リラ様との作品コラボ 〜出演を賭けた人助け!?〜・4
「では、次の質問に行きましょうか」
ウィドが司会を進めると、再びカーテンが開く。
そこから出てきたのは、肩まである赤い髪をした薄手の服を着た少女。その手には、ブタのぬいぐるみ「ブタじゃないわよ!! ネコのにゃんタン!!」あたたたっ!? すみませんだからこのぬいぐるみ止めてー!!?
「まったく…――初めまして。私、『美坂 四季』(ミサカ シキ)! シキって呼んで!」
『サイコマンス』能力を使って地の文ににゃんタンをけしかけてボコボコに殴り終えると、シキは笑顔で六人に挨拶する。
戻って来たにゃんタンを腕に抱えて椅子に座ると、オパールが話を促した。
「じゃあ、シキ。悩みをお願い」
「実は、ネクがある装備を着てくれなくて困ってるの。着ればとても強くなるし、バトルでも役に立つアビリティがあるのに、いつもいつも嫌がって…」
「当たり前だぁ!!! そんなの誰が着るかぁ!!!」
シキが悩みを打ち明けるなり、突然怒鳴り声が辺りに響く。
見ると、スタジオの入り口に茶色のツンツン髪にヘッドフォンを付けた少年―――『桜庭 音操(サクラバ ネク)』がシキを睨んでいる。
この少年に、意外にもリズが驚きながら指を差した。
「その声は父さん!? どうしたのその姿は!?」
「いや、俺お前の父親じゃないからな? 声が似てるだけだからな?」
驚くリズに、すかさずツッコミを入れるネク。
そうしていると、シキが椅子から立ち上がってネクに怒鳴り返した。
「ちょっとネク!? どうしてここにいるのよ!?」
「そ、それは…!?」
「実はね。君がこの番外編に出るって聞いたネク君が心配して、こっそりここまで見に来たんだよ」
「ヨシュア!! 余計な事言うなよ!?」
シキの質問に、何処からともなく現れた薄い金髪の少年―――ヨシュアの説明にネクが慌てて怒鳴りつける。
そんな中、ヨシュアの説明にリズは首を傾げながらグラッセを見た。
「ねえ、グラッセ。確か、ああ言うのを『ストーカー』って言うんだっけ?」
「ああ、そうだ。だからリズ、あんなヘッドホンして根暗な怪しい奴には近づくんじゃないぞ?」
「お前らちょっとこっちに来い…!?」
リズとグラッセの会話にネクが怒りを見せていると、ウィドがやれやれと肩を竦めた。
「とにかく、話を戻しましょうか。それで、嫌がる装備品って何ですか?」
「えっとね…これなの」
何処からかアイテムの袋を取り出すと、例の装備品を中から取り出す。
直後、ネクとヨシュアを覗く男性陣の目が点になった。
「セーラー服…?」
「メイド服…?」
「チャイナドレス…?」
シキの取り出した代物に、上からムーン、ウィド、シャオが茫然となって呟く。
その間にも、シキはワンピースや女子制服、挙句の果てにビキニと言った女性物の服を取り出しながら三人に頷いた。
「そうそう。意外と装備ステータスはあるし、アビリティも役に立つのに…ネクったら意地でも着ようとしなくて」
「当たり前だぁ!!! そんな服誰が好き好んで着るかぁぁぁ!!!」
「そんな事言わないの!! こう言うのは、いつも戦うネクが着た方がいいでしょ!?」
「だったらヨシュアやビイトに着せればいいだろ!?」
そう言ってヨシュアに指を差すが、当の本人は涼しい顔で申し訳なさそうに手を上げて笑っていた。
「ごめん。ボクもビイトも『勇気』のステータス全然上げてないから、装備しようにも数値が足りなくて」
「ああ、そうだったな!! 俺だけシキに無理やり『ホットケーキ』やら『とんこつラーメン』やらあげくの果てには『冬虫夏草』も食べさせられて、勇気のステータスだけ異常に上げまくってたよなぁ!!」
「もー!! ネクが中心になって戦うんだから、優先的に装備を整えるのは当たり前でしょ!?」
この『すばせか』メンバーの会話に、残された男性陣は顔を見合わせた。
「…何て言うか、俺達の世界が『KH』で良かったな…!!」
「ええ…私も切実に思いました…」
ムーンの言葉に、さすがのウィドも顔を引くつかせて頷く。
その横では、シャオが泣きそうな表情で顔で俯かせている。
「ううっ…!! 嫌なトラウマが甦ってきたよ〜…!!」
「そう言えば、前にリズに女装されてたんだよな…あの時は悪かった」
「えー? ママン(サイクス)に作って貰った魔女の衣装、結構似合ってたじゃん。ねえ、シャオ。折角だしこれ来てみれば?」
思わずグラッセが肩を叩いていると、シャオの心を抉るようにリズが無造作に置かれたキャミソール(ラブリーキャミ)を持って見せつけた。
「へぇ…よく見れば、君可愛いし似合いそうだね! ね、これも穿いて見ない?」
シキも笑顔でそう言うと、ロングデミムのスカート(恋はとつぜん)をシャオに見せつける。
目を輝かせて女装させようとする二人に、さすがのシャオも泣いてしまった。
「お願いだから、これ以上ボクの心ズタズタにしないでくれない!?」
「何か、収拾がつかなくなってきてるわね…」
この光景に、疲れたようにオパールが溜息を吐いてしまう。
シキから解放されたネクも憐みの目でシャオを見る中、ヨシュアは一人首を傾げた。
「おや? 君って、よく見れば誰かに…?」
「わーわーわーっ!!! は、話っ!! 話戻そうよー!!!」
ヨシュアの呟きに危険を感じたのか、シャオは大声で遮る。
だが、話を戻されてはマズイと今度はネクが慌て始めた。
「戻さなくていいっ!! ヨ、ヨシュア!! お前何を言おうとしたんだぁ!!?」
「だ、駄目「俺の為に黙ってろぉ!!」ふべしっ!?」
ネクは即座にサイコキネシスを使い、置いてあった椅子を浮かせてシャオにぶん投げる。
そうして見事に命中して気絶するシャオ。そんなシャオを見ながら、ヨシュアは考えるように顎に手を当てた。
「うーん…――顔はいいとして、気配は何故か彼らと違うようで似てるんだよね……ああ、そう言う事か」
「何か分かったのか!?」
すかさずネクが聞くと、ヨシュアは含み笑いを浮かべて髪を梳かした。
「教えてあげたいけど、内緒にしとくよ。それに、今日はネク君のお披露目の為に来たようなものだしね?」
「何がお披露目だぁぁぁ!!? 俺は絶対にそんな服装備しないからなぁ!!!」
「もう、ネクったら…ねえ、どうにかならないかな?」
腕を組んでそっぽを向くネクに、シキは困ったようにリズ達を見た。
「これは、かなりの難題だな…」
今回の相談に、グラッセは痛そうに頭を抱える。
この相談は言い換えれば、男に女装させろと言ってるようなものだ。そんな策、思いつく訳がない。
ムーンも同じ考えなのか嫌そうな顔を作っている中、リズは勇敢にも笑顔でセーラー服をネクに見せつけた。
「あのさ、一回で良いから着てみたら? ネクなら似合うと思うよ?」
「そう言われて、『はい、そうですか』って着る男がいると思うか?」
「僕は着てみたいけど、『勇気』の値が足りなくて…」
「ヨシュアはこれ以上場を引っかき回すなぁ!!!」
涼しい顔で頭を押さえるヨシュアに、ネクが睨みつける。
意地でも着ようとしないネクに、リズはイライラしながら二本のキーブレードを取り出した。
「仕方ない…だったら、無理やり着せようじゃないのっ!!!」
「それはソラと同じタイプの武器か…!! いいさ、容赦しないっ!!!」
実力行使に出るリズに、ネクも両手を広げて構えを取る。
すると、二人は一斉に地を蹴ってバトルが始まった。
リズに向かってサイキックで炎や雷を飛ばすが、それを避けてキーブレードで襲い掛かる。
しかし、それをネクは真上にテレポートして避けつつ急降下で襲ってくる。この両者一歩も引かない戦いに、リズの強さを知っているムーンは驚きの目でネクを見た。
「すごいな…あのリズと対等に戦ってるぞ」
「フフフ…ネク君のサイキック能力は僕も人目置いてるからね」
「リズー、頑張ってー!! そのまま服を脱がしちゃってー!!」
「シキィ!? そこまでして俺に装備させたいのかぁぁ!!!」
にゃんタンと一緒にリズに声援を送るシキに、ネクはテレポートしながらツッコミを入れる。
この戦いの様子に、ムーンは渋い表情で腕を組んだ。
「どっちみち、これじゃあ平行線だな…」
「だからと言って、どうやって着せるんだ? 俺達だって嫌なのに…」
グラッセも溜息を吐きながら頭を掻きながら、リズと戦うネクを見る。
その時、グラッセの脳裏に何かが過った。
(そう言えば、ネクさんの性格って…――なら、それを上手く逆手にとれば…!!)
算段を思いついたのか、グラッセの顔に黒い笑みが零れる。
さっそくそれを実行に移すべく、ある人物に声をかけた。