし、クノンに二人なら正体を明かしても問題ないと諭されたのでな」
セネリオが、ノエルとギンジには正体を既に明かしていることを伝える。
二人とも、セネリオの正体を既に知っていたのだ。
「まあ、クノンの知り合いなら信用できるし、それに訳ありの人を乗せるのは慣れてるからね」
そういったギンジは、ふとかつて22年前に乗せた人たちのことを思い出していた。
アッシュは死んでしまったけど、漆黒の翼の人達は今もどこかで元気にやっているのだろうか。
「それで、アルビオールは誰が操縦するんですか?ノエルさん?それともギンジさんですか?」
スクルドが、アルビオールは誰が操縦するのか尋ねた。
レイノスもスクルドも、ノエルかギンジが操縦してくれるものだと思っていたのだが…
「ごめんなさい、今は仕事が色々と立て込んでて、シェリダンを離れるわけにはいかないの」
「俺も長期間シェリダンを離れるわけにはいかないからな。君たちと一緒にはいけない」
しかし、ノエルもギンジも操縦士になるのは多忙の為難しいようだ。
まあ、二人ともこのシェリダンを引っ張っていく中心人物であるため、仕方がないのかもしれない。
しかし、それならいったい誰がアルビオールを操縦するのだろう。
「大丈夫ダヨ坊ちゃん達。アルビオールはボクが操縦するカら」
「なんだそっか。アルビオールはお前が操縦するのかクノ…」
「……って、ええええええええええ!?」
「おま、お前が、操縦!?」
「…坊ちゃん。今の反応はさすがニボクでも傷つくヨ」
あまりにも露骨に驚いた様子を見せるレイノスに、クノンはジト目でレイノスを睨む。
しかしまあ、レイノスが驚くのは無理もないかもしれない。
普段のクノンを見ていると、アルビオールという精密で大層な代物を操作できるとは、到底想像がつかないというものだ。
見た目が子供なあたりも、不安を掻き立てる要因となっているのだろう。
「本当なんですか、セネリオさん」
「…ああ、俺も最初聞かされた時は半信半疑だったが…というより今でも疑わしいと思ってはいるが…事実らしい」
「アウー、漆黒もヒドイよ〜」
みんなの反応に抗議の声を挙げるクノン。
なんだかんだで結構傷ついてるっぽいようだ。
「マッタク信用ないなあ。明日、ボクの操縦テクに驚くがいいサ!」
そういうとクノンは、集会所を出て行った。
「…まあ、普段の言動とあの外見からは想像できないかもしれないけど、クノンの操縦センスはかなりのものだから、安心していいわよ」
ノエルにそういわれても、漠然とした不安を三人は拭う事はできなかった。
スキット「操縦士・クノンについて」
レイノス「まさかクノンがアルビオールの操縦士とはなあ」
スクルド「大丈夫…だよね?」
セネリオ「大丈夫でなければ困る。ノエルもああ言っていたことだし、本当に問題はないのだろう」
レイノス「でもクノンだぜ?」
スクルド「あんな小さい身体で操縦なんて出来るんでしょうか?」
セネリオ「……そう、だな」
レイノス「お前もちょっと不安そうじゃねえかよ…」
シェリダン港へは船に乗って数時間ほどで着いた。
そこから、3人は道中の魔物を蹴散らしながら職人の街シェリダンへとやってきた。
初めてシェリダンにやってきたスクルドは、興味深げに辺りを見回す。
「とりあえずまずは、集会所へ向かうぞ」
セネリオに促され、集会所を目指す。
以前も訪れたことがあるので、場所は既に分かっている。
「こんにちはー」
相変わらずやや重い集会所の扉を開けたレイノスは、挨拶する。
すると、奥でなにやら作業をしていた男女が振り向き、こちらにやってきた。
「おお、あんた達は」
「久しぶりね、レイノス」
レイノス達を出迎えたのは、ギンジとノエルの兄妹だった。
彼らは、かつてルーク達の旅にも協力したシェリダンの若き職人だ。
特にノエルは、当時はまだ歳が二十を超えるか否かという若輩ながらルーク達六英雄の足としてアルビオールを操縦し続けた、いわばルーク達一行の7人目のパーティといってもいい存在なのだ。
一方ギンジも、ルーク達と共に戦ったアッシュと呼ばれる――ルークやナタリアにとっては生涯忘れることのできない存在であることだろう――をアルビオールで乗せていたが、こちらはさほど知られていない。
そんな二人は、レイノス達を笑顔で出迎え、歓迎してくれた。
「クノンはいないんですか?」
「ああ、あいつなら…」
レイノスは辺りを見回し、クノンがいないことに疑問を持ち、たずねる。
それに対しギンジが答えようとしたその時、
「ヒャッホォォォォォ!!」
「「「!!!???」」」
頭上から聞こえてきた叫び声にレイノス達三人は上を見上げる。
その声の主は、地面から落ちてきたかと思うと、バッチリ着地して見せ、へらへらした表情を見せる。
「ヤッホー、お坊ちゃん久しぶりダねえ」
「クノン、お前どっから出て来てんだよ!」
「いやあ、坊ちゃんたちを驚かせようと思ってネ♪ニャヒハッ♪」
声の主は案の定…レイノス達の旅の仲間であったクノンだった。
その見た目は、十代前半の、旅の仲間でいう所のシノン・エルメス(12歳)と同年代にしか見えないのだが、驚くべきことに彼は27歳なのだ。
しかし見た目に反してその体術はかなりのものであり、スクルド奪還の旅においても大きく役立ってくれた。
「御令嬢も久しぶりー。いやあ、相変わらず可愛いネ」
「クノンさん、お久しぶりです。お元気そうでなによりです」
「漆黒…は久しぶりでもナイカ」
「2週間ほど前に会ったばかりだからな」
スクルドとセネリオにも挨拶する。
その喋り方はやはりどこか口調がおかしい。
いつものことなので誰も気にしないが。
「それで、今日来たのはやはりアルビオールの件ですよね?」
「そっちのセネリオさんに依頼されてから、あんた達がいつ来てもいいように整備しておいたからな。明日の朝には出発できるよ」
ノエルとギンジが、レイノス達がここにやってきた意図を察し、アルビオールは明日にでも出発できると伝えた。
やはり、セネリオが事前に話をつけていたのがよかったようだ。
「って、ギンジさん今セネリオって…!?」
と、ここでレイノスが、ギンジがセネリオの名前を出したことに驚く。
セネリオは指名手配されているため正体を明かすわけにはいかず、前にシェリダンに来た時も名乗っていなかったのだが。
「彼らにはアルビオールの貸し出しを依頼した際に正体を明かした。さすがに名前も名乗らない奴に貸し出しを承諾してくれるとは思わなかったし、クノンに二人なら正体を明かしても問題ないと諭されたのでな」
セネリオが、ノエルとギンジには正体を既に明かしていることを伝える。
二人とも、セネリオの正体を既に知っていたのだ。
「まあ、クノンの知り合いなら信用できるし、それに訳ありの人を乗せるのは慣れてるからね」
そういったギンジは、ふとかつて22年前に乗せた人たちのことを思い出していた。
アッシュは死んでしまったけど、漆黒の翼の人達は今もどこかで元気にやっているのだろうか。
「それで、アルビオールは誰が操縦するんですか?ノエルさん?それともギンジさんですか?」
スクルドが、アルビオールは誰が操縦するのか尋ねた。
レイノスもスクルドも、ノエルかギンジが操縦してくれるものだと思っていたのだが…
「ごめんなさい、今は仕事が色々と立て込んでて、シェリダンを離れるわけにはいかないの」
「俺も長期間シェリダンを離れるわけにはいかないからな。君たちと一緒にはいけない」
しかし、ノエルもギンジも操縦士になるのは多忙の為難しいようだ。
まあ、二人ともこのシェリダンを引っ張っていく中心人物であるため、仕方がないのかもしれない。
しかし、それならいったい誰がアルビオールを操縦するのだろう。
「大丈夫ダヨ坊ちゃん達。アルビオールはボクが操縦するカら」
「なんだそっか。アルビオールはお前が操縦するのかクノ…」
「……って、ええええええええええ!?」
「おま、お前が、操縦!?」
「…坊ちゃん。今の反応はさすがニボクでも傷つくヨ」
あまりにも露骨に驚いた様子を見せるレイノスに、クノンはジト目でレイノスを睨む。
しかしまあ、レイノスが驚くのは無理もないかもしれない。
普段のクノンを見ていると、アルビオールという精密で大層な代物を操作できるとは、到底想像がつかないというものだ。
見た目が子供なあたりも、不安を掻き立てる要因となっているのだろう。
「本当なんですか、セネリオさん」
「…ああ、俺も最初聞かされた時は半信半疑だったが…というより今でも疑わしいと思ってはいるが…事実らしい」
「アウー、漆黒もヒドイよ〜」
みんなの反応に抗議の声を挙げるクノン。
なんだかんだで結構傷ついてるっぽいようだ。
「マッタク信用ないなあ。明日、ボクの操縦テクに驚くがいいサ!」
そういうとクノンは、集会所を出て行った。
「…まあ、普段の言動とあの外見からは想像できないかもしれないけど、クノンの操縦センスはかなりのものだから、安心していいわよ」
ノエルにそういわれても、漠然とした不安を三人は拭う事はできなかった。
スキット「操縦士・クノンについて」
レイノス「まさかクノンがアルビオールの操縦士とはなあ」
スクルド「大丈夫…だよね?」
セネリオ「大丈夫でなければ困る。ノエルもああ言っていたことだし、本当に問題はないのだろう」
レイノス「でもクノンだぜ?」
スクルド「あんな小さい身体で操縦なんて出来るんでしょうか?」
セネリオ「……そう、だな」
レイノス「お前もちょっと不安そうじゃねえかよ…」
■作者メッセージ
シェリダン到着、クノンとの再会です!