第5章『夕闇の断罪者』 10
「クレア・ラスティーヌへの審議を、キムラスカで行う?」
ダアトへ導師ロストロと共に現れたナタリア女王の言葉に、クラノスは顔を顰めた。
「ええ、このクレア・ラスティーヌは、世界中で暗躍してきた強盗。そしてその被害が最も多かったのは我がキムラスカですわ」
クノンを利用してきた犯罪組織、スレイブはキムラスカを拠点に活動してきた。
ダアトやマルクトでも悪事は行っていたが、特に多かったのはキムラスカだったのだ。
「ですからわたくし達は、クレア・ラスティーヌの審議を我が国で行うための身柄の引き渡しの交渉の為、ちょうどバチカルへ来ていた導師ロストロを伴い、ダアトへと訪れたのです」
ナタリアの言葉に、クラノスは変わらず厳つい表情で黙ったままであった。
しかし、しばらくすると口を開いて言った。
「お言葉ですがナタリア殿下、このクレア・ラスティーヌの罪状は到底許されるものではありません。本人も罪を認めて死を受け入れている。キムラスカの手を煩わせずとも、今ここで…」
「クラノス!」
クラノスの声を遮り、大声をあげたのはナタリアの隣にいたロストロであった。
彼の目には、怒りがこもっていた。
「あなたが犯罪者に厳しいことも、容赦がないことも知っています。ですが、例え罪を犯した犯罪者であろうとも、彼らは生きている人間です!それをろくな審議もせず切り捨てるなど、命への冒涜だと思いませんか!」
ロストロの剣幕にも、クラノスは揺らぐ様子はなく変わらない表情で黙っているままであった。
そんなクラノスに、ロストロは言った。
「…クラノス、あなたにしばらく謹慎を命じます。少し、頭を冷やしなさい」
「…御意」
ロストロの謹慎の命令に、クラノスは頭を下げて了解の意を示すと、その場から立ち去っていった。
こうして、クノンことクレア・ラスティーヌの処刑は、中止となった。
野次馬たちは数を減らしていき、クレアも神託の盾の兵に再び牢に戻され、残ったのはレイノス達やロストロ、ナタリア等十数人だけとなった。
「み、ミステさん…」
シノンが、呆然と立ち尽くしているミステリアスのところへよろよろと歩く。
「クノンの事、本気で殺そうとしたの?」
「……………」
「ねえ、答えてよ!」
ミステリアスに詰め寄るシノン。
いくらクノンが悪いことをしたとはいえ、仲間だったミステリアスが彼を殺そうとしたということが、受け入れきれなかった。
「お、落ち着いてください!シノンさん!」
そんなシノンを、アルセリアが止めに入る。
そして、ミステリアスの方を向いていった。
「ミステリアスさんだって、本気でクノンさんを殺そうとしたわけじゃないんでしょう?クラノスに脅されて、仕方なく…」
「いいや、違う」
「俺は、俺の意志でクノンを殺そうとした。処刑人に志願したのも、俺の意志だ」
その瞬間、周囲の空気が凍った。
レイノスも、リンも、スクルドも、セネリオも。
シノンも、ハノンも、アルセリアも。
ナタリアやロストロ、アニスやフローリアンも。
ノエルも、ギンジも。
みな、ミステリアスに視線をやり表情が固まった。
「ナタリア殿下」
そんな空気の中、ミステリアスはナタリアに声をかける。
「な、なんでしょう」
少し戸惑いながらも、ナタリアは我に返ってミステリアスの言葉に耳を傾ける。
「もしも審議の結果、あいつを処刑することになったなら…その役、俺がやりますよ」
「あいつは…俺が殺す」
そういうとミステリアスは、その場を立ち去った。
残された人々は、そんな彼の背中を眺めながら呆然とするしかなかった。
スキット「どうして…」
レイノス「…どういう、ことだよ」
リン「分かんない…ミステリアさん、どうして」
スクルド「なんだか、怖かったです」
セネリオ「表情は見えなくとも、声色で分かる。かなりの憎しみがこもっていた」
シノン「ひどいよ…ミステさん!クノンは一緒に旅してきた仲間なのに!」
ハノン「みゅう…」
アルセリア(ミステリアさん…あの人は、やっぱり他人とは思えない。いったい、何者なの…?)
ダアトへ導師ロストロと共に現れたナタリア女王の言葉に、クラノスは顔を顰めた。
「ええ、このクレア・ラスティーヌは、世界中で暗躍してきた強盗。そしてその被害が最も多かったのは我がキムラスカですわ」
クノンを利用してきた犯罪組織、スレイブはキムラスカを拠点に活動してきた。
ダアトやマルクトでも悪事は行っていたが、特に多かったのはキムラスカだったのだ。
「ですからわたくし達は、クレア・ラスティーヌの審議を我が国で行うための身柄の引き渡しの交渉の為、ちょうどバチカルへ来ていた導師ロストロを伴い、ダアトへと訪れたのです」
ナタリアの言葉に、クラノスは変わらず厳つい表情で黙ったままであった。
しかし、しばらくすると口を開いて言った。
「お言葉ですがナタリア殿下、このクレア・ラスティーヌの罪状は到底許されるものではありません。本人も罪を認めて死を受け入れている。キムラスカの手を煩わせずとも、今ここで…」
「クラノス!」
クラノスの声を遮り、大声をあげたのはナタリアの隣にいたロストロであった。
彼の目には、怒りがこもっていた。
「あなたが犯罪者に厳しいことも、容赦がないことも知っています。ですが、例え罪を犯した犯罪者であろうとも、彼らは生きている人間です!それをろくな審議もせず切り捨てるなど、命への冒涜だと思いませんか!」
ロストロの剣幕にも、クラノスは揺らぐ様子はなく変わらない表情で黙っているままであった。
そんなクラノスに、ロストロは言った。
「…クラノス、あなたにしばらく謹慎を命じます。少し、頭を冷やしなさい」
「…御意」
ロストロの謹慎の命令に、クラノスは頭を下げて了解の意を示すと、その場から立ち去っていった。
こうして、クノンことクレア・ラスティーヌの処刑は、中止となった。
野次馬たちは数を減らしていき、クレアも神託の盾の兵に再び牢に戻され、残ったのはレイノス達やロストロ、ナタリア等十数人だけとなった。
「み、ミステさん…」
シノンが、呆然と立ち尽くしているミステリアスのところへよろよろと歩く。
「クノンの事、本気で殺そうとしたの?」
「……………」
「ねえ、答えてよ!」
ミステリアスに詰め寄るシノン。
いくらクノンが悪いことをしたとはいえ、仲間だったミステリアスが彼を殺そうとしたということが、受け入れきれなかった。
「お、落ち着いてください!シノンさん!」
そんなシノンを、アルセリアが止めに入る。
そして、ミステリアスの方を向いていった。
「ミステリアスさんだって、本気でクノンさんを殺そうとしたわけじゃないんでしょう?クラノスに脅されて、仕方なく…」
「いいや、違う」
「俺は、俺の意志でクノンを殺そうとした。処刑人に志願したのも、俺の意志だ」
その瞬間、周囲の空気が凍った。
レイノスも、リンも、スクルドも、セネリオも。
シノンも、ハノンも、アルセリアも。
ナタリアやロストロ、アニスやフローリアンも。
ノエルも、ギンジも。
みな、ミステリアスに視線をやり表情が固まった。
「ナタリア殿下」
そんな空気の中、ミステリアスはナタリアに声をかける。
「な、なんでしょう」
少し戸惑いながらも、ナタリアは我に返ってミステリアスの言葉に耳を傾ける。
「もしも審議の結果、あいつを処刑することになったなら…その役、俺がやりますよ」
「あいつは…俺が殺す」
そういうとミステリアスは、その場を立ち去った。
残された人々は、そんな彼の背中を眺めながら呆然とするしかなかった。
スキット「どうして…」
レイノス「…どういう、ことだよ」
リン「分かんない…ミステリアさん、どうして」
スクルド「なんだか、怖かったです」
セネリオ「表情は見えなくとも、声色で分かる。かなりの憎しみがこもっていた」
シノン「ひどいよ…ミステさん!クノンは一緒に旅してきた仲間なのに!」
ハノン「みゅう…」
アルセリア(ミステリアさん…あの人は、やっぱり他人とは思えない。いったい、何者なの…?)