悪霊の家・後日談&アトガキ
KP「あの奇妙な依頼から二週間が経った。菜月とオルガは空淵の見舞いの為に病院にやってくる」
菜月『空淵、そろそろ退院だってさ』
オルガ『俺もさっきナースから聞いたぞ。でも良かった。あの後の空淵の顔ヤバかったもんなー』
菜月『オイラも悪霊に呪われたんじゃないかとヒヤヒヤしたぜ。あ、見舞いの品何持ってきた? オイラは無難に花束持ってきた。今の時期菊とか売ってなかったけど、まあいいよな!』
オルガ『俺は新作のコスプレだ。今回は頑張ってセフィロスアナザー版を作って来たぞ!』
空淵(もはや嫌がらせだよなそれ…)
KP「君達は見慣れた病室の前へとやって来るが、その入り口の前で一人の女性がいる事に気付くよ。女性は不安そうに病室の様子を窺っている」
菜月『お姉さん、誰かのお見舞いですか?』
??『え…! あ、いえ。私はその…』
オルガ『俺達もこの病室に知り合いが入院しているんだ。良かったら一緒に入りません?』
??『知り合い…もしかして、丹羽空淵ですか?』
菜月『お、もしかして空淵の知り合いか? じゃあ丁度いい、一緒に入ろうぜ!』
??『い、いえ! やっぱり今度にします…あの、この差し入れ。私の代わりに空淵に渡してくれませんか?』
オルガ『へ? でも空淵のお見舞いに来たんだろ?』
??『本当にいいんです! では失礼します! …変装解いた格好で来いなんて無茶ぶり言って、退院したら嫌ってほど扱き使ってやります…!!』
菜月『ちょ、お姉さーん?』
KP「君達が病室に入り、窓側のベットに行くと空淵が横になっている。だが、今回は見舞客なのか女子高生とゴツイ男二人組がいる」
菜月『空淵ー、お見舞いに…って、ドチラサマデス?』
空淵『おー、菜月にオルガ。何度もお見舞い悪いな。そこの二人は…まあ気にするな』
??『あの、もしかしてお二人が空淵さんの言っていた菜月さんとオルガさんですか? 私、風楼玲愛(ふろうれあ)と言います。空淵さんがお世話になりました』
菜月『玲愛…あー! オイラが道に迷っていた時に助けてくれた玲愛ちゃんか! いやー、あの時は助かったぜ! ありがとな!』
オルガ『ほうほう、これは可愛い彼女じゃないか』
空淵『ち、違う! そんなんじゃねーっての!!』
男1『空淵。おめえさん、退院したら覚えとくんじゃな?』
男2『この前の旅行の分も含め、組員総出でキッチリとシメとくからのぉ?』
空淵『マテマテマテ!! 目の前刑事いるから!! 物騒な事言うの止めてくれ、って言うか菜月今すぐこの二人を逮捕してくれー!!』
菜月『いやー…オイラ命が惜しいから…』
空淵『刑事がヤクザに対してビビるな!!』
オルガ『そうだ、空淵。さっきお前の知り合いの女性が来てたぞ。これ渡してくれって言ってさっさと帰ったけど』
玲愛『このお見舞い品…もしかして氷狩さん?』
空淵『女性か…すっげー文句言ってたけど、結局来てくれたんだな。あー、あいつの可愛い姿拝みたかったなー』
菜月&オルガ『『?』』
男1『お嬢。そろそろ帰宅の時間になりますぜ』
玲愛『ああぅ…分かりました。空淵さん、退院したらみんなで宴会ですからね! 楽しみにしててくださいね!』
空淵『出来ればそのまま尋問にならない事を祈りたい…』
KP「こうして、玲愛達は空淵の病室を後にする。残ったのは君達三人だ」
オルガ『空淵、ちょっと質問だが…“お嬢”って?』
空淵『あー、俺が極道なのは知ってるだろ? 玲愛は俺の所属する極道頭領の一人娘なんだ…早い話、後継ぎだ』
菜月『へー、あんな可愛い子が極道の後継ぎ――はああああぁぁ!!?』
空淵『ちなみに、筋力は滅茶苦茶あるぞ(STR16)。聞いた話だけど、あいつ監禁された部屋の扉をいとも簡単に壊して脱出したほどだからな』
菜月&オルガ『『あの子本当に女子高生かぁ!?』』
空淵『まあ、何だ。俺もようやく退院だしな…そういや何か報酬貰ったか?』
オルガ『ああ。空淵の分のお金もちゃんと用意して貰ってる。入院費に使ってくれって言われたけどさ』
空淵『はは、それはそれで助かるな――はぁ…』
オルガ『空淵、どうした?』
空淵『なあ、妙だと思わないか?』
菜月『妙って?』
空淵『あの屋敷…いや、チャペルや悪霊のコービットについてだ』
オルガ『まあ、妙と言えば妙だったな。あの化け物、元は人間だろ? どうやってあんな姿になったんだろうな?』
空淵『それもあるが…オルガ、チャペルで見た記号があるだろ。あれは見た限り新しく書かれた奴だ。だが、あのチャペルは《8年前》に閉鎖になってる』
菜月『あ! 言われれば確かに矛盾してる!』
空淵『あともう一つ。コービットって奴はあの部屋を活動の場所にしていた…「闇の中で待つもの」と一緒にだ。多分、オルガが消してしまった紙にヒントがあったんだろうけど…』
菜月『なーんか、スッキリしないなぁ…』
オルガ『闇の中で待つもの…か。俺が読んだ【エイボンの書】に関係があるのか?』
空淵『エイボンの書?』
オルガ『あ、言ってなかったな。俺が見つけた本のタイトルがそう言う名前なんだ。ただ、内容は本当に読めなかった。気持ち悪いのは充分理解したのにな』
菜月『なんかオルガがさらっと物騒な事呟いてる!?』
空淵(エイボンの書、ね…もしかしてあの依頼人と関係が…?)
KP「そうこう話している内に、日は沈み夕方になる。そろそろ病室での食事の時間だと分かるよ」
菜月『もうこんな時間か。オイラ達はそろそろ帰るよ』
オルガ『あ、見舞いの品ここに置いておくな。退院したら皆でコスプレパーティしようぜ!』
空淵『それは勘弁願いたいな…』
KP「二人が去り、君は再びベットで横になるだろう。夕暮れの空が少しずつ漆黒の闇に染まっていく。そんな中で、君は気付く。ベットの横に一人の少年が――あの依頼人が傍にいる事を」
空淵『え…』
少年『こんにちは。いえ、こんばんはですかね?』
空淵『お前…っ!』
少年『依頼は解決し、退院すると言う話なので顔を見ようと来てしまいました』
空淵『ああ、悪霊は退治した。だが、一体何なんだよあれは?』
少年『ほぅ? 知りたいというのならお答えしてもいいのですが――止めておきます』
空淵『は?』
少年『これも単なる気まぐれですよ。そう、あなたは運がいい。せいぜいその人としての思考を無くさない様に』
空淵『何を言って――!』
KP「空淵、君は身を乗り出し聞こうとするだろう。だが、どう言う訳か身体が金縛りにあったかのように動かない。意思と反する身体に戸惑う間にも少年は病室を去り際に、君に振り返る」
少年『深淵を追い求めようとする姿勢を崩さないのならば、何処かでまた会うでしょう。その時私は味方か敵か中立か…まあ、どんな姿だろうと人間と言う存在に後れを取る私ではないがね』
KP「その言葉を最後に、彼は病室を出て行った。空淵、君はまた一人病室に残される」
空淵『何なんだよ…ったく』
KP「思わず呟く声に答える者は誰もいない。答える者がいるとすれば…それは日常と紙一重に存在する深淵の闇の中。だが、君はそれを知らない。そう、今は何も――」
■作者メッセージ
鈴乃詠「さて、これにてシナリオ『悪霊の家』のセッションは終了だ。みんな、お疲れ様!」
菜月「いやー、無事に終わって良かったぜ!」
オルガ「仮想だけどコスプレ出来て満足だ。またやりたいものだな」
クウ「俺はもう勘弁してほしいがな。まあでも、今回も無事に終わって良かった」
鈴乃詠「クウは成長ボーナスさせるんだよね。SAN値回復はコービットを倒して依頼を解決したと言う事で1D6は与えておくよ。後でダイス振ってくれ」
菜月「何だ? クウはまたやるのか?」
クウ「んー…とりあえずは作者の意思でな。折角探索者作ったし、脳内だけどこうしてやってるから。別の所で作品を出してる感じなんだ」
鈴乃詠「まあ、時にダイスの出目でとんでもないシーンになったりとか、シナリオによってはグロかったりマズい表現とかもあるから…その辺を考えて、出せない物は出さない方針にするつもりさ」
菜月「まあ、確かにこれホラーな部分あるもんなぁ」
鈴乃詠「ホラーならまだいいさ。シナリオではバッドエンドで世界滅亡とか普通にあるし、神話生物に残虐な形で殺されたり、命や魂取られるとかも平気であるから。中には脳みそだけの存在になるとか、アンデッドとなって狂信者の仲間入りになるとか、闇の中で永遠に彷徨うとか、実験動物になったり、人間じゃない生物に変化されたり、他にも探せば出てくる出てくる…」
オルガ「意外に恐ろしいんだな!?」
菜月「作者達が声かけてもやりたくない理由が分かった気がする…クウ、よくこんなゲーム出来るな」
クウ「まだ二回目だけど、俺の探索者その内死ぬな…」
鈴乃詠「大丈夫。人間捨て出したどこぞの詐欺師も別シナリオやってちゃんと生き残ってるから」
クウ「邪神の呪い持った奴と俺を一緒にすんな!!」
菜月「邪神の呪いって何だよ? そういや、セッションでも聞いたような」
鈴乃詠「【邪神の呪い】。SAN値は半分以下なのに神話生物遭遇のSANチェックでは必ず成功、更に重要な目星の際に必ずクリティカルさせるKP涙目必須のスキル。だが、そのダイス運を引き換えに何故かほとんどの幸運を失敗させると言う我ら作者が名づけたオリジナル用語だ」
菜月「なにそれ? マジ?」
クウ「マジだ…ダイスって凄いぜ。俺達にどんな運があるのかが分かるからな」(遠目)
鈴乃詠「ホントだよ…オルガって芸術:コスプレは必ず成功させるでしょ。しかもクトゥルフ関連に関わる部分だとクリティカル出してるし。菜月は…当たる部分は当たるけど、失敗はドジ関連が多いよね」
オルガ「ここの作者一人でダイス振ってる筈なのに、ちゃんと法則性があるんだな…」
菜月「オイラ、イリアドゥスよりもダイスの女神を信仰したくなったぞ…」
鈴乃詠「さて、ここでお知らせだ。実はこのセッション、一つ間違えてた部分あったんだよね」
オルガ「間違えてた部分?」
鈴乃詠「最後の空淵のマーシャルアーツとキック。あれ1ラウンド分経っていたから敵は回避宣言出来たんだよ。でもダイス目がみんな粗ぶっていたから若干混乱気味で気付かなかったんだ。次はこう言う事が無いようにしたいね」
菜月「本気でオイラ達倒そうとしてたのに?」
鈴乃詠「KPとしてはPLにスリルを感じて欲しいだけで、ゲームオーバーにさせたいとは思ってないよ。本気でゲームオーバーにさせたいなら初っ端から神格出せば済むことだけど、そんなのつまらないし後味が悪いだろ? TRPGは、KPとPLが一緒になって楽しむのが理想の形なんだ。まあ、人によって考えはそれぞれだけどね」
クウ「それって悪役ぶってたけど、実は内心ヒヤヒヤしてたって事か?」
鈴乃詠「まあ、ね。コービットってさ、その気になればいろんな呪文使えたんだ。一定のダメージを無かった事にする『肉体の保護』とか。空淵が見つけた魔力の篭ったナイフを飛ばすとか。前者は三人がさっさと地階に行ってコービットを見つけた所為で発動出来ず、ナイフは失敗続きで出来ず。かぎ爪攻撃は後が酷いから最終手段としていたんだけど…当たった時はヒヤヒヤしたよ。このままロストしたら解決しても後味悪いしね」
菜月「KPも大変なんだな」
鈴乃詠「さて。話も終わった事でそろそろ特別ゲストに来て貰おうか。入ってきなよー」
ウィド「とりあえず、まずはお疲れ様です三人共」
レイア「見ててドキドキしました…」
菜月「え? 何で二人がここに?」
鈴乃詠「そりゃそうさ。氷狩はウィド、玲愛はレイアが作った探索者なんだから」
ウィド「私のキャラがNPCとして出るのを見ると少し不思議ですが、これはこれで楽しめますね」
レイア「私も飛び込み参加な形でしたが、お役に立てて良かったです」
菜月&オルガ「「………」」
クウ「ん? 二人とも黙ってどうした?」
菜月「いや…氷狩って確か、俺達が病院で会った“お姉さん”? 探偵じゃなくて?」
クウ「あー…それなんだがな」
ウィド「私の探索者、性別“女”なんですよ。普段は変装を使って男装で過ごしている設定なんです、探偵も女性の姿も同一人物です」
菜月&オルガ「「ハイーーーーー!!?」」
鈴乃詠「まあ、驚くよね…でも、これもTRPGだからこそ出来るんだ。ルールに沿って自分で思い通りのキャラを作ってシナリオで動かす楽しさ。さすがに突拍子もない設定は無理だったりするけど…ルルブさえあれば、紙と鉛筆とダイス(ネットのダイスツールやアプリでも可能)何より想像力があれば出来る。今どきのTVゲームとは違う面白さってのがあるのさ」
ウィド「三人の内男が一人だけですので俗にいうヒロイン候補になってますが、どうせ探索者ですし。寧ろそれすらも武器に使えますしね」
オルガ「この人強い…!」
鈴乃詠「思ってたんだが、お前前世邪神だろ? 実は何とかホテプから転生した存在だろ?」
ウィド「失礼な。何を証拠に」
鈴乃詠「成功も失敗も含めた全てのSANチェックを全部1で済ますって普通は出来ないだろ。しかも目星以外もクリファン乱発してさ(実話)。トリック・スターの称号与えてやろうか?」
ウィド「結構です。与えるのなら私じゃなく、私の振るダイスに与えてください」
菜月(ウィドのダイス運、強運じゃなくて悪運だ…!)
オルガ(ダイス神って凄いな…! 改めてそう思った…!)
クウ(作者も毎回ダイス結果見て、ガチで目を疑ったそうだからな…もはや『異常(アブノーマル)』持ちだろ、こいつ)
ウィド「何でしょうか? そこの三人から失礼極まりない視線が送られるのですが?」
鈴乃詠「ハッハッハ。なんだ、結局分かっているじゃないか」
鈴乃詠「とりあえず、誕生日企画のTRPGについてのアトガキは以上かな。尚、このシナリオ【悪霊の家】について詳しく知りたい、遊びたいって人がいたら基本ルルブを買うか、動画なんかを見るのをお勧めするよ。今回は外での情報収集を中心にしてたからすんなりラスボスまで進んだけど、実際屋敷を調べると…いろんなトラップがあったんだよね」
クウ「地下でも充分トラップ満載だった気がするけどな…」
鈴乃詠「これは余談なんだが、クトゥルフ神話以外にやってみたいTRPGあるんだよねー」
クウ「やってみたい奴?」
鈴乃詠「その名も【ダブルクロス】!! それは裏切りを意味する言葉っ!! かっこいいじゃないか!!」
クウ「また何か分からないゲームに嵌りやがって…するなら勝手にしてくれよ」
鈴乃詠「あ? 何他人事みたいに言ってるの? 君PCとして強制参加だから覚悟しな」
クウ「はぁ!? 聞いてねーぞ!!」
鈴乃詠「今話したからね。安心しろ、他の面子は既に声を掛けてある―――ふっふっふ、これから楽しくなるぞー!!」
クウ「待てやぁ! 勝手に決めてんじゃ…何処に行くんだスズノヨミー!!」