ツバサの正体
結局その後、オパールによって騒ぎが大きくなり、とうとうテラにまで爆弾攻撃を仕掛けてしまう。
テラは自業自得だが、流石にこのままにしておけずアクアとレイアが回復する事に。それを待つ間に、カイリはスピカにある疑問をぶつけた。
「それにしても、一体どうやってリクを戻したの?」
「光の力を引き出して、身体にこびりついてた闇を払っただけよ。それだけ」
「よく分からないけど、リクを戻してくれてありがとう。スピカさん」
「気にしないで。…借りついでに、ちょっとしたお詫びのようなものだから…」
ボソリと誰にも聞こえないように呟く。半年くらい前に闇の回廊で、黒コートを着ていたリクを機関の人物と間違った事を思い浮かべる。
「え?」
「何でもないわ。それで、あなた達の話聞かせてくれない? その後で私の話をするわ」
話を逸らすように、スピカは本題に戻す。
大まかな事は知っていても、細かい事まではまだスピカは知っていない。そんな彼女の為にも、話せる人達で情報交換を始めた。
「…私達からは以上です、姉さん」
「次はスピカさんの番だね」
これまで自分達で起きた事をウィドとカイリがある程度話を終えると、スピカは頷く。だが、すぐに困った表情を浮かべた。
「私はこれと言って話せるようなものは何もないわ。あなた達が逃げてすぐ眠りの魔法をかけて、ずっと眠っていたから」
「…操られた自分を動けなくする為ね」
魔法の扱いが得意なアクアは、彼女が何のために自信に眠りの魔法をかけたのかを理解する。
「そこで一度だけ、捕われたシルビアにも会ったけど……ああ、思い出しただけでもぞっとするわ…!!!」
「とか言いながら、何で拳鳴らしてんだよスピカ?」
ぞわぞわと気持ち悪いと言った顔で、怨念を込める勢いで拳を鳴らしている。完全に表情と動きが一致しておらず、思わずクウが問いかけてしまう。
やがて気持ち悪さが怒りに変わったのか、黒いオーラを纏い歪んだ笑みが浮かび上がる。
「フフフフフ…あの女、次に会ったら生きてる事を後悔させるぐらいぶちのめしてあげるわ…!! 何が何でも決戦までに弱体化した能力を取り戻すわよ…!!!」
(((やっぱりウィドの姉(お姉さん)だ…)))
この場にいる全員が、何となくだがスピカとウィドが姉弟である事を理解してしまった。
未だに恨み言を吐くスピカに、このままでは胃が痛くなると言わんばかりにクウは話題を変える事に。
「と、とにかく、その…スピカから言える情報はないんだな?」
「ええ…強いて言うなら、私がいた場所くらいかしら」
「スピカさんがいた場所?」
漂わせていた黒さを無くして話を戻すスピカに、内心ホッとしながらヴェンが首を傾げる。
「キーブレード墓場――そう呼ばれる世界にいたの。エンやカルマ達と共に」
「キーブレード墓場?」
「かつて光を求めるあまりに、キーブレード使いによる戦争が行われた場所。その後、闇が生まれて荒廃してしまった――そう言われているわ。セヴィルからある程度話を聞いてはいたんだけど…それ以上の事は分からないわ。ごめんなさい」
そうヴェンに教えると、申し訳なさそうに頭を下げるスピカ。敵陣にいたのに、大した情報を持っていないのが原因だろう。
しかし、例え情報がなくてもスピカは自分達の為に行動してくれた。それを分かっている為、誰も責めるような事はしなかった。
「いえ、気にしないでください姉さん――では、私からも一つこの場でハッキリさせておきたい事があるのですが」
「何だ、先生?」
思わずルキルが訊くと、ウィドはある人物へと目を向ける。
「ツバサ、あなたについてです」
「え…?」
急に話を振られて、戸惑いを浮かべるツバサ。しかし、ウィドは気にする事なくツバサへ近づいた。
「あなたが異世界の未来の住人であることは他の人から話は聞いてます。ですが、まだ隠している事がありますよね?」
「それは…」
「ツバサ――そろそろ話して貰えませんか? あなたの事…いえ、あなたの“両親”について」
「ウィド、さん…?」
ウィドの問いかけに、ツバサは表情を固まらせる。
様子がおかしくなったツバサに、ウィドは確信を得て柔らかい笑みを浮かべる。
「…本当は薄々と感づいていたんでしょうね。でも、ずっと気づかないフリをして目を逸らしてた。そうする事で私は、どうにか自分を保っていたんです…」
「…気づいてたんだ、やっぱり…」
「最初はまさかって思ってました。でも、未来から来た事。彼らに対する呼び方。そして、シャオからツバサに変わった変化で確信に変わりました」
「………」
思う所があるのか、とうとう黙り込んでしまったツバサ。全員から目を逸らし、右腕を強く握っている。
それは、答えを言う事を拒絶しているようにも受け取れる。だからこそ、ウィドは敢えて笑顔で名前を呼んだ。
「ツバサ」
「――ボク、は…ボクの、父親は…リクさんです」
ようやく答えたその言葉に、誰もが耳を疑った。
『『『え…えええええぇ!!?』』』
そして二人を除いた誰もが叫び、リクへと顔を向ける。リクはと言うと、完全に固まっている。
見比べてみれば、リクと顔付きも髪や瞳の色もそっくりだ。シャオの時も似てはいたが、髪色も瞳も違っていた。どちらかと言えば母親似だったのかもしれない。
今のツバサを見て納得を見せるソラ達だったが、ウィドだけは違った。
「嘘ですね、それ。まあ、未来の事を考えれば当然ですか」
「っ、うそ、なんかじゃ…!?」
「ツバサ。あなたの本当の父親はリクではない――
――ルキルでしょう?」
『『『……は、はあああああああああぁぁ!!?』』』
今度は一斉にルキルの方を見る。彼もリク同様に固まっている。
しかしウィドは周りを気にすることなく、尚も顔を逸らし続けているツバサに自論を持ち出す。
「今のあなたは、シャオと違って父親似です。あなたの能力変化は、私達の記憶をコピーした上で自分に吸収して行っている…レプリカとしての力その物を使いこなしている。それに記憶の障害による自我の崩壊だって、症状はルキルと同じだと言っていた。もしあなたがレプリカとしての血を引き継いでいるなら、全ての辻褄が合います」
「……こうは考えないの? “母親の方がレプリカ”だって」
「おやおや。母親の方を受け継いだら、とんでもない事になるのではないのですか? 誰構わず繋がりとなる記憶を吸収する――そうなってしまえば、あなたも周りの人も乖離する…違いますか?」
「で、でも…!」
「ツバサ」
優しく、だが重みのある声で呼ばれ、反論の為に口を開いたツバサは思わず言いかけた言葉を飲み込む。
動きを止めたツバサに、ウィドは傍でしゃがむとお互いの目と目を合わせる様に、そっと小さな肩を掴んで向かい合わせになる。
「私の目を見ても、嘘を貫き通せますか? 出来る訳ないでしょう――あなたは素直で、真っ直ぐな良い子なんですから」
そう言って、ウィドは自信のある笑顔を見せる。そこにあるのは教え子と真剣に向き合う、教師としての顔だ。
逃げようにも逃げれず、ツバサの目がせわしなく動く。けれど、どう足掻いても敵わないのが分かり、悔しそうに顔を歪めた。
「…その言い方、卑怯だよぉ…!」
とうとう白状したツバサの本音。彼女が認めた事で、方法は違えど血が繋がっていると判明したリクとルキルは正気に戻って徐に近づく。
「まさか、本当に…?」
「俺の、子供、なのか?」
ビフロンスにて出会ってから今まで、仲間として接していた。けれど昨日、シャオは本当は死んでいて、色々あって妹であるツバサに戻った。ドタバタがありながらも受け入れたのに、更に驚きの事実が隠されていたのだ。
ツバサもまた全員の顔を見れずに、俯かせたまま口を開く。
「ねえ…一つ、聞かせて。どうして、気づかないフリしてたの? ボクの為? 皆の為? 未来の為?」
「……私の為です」
「ウィド?」
思わぬ言葉にスピカが呼びかける。だが、ウィドは先程とは打って変わり、辛そうな表情を浮かべて立ち上がる。
「認めたくなかったんです。あなたがルキルの子供なら、私の復讐心が揺れ動かされそうだったから…」
そうして、ウィドは心の内を明かす。
「どんな時でもクウを信じぬく姿勢、親しくしている姿に、沸き上がる苛立ちのままにあなたを父親から突き放して遠ざけた…消えればいいと見捨てようとした…師と弟子との揺るぎない絆が、何故か私にはとても眩しくて、羨ましくて、妬ましかった――だから真実に目を背けた。私にとってルキルは家族だ。あなたは私からすれば姪っ子のようなものなのに、私ではなくクウに懐いてるなんて…今の自分を否定されていた気分だったから」
「ウィドさん…」
「けれど、見限って当然ですよね。その絆を、あなたの存在を否定した醜い私なんて…嫉妬心で怒りと憎しみに憑りつかれた私なんて…!」
自分がシャオに行ってきた八つ当たりを後悔しているのだろう。真実が明らかとなった今では、悔やんでも悔やみきれない。
知らず知らずの内に歯を食いしばっていると、右手に温かみを感じる。気づくと、ツバサが小さな両手で包み込む様に握っていた。
「やっぱり、ウィドさんは優しいね。父さんの事だけじゃない。皆の事、ちゃんと考えているんだから」
「ツバサ…でも、私は…!」
「ボク、知ってるから。ウィドさん、怒ると怖いし考古学で暴走するし料理は気絶する程マズイし…でも、本当は優しい人だって」
「おや…意外とボロクソに言ってくれますね〜? 生意気な口はお父さん譲りなようで」
「いひゃい!? いひゃいほ〜!!」
ウィドが笑顔のまま左手でツバサの頬を摘まむなり、グググと上に持ち上げる。余程勘に触ったらしい。
さっきまでの黒い空気が嘘のように無くなるが、ここでカイリが新たな疑問をぶつける。
「ちょっと待って。じゃあ、あなたの母親は誰なの?」
「それ、は…」
「――シオン、なのか?」
思う事があったのか、リクが問いかける。
それに対し、ツバサは信じられないとばかりに目を見開いた。
「何で、伯父さんが…!? だって、本来は忘れられてる筈――っ!?」
取り乱しているのか、言い方が変わってリクに詰め寄る。だが、寸前の所で我に返って慌てて口を塞いだ。
「忘れ、られてる? どう言う事だ?」
「ツバサ、話せるか? それとも、話してはいけない話題か?」
「……ごめん。ただ」
テラとクウが訊くが、ツバサは黙秘をする。けれど、スピカに困ったように上目遣いを送る。
その仕草にツバサの意図を瞬時に理解して、スピカは頷いて代弁する。
「一部の人になら詳細を話せる…そう言う事ね? いいわ、詳しい事はあとで聞かせて頂戴。とりあえず、あなたに関してはざっくりな感じで大丈夫だから」
「ありがとう、スピカさん…」
気を使ってくれた事でお礼を述べると、スピカは肩を竦めてツバサの頭を優しく撫でた。
「あなたがウィドにとって姪っ子なら、私にとっても可愛い姪よ。だから、気にしないで。【家族】と言うのは、そう言うものよ」
「…うん」
やっぱり、二人は似ている。怖い所も、温かい所も。
姉と弟が自分に触れた優しくて温かい手に、密かにツバサは思った。
テラは自業自得だが、流石にこのままにしておけずアクアとレイアが回復する事に。それを待つ間に、カイリはスピカにある疑問をぶつけた。
「それにしても、一体どうやってリクを戻したの?」
「光の力を引き出して、身体にこびりついてた闇を払っただけよ。それだけ」
「よく分からないけど、リクを戻してくれてありがとう。スピカさん」
「気にしないで。…借りついでに、ちょっとしたお詫びのようなものだから…」
ボソリと誰にも聞こえないように呟く。半年くらい前に闇の回廊で、黒コートを着ていたリクを機関の人物と間違った事を思い浮かべる。
「え?」
「何でもないわ。それで、あなた達の話聞かせてくれない? その後で私の話をするわ」
話を逸らすように、スピカは本題に戻す。
大まかな事は知っていても、細かい事まではまだスピカは知っていない。そんな彼女の為にも、話せる人達で情報交換を始めた。
「…私達からは以上です、姉さん」
「次はスピカさんの番だね」
これまで自分達で起きた事をウィドとカイリがある程度話を終えると、スピカは頷く。だが、すぐに困った表情を浮かべた。
「私はこれと言って話せるようなものは何もないわ。あなた達が逃げてすぐ眠りの魔法をかけて、ずっと眠っていたから」
「…操られた自分を動けなくする為ね」
魔法の扱いが得意なアクアは、彼女が何のために自信に眠りの魔法をかけたのかを理解する。
「そこで一度だけ、捕われたシルビアにも会ったけど……ああ、思い出しただけでもぞっとするわ…!!!」
「とか言いながら、何で拳鳴らしてんだよスピカ?」
ぞわぞわと気持ち悪いと言った顔で、怨念を込める勢いで拳を鳴らしている。完全に表情と動きが一致しておらず、思わずクウが問いかけてしまう。
やがて気持ち悪さが怒りに変わったのか、黒いオーラを纏い歪んだ笑みが浮かび上がる。
「フフフフフ…あの女、次に会ったら生きてる事を後悔させるぐらいぶちのめしてあげるわ…!! 何が何でも決戦までに弱体化した能力を取り戻すわよ…!!!」
(((やっぱりウィドの姉(お姉さん)だ…)))
この場にいる全員が、何となくだがスピカとウィドが姉弟である事を理解してしまった。
未だに恨み言を吐くスピカに、このままでは胃が痛くなると言わんばかりにクウは話題を変える事に。
「と、とにかく、その…スピカから言える情報はないんだな?」
「ええ…強いて言うなら、私がいた場所くらいかしら」
「スピカさんがいた場所?」
漂わせていた黒さを無くして話を戻すスピカに、内心ホッとしながらヴェンが首を傾げる。
「キーブレード墓場――そう呼ばれる世界にいたの。エンやカルマ達と共に」
「キーブレード墓場?」
「かつて光を求めるあまりに、キーブレード使いによる戦争が行われた場所。その後、闇が生まれて荒廃してしまった――そう言われているわ。セヴィルからある程度話を聞いてはいたんだけど…それ以上の事は分からないわ。ごめんなさい」
そうヴェンに教えると、申し訳なさそうに頭を下げるスピカ。敵陣にいたのに、大した情報を持っていないのが原因だろう。
しかし、例え情報がなくてもスピカは自分達の為に行動してくれた。それを分かっている為、誰も責めるような事はしなかった。
「いえ、気にしないでください姉さん――では、私からも一つこの場でハッキリさせておきたい事があるのですが」
「何だ、先生?」
思わずルキルが訊くと、ウィドはある人物へと目を向ける。
「ツバサ、あなたについてです」
「え…?」
急に話を振られて、戸惑いを浮かべるツバサ。しかし、ウィドは気にする事なくツバサへ近づいた。
「あなたが異世界の未来の住人であることは他の人から話は聞いてます。ですが、まだ隠している事がありますよね?」
「それは…」
「ツバサ――そろそろ話して貰えませんか? あなたの事…いえ、あなたの“両親”について」
「ウィド、さん…?」
ウィドの問いかけに、ツバサは表情を固まらせる。
様子がおかしくなったツバサに、ウィドは確信を得て柔らかい笑みを浮かべる。
「…本当は薄々と感づいていたんでしょうね。でも、ずっと気づかないフリをして目を逸らしてた。そうする事で私は、どうにか自分を保っていたんです…」
「…気づいてたんだ、やっぱり…」
「最初はまさかって思ってました。でも、未来から来た事。彼らに対する呼び方。そして、シャオからツバサに変わった変化で確信に変わりました」
「………」
思う所があるのか、とうとう黙り込んでしまったツバサ。全員から目を逸らし、右腕を強く握っている。
それは、答えを言う事を拒絶しているようにも受け取れる。だからこそ、ウィドは敢えて笑顔で名前を呼んだ。
「ツバサ」
「――ボク、は…ボクの、父親は…リクさんです」
ようやく答えたその言葉に、誰もが耳を疑った。
『『『え…えええええぇ!!?』』』
そして二人を除いた誰もが叫び、リクへと顔を向ける。リクはと言うと、完全に固まっている。
見比べてみれば、リクと顔付きも髪や瞳の色もそっくりだ。シャオの時も似てはいたが、髪色も瞳も違っていた。どちらかと言えば母親似だったのかもしれない。
今のツバサを見て納得を見せるソラ達だったが、ウィドだけは違った。
「嘘ですね、それ。まあ、未来の事を考えれば当然ですか」
「っ、うそ、なんかじゃ…!?」
「ツバサ。あなたの本当の父親はリクではない――
――ルキルでしょう?」
『『『……は、はあああああああああぁぁ!!?』』』
今度は一斉にルキルの方を見る。彼もリク同様に固まっている。
しかしウィドは周りを気にすることなく、尚も顔を逸らし続けているツバサに自論を持ち出す。
「今のあなたは、シャオと違って父親似です。あなたの能力変化は、私達の記憶をコピーした上で自分に吸収して行っている…レプリカとしての力その物を使いこなしている。それに記憶の障害による自我の崩壊だって、症状はルキルと同じだと言っていた。もしあなたがレプリカとしての血を引き継いでいるなら、全ての辻褄が合います」
「……こうは考えないの? “母親の方がレプリカ”だって」
「おやおや。母親の方を受け継いだら、とんでもない事になるのではないのですか? 誰構わず繋がりとなる記憶を吸収する――そうなってしまえば、あなたも周りの人も乖離する…違いますか?」
「で、でも…!」
「ツバサ」
優しく、だが重みのある声で呼ばれ、反論の為に口を開いたツバサは思わず言いかけた言葉を飲み込む。
動きを止めたツバサに、ウィドは傍でしゃがむとお互いの目と目を合わせる様に、そっと小さな肩を掴んで向かい合わせになる。
「私の目を見ても、嘘を貫き通せますか? 出来る訳ないでしょう――あなたは素直で、真っ直ぐな良い子なんですから」
そう言って、ウィドは自信のある笑顔を見せる。そこにあるのは教え子と真剣に向き合う、教師としての顔だ。
逃げようにも逃げれず、ツバサの目がせわしなく動く。けれど、どう足掻いても敵わないのが分かり、悔しそうに顔を歪めた。
「…その言い方、卑怯だよぉ…!」
とうとう白状したツバサの本音。彼女が認めた事で、方法は違えど血が繋がっていると判明したリクとルキルは正気に戻って徐に近づく。
「まさか、本当に…?」
「俺の、子供、なのか?」
ビフロンスにて出会ってから今まで、仲間として接していた。けれど昨日、シャオは本当は死んでいて、色々あって妹であるツバサに戻った。ドタバタがありながらも受け入れたのに、更に驚きの事実が隠されていたのだ。
ツバサもまた全員の顔を見れずに、俯かせたまま口を開く。
「ねえ…一つ、聞かせて。どうして、気づかないフリしてたの? ボクの為? 皆の為? 未来の為?」
「……私の為です」
「ウィド?」
思わぬ言葉にスピカが呼びかける。だが、ウィドは先程とは打って変わり、辛そうな表情を浮かべて立ち上がる。
「認めたくなかったんです。あなたがルキルの子供なら、私の復讐心が揺れ動かされそうだったから…」
そうして、ウィドは心の内を明かす。
「どんな時でもクウを信じぬく姿勢、親しくしている姿に、沸き上がる苛立ちのままにあなたを父親から突き放して遠ざけた…消えればいいと見捨てようとした…師と弟子との揺るぎない絆が、何故か私にはとても眩しくて、羨ましくて、妬ましかった――だから真実に目を背けた。私にとってルキルは家族だ。あなたは私からすれば姪っ子のようなものなのに、私ではなくクウに懐いてるなんて…今の自分を否定されていた気分だったから」
「ウィドさん…」
「けれど、見限って当然ですよね。その絆を、あなたの存在を否定した醜い私なんて…嫉妬心で怒りと憎しみに憑りつかれた私なんて…!」
自分がシャオに行ってきた八つ当たりを後悔しているのだろう。真実が明らかとなった今では、悔やんでも悔やみきれない。
知らず知らずの内に歯を食いしばっていると、右手に温かみを感じる。気づくと、ツバサが小さな両手で包み込む様に握っていた。
「やっぱり、ウィドさんは優しいね。父さんの事だけじゃない。皆の事、ちゃんと考えているんだから」
「ツバサ…でも、私は…!」
「ボク、知ってるから。ウィドさん、怒ると怖いし考古学で暴走するし料理は気絶する程マズイし…でも、本当は優しい人だって」
「おや…意外とボロクソに言ってくれますね〜? 生意気な口はお父さん譲りなようで」
「いひゃい!? いひゃいほ〜!!」
ウィドが笑顔のまま左手でツバサの頬を摘まむなり、グググと上に持ち上げる。余程勘に触ったらしい。
さっきまでの黒い空気が嘘のように無くなるが、ここでカイリが新たな疑問をぶつける。
「ちょっと待って。じゃあ、あなたの母親は誰なの?」
「それ、は…」
「――シオン、なのか?」
思う事があったのか、リクが問いかける。
それに対し、ツバサは信じられないとばかりに目を見開いた。
「何で、伯父さんが…!? だって、本来は忘れられてる筈――っ!?」
取り乱しているのか、言い方が変わってリクに詰め寄る。だが、寸前の所で我に返って慌てて口を塞いだ。
「忘れ、られてる? どう言う事だ?」
「ツバサ、話せるか? それとも、話してはいけない話題か?」
「……ごめん。ただ」
テラとクウが訊くが、ツバサは黙秘をする。けれど、スピカに困ったように上目遣いを送る。
その仕草にツバサの意図を瞬時に理解して、スピカは頷いて代弁する。
「一部の人になら詳細を話せる…そう言う事ね? いいわ、詳しい事はあとで聞かせて頂戴。とりあえず、あなたに関してはざっくりな感じで大丈夫だから」
「ありがとう、スピカさん…」
気を使ってくれた事でお礼を述べると、スピカは肩を竦めてツバサの頭を優しく撫でた。
「あなたがウィドにとって姪っ子なら、私にとっても可愛い姪よ。だから、気にしないで。【家族】と言うのは、そう言うものよ」
「…うん」
やっぱり、二人は似ている。怖い所も、温かい所も。
姉と弟が自分に触れた優しくて温かい手に、密かにツバサは思った。
■作者メッセージ
オマケコーナー
カイリ「ア〇雪(ブルーレイ版)借りたから、皆で見ようー!!」
ソラ&ヴェン「「やったー!」」
アクア「あなた達、鑑賞会ではしゃがないの」
テラ「ほら、そんなに近いと目が悪くなるぞ。ちゃんとテレビから離れて鑑賞するんだぞ?」
リク「何で今更見る事になったんだ…?」
ルキル「既にベイ○ックスがKH3で登場決定してるんだから、そっち見た方がいいんじゃないのか?」
カイリ「細かい事は気にしない! DVDセットよし、スタート!」
――それから時間は過ぎ、エンディングまで見終わった…。
ソラ「ア〇雪、やっぱり良い話だったな…!」
カイリ「愛って良いよね…」
ヴェン「ちなみにカイリ。今回みたいな悪役が出てきたら、カイリはどうする?」
カイリ「決まってるでしょ! ア〇みたいにぶん殴って海に落とすんじゃ生温いわ、徹底的にこれ(キーブレード)でボコボコにして、最後は心ごと炎で燃やしてやるんだから!」
ソラ&ヴェン「「カイリ、本当にセブンプリンセス…!?」」(ガクガク)
カイリ「女の子の恋心を弄ぶ奴なんて、それぐらいしないと気が済まないわ!!」
アクア「気持ちは分かるけど、お願いだからそう言う怖い事にキーブレードを使わないで頂戴…」
リク「……」
テラ「……」
ルキル「……」
三人(((何でだろう…エ○サを見てると、昔の俺のように思えてくるのは…?)))
リク(いや、確かにソラやカイリを傷つけたり、故郷に戻らないって思ったりしたけど…)
テラ(独りで考えこんで、敢えてヴェンやアクアを突き放したりしたが…)
ルキル(説得するソラやナミネの言う事聞かなかったりしたけど…あれ? これ、兄や姉だと当たり前なのか?)
ソラ「ところでさー。エ○サなんだけど、誰かに似てなかったか?」
ヴェン「あ、俺もそれ思った!」
カイリ「うん、私も!」
三人「「「っ!?」」」(冷汗)
アクア「似てるって、誰に? もしかして、私とか?」
ソラ「確かにアクアも魔法が使えるしお姉さんだけど…なんか違うんだよなぁ」
アクア「あら、そう? 残念…じゃあ、誰が似てるの?」
カイリ「えーと、うーんと…」
三人(((……!)))(滝汗)
ヴェン「あ、分かった!」
三人(((止めろ、止めてくれ!! アクアより似てたら色んな意味で周りが傷つく――!)))
ヴェン「スピカさんだ!!」
アクア「スピカさん?」
三人「「「…ふぁ!?」」」
ヴェン「だって、スピカさんはお姉さんだろ! それに、子供の頃から魔法の力が凄かったって言ってたし!」
カイリ「うん! あと、誰よりも心優しいし、私達を思って行動してくれてるし!」
ソラ「何よりさ! スピカさんだったら、エ○サみたいにお城や手下の1つや2つ魔法で作れそうだろ!!」
ヴェン「それ俺も思った! なあ、この後皆でお城作るようにお願いしにいかないか!?」
カイリ「賛成! エ○サが作ったお城、入ってみたいと思ってたんだー!」
ヴェン「魔法でオ〇フとか作れるかな、オ〇フ!」
アクア「あなた達無茶言わないの! いくら何でも、そんなお願いしたらスピカさんが困るでしょ!! テラ、あなたからも言ってちょうだい!!」
三人「「「………」」」
アクア「テラ? リクとルキルもどうしたの?」
三人(((……おかしいな、否定出来る要素が何一つない)))
今更ですが、ア○雪のDVD借りて見ました。それまで見る気は…と言うか、機会がなかったんです本当に。
まあ、その。見た感想としましては…上の通りですかね。何となくエ○サってリクに似てるなーと感じました。流石にこのままじゃあれだから思考を隅に追いやったんですが…見終わっていつの間にか、こんな事を思ってしまいましたハイ。
でも話自体は良かったです。グラフィックも凄いですし、KH3でワールド出たら絶対美しいだろうなぁ…。
カイリ「ア〇雪(ブルーレイ版)借りたから、皆で見ようー!!」
ソラ&ヴェン「「やったー!」」
アクア「あなた達、鑑賞会ではしゃがないの」
テラ「ほら、そんなに近いと目が悪くなるぞ。ちゃんとテレビから離れて鑑賞するんだぞ?」
リク「何で今更見る事になったんだ…?」
ルキル「既にベイ○ックスがKH3で登場決定してるんだから、そっち見た方がいいんじゃないのか?」
カイリ「細かい事は気にしない! DVDセットよし、スタート!」
――それから時間は過ぎ、エンディングまで見終わった…。
ソラ「ア〇雪、やっぱり良い話だったな…!」
カイリ「愛って良いよね…」
ヴェン「ちなみにカイリ。今回みたいな悪役が出てきたら、カイリはどうする?」
カイリ「決まってるでしょ! ア〇みたいにぶん殴って海に落とすんじゃ生温いわ、徹底的にこれ(キーブレード)でボコボコにして、最後は心ごと炎で燃やしてやるんだから!」
ソラ&ヴェン「「カイリ、本当にセブンプリンセス…!?」」(ガクガク)
カイリ「女の子の恋心を弄ぶ奴なんて、それぐらいしないと気が済まないわ!!」
アクア「気持ちは分かるけど、お願いだからそう言う怖い事にキーブレードを使わないで頂戴…」
リク「……」
テラ「……」
ルキル「……」
三人(((何でだろう…エ○サを見てると、昔の俺のように思えてくるのは…?)))
リク(いや、確かにソラやカイリを傷つけたり、故郷に戻らないって思ったりしたけど…)
テラ(独りで考えこんで、敢えてヴェンやアクアを突き放したりしたが…)
ルキル(説得するソラやナミネの言う事聞かなかったりしたけど…あれ? これ、兄や姉だと当たり前なのか?)
ソラ「ところでさー。エ○サなんだけど、誰かに似てなかったか?」
ヴェン「あ、俺もそれ思った!」
カイリ「うん、私も!」
三人「「「っ!?」」」(冷汗)
アクア「似てるって、誰に? もしかして、私とか?」
ソラ「確かにアクアも魔法が使えるしお姉さんだけど…なんか違うんだよなぁ」
アクア「あら、そう? 残念…じゃあ、誰が似てるの?」
カイリ「えーと、うーんと…」
三人(((……!)))(滝汗)
ヴェン「あ、分かった!」
三人(((止めろ、止めてくれ!! アクアより似てたら色んな意味で周りが傷つく――!)))
ヴェン「スピカさんだ!!」
アクア「スピカさん?」
三人「「「…ふぁ!?」」」
ヴェン「だって、スピカさんはお姉さんだろ! それに、子供の頃から魔法の力が凄かったって言ってたし!」
カイリ「うん! あと、誰よりも心優しいし、私達を思って行動してくれてるし!」
ソラ「何よりさ! スピカさんだったら、エ○サみたいにお城や手下の1つや2つ魔法で作れそうだろ!!」
ヴェン「それ俺も思った! なあ、この後皆でお城作るようにお願いしにいかないか!?」
カイリ「賛成! エ○サが作ったお城、入ってみたいと思ってたんだー!」
ヴェン「魔法でオ〇フとか作れるかな、オ〇フ!」
アクア「あなた達無茶言わないの! いくら何でも、そんなお願いしたらスピカさんが困るでしょ!! テラ、あなたからも言ってちょうだい!!」
三人「「「………」」」
アクア「テラ? リクとルキルもどうしたの?」
三人(((……おかしいな、否定出来る要素が何一つない)))
今更ですが、ア○雪のDVD借りて見ました。それまで見る気は…と言うか、機会がなかったんです本当に。
まあ、その。見た感想としましては…上の通りですかね。何となくエ○サってリクに似てるなーと感じました。流石にこのままじゃあれだから思考を隅に追いやったんですが…見終わっていつの間にか、こんな事を思ってしまいましたハイ。
でも話自体は良かったです。グラフィックも凄いですし、KH3でワールド出たら絶対美しいだろうなぁ…。