リラ様との作品コラボ 〜出演を賭けた人助け!?〜・2
最初にカーテンから出てきたのは、赤い髪に青の瞳をした少女。
彼女はKHシリーズではお馴染みのヒロインキャラ―――
「カイリおば(ギロリ!!)オネエサン、デスヨネ…!?」
ムーンが名前を言った直後、殺気の目で睨まれ即座に訂正する。
彼女こそ、ソラとリクの幼馴染であり、セブンプリンセスと言う重要な人達の一人であるカイリだ。
カイリが前に出てリズ達に向かい合うように相談者用の椅子に座ると、オパールが話し出した。
「じゃ、カイリ。さっそく相談して」
「実は――」
そう言って一拍置くと、真剣な目でリズ達に悩みを話した。
「ソラとリクに、ドリームイーターの名前をちゃんと決めてくれるようにしてくれないかな?」
「意外な悩みですね?」
思わずウィドが思った事を呟くと、カイリは不機嫌そうに顔を歪めた。
「だって…ソラは“ポチ”とか“タマ”とかつけるし、リクはめんどくさがって名前付けないし…これじゃあ、スピリット達が可哀想でしょ!!?」
「まあ、確かにそうだけど…ちょっと、神経質になりすぎじゃない?」
怒りを見せて語るカイリに、オパールは苦笑いを浮かべる。
すると、カイリはオパールを睨みながら指を突きつけた。
「だったら、オパールはリクと子供作って名前決めさせる時に『面倒だ』の一言で済まされるの!!?」
「そ、それは――…うん、無理!! 絶対ダメェ!! どうせ名前を付けるんだったら、やっぱり二人で考えた方がいいわ!!」
「でしょ!? 試行錯誤で一緒に男の子と女の子の名前考えて、たまに言い合って喧嘩になっちゃうけど、やっぱりこれがいいんじゃないかって仲直りしたりして…!!」
「この場合、男の子だったら何てつけようかな…? きっとリクのように整った顔立ちにあの綺麗な銀髪なんだろうなぁ…ううん、あたしの金髪でも似合うかも。そうよ、女の子が銀髪でも全然似合うし…」
「あの…お二人とも、途中から妄想になってますよ…?」
和気藹々と妄想を膨らませるカイリとオパールに、未来の子供であるグラッセが冷や汗を掻きつつツッコミを入れる。
この年頃の二人に、他の人達も呆れを見せていた。
「カイリさん、何しに来たの…?」
「とにかく、あそこの二人はほおって置きましょう。では、この悩みの解決策を思いついたら言ってみてください」
思わずシャオが呟いていると、ウィドは司会者としての行動か話を促した。
「そんな事言われても…俺、父さんの名前の付け方がペット並みだって事実に打ちひしがれそうなんだが…」
「グ、グラッセ!! 元気出して…!!」
暗いオーラで落ち込むグラッセを、急いでシャオが宥める。
ちなみに、その横ではムーンは「レプリカ技術で生まれて正解だった」と呟いていたそうな。
「いいのよ、グラッセはほおって置いて「え、いいの!?」ねえ、何だったら私が名前付けようか?「ボクの質問無視ぃ!?」」
あっけらかんとしたリズの言葉に、続けざまにツッコミを入れるシャオ。
そんな中、リズの提案にムーンが不安そうに眉を寄せた。
「って…リズが、名前を?」
「何よ、その嫌そうな顔! いいから任せなさいって!!」
ムーンの反応に不機嫌そうに表情を歪めるが、ドンと強く胸を叩く。
それから、何処からか用意されたドリームイーター達のアルバム写真をパラパラとめくり出す。
少しして、リズはワンダニャンとヘビトカゲの写真を抜いて見せつけた。
「えーと、この青い犬っぽいのは“ブチ”でしょ? で、このヘビは“チャド”でどう!?」
「いやー、さすがリズですね。ロクサスの本体であるソラの部分を変な所で受け継いでいるんですから」
「ちょっとぉ!! あんた喧嘩売ってるっ!!? 売ってるだろぉぉぉ!!!」
「リズ落ち着いてぇぇぇ!!!」
リズは怒りを爆発させ、顔を見ずに只々笑うウィドにキーブレードを投げつけようとする。
そんなリズをシャオが後ろから押さえていると、ムーンが大きく溜息を吐いた。
「思ったんだが……いっその事、知り合いの名前をつけてさせてみたらどうだ? それなら、いちいち名前を考えなくていいだろ?」
「知り合いですか?」
近くでギャアギャア騒ぐリズが眼中にないのか、ウィドはムーンの案に首を傾げる。
「例えば…ハンサムペガサスは風に素早さが特徴だから、“ウィド”にするとか」
「なるほど…いい考えだな、ムーン!」
「ええ。【名は体を表す】と言いますからね、私にピッタリですよ」
ようやく立ち直ったのか、グラッセがムーンを褒めているとウィドも満足そうに頷く。
意外にも好評を受けたムーンの案に、リズも怒りを解いて面白そうに笑顔を浮かべた。
「よし! この際だし、他のキャラの名前をスピリットに付けてみようよ!!」
「面白そうだな…――じゃあ、オパールさんは何にする? コウモリバットか?」
グラッセが未だに妄想を浮かべるオパールを見ながら、リクの最初に仲間になるスピリットを思い浮かべる。
しかし、シャオは否定するように首を振った。
「いや、ボク的にはオバケピエロだと思うな。だって、プライズ(マニー)とか、凄く取りそうだし」
「納得ですね。彼女はジョブで言えば盗賊ですし」
シャオの考えに賛同なのか、ウィドも軽く頷く。
「ちなみにさ、ボクは何だと思う? ボク的には、弱点に合った攻撃が出来るガンミフクロウだと思うんだけど」
「えー? シャオはワンダニャンじゃない? ほら、まぬけな顔がそっくりだし!」
何処かかっこつけて言うシャオに、リズは悪意のない顔でそんな事を言いのけるので心に鋭い棘が刺さった。
「ワンダ、ニャン…まぬけ、顔…」
「すまないな、シャオ…リズに悪気はないから」
ズーンと落ち込むシャオに、今度はグラッセが肩を叩いて宥めだす。
さっきと逆の光景が出来上がる中、リズ達の話は盛り上がっていく。
「よーし、クウはナルバートでどうだ!?」
「いいんじゃない、ムーン! 後は…あ、スピカはボウクンレックスで!! 滅茶苦茶強いし、凶暴な所とかほんとそっく「『ブリザガ』」ひぃあああああああっ!!?」
リズが話している途中で、巨大な氷結が彼女の横をすり抜けた。
「い、今何が…?」
「陥没してるぞ、これ…!?」
突然の事に放心するグラッセの横で、ムーンは壁にめり込んだ氷結を見て青ざめる。
そうしていると、リズが心臓を掴みながら魔法を放った方向に顔を向けた。
「そ、それよりもいきなり何するのよスピカァァァ!!!」
リズが怒鳴る先には、先程の魔法を放ったスピカがニコニコと笑いながら立っている。
すると、スピカは睨みつけるリズに向かって笑いつつ、何処か黒いオーラを纏わせた。
「ごめんなさいね、魔法の練習してたら飛んで行っちゃって……それよりも、目上に対して随分な言い方ね。折角だし、ちょっと調教してあげようかしら? 骨の一本や二本…いえ、腕や足が一本ずつ無くなったら、身に染みて分かるでしょう?」
「すみませんでしたっ!!! もう二度と失礼な事は言いませんから、それだけはぁぁぁ!!!」
「分かってくれたなら、それでいいわ。じゃあ、私はもう行くわね」
恐ろしい事を言うスピカに、さすがのリズも頭を下げて謝る。
それを見て、スピカは満足そうに頷くとスタジオから出て行った。
「さて、話が中断しましたが…――カイリ、このムーンの案はどうですか?」
全員がスピカの恐ろしさに放心していると、ウィドが相談者であるカイリに目を向けると。
「理想としてはやっぱり子供は男と女一人ずつ、どうせなら双子とかいいよねー。それで、小さな丘にある一軒家。そこで花とか植えた庭で遊ぶ子供の成長を微笑ましく見守る、あたしとリク…やーん、ステキー!!」
「うんうん、分かる!! どうせなら私も男の子と女の子どっちとも欲しいなぁ。で、海の見える家でソラと一緒に海を眺めて、そこに子供が駆け寄って一緒にあの小島に行こうかってなって一緒に船に乗って家族で揺られて…キャ、恥ずかしい…!!」
「お二人さーん、そろそろ現実に戻ってきてくださーい」
「「ハッ!?」」
ウィドの声でようやく我に返ったのか、二人は脳裏に浮かんだ妄想を掻き消した。
「では、カイリ。ここにリズの案とムーンの案があるので、どちらか選んで頂けますか?」
何だかんだ言いつつ案を纏めていたのか、ウィドは二枚のメモ紙をカイリに差し出す。
カイリは二つに目を通すと、その中の一枚を選んだ。
「じゃあ、ムーンの案を貰うね。ありがとね、ムーン! さっそく二人に言ってみるから!」
「あ、ああ…役に立てて何よりだ」
笑顔を浮かべるカイリに、ムーンは複雑な表情で顔を逸らす。
これにて最初の相談が終わり、カイリが退場するのを見てウィドは司会を再開した。
「さて、まずはムーンにポイントが入りましたね。では、次に参りましょうか」