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Re:開闢の宴・最終章

NANA

INDEX

  • あらすじ
  • 01 メモリアル1
  • 02 メモリアル2
  • 03 メモリアル3
  • 04 再会とお披露目会
  • 05 やりたい事
  • 06 ツバサの正体
  • 07 恋心の絆
  • 08 手を差し出す方法
  • 09 心残り
  • 10 生まれ変わった拠点
  • 11 一日の終わり
  • 12 オーバーチュア&クリムゾンブリッツ
  • 13 叶えた夢
  • 14 正体不明の敵
  • 15 陣の使い手
  • 16 弟子同士の対決(けんか)
  • 17 親友としての思い
  • 18 使徒との交流
  • 生まれ変わった拠点

     時間は大分経ち、夕暮れとなった。
     辺りも暗くなった事で、店を閉めたり家に帰る人達がいる。
     レイアもまた、掃除が終わったとの報告を聞いてオパールの家へと戻っていた。

    「えっと、おじゃましまーす」

    「お帰り、レイア」

     扉を開けた途端、カイリが声をかけてきた。
     家の中に入って扉を閉める。それから改めて中を見回す。
     埃を被っていた家の中は、窓を含めてピカピカに磨き上げられている。家具も少なくて殺風景だったが、ちょっとした鮮やかな小物やカーペット。それにテーブルや椅子にはカバーが敷かれて華やかな雰囲気に変わっていた。

    「わあぁ! 凄いです!」

    「でしょ? 皆で選んだんだ!」

    「途中で学し…特別授業受ける事になったけどー!」

    「すっごいべんきょうになったよなそらー!」

    「あの、何かあったんですか?」

    「気の所為だよ…」

     急に目を逸らしたソラとヴェンに、ただただ疑問を浮かべるレイア。一瞬、奥の方にいらウィドが目を開かせた気がする。
     とここで、料理をしているのか食欲を刺激される匂いが漂ってきた。

    「なんだかいい匂いがしますね〜」

    「それは…」

    「出来たぞ」

     カイリが何かを言いかけた所で、リクがキッチンから現れる。
     同時にアクアも出てきて、料理を盛りつけた幾つもの大皿をお盆に乗せてテーブルへと近づく。

    「テラ、ヴェン。手伝ってちょうだい」

    「分かった」

    「任せてー」

     手慣れているのか、アクアの指示に素早く動いて二人はキッチンへと向かう。
     アクアは持ってきた大皿をテーブルへと置いて行く。からあげ、野菜炒め、魚のトマト煮、サラダ…人が多い分、料理を取り分けやすいバイキング形式にしてくれたらしい。
     次々と並べられるおいしそうな料理とこのアイデアに、レイアは目を輝かせてアクアを見上げた。

    「美味しそうです! 凄いです、アクアさん!!」

    「ううん。料理を作ったのは私じゃなくて、ルキルよ。下準備から盛り付けまで全部やってくれたわ。私とリクはそれを手伝っただけ」

    「そうなんですか〜」

    「お、俺は、別に何もしてないからなっ!?」

     納得した直後に、ルキルが怒鳴りながらコンソメスープの入った鍋を持ってやってくる。恥ずかしさからか、顔を赤らめている。
     けれど、否定しつつも手はちゃんと動かしている。テラとヴェン、そしてリクもテーブルに取り皿や箸などを用意して食事の準備を完了させた。
     そして、ルキルは今いないメンバーを確認する。

    「あと戻っていないのは…オパールと、ツバサ。あとはクウとスピカさんか」

    「あのバカは良いとして、姉さん達はどこにいるんでしょうか?」

    「俺だけ除け者扱いかよ」

     ウィドの嫌味に、玄関から声が返ってくる。
     そこには、クウが扉に凭れ掛かるようにして呆れ顔を浮かべている。丁度帰ってきたクウに、ソラとヴェンは揃って声をかけた。

    「「おかえりー」」

    「…チッ」

    「おいウィド。今舌打ちしたな、舌打ちしただろ?」

    「してません、舌打ちなんて」

     すまし顔で顔を背けるウィド。この態度にクウが何か言おうと口を開いた所で、オパールも帰ってきた。

    「ただいまー! わ〜、本当にきれいになってるー!! 内装も前より充実したし!!」

    「ふふん。どう、オパール?」

    「ありがと、カイリ〜! 流石はあたしの友達!」

     余程嬉しかったのか、そのままカイリへと抱きつく。
     家主も帰ってきた事で、レイアは改めてまだ戻っていない人を確認する。

    「あとは、スピカさんとツバサさんだけですね。誰か呼びに行った方がいいんでしょうか?」

    「ああ。スピカとツバサなら『帰るのが遅くなるから』って伝言貰ってるぞ」

     その問いかけに、意外にもクウが答えを返した。

    「え、そうなんですか?」

    「ま、二人一緒なんだ。危険な事に足を踏み入れたりはしないだろ」

     結論付けながら話していると、ウィドの機嫌が目に見えて悪くなる。案の定、クウに突っかかる形で会話に割り込んできた。

    「何であなたが姉さんから伝言貰ってるんですか?」

    「はぁ? たまたま会ったからだろうが。何だよ、それぐらいでヤキモチか?」

    「誰がヤキモチなんて……焼きますよ、焼いて悪いか!?」

    「開き直んのかよ!?」

     こうして二人の喧嘩――ウィドが癇癪を起こして叫ぶ事に対して、クウがツッコミを入れている――が始まったのを見て、周りの人達はどうしていいものか分からず困惑を浮かべた。

    「仲良く…なったのか、あれ?」

    「なってる筈だよ…多分」

     過去を振り返りつつリクとカイリは、気になりつつも二人を無視する事に決めた。



    「ごちそーさまー!! おいしかったー!!」

     あれだけ大皿に盛られてあった料理は殆どなくなり、ソラは満腹なのか満足そうにお腹を擦ってソファに座る。
     ヴェンもソラの隣に座ると、後片づけを始めるルキルを尊敬の目で見上げた。

    「凄いよな、ルキル! アクアに負けないくらい美味しかった!」

    「そんな、事…」

    「そうでしょう。ルキルが私と一緒に住んでいた頃は、全部彼が料理を担当してくれたんですよ」

    「へー、そうなんだ!」

    「…まあ、な」

     ソラにまで輝きの籠った視線をぶつけられ、恥ずかしさに顔を逸らすルキル。
     この様子に、アクアは微笑ましく笑っている。そうして残った料理を他の皿に移し替え、スピカとツバサの分の食事を確保する。尚、使った食器はレイアとルキルが台所に持っていき、オパールとカイリが洗うと言う役割分担で作業をしている。

    「凄いな。すると、リクは料理が得意なのか?」

    「いや。人並みには出来るが、流石にこいつまでは上手くないよ」

     テラの質問を、すぐにリクは否定してルキルを見る。
     リクにしてみれば、ルキルの事を褒めたつもりだった。
     しかし、当の本人は食器を持ったまま無表情でリクの事を見返していた。

    「ああ……どうせ、俺はこいつのレプリカだからな」

     その一言で、朗らかだった空気が一瞬で凍り付く。
     いきなりの事に、こういう時頼りになるソラも、保護者であるウィドもとっさに言う言葉が思い付かない。

    「そ、そんな事ないわよ! テラはあなたとリクを比べて言った訳じゃないの!? そうでしょ、テラ!!」

    「あ! す、すまない! 俺は別に、そんなつもりでは…!」

     逸早くテラの余計な失言にアクアは気づき、慌てて落ち込むルキルを宥める。テラも自分の発言を思い返して、ルキルに謝る。
     他の人も何か言おうと口を開いた時だ。

    「キャア!」

    「わぁ!」

     玄関の外で、二人分の悲鳴と共にドズンと何かが落とされる鈍い音が響いた。

    「なあ、今の声って――」

    「スピカ!」

    「姉さん!」

    「「ツバサ!」」

     声の正体についてソラが言うよりも早く、クウとウィド、更には落ち込んでいたルキルまでリクと共に玄関へと駆けこむ。
     勢いよく四人が外に飛び出すと、玄関前にスピカとツバサが倒れていた。

    「いったたた…!」

    「う、ううん…!」

    「姉さん、ツバサ! どうしたんですか!?」

    「ご、ごめんなさい…ちょっと、躓いて転んだだけよ」

    「いや、転んだにしてはおかしいだろ!?」

     明らかに証言と状況が違っており、クウが目つきを鋭くして辺りを警戒する。
     ルキルはツバサを助け起こすが、彼女の服はなぜかシャオとして着ていた服装に変わっていた。

    「ツバサ? どうしてシャオの服を着ているんだ?」

    「あ、えっと、ちょっと色々あって…この下にボクの服着てるだけだから…!」

     しどろもどろに言って、ルキルから目を逸らすツバサ。
     二人は何かを隠している。それが分かり、クウは警戒を解くとため息を吐いた。

    「…スピカ、ツバサ。正直に答えろ。どこで何をしてた?」

     圧力をかけて二人に問う。ツバサは臆して肩を震わせるが、スピカは黙って立ち上がるなりクウと真っ正面に向き合った。

    「…ちょっと“知り合い”の所で特訓させて貰っただけよ。バタバタして帰ったから、こんな事になっちゃっただけ」

    「特訓? 本当かツバサ?」

    「うん、本当」

     訝しるクウの目を見てはっきりと頷くツバサ。
     二人の態度から嘘はついてないのは分かる。だが、どうにも信じられない。納得できずにいると、スピカは頬を膨らませながら腰に手を当ててクウの顔を覗き込んだ。

    「嘘だと思うなら、明日にでも証明するわ。それで、もう掃除は終わっているのよね?」

    「あ、ああ…」

    「なら行きましょう、ツバサ。沢山動いて疲れたのよー」

    「あっ…待ってよ、スピカさん!」

     さっさと家の中に入るスピカを、ツバサは追いかける。その後をウィドとルキルが困惑しながらもついて行く。
     結局肝心な事が分からないまま、会話を打ち切られてクウが溜息を吐いてしまう。仕方なく家の中に戻ろうとした所で、リクが見上げているのに気づいた。

    「…いいのか、クウ?」

    「ああ見えてスピカは頑固でな。どっかの誰かさんのように簡単に考えを変えないし、口を割らないと決めたら絶対に割らない」

     けど、と前置きして言葉を切る。

    「スピカは知られたくない事に関して言葉を濁すが、嘘は言わない。なら、誰かに特訓させて貰ったのは本当だろう。変な事に巻き込まれてないのなら、それでいいさ」

    「よく分かってるんだな、スピカさんの事。11年も会ってなかったんだろ?」

     会っていない歳月を思わせないスピカへの信頼に、リクが思った事を口にする。
     すると、クウは静かに笑った。

    「スピカが変わっていないから、言えるんだよ」

     それを聞いて、リクはあぁと心の中で納得をした。
     恋人ではなくなったが、お互いの事をちゃんと理解し合っている。だからこそ、そこまでの信頼関係が出来るのだ。
     なんだか自分とソラのような関係に似ていて、リクも気づかれないように笑って家の中へと戻った。

    17/11/27 02:54 NANA   

    ■作者メッセージ
    今回の話であったスピカとツバサの特訓は、リラ様の番外編作品【another story children】の中に収録されている誕生日作品『change to training』になります。それを読めば、二人がどんな技を習得したか逸早く確認出来ます。(その作品出て2年以上は経つけど…)
    ツバサがシャオの服装を着ていた事に関しては、本編で説明するつもりです。
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