マスター承認記念パーティー・2
こうしてテラの説明が終わると、クウが疲れた表情で固まるルキルを見た。
「――で、その後どうなったと思う?」
「…ク、クリアしたんじゃないのか?」
とりあえず、差当りのない言い方で質問に答えるルキル。
すると、テラが再びゆっくりと首を横に振った。
「あの黒コートのボスを倒した後なんだが――」
「何よ、この戦いにくい場所はぁ!!? 防御も出来ないし、移動しにくいし…スピリットもいないし、攻撃も上手く避けられないじゃない!!? どうせならフェアに戦えぇ!! 今まで散々倒されてばっかりだからって、こんな風に自分に有利な場所作るって大人げないにも程があるわよー!!?」
そんな文句を言いつつ、二回目のボスであるアンセム(ゼアノート)と戦っているオパール。
再びどこからか何かが突き刺さる音が聞こえたが、カイリと作者は画面に注目していた。
「オパール、今!! リアリティシフトのマーク!!」
カイリのアドバイスに、オパールは即座に指の間に挟んでいるタッチペンを操作しながら下画面に当てた。
「オッケー!!……おーし、ちゃんとした場所に戻った!! ここから一気に反撃してやる!!!」
「いいぞー、やれー!!」
元の地形に戻り、スピリット達も出てきた事によりガッツポーズを作ったオパールに、作者は声援を送った。
―――それから数分後…。
「第三回戦…? しかも、体力がありえない!?」
ようやく倒したと思ったら、何と姿や地形まで変わったアンセム戦が再び幕を開ける。
しかも、体力が先程よりもかなり多いと言う状況だ。
「ゼムナスより多いじゃない!? オパール、大丈夫!?」
「ふっ…上等よ。動けないのとフリースローを利用して、一気に決着付けるぅ!!! 毒やら強力な攻撃は回復で補えば…!!!」
「「おおーっ!!」」
見る見る内に体力を減らしつつ回復するオパールの操作に、作者だけでなくカイリも関心の声を上げた。
「…………」
このラスボス戦のプレイに、ルキルはもはや言葉が出なくなってしまう。
クウとテラが同情するように肩を叩いていると、今まで黙っていたアクアが口を開いた。
「ただ…この後、さらに続くんだけど――」
オパールの必死の操作でアンセム戦を終え、セーブして先に進むとドリームイーター達による最終決戦へのイベントが。
「ここからは本当のラスボス戦だね…」
「オパール、準備は――…って…?」
カイリの言葉に頷きつつ、作者がオパールに目を向けると…。
「コウモリバットを笑顔で撫でるリク…!! 駄目…これもう死ぬぅ…っ!!!」
「――駄目だ、今のイベントでオパールは使い物にならなくなってる……仕方ない、私がやるしか…」
イベントシーンを見てクリティカルヒットしてしまったのか、顔をニヤニヤさせて幸せでトリップしているオパール。
そんなオパールの手から3DSを取って操作しようとする作者に、カイリは思わず不安の目を向けた。
「で、出来るの?」
「任せなさいって。さ、さっそくボス戦レッツゴーっと――」
タッチペンを使い、いよいよラスボス戦へと向かう。
そうしてソラ編での続きでもあるイベントを見終え、あの銀髪の黒コート―――ゼアノート戦が始まる。
「若い頃のゼアノート…大丈夫? 今からでもオパールを正気に――」
「カイリ、この私を舐めて貰っては困る。これでも『Bbs』を除いた隠しボスをクリアしてきたんだ。これぐらい――…って、何じゃあこの猛ラッシュはぁぁぁ!!?」
始まって攻撃しようとするなり、キーブレードを使った続けざまの攻撃が襲い掛かる。
「は、早く回復!! その前に避けて!!」
「一辺に言わないでぇぇぇ!!? うわぁ、『スロウ』状態になった!? ぬおおおぉ!!?」
無茶な注文をするカイリにツッコミを入れつつ、どうにか攻撃を必死で避けて回復に専念する作者。
「くっそぉ!! 『Bbs』での老人やらアンセムにゼムナスじゃ弱かったのに、なんでテラや今の状態の若者になった途端ここまで強くなるんだぁぁぁ!!?」
必死で指を動かして操作しつつ、先程の二人と同じような文句を叫ぶ。
またまた何処からか何かが突き刺さった音が聞こえたが、それどころではない。と、ここでカイリが思い出したように作者を見た。
「あ…今思い出したけど、確かそのゼアノートって『BbsFM』の隠しボスだったよね? しかも、それクリアしないままプレイしてるから…」
「すっかり忘れてたぁぁぁ!!! いや、諦めるな自分!! もうHPは残り一ゲージ、ここで一気に特攻を…――よーし! 終わったー…って、あれ?」
HPがゼロになった途端、何故かフィールドが歪みだす。
第二回戦の開幕かと思いきや、フィールドに一つの変化が。
「何コレ!? え? 何か時計っぽい物出てきたんだけど!?」
「さっき、時がどうのこうの言ってたから……何とかしないと、あいつ復活するって事!?」
「その可能性は十分にある!? 何だ!? 何をどうすれば――…あ…」
カイリの言葉に中央にあるオブジェに近づいたと同時に、画面が真っ白になる。
すると、つい少し前と同じように対峙するリク&スピリットとゼアノートの姿があった。
「復活、しちゃった…」
カイリが画面を見ながら唖然と呟くと…――作者の中で、何かがキレた。
「フ、フフフッ…!!! 大丈夫だよ、カイリ。体力は全快とは言え、さっきより減っている……ここはチャレンジスピリッツゥゥゥ!!! うおおおりゃあああああぁ!!!」
「が、頑張って…」
歯軋りして再び必死に操作する作者に、カイリは震えながらも声援を送るしか方法がなかった…。
―――またまた数分後…。
「どーにか、倒した…もう、へとへと…」
倒しては復活し、倒しては復活を繰り返し、やっとの事でボスを撃破した作者。
思わず横になって汗ばんだ手を拭っていると、見守っていたカイリが近づいた。
「ご苦労様…じゃ、さっそくムービーを堪能っと♪」
「カイリ、あたしも見るー♪」
ここでオパールも萌え(?)から復活したのか、カイリと共にムービーを見る。
そうしてムービーを見ていると、何とソラにダイブして操作する展開に。
「ちょっと、待て…これ、更にボスあるって事!? さっき苦労して倒したのにー!!」
「もはや、リクが主役だよ…」
作者が悲鳴を上げる中、カイリも呆れた目で画面上のリクを見ている。
そんな二人と打って変わり、オパール一人だけはニコニコと笑っていた。
「えー? いいじゃーん、あたし的にはすっごく良い話♪」
「むぅ…そこまで言うなら、最後のボスはオパールに任せてもいいね?」
「もっちろん♪ さーて、最後はどんな奴――」
不満げにカイリは言うが、そんなに気にしてないのかオパールはダイブを進む。
そうして再びイベントとなり、闇の底から出てきたのは―――真っ黒いヴェントゥスの鎧姿。
「これ…ヴェントゥス?」
「見たい…構え方も一緒だし」
作者とカイリが画面を見て疑問をぶつける中、オパールは不敵の笑みを浮かべる。
「ふっ、敵が何でもエンディングの為にやっつけて――…ちょっとぉ!? 攻撃が何か早いし闇使って姿隠しての攻撃って何よこれぇ!?」
さっきまでの余裕は何処へやら。『Bbs』でのヴェンの攻撃はもちろん、それ以外の攻撃にオパールは苦戦を強いられる。
「うわぁ…意外と手ごわいね」
「何よ…!! 『Bbs』では攻撃力は無駄に低かったし大技もスキだらけで素早さだけが取り柄だけだったのに、ここまでパワーアップするぅぅぅ!!?」
カイリの言葉に癇癪を起しつつも、やられないようにアンセム戦のように必死にリクを操作するオパール。
今度は近場から何かが突き刺さって膝を付いた音もセットで聞こえた気がするが、エンディングまじかの状況に三人は全く耳を貸さない。
「オパール、倒せる?」
「ここまできたんですもの、絶対に倒す…――ちょ!? 逃げる隙ぐらい与えなさいよ!! 回復が出来ないー!!!」
カイリに答えつつ、ピンチを乗り切ろうとオパールは全力で指を動かしたそうな…。
「と、まあ…クリアに至るまでのボス戦が大変だった訳だ」
「だから、文句を言われた面子が来る途中で落ち込んでいた訳か…」
クウが全ての説明を終えるなり、ルキルは未だに蹲るヴェンを見ながらこの会場に来る途中の事を思い返す。
スタジオの何処かの廊下の休憩室のソファで、何故かどんよりとした空気を纏ったゼムナス、アンセム(ゼアノート)、マスター・ゼアノートが座っていたのだ。あまりの落ち込み様に即座に早足で離れたが、ここで今その理由が明かされるとは思ってもみなかった。
「それ以外に、もう一つ理由があるんだけどね…」
話が終わったかに見えたが、唐突にアクアが遠い目をしながら口を開いた。
「理由、か…?」
「ああ…」
ルキルが聞こうとすると、テラが頷いてアクアの言う理由を話した…。
―――それぞれのラスボス戦開始から数分後…。
「凄いね〜! 『ソニックレイヴ』使うだけでHPが1ゲージも減るなんて〜♪」
そんな事を言いながら、カイリは『ソニックレイヴ』を使って着々とゼムナスの体力を削っていて…。
「やー、時計の所で『リベンジオーラ』使うだけでこうも無傷で攻撃出来るなんてね! しかも『スロウ』でバリア張る時間も増えてるしピンチも力にってね〜♪」
オブジェの近くで若きゼアノートの猛攻を防いでは『リベンジオーラ』で地道に反撃している、笑みを隠しきれない作者。
「フリーフロー使えば、こうしてダメージ与える事も出来るんだから! ホント、アンセム戦やヴェントゥス戦っていい地形よね〜♪」
相手の攻撃を避けつつ、止まった隙を見計らって『キックダイブ』をこれでもかと濫用するオパール。
「「「これぞ友情・努力・そして私達の勝利だね〜♪」」」
どこぞの週刊誌のテーマを言いながら、それぞれのラスボス戦が終わるとハイタッチする三人であった…。
「駄目だ…鬼畜通り越して、もはや悪女になってる…!!?」
「だろ? こんな事があったと、あいつらが知ったらどうなるか…」
あまりの変わり様に怯えるルキルに、さすがのクウも何にも知らないドリームイーターを撫でるソラとリクの二人を見る。
そんな中、ルキルは未だに笑いながらクリアについて語っているカイリとオパールを見ていた。
「…時をも超えるゼアノートより、こいつらの方が性質が悪いと思った俺はおかしくないよな…?」
「ああ…ここにいる全員、お前と同じ考えだ…」
呟くルキルに、クウはそっと肩に手を置く。
テラやアクアもコクコクと頷いていると、レイアとソラがこちらを見た。
「皆さん、どうかされました?」
「なあ、何の話をしてるんだ?」
「い、いや!! 何にも!?」
首を傾げる二人に、すぐさまルキルが首を横に振って誤魔化す。
この行動にクエスチェンマークが更に浮かんでいると、リクが声をかけた。
「おい、ニセモノ…思ったんだが、ウィドはどうしたんだ?」
「あ…シャオも誘ったのに、まだ来てない」
「そう言えば、さっきから見かけないな?」
リクの言葉に、ソラが辺りを見回す。
足りないメンバーにテラも二人の姿を探していると、カイリが話の輪に入ってきた。
「シャオなら、明日は授業参観があるって言って未来に帰ったよ?」
「本当に未来から来てたのか、あいつ!? それ以前に、シャオって時を超える条件揃っていないんじゃ「それは今後本編で書くって作者が」アホかあの作者ぁぁぁ!!?」
カイリの言葉に、さすがのリクもツッコミを入れる。
だが、ジャスの干渉で出来たとは言え、ゼアノートと同じ事をやってのけるシャオはある意味凄いだろう。
「それで、ウィドは?」
ツッコミするリクを無視し、クウは欠席者であるウィドの行方をルキルに聞く。
「え? さっき、アクアと一緒にいなかったか?」
「ううん、私は軽く話をした後でテラ達と買い出しにいったけど…」
「そ、そうなのか!? 先生、さっき料理作るって行って何処かに行ったから、アクアと一緒にいるとばかり…!!!」
『『『エ…ッ!!?』』』
ルキルの言葉に、ここにいる全員戦慄が走った。
■作者メッセージ
前回と同じく、今回の話の話題に出たラスボス戦は実話にある程度付け足して書いてみました。(オイ
さて、ラスボス戦でのネタは終わりですが、ここから先も《3D》ネタも混ぜておりますので。
さて、ラスボス戦でのネタは終わりですが、ここから先も《3D》ネタも混ぜておりますので。