第4章『魔獣使いとパートナー、その絆』 9
レイノス達は、街の外に出る。
シンシアの相棒であるドラゴン、フィーニアを呼び出す為だ。
ただし、クラノスとミステリアスは街の中に残った。
一応クラノスは仕事で来ているため付き添いのシンシアはともかく自分まで離れるわけにはいかないということだ。
そしてミステリアスは、ハノンの付き添い兼シンシアの代理として街に残ることになったわけだ。
「出てきて、フィーニア…」
砂漠の中、シンシアは目を閉じて呟く。
すると、彼女の足元に赤い譜陣が現れ、頭上には光の玉のようなものが見える。
その光の玉は姿を変えていき、やがて光が収まるとそこには一体のドラゴンが姿を現した。
「力を貸してね、フィーニア」
「オオオオオオオウ!」
シンシアが頭を撫でると、フィーニアは甘えるように雄叫びをあげる。
その様子からは、両者の深い信頼関係が見て取れた。
「さあ、行きましょう。乗って」
シンシアはフィーニアにいち早く乗り込むと、他の一同にも乗るように促す。
「あれ…目が?」
こちらに振り向いたシンシアを見て、リンが不思議そうに言葉を漏らした。
シンシアの瞳は、ついさっきまでクノンと同じく赤色だった。
なのに今は、瞳の色は青色だった。
「目?…ああ、これはね、普段はフィーニアは体内に取り込んでるから、その間は瞳の色が青から赤に変わるのよ。だからこっちが本来の色」
「…まさか、コンタミネーション現象、ですか?」
「ご名答。よく分かったわね」
シンシアの返答に、リンは驚愕する。
物質同士が融合する現象、コンタミネーション現象。
師であるジェイドも普段はこれを利用して体内に武器である槍を取り込んでいる。
しかしまさか、ドラゴンを体内に取り込むなんて芸当が出来るとは…
(さすがは六神将ってことか…)
以前戦った、自分をはるかに上回る譜術の力を有した少年、ルージェニアもかなりの規格外だったが、彼女もまた凄まじい力を持っているようだ。
こんな相手と敵対しているのだということを考えると、目眩がしてきそうだ。
「お〜いリン、早く乗り込めよ」
既にフィーニアに乗り込んだレイノスがこちらに手を振って呼ぶ。
他の面々も既に乗り込んでいるようだ。
リンは急いでフィーニアの背に乗り込んだ。
そうして6人を乗せたドラゴンは、飛翔した。
「行った、か」
宿屋の部屋にて、ミステリアスは空を舞うドラゴンの姿を確認した。
どうやら、レイノス達は出発したようだ。
「ミステリアス・ソルジャー」
名前を呼ばれて、ミステリアスは呟く。
そこにいるのは、神託の盾主席総長クラノス・グラディウスだ。
クラノスは、不敵な笑みを浮かべている。
そして、衝撃的な言葉を発した。
「いや、こう呼んだ方がいいかな…バロック・クロック」
クラノスの言葉に、仮面の下のミステリアスの表情が凍った。
そしてしばらく両者の間で沈黙が流れたが、やがてミステリアスの方から口を開いた。
「…どこまで知っている?」
「大方の事情は把握しているつもりだよ」
チッと舌打ちするミステリアス。
おそらくアニスがしゃべったわけではないだろう。
独自の情報網でこちらの正体を探ったのだ。
クラノス・グラディウス、恐ろしい男だ。
「君は犯罪者を心から憎んでいる。あれから10年経った今でも、その思いは胸の内で燻っているはずだ」
「…………」
「私はこの世から犯罪の芽を殲滅するべく動いている。…バロック・クロック、私達に協力してくれないか?」
「俺、は……!」
キノコロードについてすぐ、レイノス達はあるものを発見した。
それはクノンのアルビオール。
やはりクノンとシノンは、ここに来ているのだ。
「もうすぐ日が暮れるわ。夜になれば魔物も行動が活発になるし、急ぎましょう」
シンシアが言う。
セネリオもそうだったが、即席のチームのリーダーをこなしている辺りは、さすがは騎士団長といったところか。
レイノス達は、森の中へと入った。
「魔神炎!」
魔神剣の炎属性版――炎の衝撃破が数体のラフレシアンを襲う。
ラフレシアンが攻撃で怯むのを確認すると、シンシアは一気に接近し敵との間合いを詰める。
「魔王炎撃破!」
続けて放たれた一撃に、ラフレシアンたちは力尽きた。
「すごい…」
シンシアの戦いぶりに、スクルドは感嘆の声を漏らす。
死神のごとく鎌を操るその様は、しかし死神のような恐ろしさなど感じさせず、むしろ美しくすらあった。
(この人が…シンシアさん)
前にアルセリアが、セネリオと深い関係だという噂があると言われていた人。
セネリオ本人はただの同期であると否定したが、しかしこうして本人を目の当たりにすると不安になってくる。
(それにシンシアさん、多分セネリオさんの事を…)
そして彼女を観察していてはっきり分かったことがある。
自分も彼の事を好きだからこそ分かる。
シンシアは、セネリオに好意を抱いている。
(あんな人が…ライバルなんだ)
強くて、綺麗で、優しくて。
セネリオとも、なんだかお似合いに見える。
強力なライバルの出現に、スクルドは胸中に不安を募らせるのだった。
(シノン・エルメス…『エルメス』か)
一方シンシアは、捜索対象の一人、シノンについて考えていた。
彼女にはシノンの姓について心当たりがあった。
いや、心当たりなんて生優しいレベルではない。
何故なら、その姓は…
(…エルメスという姓を持ち、魔獣使い。やはり彼女は…)
スキット「ガールズトーク」
スクルド「ヒール!」
セネリオ「助かった、スクルド」
スクルド「いえ、また怪我したらすぐに言ってください!」
シンシア「…ねえ」
リン「はい?」
シンシア「あの人、女装してるけどセネリオよね?」
リン「え!?そ、その…」
シンシア「あなたたちがセネリオと行動を共にしていることはとっくに知っているのよ?隠しても無駄」
リン「うう…」
シンシア「それより…あのスクルドって子、セネリオの事を…」
リン「え、ええ、そうですよ。いつも猛アタックしてますよ」
シンシア「そう…」
アルセリア「妬いてるんですか?」
シンシア「そ、そういうわけじゃ…」
リン「隠したって、お見通しです」
シンシア「…そういうあなたは、あのレイノスって子が好きみたいね?」
リン「な、なななな何言って…」
アルセリア「いいなあ、二人とも青春してて…」
シンシア「あなただって、そのうちいい相手がきっと現れるわよ」
アルセリア「そうかなあ…まあ、私の事はいいです。それよりも、二人ともそんな奥手じゃ他の人に取られちゃいますよ。特にシンシアさんは現状で既にライバルがいますし…」
シンシア「…あの子、可愛いわよね。スタイルもいいし、性格もどこか保護欲がわくっていうか…男の人ってやっぱりああいう子が好みなんでしょうね」
リン「まあ、それは人それぞれなんじゃない?」
レイノス「なんか女三人で盛り上がってるな」
セネリオ「シンシアは一応敵だというのに…緊張感のない奴らだ」
シンシアの相棒であるドラゴン、フィーニアを呼び出す為だ。
ただし、クラノスとミステリアスは街の中に残った。
一応クラノスは仕事で来ているため付き添いのシンシアはともかく自分まで離れるわけにはいかないということだ。
そしてミステリアスは、ハノンの付き添い兼シンシアの代理として街に残ることになったわけだ。
「出てきて、フィーニア…」
砂漠の中、シンシアは目を閉じて呟く。
すると、彼女の足元に赤い譜陣が現れ、頭上には光の玉のようなものが見える。
その光の玉は姿を変えていき、やがて光が収まるとそこには一体のドラゴンが姿を現した。
「力を貸してね、フィーニア」
「オオオオオオオウ!」
シンシアが頭を撫でると、フィーニアは甘えるように雄叫びをあげる。
その様子からは、両者の深い信頼関係が見て取れた。
「さあ、行きましょう。乗って」
シンシアはフィーニアにいち早く乗り込むと、他の一同にも乗るように促す。
「あれ…目が?」
こちらに振り向いたシンシアを見て、リンが不思議そうに言葉を漏らした。
シンシアの瞳は、ついさっきまでクノンと同じく赤色だった。
なのに今は、瞳の色は青色だった。
「目?…ああ、これはね、普段はフィーニアは体内に取り込んでるから、その間は瞳の色が青から赤に変わるのよ。だからこっちが本来の色」
「…まさか、コンタミネーション現象、ですか?」
「ご名答。よく分かったわね」
シンシアの返答に、リンは驚愕する。
物質同士が融合する現象、コンタミネーション現象。
師であるジェイドも普段はこれを利用して体内に武器である槍を取り込んでいる。
しかしまさか、ドラゴンを体内に取り込むなんて芸当が出来るとは…
(さすがは六神将ってことか…)
以前戦った、自分をはるかに上回る譜術の力を有した少年、ルージェニアもかなりの規格外だったが、彼女もまた凄まじい力を持っているようだ。
こんな相手と敵対しているのだということを考えると、目眩がしてきそうだ。
「お〜いリン、早く乗り込めよ」
既にフィーニアに乗り込んだレイノスがこちらに手を振って呼ぶ。
他の面々も既に乗り込んでいるようだ。
リンは急いでフィーニアの背に乗り込んだ。
そうして6人を乗せたドラゴンは、飛翔した。
「行った、か」
宿屋の部屋にて、ミステリアスは空を舞うドラゴンの姿を確認した。
どうやら、レイノス達は出発したようだ。
「ミステリアス・ソルジャー」
名前を呼ばれて、ミステリアスは呟く。
そこにいるのは、神託の盾主席総長クラノス・グラディウスだ。
クラノスは、不敵な笑みを浮かべている。
そして、衝撃的な言葉を発した。
「いや、こう呼んだ方がいいかな…バロック・クロック」
クラノスの言葉に、仮面の下のミステリアスの表情が凍った。
そしてしばらく両者の間で沈黙が流れたが、やがてミステリアスの方から口を開いた。
「…どこまで知っている?」
「大方の事情は把握しているつもりだよ」
チッと舌打ちするミステリアス。
おそらくアニスがしゃべったわけではないだろう。
独自の情報網でこちらの正体を探ったのだ。
クラノス・グラディウス、恐ろしい男だ。
「君は犯罪者を心から憎んでいる。あれから10年経った今でも、その思いは胸の内で燻っているはずだ」
「…………」
「私はこの世から犯罪の芽を殲滅するべく動いている。…バロック・クロック、私達に協力してくれないか?」
「俺、は……!」
キノコロードについてすぐ、レイノス達はあるものを発見した。
それはクノンのアルビオール。
やはりクノンとシノンは、ここに来ているのだ。
「もうすぐ日が暮れるわ。夜になれば魔物も行動が活発になるし、急ぎましょう」
シンシアが言う。
セネリオもそうだったが、即席のチームのリーダーをこなしている辺りは、さすがは騎士団長といったところか。
レイノス達は、森の中へと入った。
「魔神炎!」
魔神剣の炎属性版――炎の衝撃破が数体のラフレシアンを襲う。
ラフレシアンが攻撃で怯むのを確認すると、シンシアは一気に接近し敵との間合いを詰める。
「魔王炎撃破!」
続けて放たれた一撃に、ラフレシアンたちは力尽きた。
「すごい…」
シンシアの戦いぶりに、スクルドは感嘆の声を漏らす。
死神のごとく鎌を操るその様は、しかし死神のような恐ろしさなど感じさせず、むしろ美しくすらあった。
(この人が…シンシアさん)
前にアルセリアが、セネリオと深い関係だという噂があると言われていた人。
セネリオ本人はただの同期であると否定したが、しかしこうして本人を目の当たりにすると不安になってくる。
(それにシンシアさん、多分セネリオさんの事を…)
そして彼女を観察していてはっきり分かったことがある。
自分も彼の事を好きだからこそ分かる。
シンシアは、セネリオに好意を抱いている。
(あんな人が…ライバルなんだ)
強くて、綺麗で、優しくて。
セネリオとも、なんだかお似合いに見える。
強力なライバルの出現に、スクルドは胸中に不安を募らせるのだった。
(シノン・エルメス…『エルメス』か)
一方シンシアは、捜索対象の一人、シノンについて考えていた。
彼女にはシノンの姓について心当たりがあった。
いや、心当たりなんて生優しいレベルではない。
何故なら、その姓は…
(…エルメスという姓を持ち、魔獣使い。やはり彼女は…)
スキット「ガールズトーク」
スクルド「ヒール!」
セネリオ「助かった、スクルド」
スクルド「いえ、また怪我したらすぐに言ってください!」
シンシア「…ねえ」
リン「はい?」
シンシア「あの人、女装してるけどセネリオよね?」
リン「え!?そ、その…」
シンシア「あなたたちがセネリオと行動を共にしていることはとっくに知っているのよ?隠しても無駄」
リン「うう…」
シンシア「それより…あのスクルドって子、セネリオの事を…」
リン「え、ええ、そうですよ。いつも猛アタックしてますよ」
シンシア「そう…」
アルセリア「妬いてるんですか?」
シンシア「そ、そういうわけじゃ…」
リン「隠したって、お見通しです」
シンシア「…そういうあなたは、あのレイノスって子が好きみたいね?」
リン「な、なななな何言って…」
アルセリア「いいなあ、二人とも青春してて…」
シンシア「あなただって、そのうちいい相手がきっと現れるわよ」
アルセリア「そうかなあ…まあ、私の事はいいです。それよりも、二人ともそんな奥手じゃ他の人に取られちゃいますよ。特にシンシアさんは現状で既にライバルがいますし…」
シンシア「…あの子、可愛いわよね。スタイルもいいし、性格もどこか保護欲がわくっていうか…男の人ってやっぱりああいう子が好みなんでしょうね」
リン「まあ、それは人それぞれなんじゃない?」
レイノス「なんか女三人で盛り上がってるな」
セネリオ「シンシアは一応敵だというのに…緊張感のない奴らだ」