第2章『集いし仲間』 11
「よ、お疲れさん」
ロストロとの面会を終えて部屋を出ると、ミステリアス・ソルジャーに声をかけられる。
彼は、誰かが聞き耳を立てたりしないようにということで、部屋のドアの前で見張りをしていたのだ。
「この5ヶ月、お前にも世話になったなミステリアス」
「なに、たいしたことじゃねえよ」
ミステリアスは、旅を終えた5ヶ月の間セネリオと連絡を何度か取り合っていた。
彼は、ロストロの補佐をしつつ、密かに神託の盾の調査を行っていたのだ。
「ロストロには引き続きお前たちについて、手助けをしてやってくれと頼まれてる。同行させてもらうぜ」
こうして、ミステリアスが仲間となった。
これで後は、アルセリアと合流できれば、全員そろうわけだが…
「いなかった?」
「ああ、出かけてるみたいなんで、街に戻って探してたんだ」
セネリオたちは、街の中でアルセリアを迎えに行ったレイノスたちと再会した。
しかし、彼らはアルセリアと一緒ではなかった。
レイノスがいうには、街のはずれの家には誰もおらず、街にいるのだろうということでこうして探していたのだという。
「…もしかしたら、あそこに行ってるのかもな」
そう言ったのは、ミステリアスだ。
彼には、アルセリアがいる場所に心当たりがあるらしい。
そこは、いわゆる孤児院だった。
古びた家のそばの庭にて、5,6人ほどの子供たちと遊んでいるアルセリアの姿が、そこにあった。
「あ、ミステリアスさん!それに皆さんも!」
レイノスたちに気づくと、嬉しそうな笑みを浮かべてきた。
「セリアお姉ちゃん、鬼ごっこ〜」
「早くやろうぜ!」
「あ…その、ごめんね。お客さんが来てるから…また後でね」
「え〜」
孤児院の子供たちは早くアルセリアと遊びたいようだった。
しかし、アルセリアが遊べないと知ると、みんな不満そうな顔になる。
「セリアの代わりに、私が一緒に遊んであげる!」
「みゅみゅ!」
そう立候補してきたのは、シノンとハノンだった。
アルセリアのためというよりは、自分が遊びたいだけのようにも見えるが。
「おう、いいぜ!」
「それってちーぐるっていうんだよね?ご本で見たことある!触らせて〜」
シノンたちはすぐに子供たちと仲良くなったようで、彼らはそのまま遊びに行ってしまった。
「改めて、お久しぶりです皆さん」
「お譲ちゃんも元気そうだネ〜」
子供たちが退散すると、アルセリアは一同に声をかけた。
クノンがそれにいつもの調子で応じる。
「大体の事情はミステリアさんから聞いています。クラノスが、強大な力を掌中に収めようとしていると…」
「それを止める為に、力を貸してほしい」
どうやらアルセリアは、すでにセネリオとともに調査をしていたミステリアスから、意識集合体の話についても聞いていたらしい。
それならば話は早いと、セネリオが協力を求めてきた。
「私の…力を……」
アルセリアの表情が、わずかに曇る。
しかしそれも一瞬のことで、すぐに明るい表情に戻ると、
「分かりました、私も協力しま…」
「ちょっと待てよ!」
アルセリアが旅への同行を了承しようとしたその時。
レイノスが声を張り上げた。
「れ、レイノス?」
突然の幼馴染の行動に。リンは怪訝な表情を見せる。
レイノスはというと、戸惑いの表情を見せるアルセリアの前に立ち、言った。
「なあセリア…本当に旅に出ちまっていいのかよ?あの子供たちだって寂しがるんじゃないか?」
「大丈夫ですよ、私がいなくてもあの子達は元気にやってくれますから」
「でもよ…元々旅について来たのだってスクルドを取り戻すのに協力したいからってことだっただろ?スクルドは帰ってきたんだし、もう旅についてくる理由は…」
「それはレイノスさん達だって同じじゃないですか!」
「うっ…確かに」
ことごとく言葉を返され、言葉に詰まるレイノス。
そんな彼の態度に、アルセリアの方もちょっとむっとした表情になる。
「…レイノスさんは私が旅についてくるのは嫌なんですか?私じゃ力になれないんですか!?」
「違う!そうじゃないんだ!」
抗議の声をあげるアルセリアに、レイノスは弁明する。
「なあセリア…これからの旅、もしかしたらまた人と戦ったり、あるいは殺すことだってあるかもしれないんだ。そんなときに、お前は戦えるのかよ?」
「…覚悟は、決めています」
「…でも、セントビナーでスクルドを救出した日の夜、うなされてたんだろ?」
「リンさんから聞いたんですか…それで私のこと心配してくれたんですね、ありがとうございます」
「セリア…」
「…確かに、先ほどセネリオさんに同行を申し込まれたとき、あの姉弟の死に顔がちらついたのは否定しません。私が人の死…それも家族が失われることに強い忌避感を感じていることも否定しません」
セリアの会話は続く。
彼女の強い思いが、レイノスに、仲間たちに伝えられる。
「でも!皆さんと一緒に行きたいという想いも、嘘なんかじゃありません!皆さんは私にとって大切な友達…それは、家族に勝るとも劣らないかけがえのないものなんです!」
「そんな皆さんに協力を求められて応じなかったら、きっと私は後悔します!私は自分の行動に、想いに嘘はつきたくないし後悔もしたくありません!だからお願いします!私を連れてってください!」
そういうと、アルセリアは深々と頭を下げた。
「…悪い、セリア。お前がそこまで強い決意で同行しようとしてくれてたなんて思い至らなくて」
「レイノスさん…」
「改めて、よろしくな!」
「はい!」
こうして、紆余曲折がありつつ、最後の仲間アルセリア・ステファニーが加わった。
8人(と1匹)の仲間達が集い、レイノスたちの旅は本格的に幕を開けようとしていた。
スキット「子供たちとの遊び」
シノン「たっだいま〜」
アルセリア「あ、おかえりなさいシノンさん。子供たちの遊び相手をしてくれてありがとうございます」
シノン「今までは遊び相手がチーグルで、人と一緒に遊ぶ機会なんてなかったから、新鮮で楽しかったよ」
アルセリア「ふふ、またあの子達と遊んであげてくださいね」
シノン「うん!」
ロストロとの面会を終えて部屋を出ると、ミステリアス・ソルジャーに声をかけられる。
彼は、誰かが聞き耳を立てたりしないようにということで、部屋のドアの前で見張りをしていたのだ。
「この5ヶ月、お前にも世話になったなミステリアス」
「なに、たいしたことじゃねえよ」
ミステリアスは、旅を終えた5ヶ月の間セネリオと連絡を何度か取り合っていた。
彼は、ロストロの補佐をしつつ、密かに神託の盾の調査を行っていたのだ。
「ロストロには引き続きお前たちについて、手助けをしてやってくれと頼まれてる。同行させてもらうぜ」
こうして、ミステリアスが仲間となった。
これで後は、アルセリアと合流できれば、全員そろうわけだが…
「いなかった?」
「ああ、出かけてるみたいなんで、街に戻って探してたんだ」
セネリオたちは、街の中でアルセリアを迎えに行ったレイノスたちと再会した。
しかし、彼らはアルセリアと一緒ではなかった。
レイノスがいうには、街のはずれの家には誰もおらず、街にいるのだろうということでこうして探していたのだという。
「…もしかしたら、あそこに行ってるのかもな」
そう言ったのは、ミステリアスだ。
彼には、アルセリアがいる場所に心当たりがあるらしい。
そこは、いわゆる孤児院だった。
古びた家のそばの庭にて、5,6人ほどの子供たちと遊んでいるアルセリアの姿が、そこにあった。
「あ、ミステリアスさん!それに皆さんも!」
レイノスたちに気づくと、嬉しそうな笑みを浮かべてきた。
「セリアお姉ちゃん、鬼ごっこ〜」
「早くやろうぜ!」
「あ…その、ごめんね。お客さんが来てるから…また後でね」
「え〜」
孤児院の子供たちは早くアルセリアと遊びたいようだった。
しかし、アルセリアが遊べないと知ると、みんな不満そうな顔になる。
「セリアの代わりに、私が一緒に遊んであげる!」
「みゅみゅ!」
そう立候補してきたのは、シノンとハノンだった。
アルセリアのためというよりは、自分が遊びたいだけのようにも見えるが。
「おう、いいぜ!」
「それってちーぐるっていうんだよね?ご本で見たことある!触らせて〜」
シノンたちはすぐに子供たちと仲良くなったようで、彼らはそのまま遊びに行ってしまった。
「改めて、お久しぶりです皆さん」
「お譲ちゃんも元気そうだネ〜」
子供たちが退散すると、アルセリアは一同に声をかけた。
クノンがそれにいつもの調子で応じる。
「大体の事情はミステリアさんから聞いています。クラノスが、強大な力を掌中に収めようとしていると…」
「それを止める為に、力を貸してほしい」
どうやらアルセリアは、すでにセネリオとともに調査をしていたミステリアスから、意識集合体の話についても聞いていたらしい。
それならば話は早いと、セネリオが協力を求めてきた。
「私の…力を……」
アルセリアの表情が、わずかに曇る。
しかしそれも一瞬のことで、すぐに明るい表情に戻ると、
「分かりました、私も協力しま…」
「ちょっと待てよ!」
アルセリアが旅への同行を了承しようとしたその時。
レイノスが声を張り上げた。
「れ、レイノス?」
突然の幼馴染の行動に。リンは怪訝な表情を見せる。
レイノスはというと、戸惑いの表情を見せるアルセリアの前に立ち、言った。
「なあセリア…本当に旅に出ちまっていいのかよ?あの子供たちだって寂しがるんじゃないか?」
「大丈夫ですよ、私がいなくてもあの子達は元気にやってくれますから」
「でもよ…元々旅について来たのだってスクルドを取り戻すのに協力したいからってことだっただろ?スクルドは帰ってきたんだし、もう旅についてくる理由は…」
「それはレイノスさん達だって同じじゃないですか!」
「うっ…確かに」
ことごとく言葉を返され、言葉に詰まるレイノス。
そんな彼の態度に、アルセリアの方もちょっとむっとした表情になる。
「…レイノスさんは私が旅についてくるのは嫌なんですか?私じゃ力になれないんですか!?」
「違う!そうじゃないんだ!」
抗議の声をあげるアルセリアに、レイノスは弁明する。
「なあセリア…これからの旅、もしかしたらまた人と戦ったり、あるいは殺すことだってあるかもしれないんだ。そんなときに、お前は戦えるのかよ?」
「…覚悟は、決めています」
「…でも、セントビナーでスクルドを救出した日の夜、うなされてたんだろ?」
「リンさんから聞いたんですか…それで私のこと心配してくれたんですね、ありがとうございます」
「セリア…」
「…確かに、先ほどセネリオさんに同行を申し込まれたとき、あの姉弟の死に顔がちらついたのは否定しません。私が人の死…それも家族が失われることに強い忌避感を感じていることも否定しません」
セリアの会話は続く。
彼女の強い思いが、レイノスに、仲間たちに伝えられる。
「でも!皆さんと一緒に行きたいという想いも、嘘なんかじゃありません!皆さんは私にとって大切な友達…それは、家族に勝るとも劣らないかけがえのないものなんです!」
「そんな皆さんに協力を求められて応じなかったら、きっと私は後悔します!私は自分の行動に、想いに嘘はつきたくないし後悔もしたくありません!だからお願いします!私を連れてってください!」
そういうと、アルセリアは深々と頭を下げた。
「…悪い、セリア。お前がそこまで強い決意で同行しようとしてくれてたなんて思い至らなくて」
「レイノスさん…」
「改めて、よろしくな!」
「はい!」
こうして、紆余曲折がありつつ、最後の仲間アルセリア・ステファニーが加わった。
8人(と1匹)の仲間達が集い、レイノスたちの旅は本格的に幕を開けようとしていた。
スキット「子供たちとの遊び」
シノン「たっだいま〜」
アルセリア「あ、おかえりなさいシノンさん。子供たちの遊び相手をしてくれてありがとうございます」
シノン「今までは遊び相手がチーグルで、人と一緒に遊ぶ機会なんてなかったから、新鮮で楽しかったよ」
アルセリア「ふふ、またあの子達と遊んであげてくださいね」
シノン「うん!」
■作者メッセージ
というわけで、仲間が全員そろいました
セリアについてはしばらく同行せずにダアトにとどまる展開も考えていたのですが、結局普通に仲間にすることにしました
セリアについてはしばらく同行せずにダアトにとどまる展開も考えていたのですが、結局普通に仲間にすることにしました