ミッション・お歳暮を手に入れろ
雪が積もり、クリスマス仕様となったデイブレイクタウン。
そのモーグリの店にて、カイリ・アクア・オパール・レイア・ツバサが話し合っていた。
「そろそろクリスマスの計画も一段落だね」
「そうねー。とはいえ、料理と飾り付けを考えるところから本番だけど」
「今年は色々あったよねー…KH3なんて、ラストが」
「「「「それは言わない」」」」
ツバサが何か言おうとした瞬間、ニコニコと話していたカイリとオパールだけでなく、残り二人も一斉に止める。
「さて。みんな、分かっているとは思うけど…」
「うん、言いたい事は分かるよアクア…」
「あの姉弟に料理も飾りつけも、任せちゃいけない…でしょ…!?」
「流石にあれは酷過ぎました…ケーキって、喋るんですね」
「「「「それも言わない」」」」
神妙になっていたアクア、カイリ、ツバサだが、レイアの一言でオパールまでもが真顔になる。
家事が全く出来ないどころか、魔改造してしまう手腕を持つウィドとスピカ。実際、去年はパーティーの手伝いをした事で大惨事になったからこうして頭を抱えているのだ。
嫌な記憶を思い出しつつ、アクアはカレンダーに目を向ける。
「そうは言っても、もうクリスマス…! あの二人が手を出すなんて分かり切っている…何とかして、パーティーから引きはがす方法を思いつかなきゃ…!」
「一番はクウを使えば解決するでしょ…尊い犠牲になって貰おうよ」
「さらっと本人がいない所で怖い事言ってんじゃねーよ。カイリ、お前もだいぶ染まってきたな」
そんな会話をしていると、この場にクウがやってきて呆れ気味に会話に割り込む。これにレイアはすぐに反応した。
「あ、クウさん」
「話を聞いてたのなら、あんたは何か思いつくの?」
不満げに睨むオパールに対し、クウは思いもよらぬ返しをした。
「あー…それなんだがな。あいつらしばらく戻ってこないから安心しろ」
「戻ってこない? どこかに出かけてるの?」
アクアが聞くと、クウは一つ頷く。
「ああ。お歳暮渡しに行くって言ってたからな」
『『『お歳暮?』』』
「――と言う訳で、KH3では良き父親を見せてくれましたあなたにお歳暮を贈る事に決めました」
「どうぞ、遠慮せずに受け取ってください」
「う、うむ…」
「いや、何が『と言う訳で』なんですか!? 全然脈絡がないですよ!?」
場所は変わって、レイディアントガーデンのアンセムの研究所。そこでイエンツォのツッコミが響き渡る。
そこには困り顔のエヴェンとイエンツォとエレウスの他に、お歳暮と書かれた複数の箱を笑顔で差し出すウィドとスピカがいる。
突然現れたも同然の来訪者。衛兵として、エレウスが前に出た。
「そもそも、お前らは誰だ?」
「私はスピカ。こちらは弟のウィドです」
「ルキル…リク=レプリカの『保護者』をしています!」
「そ、そうか…!」
やけに強調する物言いに、エレウスも思わずたじろいでしまう。
この辺に深く触れようとしたら終わる。元地下組三人の本能がそう囁いた。
「エヴェン。生みの親はあなたでしょう、何とかしてください」
「イエンツォ、こう言う時ばかり……え、えー。それで、お歳暮…だったかね?」
「はい。まぁ正直言いますと、KH3の展開次第では姉さんと共に研究者一同を殴り込みしようかと思っていましたが」
「おい」
「ですが、そのような予想は見事に外れ、寧ろ生みの親として良い一面を見せてくれたあなた達に、保護者としてこれからも良き関係を築いていこうと言う事でこちらをお送りしようと決めました!」
「そういう事で、どうぞ。ウィドと一緒に選んだ粗品ですが」
「う、うむ…」
スピカからも催促され、エヴェンは言われるままに受け取ってしまう。
1人1箱なのか、合計3箱。一旦近くのテーブルに置いて三人はそれぞれ箱を開けて中を確認し、驚愕した、
「これは、僕の好きな高級漬物の詰め合わせ!?」
「く、黒毛和牛のセットだと…!」
「ゆ、夢の国限定のシーソルトアイスの詰め合わせまで…い、いいのか? こんな高価な物…!」
どれもこれもお値段が相当になる品物に、エレウスが振り返る。
だが、二人は変わらず笑顔を作っていた。
「お金の事ならお気になさらず。私、これでも高給取りなので」
「これは、私達からのほんの気持ちですので。これからもどうぞ、仲良くしていきましょう」
「そ、そうか! ははは、もちろんだ! 私の息子をよろしくな!」
「エヴェン…」
高価な物をタダで受け取ったからだろう。エヴェンは気分を良くしてウィドの肩をバシバシ叩き出す。イエンツォが何とも言えない目をしているのも気にかけず。
こうして交流をする大人達…そこから離れた扉で会話をこっそり聞いている黒コートの人物がいた。
「お歳暮って凄いな…これは良い事聞いたぞ〜」
「喜んでくれて良かったわ〜」
「時期的には関係ないかもですが、保護者として引き取っている以上最低限のお礼は必要ですしね」
お歳暮渡しも終わり、城を出て広場を歩くスピカとウィド。その足取りは一仕事終えたから軽く見える。
「もしもーし、そこのお二人さーん」
その途中、二人の横から呼び止める声がする。
振り返ると、ヘラリと笑う逆立った髪をした黒コートの男――デミックスが知り合いに向けるように手を上げていた。
「これはこれは、KH3では補欠で再登場したデミックスさんではないですか」
「裏ではマスター・オブ・マスターじゃないかって密かに噂されている謎のようで謎でないかもしれない微妙な立ち位置の機関員さんがどんな御用かしら?」
「出会うなり物凄い陰湿な事言われてる!?」
ウィドとスピカの不審者を見る目も合わさり、デミックスが悲痛な声を上げて叫ぶ。
しかし、デミックスはくじける事なく要件を口にした。
「えーと、ほらあれだよ。あんた達、レプリカに関係ある人にお歳暮を配っているんだろ? でさー、俺達真13機関も関係あるじゃん? だから、お歳暮ちょーだい?」
「姉さん、下がっていてください。こんな奴、私一人で十分でしょう」
「いきなり戦闘態勢はなくない「ウィド、駄目よそんな事」そうだそうだ! お姉さんちゃんとこの物騒な弟を注意して「ああ見えて、分身撃破のギミックは多くのプレイヤーが苦戦したのよ。ここは私も戦うわ。大丈夫、一閃・修羅を使えばすぐにギミックはクリア出来るから」え!? そっち!? 待って待って待って、戦う気は一切ないから待ってー!!」
それから10分後――
「はい! と言う事でお歳暮の為にお越しいただいた、ダークリクです!」
「まあ、ルキルの親戚と言えば親戚ですね」
「まだ一年経ってないから、詳しいネタバレは控えておきましょう」
なんやかんやでこの場に現れた真13機関の一員である、黒コートを着た一年前のリク…ダークリクに、ウィドとスピカはそれぞれ感想を漏らす。
一方、ダークリクは無理やり連れてこられたデミックスの腕を掴み、後ろを向いてヒソヒソ話をする。
「おい、デミックス。なんで俺をこの場に呼んだ?」
「いいじゃんかよー。この二人からお歳暮貰えば、高級食材にありつける。それをサイクスに頼めば今日は豪華な鍋料理だ! んー、最高! と言う訳で、後はガンバレ!」
「全部丸投げかよ。大体、もうあの二人お歳暮持ってないんじゃ」
正論を言いながらチラリ、とダークリクが二人を背中越しに盗み見ると。
「あのー、早くしてくれません? この後、リクのご家族にゴ〇〇バのチョコレート詰め合わせを渡さないといけないんですよ?」
「ナミネとシオン達にはカニと伊勢海老セットもあるし…冬とは言え冷蔵だから、早めに渡さないと」
「寧ろそれ俺達真13機関に下さい!! 特にカニと伊勢海老は子供には勿体無いと思うんだよ俺ー!」
「お前補欠だろ!? 何正式な機関員みたいな事言ってるんだ!?」
二人が取り出した更なる高級品のお歳暮に、土下座までして頼み込むデミックス。これには反射的にダークリクがツッコミを入れる。
更に不快な視線を送りつける二人の様子に、さっさと終わらせようとダークリクは盛大に溜息を吐きつつ手を差し出した。
「おい、そこの二人。そのお歳暮とやらをとっとと俺に寄越せ」
「おいリク! その言い方良くないだろ!?」
闇に染まった時期なだけあって、傲慢でふてぶてしい態度をするリク。このままでは制裁されると、デミックスが青ざめる。
だが、ウィドは予想に反して笑っていた。
「ふふ」
「ウィド、何だか嬉しそうね?」
「あぁ。ルキルと出会った頃、こんな感じでツンツンだったなーと思い出しまして」
「でもそうね、こう言うのを反抗期って言うのかしら? こういう時こそ焦らず不安にならず、ゆっくりと見守るのが大人よね」
「おぉ? 意外と好印象?」
先ほどまでの雰囲気から一変。まるでこの成長を見守る大人な雰囲気を作り出す二人に、デミックスはガッツボーズを作る。
このまま押せば、お歳暮をゲット…
「何が大人だ。俺はニセモノでも今のリクでもない、どのリクより強い頃の俺だ。そこを間違えるな、オバサン」
と、思った次の瞬間。ダークリクの暴言に、スピカの表情が凍り付く事態となる。
ウィドが狼狽える横で、お歳暮の袋を握りながらわなわなと肩を震わせるスピカ。これにはデミックスも慌ててフォローを入れる。
「あ、あー! い、今のはその…子供の言う事だから、気にしなくて――!」
「大体あんたら、腹黒なんだろ? こんな奴の家族になるとか、ニセモノの俺が可哀想で可哀想で仕方ないなぁ? あー、良かった! 俺はあんたらみたいな駄目な大人に出会わなくてさ! 闇を受け入れた俺でも、あんたらみたいな底が真っ黒い奴は受け入れたくないな!! アッハハハハハ!!」
そして、何かがキレる音がデミックスの耳に届いた。
「デミックスはまだか…」
乾いた荒野の一面に大量の鍵が刺さった世界…キーブレード墓場。
その一角で、サイクスが不満そうに鍋の準備をしており、マスター・ゼアノート、青年ゼアノート、ゼムナス、アンセムがちゃぶ台の設置を進めていた。
「鍋の用意をして待て…と言ったが、何時来るのだぁ?」
「高級食材を持って来るとか言ってたが、あいつ…」
「ダークリクも一緒に連れて行ったのだ。買い出しに支障は…ん?」
ゼムナスと青年ゼアノートが文句を言うのを諫めていたアンセムが、気配を感じて前を向く。
すると、闇の回廊が現れて、そこからボロボロになったデミックスとダークリクが放り込まれるように地面に倒れた。
「ム? ボロボロで何が――」
「空衝撃・牙煉ッ!!!」「シュタルカー・ヴィントォ!!!」
その日。繋がりっぱなしの闇の回廊から巨大な衝撃波が放たれて、ゼアノート達を包み込みながら荒野の一角を吹き飛ばしたと言う…。
時間は流れ、クリスマス当日。
巨大なツリー、色取り取りに飾り付けられた部屋、暖かい暖炉。そして、美味しそうな料理の数々。
さて。料理が並べられたテーブルでは、リクとルキルが隣通しで並んで困惑していた。
もう一人の自分と肩を並べたからではなく、両側の相手に対してだ。
「さあリク! どんどん食べて下さい!」
「朝になったら、サンタさんからのプレゼントがあるわよ。楽しみね、ルキル」
「あ、あの…先生、スピカさん?」
「何か帰ってきてから、俺達に優しくないか?」
「「そりゃあ、家族ですから(もの)!」」
パーティーが始まってから、常にニコニコとしながらあれこれ世話を焼くウィドとスピカ。
その様子を、テラが不思議そうに眺めていた。
「二人とも、リクとルキルに優しいな?」
「きっと家族とクリスマスを過ごせて楽しいんだよ! 私もあんな感じだったなー」
「そっか、カイリも村長さんと過ごしてたもんな」
自身の体験を兼ねたカイリの考察に、ソラも納得をする。
「俺もテラ達と今日みたいにクリスマスやった時は、楽しかったし…そう言う事か」
「じゃあ、温かく四人を見守りましょう」
ヴェンとアクアも家族として過ごそうとする四人を邪魔しないよう、微笑ましく傍観をする。
けれど、クウだけは姉弟の行いが、リクとルキルに悪い評価が付かないよう取り繕っているようにしか見えなかった。
「…俺にはそうは思えない気がするんだが?」
■作者メッセージ
作者「はい。ひっさびさにギャグ作品を書き上げました」
ウィド&スピカ「「いい度胸だ、殺すのは最後にしてやろう」」(武器構え)
作者「だー!! ストップストップ、某映画のセリフも制裁もストーーーップ!!」
ウィド「そもそも、お歳暮って12月の上旬から20日までに渡すのがマナーですよね!? 今の時期分かってます? もうクリスマス過ぎてますよ!?」
作者「いやー…これ、クリスマスまでに書き上げる予定だったんだけど…なんやかんやでやる気が起きなくて、気づいたら期限が過ぎちゃって…」
スピカ「あと、なんで私お歳暮で高いもの渡しているのよ? 本来お歳暮は身の丈に合った品物を渡すのもマナーでしょ?」
作者「いや、あんた達二人なら賄賂って言うか買収しても違和感が一切ないと…」
ウィド「人を悪人みたいに言うなぁ!! 八刀一閃!!」
スピカ「お金で人の心を買うみたいな言い方止めなさい!! エレメガ!!」
作者「ほぎゃあああああああああ!!? これも久々ぁぁぁ!!?」
ウィド&スピカ「「いい度胸だ、殺すのは最後にしてやろう」」(武器構え)
作者「だー!! ストップストップ、某映画のセリフも制裁もストーーーップ!!」
ウィド「そもそも、お歳暮って12月の上旬から20日までに渡すのがマナーですよね!? 今の時期分かってます? もうクリスマス過ぎてますよ!?」
作者「いやー…これ、クリスマスまでに書き上げる予定だったんだけど…なんやかんやでやる気が起きなくて、気づいたら期限が過ぎちゃって…」
スピカ「あと、なんで私お歳暮で高いもの渡しているのよ? 本来お歳暮は身の丈に合った品物を渡すのもマナーでしょ?」
作者「いや、あんた達二人なら賄賂って言うか買収しても違和感が一切ないと…」
ウィド「人を悪人みたいに言うなぁ!! 八刀一閃!!」
スピカ「お金で人の心を買うみたいな言い方止めなさい!! エレメガ!!」
作者「ほぎゃあああああああああ!!? これも久々ぁぁぁ!!?」