第5章『夕闇の断罪者』 6
その日の夜。
アルセリアを除く一行は男性部屋に集まった。
今後のことについて話し合うためだ。
「……………」
が、場は沈黙に包まれ、口を開くものはいない。
みな、クノンの事について整理がつかず、どうすればいいか分からないのだ。
「これからのことだが…」
しかしやがて、セネリオが口を開く。
これから、どうするかについて。
「シェリダンへ、行こうと思う」
セネリオの提案。
それはシェリダンへ行くというもの。
その理由については、シノン以外は言われずとも分かっているようだった。
「シェリダンって…?」
シェリダンへ行ったことのないシノンは、地名自体も知らないのか、か細い声で疑問を口に出す。
それに答えたのは、リンだ。
「シェリダンにはね、クノンの育ての親がいるの」
「クノンの…そうなんだ」
そう、シェリダンにはクノンを15年間育ててきた兄妹、ギンジとノエルがいる。
セネリオの出してきた提案は、彼らに事情を伝えるということだった。
「そうだよな…ノエルさんたちには話さないといけない、よな」
レイノスが呟く。
他の面々も、異論はないようだった。
「シェリダン行の船は明日出る。それに乗り込んでシェリダンへ…」
「待った」
明日の予定についてセネリオが告げようとしたその時、待ったをかけたのはミステリアスだった。
「俺はダアトに残る。街の奴らの話だと現在ロストロはバチカルに出張中で不在で、そんな中『兎』が捕まったってことでなかなか忙しいみたいだしな。それに…セリアを看てやらないといけない」
アルセリアは、今も女性部屋で眠っている。
昼間に突然倒れてしまった彼女を連れていくわけにはいかないだろう。
それならばそれに付き添うものがいたほうが確かに安心だ。
だが…
「待ってください、私も行きます」
突然背後から聞こえてきた声。
レイノス達が振り向くと、そこにはアルセリアが立っていた。
「セリアさん!大丈夫なんですか!?」
スクルドがアルセリアのもとに駆け寄り心配そうな声をあげる。
それに対して、アルセリアは薄く笑って「大丈夫ですよ」と返した。
「それより…シェリダンに行くんですよね?私も連れていってください!」
「…ダメだ。倒れたばかりの君を連れていくわけにはいかない」
シェリダンへ行くと告げるアルセリアの言葉を、ミステリアスが却下する。
しかしそれでも、アルセリアは食い下がる。
「お願いします!私…クノンさんの育ての親だっていう、ノエルさんたちの話を聞きたいんです!」
彼女の態度は、いつになく必死で頑なだった。
いったいなにがあったのだろうか。
「…分かった。だが、無理はするなよ」
結局ミステリアスは根負けし、アルセリアのシェリダン行きを了承した。
ミステリアス自身は、ダアトに残るのは変わらないらしい。
アルセリアの事を抜きにしても、導師不在で重大事件の対応に追われるダアトを離れられないらしい。
こうして一行は、クノンの事をギンジとノエルに伝えるため、シェリダンへ向かうことになった。
スキット「仮面の下の憎悪、蘇りつつある記憶」
ミステリアス(あいつが…クノンが、『兎』の正体。あいつの…あいつのせいで!)
アルセリア「ミステリアスさん?」
ミステリアス「んー?どうしたせっちゃん」
アルセリア「その…ミステリアスさん、なんだかまた怖い顔してるように見えたから…」
ミステリアス「!…仮面で顔は見えないだろ?」
アルセリア「そうですけど…なんだかそんな風に見えて」
ミステリアス「ははは!面白いこと言うなあせっちゃんは」
アルセリア(なんでだろう。ミステリアスさんと話してると頭が少し痛い。あの時と同じ頭痛を感じる。この人も、私の記憶となにか関係があるの…?)
アルセリアを除く一行は男性部屋に集まった。
今後のことについて話し合うためだ。
「……………」
が、場は沈黙に包まれ、口を開くものはいない。
みな、クノンの事について整理がつかず、どうすればいいか分からないのだ。
「これからのことだが…」
しかしやがて、セネリオが口を開く。
これから、どうするかについて。
「シェリダンへ、行こうと思う」
セネリオの提案。
それはシェリダンへ行くというもの。
その理由については、シノン以外は言われずとも分かっているようだった。
「シェリダンって…?」
シェリダンへ行ったことのないシノンは、地名自体も知らないのか、か細い声で疑問を口に出す。
それに答えたのは、リンだ。
「シェリダンにはね、クノンの育ての親がいるの」
「クノンの…そうなんだ」
そう、シェリダンにはクノンを15年間育ててきた兄妹、ギンジとノエルがいる。
セネリオの出してきた提案は、彼らに事情を伝えるということだった。
「そうだよな…ノエルさんたちには話さないといけない、よな」
レイノスが呟く。
他の面々も、異論はないようだった。
「シェリダン行の船は明日出る。それに乗り込んでシェリダンへ…」
「待った」
明日の予定についてセネリオが告げようとしたその時、待ったをかけたのはミステリアスだった。
「俺はダアトに残る。街の奴らの話だと現在ロストロはバチカルに出張中で不在で、そんな中『兎』が捕まったってことでなかなか忙しいみたいだしな。それに…セリアを看てやらないといけない」
アルセリアは、今も女性部屋で眠っている。
昼間に突然倒れてしまった彼女を連れていくわけにはいかないだろう。
それならばそれに付き添うものがいたほうが確かに安心だ。
だが…
「待ってください、私も行きます」
突然背後から聞こえてきた声。
レイノス達が振り向くと、そこにはアルセリアが立っていた。
「セリアさん!大丈夫なんですか!?」
スクルドがアルセリアのもとに駆け寄り心配そうな声をあげる。
それに対して、アルセリアは薄く笑って「大丈夫ですよ」と返した。
「それより…シェリダンに行くんですよね?私も連れていってください!」
「…ダメだ。倒れたばかりの君を連れていくわけにはいかない」
シェリダンへ行くと告げるアルセリアの言葉を、ミステリアスが却下する。
しかしそれでも、アルセリアは食い下がる。
「お願いします!私…クノンさんの育ての親だっていう、ノエルさんたちの話を聞きたいんです!」
彼女の態度は、いつになく必死で頑なだった。
いったいなにがあったのだろうか。
「…分かった。だが、無理はするなよ」
結局ミステリアスは根負けし、アルセリアのシェリダン行きを了承した。
ミステリアス自身は、ダアトに残るのは変わらないらしい。
アルセリアの事を抜きにしても、導師不在で重大事件の対応に追われるダアトを離れられないらしい。
こうして一行は、クノンの事をギンジとノエルに伝えるため、シェリダンへ向かうことになった。
スキット「仮面の下の憎悪、蘇りつつある記憶」
ミステリアス(あいつが…クノンが、『兎』の正体。あいつの…あいつのせいで!)
アルセリア「ミステリアスさん?」
ミステリアス「んー?どうしたせっちゃん」
アルセリア「その…ミステリアスさん、なんだかまた怖い顔してるように見えたから…」
ミステリアス「!…仮面で顔は見えないだろ?」
アルセリア「そうですけど…なんだかそんな風に見えて」
ミステリアス「ははは!面白いこと言うなあせっちゃんは」
アルセリア(なんでだろう。ミステリアスさんと話してると頭が少し痛い。あの時と同じ頭痛を感じる。この人も、私の記憶となにか関係があるの…?)