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Re:開闢の宴・最終章

NANA

INDEX

  • あらすじ
  • 01 メモリアル1
  • 02 メモリアル2
  • 03 メモリアル3
  • 04 再会とお披露目会
  • 05 やりたい事
  • 06 ツバサの正体
  • 07 恋心の絆
  • 08 手を差し出す方法
  • 09 心残り
  • 10 生まれ変わった拠点
  • 11 一日の終わり
  • 12 オーバーチュア&クリムゾンブリッツ
  • 13 叶えた夢
  • 14 正体不明の敵
  • 15 陣の使い手
  • 16 弟子同士の対決(けんか)
  • 17 親友としての思い
  • 18 使徒との交流
  • 弟子同士の対決(けんか)


     黒い館の広い通路から、ズカズカと大きな足音が響く。
     あの肩眼鏡を付けた男性が、ズボンのポケットに両手を突っ込んでムスッと仏頂面のまま歩いている。
     まるで、行き場のない苛立ちを吐き出すように。

    「落ち着きがないねぇ。そんなに心配かい?」

     背後から投げかけられた呑気な少女の声に、男性は足を止めて振り返る。
     星も光もない、闇に包まれた風景を映し出す窓。その縁に腰かけて座っているのは、鈴のついた巫女服を着た白い髪の少女だ。
     床に届かない足をプラプラと揺らしながら笑みを浮かべる彼女に、男性はしかめっ面を浮かべる。

    「…スズノヨミか。何で俺が野郎の心配しなきゃいけねーんだよ」

    「嘘は止めたらどうだい? いつもなら『スズちゃん』と呼んでくれるのに、フルネームで言っている辺り心に余裕がない証拠さ。クロトスラル」

     クスクスと笑う少女――スズノヨミに、クロトスラルと呼ばれた男性は仏頂面を解かず不満げに話をする。

    「んで、俺を引き留めて何の用だ? 今割と頼みを聞いたり、話をする気分じゃねーんだけど」

    「それは見て分かるよ。いやぁ、中々面白い事になってるよねー。君の弟子が、裏切り者と対決する為に出て行ったんだろ? これも運命(さだめ)って奴なのかね」

    「なーにが運命だ。あのバカ弟子どもが、スズちゃんの暇つぶしになれる程の事を起こすと思ってんのか?」

    「バカ弟子ども? やだなぁ、あの二人を一括りにしているのかい」

     ククク、と意味ありげに笑うスズノヨミ。挑発していると分かっていても、クロトスラルの苛立ちに更に火が付いてしまう。

    「…スズちゃん、それはあれか? 裏切り者となったあいつは、俺の弟子じゃないと。そう言いたいのか?」

    「おいおい、クウは君の弟子じゃないだろ。元はセヴィルの弟子…その証拠に、キーブレードも継承している。そして」

     ここで笑みを更に深くして、巫女服に付けられている鈴がチリンと音を立てて鳴る。

    「裏切り者となったマスターのセヴィルを倒したのは、他でもないレクトだろ?」

     クロトスラルの目が細まる。それ以上の表情は出さないが、内心では盛大に舌打ちを鳴らす。
     そうだ。レクトはたった一人でキーブレードマスターを倒した実績を持っている。例え今はその力が失われていたとしても、強敵には変わりない。
     その事をスズノヨミも分かっているのだろう。クロトスラルから目を離すと、再び闇に包まれた空に視線を移した。

    「セヴィルを倒し、弟子であるクウを倒しに行く。こんな因縁と運命を感じさせる話――とても面白いじゃないか。優雅に劇場で観賞したって、文句はないだろう?」



     クウの攻撃を全て弾き返した後、四人の間に緊迫した空気が流れている。
     そんな中、先に口を開いたのは意外にもレクトだった。

    「ふーん…話には聞いてたけど、随分な有様だよね」

    「あ?」

    「右腕の大半が封印されて動かない。その上、魔力の元の切断…とても戦える身体じゃない」

     つらつらと、まるで見下すようにクウに批評を述べる。しかし少し見ただけで症状を言い当てている分、レクトがどれだけ魔導士として精通しているのかが分かる。

    「ねえ、これが君のやりたかった事? 俺達全員敵に回してまでしたかった事なの?」

     失望したと言わんばかりに言葉で攻め立てるレクト。これにはクウも何も言えずに黙り込む。
     それを見たレクトは、図星を言い当てたとばかりに更に目を細めて笑みを浮かべる。

    「それとも罰が当たったのかな? 俺達の事見捨てたから、それ相当の」

    「レクト!」

     我慢出来なくなったのか、途中で遮るようにスピカが悲鳴を上げる。

    「あなたのそれは本心じゃないでしょ!? だって、あなたは私に」

    「スーちゃんは黙っててよ」

    「…っ!」

     たった一言放っただけ。けれど、庇い立てるスピカを怯ませるほどの重みが言葉の中に含まれていた。
     スピカまで何も言えなくなると、レクトはわざとらしく溜息を吐く。

    「ねえ。今スーちゃんは隣にいてくれてるけど…君が俺達に何をしたか、ちゃんと自覚してる?」

    「…してる。分かってる」

     それでも、クウは目を背ける事はしなかった。
     敵として対峙するレクトは、己が乗り越えるべき関門なのだと分かっているから。

    「俺からも、1つ聞かせろ」

     そしてクウは、出会った当初から思っていた疑問を口にする。

    「レクト。お前なんで…光の力を持ってんだ?」

     それは昔を知っているからこその疑問だった。
     レクトは本来、闇側の存在。自分達と同じように闇の力を宿している筈なのに、今の彼は膨大な光の力を持っているのだ。組織の掟に反している訳ではないが、闇の世界に居続ける以上それはありえない事だ。
     この疑問に、今度はレクトが顔を歪める事になる。

    「何で君に教える必要あるの?」

    「普通ありえないだろ!? お前はあれだけの闇の力持ってた筈なのに、何で光の力になってんだ!! 何したんだよお前!?」

    「…君には関係ない」

    「関係あるだろ! 何がどうしてそうなったんだよ!?」

    「やっぱり、分かってない……」

     質問攻めしていると、今まで黙っていたニルヴァナが小刻みに震え出した。

    「ニルヴァナ?」

    「あなたは、何も分かってない!! あなたの所為で、レクトさんも……セヴィルも周りも、どれだけ巻き込んで傷ついたのかっ!! 何も、何もっ……!!」

     啖呵を切ったように泣きながら叫ぶニルヴァナ。胸の内に秘めた様々な思いは、クウ達だけでなく倒れているソラ達にすらも感じ取れる。
     襲う事はしないが、ニルヴァナは泣きながらも攻める様にクウを睨みつけている。鋭い視線に耐え切れず、クウは目を逸らしてしまう。

    「二人とも…俺は」

    「ニーちゃん、下がって。あと重くてごめんね」

     突然ドサリと、ニルヴァナの肩に重量がかかる。
     それはレクトが着ていたローブだった。やけに重いのは中に沢山のナイフを仕込んでいるからだろう。それを羽織うようにニルヴァナに被せている。
     見ると、レクトは白の長ズボンと黒いインナーと言うラフな格好で二人に近付く様に前に出ていた。

    「レクト、さん……!?」

    「大丈夫。君を傷つけた悪い奴は、君を泣かせる悪い男は」

     パンっと乾いた音が辺りに響く。
     丁度中間くらいの距離で立ち止まった状態で、右手を左手の掌で受け止める様に胸の前で構えていた。

    「俺が、制裁してあげるから」

     武器である杖は既に持っていない。真剣な表情で、丸腰の状態となって相手をしようとするレクトの立ち姿に、クウも思わず目を細めた。

    「…なんのマネだ、レクト?」

    「右腕動かない状態で戦うのもどうかと思ってね。ハンデ上げるよ」

    「何がハンデだよ…俺を舐めてるのか?」

    「舐めてるのか、じゃない。――舐めてんだよ」

    「ッ――レクトォ!!!」

     挑発を真に受け、クウは走り出す。
     そのまま、思いっきり左の拳でレクトの顔面を殴りつける。
     しかし、レクトは見切るように右腕だけで受け流すようにガードしてきた。それだけでなく、間に滑り込ませるように左足で胴体目掛けて蹴りを放つ。至近距離からの蹴りは避けようがなく、クウは諸に喰らってしまう。
     呻き声を上げてよろめくクウ。しかし、スピカとニルヴァナ以外の全員はレクトの動きに注目していた。

    「あの型…!」

    「クウさんと、同じ…!?」

     魔導士であるレクトが使ってきた格闘術。それは、クウと似た動き――型を取っていたのだから。
     皆が驚きを浮かべる中、レクトは静かに構え直す。全てではないが、それもまたクウと似た仕草だ。

    「杖もナイフもないから、もう魔法は使えない。使えるのは師匠に習った護身程度の格闘術のみ。だけど――今の君には、これで十分だろっ!」

    「…上等だ、レクト」

     ダメージから回復し、クウもまた右腕が動かない状態で構える。

    「元『闇の魔神』として――」

    「『黒翼』として――」


    「――絶対に潰すっ!!!」
    「――絶対に泣かすっ!!!」


     それぞれに誓いを立て、二人は同時に地を蹴り殴り合いの応酬が始まった。
     殴り、殴られ、防ぎ、防がれ…シンプルな殴り合いが繰り広げられる。ニルヴァナも含めて二人の戦いに見入る中、レイアはスピカが動くのに気づく。

    「スピカさん…?」

    「あなた達はそこにいて。あの子達の治療は私がするわ」

    「待ってください! あの人は一体…どうしてクウさんと同じ事が出来るんですか!」

    「そんな事も、知らないんですか……」

     レイアの疑問に、ニルヴァナが口を開く。その声色はどこか侮辱しているようにも聞こえる。
     スピカは近くにいたソラとルキルに回復魔法をかけながら、二人について教える。

    「二人は、同じ師の元で修業をした仲…同じ技を受け継ぎ、互いに技を教え合った。門下生みたいな関係なの」

    「クロに護身術を、教えて貰って……彼はレクトさんのナイフ技、教えて貰ったんですから……一緒で、当然です……」

     そうこう言っている間にも、二人の激闘は収まらない。
     クウは片腕が使えないと言うハンデを負っているが、元々力は強く体力も人一倍だ。同じ格闘技を持っているにせよ、差が出て来たのかレクトの動きが鈍くなり始めている。それでも、彼は殴る事を止めない。

    「結局両腕あった所で、魔導士のお前が格闘戦に分配上がる訳じゃねえ!!」

     これでトドメと言わんばかりに、右足を思いっきり振り上げるクウ。
     その直後、二人の足元が眩く光を放った。

    「な!?」

     光の正体は、突き刺さったままのナイフによって生み出された魔方陣。黄色く光を放つと雷を起こし、クウだけを的確に射抜いた。

    「ぐう!」

    「ああ――それは認めるよ!!」

     魔法を受けたクウに、追撃とばかりに顔面を殴りつけるレクト。流石に耐え切れずに地面に倒れ込んでしまう。
     レクトが息を切らして肩を動かして呼吸をしていると、結界の向こう側でリクが異議を申し立てた。

    「おい、魔法使わないんじゃなかったのか!」

    「これでも、俺は師匠の教えを忠実に守っているよ…」

     クウが立ち上がるよりも早く、レクトは座りながら胸倉を掴み上げる。

    「勝つためなら、卑怯な事も厭わない。女を泣かせた相手なら猶更だってねぇ!!」

     そして、レクトは再びクウを殴りつける。一回では収まらないのか、何度も、何度も殴り続ける。
     反撃出来ないのか、黙ってクウは殴られている。誰もがこの戦い…いや、喧嘩を見守るしかなかった。

    「止め、て……」

    「ニルヴァナ…」

    「もう、止めて……っ!! レクトさん、もういいから!!!」

     我慢の限界と言わんばかりに、ニルヴァナが泣きながら叫ぶ。その姿に、スピカは声をかけたもののそれ以上は干渉しようとしない。
     こうなったのは自分の感情を抑えきれずに八つ当たりした所為だと。本当はこんな事、望んでいなかったと。
     なのに、

    「ごめん、無理だ」

     聞こえたのは、期待を裏切る言葉だった

    「何で、こんな事しても何も――ッ!!!」

    「ニーちゃんの為って言ったね、あれ…8割は嘘だ」

     ここで、ようやくレクトが手を止める。
     その顔は…苦痛で歪んでいて、涙で濡れている。

    「止まらないんだ。心が騒めいて、悲しくて、落ち着かない。落ち着かないんだ…!」

     殴っていた手で胸をキツく押える。

    「だからこうやって――憂さを晴らすしかないんだよっ!!!」

     再び、クウを殴りつける。怒りも篭っているのか先程よりも強く。
     殴る度にクウの肉体が、レクトの心が傷つけあう。痛々しい光景に、回復したソラとルキルが止めようとする。
     だが、スピカが二人の腕を掴んで引き留めた。

    「スピカさん!?」

    「だめ」

    「嫌だ! あのままじゃクウが!」

    「これは…レクトの痛みも、ニルヴァナの傷も、彼がどうにかしなきゃいけない」

     二人を握った手は震えていて、とても辛そうな顔をして。
     それでもスピカは『止める』と言う選択を行わなかった。

    「二人を傷つけたのは、他の誰でもないクウなんだから」

     今も尚泣きながら殴るレクトと、殴られ続けるクウを悲し気に見つめる。
     レクトを止めるのは、クウの役目なのだから。

    18/10/21 22:39 NANA   

    ■作者メッセージ
    どうにか続きを出せました。いやー、もう三ヶ月ちょいしたらKH3発売されるって言うのに、中々執筆が進まない…。


    KHUxの3周年は終わって、現在はちまちまとジュエル集めをやっています。
    そんな中、新しいコンテンツ【エクストレス】が追加されました。これはKH3にも追加されるコンテンツで、パーティ以外のプレイヤーも含めてチャットトークをしたりKH3のミニゲームをいち早く体験できるというもの! しかも、ミニゲームを熟して一定以上のスコアを重ねるとKH3で使える『スターライト』のキーブレードがプロダクトコードでゲット出来るんです!
    まだ日にちはあるので、一ヵ月前とか近づいてきたら本格的にクリアしていこうと思ってます。そもそもPS4もまだだしね!



    はい、そしてお待ちかね(?)FGOのお時間です。知らない人は回れ右して引き返してね。
    バトル・イン・ニューヨーク2018基ギル祭は別で出したので、そちらを。Zeroコラボはどうにかこうにかで、イベントクリア&アイリさんをゲットしましたよー。
    話もIFを舞台にしただけあって、助けられる人が助けられる未来。出会えなかった、邂逅しなかった人が出会ったら。何と言うか…この話をきっかけに教授とイスカンダルが滅茶苦茶欲しくなりました。あの二人(三人?)のイベントはくっそ卑怯すぎる、マジで良い話だったよ…!!(涙
    あ、エリちゃんのハロウィンイベントは去年やったので、話題にはしません。

    そしてそして……イベントラッシュもどうにか落ち着き、どうにかこうにか7章クリアいたしましたー!!
    いやもう、何というか……途中から敵が神話生物並みにヤバいのが出て来るし、ギミックで大変だし、敵はめっさ強いし…ストーリーも希望を見出しては、敵の圧倒的な力の差の前に絶望しか出来ないと言う、希望と絶望を繰り返す内容で。
    それでも死力を尽くし、様々なサーヴァントが力を貸して……本当にいい話でした7章は。アニメ化決定されたから、知らないって人も是非ともアニメが放送されたら見て欲しいです。劇場版で6章のキャメロット編も制作決定されましたからそちらも是非! 二つとも本当に見て損はない作品な筈です!

    ちなみに、7章のラストボスは沖田・マシュ・???(ゲスト鯖)*ネタバレ考慮・オジマンディアス・クーフーリン・水着BBの構成で挑戦しました。ガチの構成ですよ、ハイ(クーちゃんは星3だけど、耐久力舐めちゃいかん)
    沖田さんとゲスト鯖の宝具で削りに削りまくっていたんですが、流石に限界が訪れましてね。マシュと沖田さんが退場、オジマン様とクーちゃん入れたけど、そろそろ相手が大技使ってくるって時に、三人とも宝具打てる準備になりまして。あとは三人でぶっぱですよ。オジマン様のダブルピラミッド攻撃からの、クーちゃんの心臓を指し穿つゲイボルグ、トドメにゲスト鯖でドーンとやったおかげで倒せました。
    次はいよいよ終章。この調子でストーリー進めるぞー!!


    …あ、もちろん執筆も頑張りますよ、はい…。
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