再会とお披露目会
まずはレオン達に挨拶と、自分達が去った後の近況を聞く事にした。
とは言え、全員で押し掛けるにはいかない。中には見られるとマズい人もいるのだから。
話し合いの結果、レオン達の所へはソラ・カイリ・ヴェン・オパール・ウィド・スピカで行く事にした。残りはマーリンの家の近くで待機して貰う事にする。
「オパールっ!! ソラ、カイリ、みんなおかえりー!!」
マーリンの家にやってくると、早速ユフィが笑顔で出迎える。
そのまま駆け寄ってオパールに抱き着くものだから、本人は恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「た、ただいま…」
どうやら元気そうでホッとするソラ達。
そうして騒いでいると、レオンとエアリス。そしてシドもやってきた。
「初めての奴もいるな? そいつらは?」
「初めまして。私はウィドと申します」
「スピカです。この子の姉で、この度彼らの保護者を務める事になりました」
大人としてレオンに丁寧に挨拶するウィドとスピカ。そんな二人に、エアリスは微笑む。
「そう。ふふ、ソラ達の面倒見るの大変でしょう?」
「エアリス〜!」
何気ない一言に、ソラが困ったように撃沈する。
久しぶりの再会を笑って過ごしていたが、やがてシドが話を戻した。
「それで、戦いは終わったのか?」
「それなんだけど、ここには立ち寄っただけ。明日にはまた出かけるつもりだから」
「またか!! オパール、もういい加減に――!!」
ゴンッ!!
「エアリス、ユフィー。邪魔だから隅にでも追いやっててー」
「りょうかーい」
「地下の食糧庫、閉じ込めておくね」
(((つ、強い…)))
シドを拳1つで沈めたオパールと、慣れたようにどこかにやろうとするユフィとエアリスに、男三人は心の中で引いた。(ウィドは平常通り)
そんな事に気づいていないのか、オパールは話を進める。
「で、あたし達あれから別の世界にいたからさ。近況を教えて欲しいんだよねー?」
「あ、ああ…」
これ以上触れてはいけない。そんな警告がレオンの脳裏を過ぎり、言われた通りに今まであった事を説明する。
自分達と別れてから、襲っていたハートレスとノーバディはしばらくして消失したようだ。今も現れはするが、数は平常に戻ったらしい。
脅威は退けられた事にソラ達は安堵を浮かべる。だが、スピカだけは違った。
「………」
「姉さん?」
「あの…申し訳ありませんでした」
徐に頭を下げてレオン達に謝るスピカ。突然の行動に、レオンは困惑を浮かべる。
「なぜ謝る?」
「この世界が襲われたのは、私の所為です」
そう前置きして、スピカは頭を下げながら説明する。
この世界が襲われたのは、ソラ達の絆を壊す為。その一端を担う為に、スピカは敵に捕らわれて利用されたのだ。この世界を救うか、大事な自分を救うかの天秤にかける為に。
こうして訳を話すと、スピカは先程よりも深々と頭を下げた。
「本当に、言い訳の言葉もありません。申し訳ございません…」
「謝らなくていいよ」
「エアリスの言う通りだ。悪いのはあんたじゃないし、今はソラ達の力になる為にいるのだろう? だから顔を上げてくれ」
「…ありがとうございます」
エアリスとレオンから許しの言葉を貰い、ようやくスピカは顔を上げる。
近況も聞き終えて謝罪もした所で、レオンが思い出したようにオパールを見た。
「それで、オパール。まだ他に人はいるんだろう? 大人数でどこに泊まるつもりだ?」
「うんうん。住居で手いっぱいだから、宿の設備はまだなんだよねー」
「そうなのか?」
「どうしようか…?」
付け加える様にユフィも今の街の状況を伝えると、ヴェンとカイリが困ったように顔を見合わせる。
「う〜ん…だったらさ――うち、来る?」
「「「「うち?」」」」
場所は変わり、商店街の近くに待機していた残りのメンバーの一部――リク・テラ・アクア・ルキルが一斉に声を上げる。
四人の疑問の声の発信源であるオパールは、軽く頷いた。
「そ、あたしのうち。ちょっと離れてるけど、皆泊まる広さはあるからいいかなって」
「ありがたいけど、いいの? こんな大人数で押し掛けて、あなたの家族とか迷惑になるんじゃ?」
「そこは大丈夫。あたしの家族、今誰もいないからさ…」
「あっ…ご、ごめんなさい!」
触れてはいけない話題をここで思い出し、慌ててアクアは頭を下げて謝る。
オパールの両親は、この世界で起こった10年前の闇の崩落でハートレスになってしまった。平和にはなったものの、今もまだ戻って来ていない…仲間がいるとは言え、彼女はまだ孤独なのだ。
本来なら辛い事なのに、オパールは取り繕う様に暗くなった空気を吹き飛ばそうとする。
「アクア、気にしないでよ。ところで、何人か見かけないんだけどどこ行ったの?」
「ツバサが服を着替えたいって事で、クウ達がお店の人に頼んで部屋を貸して貰ってるんだ。もう戻ってくることかと」
「お待たせしましたー!」
噂をすれば、という奴だろう。商店街から、レイアが手を振りながら戻ってくる。その後ろにはクウがいて、背中に隠れる様にツバサがクウの着流したコートの部分を掴んで歩いてくる。
様子のおかしいツバサに、リクが訝し気に質問する。
「なあ。シャ…ツバサは何をしているんだ?」
「おいおい、ツバサ。折角のお披露目なんだから、隠す事ないだろ?」
「で、でも…!」
どうやら恥ずかしいのか、ツバサは更に身を縮こませてクウの背中に隠れてしまう。
前は少年だったが今では少女らしさを見せるツバサの初々しさに、女のしての邪心がくすぐったのかカイリとオパールの目が怪しく光った。
「ふっふっふ…ツバサちゃん、一体どんな服なのかなぁ〜?」
「良いではないか、良いではないかぁ…」
「ひ、ひぃ…!?」
「お、おいお前ら…?」
手を構えてジリジリと近づく二人に、ツバサはより一層クウのコートを強く握りしめる。クウもまた、目の前の女子二人に顔が引きつっている。
他人から見たらどこぞの悪代官のように変わってしまったが、二人はお構いなしにツバサの腕を掴んだ。
「「覚悟ー!!」」
「やあああぁぁああ!!?」
悲鳴を上げながら引き剥がされないよう掴むが、抵抗虚しく二人によって全員の前へと差し出されてしまった。
そうして露わになったツバサの衣装に、リクとソラが感嘆の声を漏らした。
「お、おお…!」
「うわぁ!」
茶色のニット帽は取り払ったのか、灰色から銀へと変わった腰まである長い髪を下ろしてある。
チャックの付いた臍だしの黒のインナー。その上から機関が着ている黒コートをジャケットのように羽織っているが、アレンジしているようで裾は足元ではなく腰の部分までの長さしかなくフードも取り払われている。
そして下は青のホットパンツを穿き、膝元近い長さの黒のブーツを履いている。
衣装の殆どが黒色で占められているが、長い銀髪のおかげで互いの色が映える。全員の視線を一身に受けながら、ツバサは困ったように上目遣いで訊いた。
「う、うう…へ、変じゃない?」
「そんな事ないよ! 似合ってるぞツバサ!」
「ええ、中々ボーイッシュな感じよ!」
「あ、ありがとう…!」
ヴェンとアクアに褒められ、ツバサは照れながらもお礼を述べる。
他の人も新しい衣装を温かい目で見ているが、その内の何人は不思議そうに見ていた。
「なあ。ツバサのその衣装だが…」
「…俺の服に似てないか?」
「………」
テラとリクの疑問が投げつれられ、更にはルキルから無感情な視線が注がれる。
そんな三人に、他の人も気づいてツバサの衣装と記憶の中にあるリクの服を思い浮かべる。
「あ。言われてみてば…」
「インナーとかまんまよね。ズボンもあたしと同じで丈は太腿丸出しでかなり短いけど、似てると言えば似てるわね」
「その服、オルガが作ったんだっけ? リクの服の事知ってたのかな?」
ソラ、オパール、カイリの疑問に、照れていたツバサの表情が一瞬で凍り付いた。
「うぇ!? あ、え、その…! た…たまたま、じゃ、ないかなぁ〜…?」
「ツバサ、急にどうしたの?」
目は合わせないし冷汗は掻くしで、挙動不審の動きを見せるツバサをスピカは心配する。
勘の鋭いメンバーが不審な目でツバサを見るが、ただ一人ウィドだけが彼女を庇う形で話を進めた。
「今はそんな事どうでもいいでしょう。それよりオパール、そろそろあなたの家に案内してくれませんか? 本当に全員寝泊まり出来るかどうか確認しないといけません」
「あ、うん…ごめん。それじゃ、ついて来てよ!」
そう言って、オパールは自分の家に案内する為に先頭を歩きだす。
他の人も本来の目的を思い出し、ツバサへの疑問を隅に置いて彼女の後を追いかけた。
ツバサは密かに話題を逸らせた事に、皆に混じりながらこっそりと溜息を零した。
■作者メッセージ
ダブクロシリーズが一段落したので、こちらの方を投稿させて頂きました。
次もまたこちらの投稿になると思います。書きたいシーンがあるので、そこまで出せるよう頑張ります。
次もまたこちらの投稿になると思います。書きたいシーンがあるので、そこまで出せるよう頑張ります。