オープニングフェイズ4
オープニングフェイズ4 シーン4〈崩壊した親子の再会〉
シーンプレイヤー 七雲空
GM「シーンプレイヤーは空、他PCは登場不可だ。それじゃダイスを振ってくれ」
《シーン登場》
空1D→6 33%→39%
クウ「俺も高めだが、他の奴よりマシ…か?」
グラッセ「マシだな」(即答)
ムーン「いや、浸蝕率はお前と同じ数値だろ?」
ツバサ「ところで、あっちで二名ほどいい笑顔でサムズアップしているんだけど?」
GM「はっはっは。では、最後のOP初めて行こうか」
あれから一週間。空は志武谷のオフィス街にやって来ていた。
様々なベンチャー企業や高層オフィスビルが立ち並んでいる。日曜日と言う事があり、この辺を歩いている人は少なく感じる。
それでもスーツ姿のビジネスマンが多いため、私服の状態で歩くと周りから浮いたように見えてしまい、すれ違う人達から視線を向けられる。
空『翼は今も見つからない。ダークカオスも姿を見せない…まさに手詰まりだな』
蒼空(だな…あっちで何か情報を握ってくれるとありがたいが)
互いに今の状況に対して話をしつつ、目的のビルにやって来る。
闇代グループが管理する中小企業のビル。高さは相当あり、頂上を見上げると首が痛くなるほどだ。
空『流石は社長様だな。俺ら貧乏人には勿体ねーな』
蒼空(貧乏なのはゼノの所為だろ! ローン残したままバイク壊されて、その上買い直して…! ダークカオス、次会ったらローンの恨みを含めてぶっ潰してやる…!)
空『何て言うか…俺、やっぱり宿主から生まれたんだって実感するわ』
内側で敵に対して恨み言をグチグチ呟く本来の人格に、空は乾いた笑みを浮かべてしまう。
早速ビルの中に入る。目の前に受付があり、受付嬢にこの中にいるであろう陸の居所を聞こうと一歩踏み出す。
???『あっ! いたいたー!』
同時に、親し気な声でロビーからこちらに近付いて来る者がいた。
軽い足音と共にやってきたのは、前回の事件で助けた女子高生――響だ。今日は日曜日だからか、制服ではなく私服を着用している。
蒼空(響!?)
空『お前、何で…?』
響『陸に頼まれたの。あんた達の案内と、蒼空の通訳にね! ほら、こっち来て!』
手を掴むなり、受付を通り過ぎてビルの奥へと歩いて行く。
そして、丁度男性職員を載せて降りて来たエレベーターに乗り込む。中に人はいなく、二人だけの空間となる。
蒼空(響、お前は…)
響『あたし、UGNイリーガルに登録したの。でも、この街の支部に所属してる訳じゃないんだ。陸が手回ししてくれたから、この闇代グループでアルバイトしてる形に収まってるの』
空『あいつ、監視対象になっているのによくやるな…』
そうこうしていると、エレベーターが響の指定した階層に到着する。降りて少し歩くと、会議室と書かれたプレートの部屋の前で響は止まる。
響『この部屋で待ち合わせしてるって。陸ー、連れて来たわよー』
陸『ああ、ご苦労だった。響』
空『おう、邪魔するぜ』
???『――久しぶりだな』
蒼空(っ…!)
中に入ると、重ねた長テーブルを挟んで陸ともう一人――スーツを着た男が、テーブルに肘をつく形で手を組んで座っている。
顔のあちらこちらに皺がある事から、歳はそれなりに取っているだろう。だが、そんな老いを感じさせない鋭い眼光が空に注がれている。
響『え? この人、誰?』
陸『…紹介する。彼は“黒羽聖”。公安警察特殊……そうだな。分かりやすく言うと、レネゲイド関連を扱う特殊な警察機関だ。階級は警視だそうだ』
響『警視!? あの刑事ドラマとかで出る偉い人!?』
蒼空(な、んで…!?)
空『……誰だ、あんた?』
聖『随分な挨拶だな、親の顔を忘れたのか?』
空『あいにく、俺の生み親は“宿主”なんでな。お前みたいなオッサン知らねえよ』
聖『そうか…お前は戦闘用人格の方か。息子はどうした?』
空『ひでぇな。俺もあんたの言う息子の一部だぞ?』
響『ちょちょちょ、ちょっと!? あんまり暴言とか言うと、逮捕されちゃうんじゃないの!?』
陸『ギスギスする気持ちは分かるが、まずは要件を話そう。それでいいでしょう、黒羽警視?』
聖『ああ。この場に押し付けたのは俺の方だからな』
陸の提案を受け入れるが、構えは解かないままじっと空を見据える。
空もまた対抗するように睨み返し、聖の前の席に着く。響は恐る恐る陸の前に座り、緊迫する空気の中で報告会が始まった。
陸『――つまり、そちらも進展なしか』
空『…ああ』
陸『分かった。蒼空は何か言う事あるか?』
蒼空(………)
響『えーと、蒼空? 何か言ってくれないと、あたし通訳出来ないんだけど…?』
聖『……そちらの話は終えたようだな。では、そろそろこちらの話をしても?』
陸『構いません』
響『あの、警視さん。話って?』
聖『ここ例年、オーヴァードの被害は増える一方だ。我々警察もレネゲイド事件が起これば早急に動くが一般人だからどうしても限界はあるし、レネゲイドに関して情報も扱いも上手のUGNが全てを担っては解決する――これでは、我々特調と言う組織はUGNによって奪われる事になるだろう。だから近々、特調にオーヴァードだけで構成された機動部隊を立ち上げる計画を立てたんだ』
響『へー、警察の特殊組織かぁ…』
聖『年々増加するレネゲイド犯罪。それにより特調は、いや…警察の多くが、危険と隣り合わせになっている。中には事件に巻き込まれた事で、オーヴァードに覚醒した者も現れる。そうして覚醒した特調や通常の警察機構の人間は、R担。または見切りをつけてUGNに移籍もしくは肩入れをする為に退職。中には我々と連携している国の防衛隊であるストレンジャーズと言う選択肢もあるが、そちらを希望する者は滅多にいない』
陸『手段や思想はあまり人道的とは言えませんが…それでも、貴方がた警察はよくやってきた方だと言えます。UGN側の俺が言う事ではないでしょうが』
聖『いや、いい。…だから室長に直談判したんだ。ストレンジャーズの力があっても、このままでは特調の立場が年々弱まる一方だと。そこで、試験的にだが特調だけでオーヴァードで構成される特殊部隊を作る事にしたんだ』
響『えーと…試験的に? 何でUGNみたいにしないの?』
陸『響、特調はUGNには非協力的なんだ。オーヴァードの力は未知数だからな、正の感情よりも負の感情の方に目が行ってしまってる状態だ。【オーヴァードを全て人里離れた離島の隔離施設に送り込むべきだ】なんて無茶な案を出す程に』
聖『否定はしない。最初は室長や重役も否定的だったが、現状をどうにかしたいのは皆同じだった。一番大変だったのは政府だが、どうにか粘り強く交渉し、更に闇代グループのお膳立てもあって実現出来そうな所まで来た。それで…お前には、その一員になってほしい。その為に交渉しに来た』
空『…あんたは俺を捨てた。その上で戻ってこい? …ふざけんなよ?』
聖『俺は息子と話をしている。部外者は引っ込んでてもらえないか?』
空『俺もお前の息子だった言ってるだろうが。大体、俺はUGNでなくFHだ。あんたが捨ててからずっと、数多くの奴らを殺してきた。そんな犯罪者を警察の特殊部隊に取り入れるって言うのか?』
聖『そんなもの、無いのと同じだ。お前が殺した奴らは、全員オーヴァードなんだろう?』
断言した瞬間、鈍い音を立ててテーブルが真っ二つに両断されていた。
何時の間にか空は立ち上がっていて、目の前で座る聖に大鎌を突きつけている。黒の前髪から僅かに見える瞳は、赤に変色している。
蒼空『――ざけんじゃねぇよ…!!!』
響『そ、蒼空!?』
蒼空『オーヴァードは人間じゃないからって、何もかも存在しない事にすんじゃねえ!! そんだけ俺達を忌み嫌ってるのかよ!?』
陸『おい! 落ち着け!?』
蒼空『それにあんた、出会ってから一度だって俺の名前呼んでないだろ!! それで帰ってこい!? 家族にすら思われてない奴に帰る居場所なんてあるかよ!! 大体、特殊部隊って言うが結局特調の管理下で使役するって事だろ!! 俺達は化け物だが、ヒトでもあるんだ!! 踏み躙って当然なんて思うんじゃねえぞぉ!!!』
響『駄目、蒼空!!』
怒りのままに大鎌を振り下ろす蒼空に、響が止めに入る。
聖に向かって振りぬかれた刃は…軌道がずれて、足元の床に深々と突き刺さった。
聖『……お前』
蒼空『もう二度と、面見せるな』
それだけ言うと、大鎌を塵に還す。そして顔を見せないまま会議室を出て行った。
陸『待て、蒼空!!』
慌てて陸が追いかけると、蒼空は少し離れた通路の壁に凭れ掛かるように蹲っていた。
空『宿主…! いきなり、変わるんじゃねぇよ…!』
蒼空(悪い…頭に血が上りすぎた…!)
陸『大丈夫か?』
空『ちょっとした反動、だよ…心配すんな…』
陸『…すまない。余計な事をしてしまったようだ』
空『本当にな…っ! ああ、いっその事あのまま殺しとけば良かった…!』
陸『…やはり、お前も許せないのか。子供を捨てた親って言うのは』
空『お前が月を捨てたのは冷牙の所為だった。でも、俺は…宿主は違う。俺は文字通り“見捨てられた”。あの男の積み上げてきた威信の為に、俺を切り捨てた。なのに、俺が…オーヴァードが必要になったから拾おうとしている…こんな都合の良い事を平気で行おうとしている奴、反吐が出るぜ』
陸『………二人とも、聞いてほし』
陸が何か言おうとした所で、空のポケットから着信音が鳴る。
スマホを確認すると、FHの狩谷からだ。内容は『緊急の任務が来た。すぐに集合してほしい』との事だ。
空『悪い。もう行く』
陸『なら、下まで送ろう。…そうだ、良かったらこれを貰ってくれ』
スーツの内ポケットを漁り、陸が取り出したのは黒いハート型のキーホルダーだ。
空『これは?』
陸『うちの新製品だ。このキーホルダーにはウロボロスの力を込めている。持ち主に対して、何かしら害を与えるようなエフェクトがあれば打ち消す事が出来るんだ。まあ、試作品の段階だから全てに有効と言う訳ではないが。お詫びと言う訳ではないが、何か役に立つかもしれない』
空『ふーん…いいぜ、ありがたく貰っておく』
GM「では、ここでシーンエンドとしよう。お疲れ様」
グラッセ「メタ推理になりますが、絶対どこかでそのキーホルダー使いそうですよね」
クウ「ああ。GM、これアイテム扱いになるのか?」
GM「アイテム扱いと言うよりは、持っていれば効果があると思っていてくれ」
ムーン「俺ならどんなに必要だとしても、親父から貰ったものは即座に壊すけどな!」
ツバサ「もう《インスピレーション》使えないんだから、下手な行動しないでよムーン…」
SM「じゃ、全員のOPも終わったし、いよいよミドル開始だー!」
シーンプレイヤー 七雲空
GM「シーンプレイヤーは空、他PCは登場不可だ。それじゃダイスを振ってくれ」
《シーン登場》
空1D→6 33%→39%
クウ「俺も高めだが、他の奴よりマシ…か?」
グラッセ「マシだな」(即答)
ムーン「いや、浸蝕率はお前と同じ数値だろ?」
ツバサ「ところで、あっちで二名ほどいい笑顔でサムズアップしているんだけど?」
GM「はっはっは。では、最後のOP初めて行こうか」
あれから一週間。空は志武谷のオフィス街にやって来ていた。
様々なベンチャー企業や高層オフィスビルが立ち並んでいる。日曜日と言う事があり、この辺を歩いている人は少なく感じる。
それでもスーツ姿のビジネスマンが多いため、私服の状態で歩くと周りから浮いたように見えてしまい、すれ違う人達から視線を向けられる。
空『翼は今も見つからない。ダークカオスも姿を見せない…まさに手詰まりだな』
蒼空(だな…あっちで何か情報を握ってくれるとありがたいが)
互いに今の状況に対して話をしつつ、目的のビルにやって来る。
闇代グループが管理する中小企業のビル。高さは相当あり、頂上を見上げると首が痛くなるほどだ。
空『流石は社長様だな。俺ら貧乏人には勿体ねーな』
蒼空(貧乏なのはゼノの所為だろ! ローン残したままバイク壊されて、その上買い直して…! ダークカオス、次会ったらローンの恨みを含めてぶっ潰してやる…!)
空『何て言うか…俺、やっぱり宿主から生まれたんだって実感するわ』
内側で敵に対して恨み言をグチグチ呟く本来の人格に、空は乾いた笑みを浮かべてしまう。
早速ビルの中に入る。目の前に受付があり、受付嬢にこの中にいるであろう陸の居所を聞こうと一歩踏み出す。
???『あっ! いたいたー!』
同時に、親し気な声でロビーからこちらに近付いて来る者がいた。
軽い足音と共にやってきたのは、前回の事件で助けた女子高生――響だ。今日は日曜日だからか、制服ではなく私服を着用している。
蒼空(響!?)
空『お前、何で…?』
響『陸に頼まれたの。あんた達の案内と、蒼空の通訳にね! ほら、こっち来て!』
手を掴むなり、受付を通り過ぎてビルの奥へと歩いて行く。
そして、丁度男性職員を載せて降りて来たエレベーターに乗り込む。中に人はいなく、二人だけの空間となる。
蒼空(響、お前は…)
響『あたし、UGNイリーガルに登録したの。でも、この街の支部に所属してる訳じゃないんだ。陸が手回ししてくれたから、この闇代グループでアルバイトしてる形に収まってるの』
空『あいつ、監視対象になっているのによくやるな…』
そうこうしていると、エレベーターが響の指定した階層に到着する。降りて少し歩くと、会議室と書かれたプレートの部屋の前で響は止まる。
響『この部屋で待ち合わせしてるって。陸ー、連れて来たわよー』
陸『ああ、ご苦労だった。響』
空『おう、邪魔するぜ』
???『――久しぶりだな』
蒼空(っ…!)
中に入ると、重ねた長テーブルを挟んで陸ともう一人――スーツを着た男が、テーブルに肘をつく形で手を組んで座っている。
顔のあちらこちらに皺がある事から、歳はそれなりに取っているだろう。だが、そんな老いを感じさせない鋭い眼光が空に注がれている。
響『え? この人、誰?』
陸『…紹介する。彼は“黒羽聖”。公安警察特殊……そうだな。分かりやすく言うと、レネゲイド関連を扱う特殊な警察機関だ。階級は警視だそうだ』
響『警視!? あの刑事ドラマとかで出る偉い人!?』
蒼空(な、んで…!?)
空『……誰だ、あんた?』
聖『随分な挨拶だな、親の顔を忘れたのか?』
空『あいにく、俺の生み親は“宿主”なんでな。お前みたいなオッサン知らねえよ』
聖『そうか…お前は戦闘用人格の方か。息子はどうした?』
空『ひでぇな。俺もあんたの言う息子の一部だぞ?』
響『ちょちょちょ、ちょっと!? あんまり暴言とか言うと、逮捕されちゃうんじゃないの!?』
陸『ギスギスする気持ちは分かるが、まずは要件を話そう。それでいいでしょう、黒羽警視?』
聖『ああ。この場に押し付けたのは俺の方だからな』
陸の提案を受け入れるが、構えは解かないままじっと空を見据える。
空もまた対抗するように睨み返し、聖の前の席に着く。響は恐る恐る陸の前に座り、緊迫する空気の中で報告会が始まった。
陸『――つまり、そちらも進展なしか』
空『…ああ』
陸『分かった。蒼空は何か言う事あるか?』
蒼空(………)
響『えーと、蒼空? 何か言ってくれないと、あたし通訳出来ないんだけど…?』
聖『……そちらの話は終えたようだな。では、そろそろこちらの話をしても?』
陸『構いません』
響『あの、警視さん。話って?』
聖『ここ例年、オーヴァードの被害は増える一方だ。我々警察もレネゲイド事件が起これば早急に動くが一般人だからどうしても限界はあるし、レネゲイドに関して情報も扱いも上手のUGNが全てを担っては解決する――これでは、我々特調と言う組織はUGNによって奪われる事になるだろう。だから近々、特調にオーヴァードだけで構成された機動部隊を立ち上げる計画を立てたんだ』
響『へー、警察の特殊組織かぁ…』
聖『年々増加するレネゲイド犯罪。それにより特調は、いや…警察の多くが、危険と隣り合わせになっている。中には事件に巻き込まれた事で、オーヴァードに覚醒した者も現れる。そうして覚醒した特調や通常の警察機構の人間は、R担。または見切りをつけてUGNに移籍もしくは肩入れをする為に退職。中には我々と連携している国の防衛隊であるストレンジャーズと言う選択肢もあるが、そちらを希望する者は滅多にいない』
陸『手段や思想はあまり人道的とは言えませんが…それでも、貴方がた警察はよくやってきた方だと言えます。UGN側の俺が言う事ではないでしょうが』
聖『いや、いい。…だから室長に直談判したんだ。ストレンジャーズの力があっても、このままでは特調の立場が年々弱まる一方だと。そこで、試験的にだが特調だけでオーヴァードで構成される特殊部隊を作る事にしたんだ』
響『えーと…試験的に? 何でUGNみたいにしないの?』
陸『響、特調はUGNには非協力的なんだ。オーヴァードの力は未知数だからな、正の感情よりも負の感情の方に目が行ってしまってる状態だ。【オーヴァードを全て人里離れた離島の隔離施設に送り込むべきだ】なんて無茶な案を出す程に』
聖『否定はしない。最初は室長や重役も否定的だったが、現状をどうにかしたいのは皆同じだった。一番大変だったのは政府だが、どうにか粘り強く交渉し、更に闇代グループのお膳立てもあって実現出来そうな所まで来た。それで…お前には、その一員になってほしい。その為に交渉しに来た』
空『…あんたは俺を捨てた。その上で戻ってこい? …ふざけんなよ?』
聖『俺は息子と話をしている。部外者は引っ込んでてもらえないか?』
空『俺もお前の息子だった言ってるだろうが。大体、俺はUGNでなくFHだ。あんたが捨ててからずっと、数多くの奴らを殺してきた。そんな犯罪者を警察の特殊部隊に取り入れるって言うのか?』
聖『そんなもの、無いのと同じだ。お前が殺した奴らは、全員オーヴァードなんだろう?』
断言した瞬間、鈍い音を立ててテーブルが真っ二つに両断されていた。
何時の間にか空は立ち上がっていて、目の前で座る聖に大鎌を突きつけている。黒の前髪から僅かに見える瞳は、赤に変色している。
蒼空『――ざけんじゃねぇよ…!!!』
響『そ、蒼空!?』
蒼空『オーヴァードは人間じゃないからって、何もかも存在しない事にすんじゃねえ!! そんだけ俺達を忌み嫌ってるのかよ!?』
陸『おい! 落ち着け!?』
蒼空『それにあんた、出会ってから一度だって俺の名前呼んでないだろ!! それで帰ってこい!? 家族にすら思われてない奴に帰る居場所なんてあるかよ!! 大体、特殊部隊って言うが結局特調の管理下で使役するって事だろ!! 俺達は化け物だが、ヒトでもあるんだ!! 踏み躙って当然なんて思うんじゃねえぞぉ!!!』
響『駄目、蒼空!!』
怒りのままに大鎌を振り下ろす蒼空に、響が止めに入る。
聖に向かって振りぬかれた刃は…軌道がずれて、足元の床に深々と突き刺さった。
聖『……お前』
蒼空『もう二度と、面見せるな』
それだけ言うと、大鎌を塵に還す。そして顔を見せないまま会議室を出て行った。
陸『待て、蒼空!!』
慌てて陸が追いかけると、蒼空は少し離れた通路の壁に凭れ掛かるように蹲っていた。
空『宿主…! いきなり、変わるんじゃねぇよ…!』
蒼空(悪い…頭に血が上りすぎた…!)
陸『大丈夫か?』
空『ちょっとした反動、だよ…心配すんな…』
陸『…すまない。余計な事をしてしまったようだ』
空『本当にな…っ! ああ、いっその事あのまま殺しとけば良かった…!』
陸『…やはり、お前も許せないのか。子供を捨てた親って言うのは』
空『お前が月を捨てたのは冷牙の所為だった。でも、俺は…宿主は違う。俺は文字通り“見捨てられた”。あの男の積み上げてきた威信の為に、俺を切り捨てた。なのに、俺が…オーヴァードが必要になったから拾おうとしている…こんな都合の良い事を平気で行おうとしている奴、反吐が出るぜ』
陸『………二人とも、聞いてほし』
陸が何か言おうとした所で、空のポケットから着信音が鳴る。
スマホを確認すると、FHの狩谷からだ。内容は『緊急の任務が来た。すぐに集合してほしい』との事だ。
空『悪い。もう行く』
陸『なら、下まで送ろう。…そうだ、良かったらこれを貰ってくれ』
スーツの内ポケットを漁り、陸が取り出したのは黒いハート型のキーホルダーだ。
空『これは?』
陸『うちの新製品だ。このキーホルダーにはウロボロスの力を込めている。持ち主に対して、何かしら害を与えるようなエフェクトがあれば打ち消す事が出来るんだ。まあ、試作品の段階だから全てに有効と言う訳ではないが。お詫びと言う訳ではないが、何か役に立つかもしれない』
空『ふーん…いいぜ、ありがたく貰っておく』
GM「では、ここでシーンエンドとしよう。お疲れ様」
グラッセ「メタ推理になりますが、絶対どこかでそのキーホルダー使いそうですよね」
クウ「ああ。GM、これアイテム扱いになるのか?」
GM「アイテム扱いと言うよりは、持っていれば効果があると思っていてくれ」
ムーン「俺ならどんなに必要だとしても、親父から貰ったものは即座に壊すけどな!」
ツバサ「もう《インスピレーション》使えないんだから、下手な行動しないでよムーン…」
SM「じゃ、全員のOPも終わったし、いよいよミドル開始だー!」