第5章『夕闇の断罪者』 4
翌日。
朝早くケセドニアから船に乗った一行。
目指すは、クノンが連れ去られたと思わしきダアトだ。
「ダアト港には、1日かかるらしいわ」
船室にて休んでいたレイノスのもとへリンがやってきて、言った。
「そっか」
それを聞いたレイノスは、憮然とした表情でハア、と一つ溜息を吐いた。
アルビオールがあれば、数時間で到着する場所だというのに、1日かけて行かなければならないとは。
改めて、クノンとアルビオールという存在の便利さを実感させる。
いや、アルビオールの存在を抜きにしても、クノンはこのパーティにおいて必要な存在だ。
クノンはこのパーティのムードメーカーで、なにより大切な仲間なのだ。
「待ってろクノン…すぐに助けに行くからな」
かつてクラノスは、賊を使ってスクルドを誘拐した。
そして今回は、クノンがさらわれた。
だからレイノスのすることは、変わらない。
かつてスクルドを救い出したように、クノンを助ける。
(『クノン』…古代イスパニア語で【仮面】、か)
一方のリンは、少し気になることがあった。
それは、今回クノンを連れ去った手段だ。
以前スクルドを誘拐した時は賊を使って自分達の存在を隠していた。
しかし今回は、クラノス達が直接連れ去っている。
しかもそれ以前、クラノス達は自分達にクノンを捕らえるという事を公言している。
クラノス達には、クノンを捕らえる大義名分があるのだろうか。
(クノンさん…まだ私達に話してない素顔があるのかな)
仲間を疑いたくない。
それでもリンの心の内には、嫌な予感が広がっていた。
(クノン…あいつはやっぱり)
ミステリアス・ソルジャーは、一人思案していた。
実はミステリアスは、スクルド奪還の旅にて初めてクノンと顔を合わせた時、とても驚いたのだ。
クノンの顔は…『奴』と瓜二つだったからだ。
とはいえ、あれはもう何年も昔の話で、人形のような無表情だった『奴』と違い、クノンはものすごく無邪気で明るい真逆の性格だった為他人の空似だと思っていた。
しかし、ルージェニアとの戦いの際に奴が放った『兎』という言葉とその言葉に動きを止めたクノン。
そして、医者が言っていた15年前からなんらかのトラウマにより成長が止まったというクノンの身体。
そしてクラノスが、捕らえることを公然と言い放っていたこと。
そういったいくつかの要素が、ミステリアスに確信に近い疑念を抱かせていた。
(もしクノンが、『奴』なら…)
例え共に旅をした仲間であろうと。
パーティ内の色恋沙汰を共に弄り回した同士であろうとも。
(絶対に許さない)
「ミステリアさん?」
名前を呼ばれ、ミステリアスは顔を上げる。
そこにいたのは、アルセリアだった。
「その…大丈夫ですか?」
「なにがだ、せっちゃん」
「今のミステリアさん…仮面で見えないけど、なんだか怖い顔しているように見えて…」
心配そうにアルセリアはミステリアの仮面に隠れた顔を見つめる。
そんなアルセリアを見て、ミステリアスは思う。
(そうだ、彼女の為にも、『奴』がこの世に生きているなんてことがあってはならない。
『奴』…クレア・ラスティーヌが生きているなど!)
だから信じたい。
クノンが『奴』ではないことを。
船は、1日かけてダアト港へたどり着いた。
そして一行はそのまま徒歩でダアトへと向かった。
そこに、残酷な真実が待っていることなど知らずに。
朝早くケセドニアから船に乗った一行。
目指すは、クノンが連れ去られたと思わしきダアトだ。
「ダアト港には、1日かかるらしいわ」
船室にて休んでいたレイノスのもとへリンがやってきて、言った。
「そっか」
それを聞いたレイノスは、憮然とした表情でハア、と一つ溜息を吐いた。
アルビオールがあれば、数時間で到着する場所だというのに、1日かけて行かなければならないとは。
改めて、クノンとアルビオールという存在の便利さを実感させる。
いや、アルビオールの存在を抜きにしても、クノンはこのパーティにおいて必要な存在だ。
クノンはこのパーティのムードメーカーで、なにより大切な仲間なのだ。
「待ってろクノン…すぐに助けに行くからな」
かつてクラノスは、賊を使ってスクルドを誘拐した。
そして今回は、クノンがさらわれた。
だからレイノスのすることは、変わらない。
かつてスクルドを救い出したように、クノンを助ける。
(『クノン』…古代イスパニア語で【仮面】、か)
一方のリンは、少し気になることがあった。
それは、今回クノンを連れ去った手段だ。
以前スクルドを誘拐した時は賊を使って自分達の存在を隠していた。
しかし今回は、クラノス達が直接連れ去っている。
しかもそれ以前、クラノス達は自分達にクノンを捕らえるという事を公言している。
クラノス達には、クノンを捕らえる大義名分があるのだろうか。
(クノンさん…まだ私達に話してない素顔があるのかな)
仲間を疑いたくない。
それでもリンの心の内には、嫌な予感が広がっていた。
(クノン…あいつはやっぱり)
ミステリアス・ソルジャーは、一人思案していた。
実はミステリアスは、スクルド奪還の旅にて初めてクノンと顔を合わせた時、とても驚いたのだ。
クノンの顔は…『奴』と瓜二つだったからだ。
とはいえ、あれはもう何年も昔の話で、人形のような無表情だった『奴』と違い、クノンはものすごく無邪気で明るい真逆の性格だった為他人の空似だと思っていた。
しかし、ルージェニアとの戦いの際に奴が放った『兎』という言葉とその言葉に動きを止めたクノン。
そして、医者が言っていた15年前からなんらかのトラウマにより成長が止まったというクノンの身体。
そしてクラノスが、捕らえることを公然と言い放っていたこと。
そういったいくつかの要素が、ミステリアスに確信に近い疑念を抱かせていた。
(もしクノンが、『奴』なら…)
例え共に旅をした仲間であろうと。
パーティ内の色恋沙汰を共に弄り回した同士であろうとも。
(絶対に許さない)
「ミステリアさん?」
名前を呼ばれ、ミステリアスは顔を上げる。
そこにいたのは、アルセリアだった。
「その…大丈夫ですか?」
「なにがだ、せっちゃん」
「今のミステリアさん…仮面で見えないけど、なんだか怖い顔しているように見えて…」
心配そうにアルセリアはミステリアの仮面に隠れた顔を見つめる。
そんなアルセリアを見て、ミステリアスは思う。
(そうだ、彼女の為にも、『奴』がこの世に生きているなんてことがあってはならない。
『奴』…クレア・ラスティーヌが生きているなど!)
だから信じたい。
クノンが『奴』ではないことを。
船は、1日かけてダアト港へたどり着いた。
そして一行はそのまま徒歩でダアトへと向かった。
そこに、残酷な真実が待っていることなど知らずに。