リラ様との作品コラボ 〜出演を賭けた人助け!?〜・6
シキの相談から数十分後。
ようやく哀れな主役達の女装ショーが一段落つき、シャオも元の服装に着替えると本題に戻った。
「さて…ここまでで、全員ポイントが一つずつですか」
「次で相談者は最後だから、これで出演者が決まるわね」
ウィドとオパールの発言に、リズ達は目を丸くした。
「ちょっと待って!? 次で最後ぉ!?」
「こう言うのは、普通は5回とか10回とかぐらいだろ!? 少なすぎないか!?」
リズに続く様にグラッセも反論すると、ウィドが溜息を吐きながら頭を押さえた。
「仕方ないでしょう。これは、あなた達では対処出来ない大人の問題ですから」
「どんな問題だ!?」
続けざまにムーンもツッコミを入れると、オパールが先に進めた。
「とにかく、時間も無いしさっさと進めるわよ。さ、最後の相談者はこちら!」
手を上げると、お馴染みとなったカーテンが開く。
そこから現れたのは、ショートの金髪に青い目の少女―――レイアだ。
レイアはオドオドしながらも椅子に座ると、深々と頭を下げた。
「ど、どうも…よ、よろしく、お願いします…!!」
「さー、レイア。この三人に、悩みをビシッと言ってあげて」
「ハ、ハイィ!!」
緊張しているのか、声が上擦り全身をビクリと震わせる。
それでも、レイアは声を絞り出しながら相談を打ち明けた。
「じ、実は、その…クウさんと、仲良くなりたいと言うか…もっと、恋人の関係になりたいと言うか…っ!!」
レイアが勇気を出して告白すると、唐突に肩を掴まれる。
見ると、レイアの目の前でウィドが何処か黒さを滲ませた笑顔を浮かべていた。
「レイア、よーく考えなさい。クウって男は、女たらしな上に定職にもつかない、どーにもダラしない遊び人ですよ? 『ドラ○エ』で言えば大した特技も持たない役立たずと付き合うなんて考え、止めた方がいいと私は思うんですけどねぇ?」
「は、はぁ…?」
「って、ウィドォ!? 何根本的に相談潰そうとしてるのぉ!!?」
司会者として仕事を放り出すウィドに、珍しくリズがツッコミを入れる。
この光景に、グラッセは顔を引くつかせながらシャオを見た。
「シャオ…ウィドさんって、クウに恨みでも持ってるのか?」
「まあ、その…ネタバレしない程度に言うなら、恨みから来る念かな…?」
シャオはそれだけ言うと、グラッセから目を逸らす。
尚、誰に対しての恨みかは…言わずとも分かるでしょう。
そんなシャオに、ムーンが疑問を浮かべた。
「思うんだが、お前の登場する本編の断章で理由出てないか?」
「あ、あれはあれ、コレはコレだから!! そもそも、ボクの世界とウィドさん達の世界は、一応別物だし…」
ボソボソと言い訳を述べるシャオ。よく意味が分からない方は、私の断章【Fragment7】をご覧ください。
そうして彼らが話していると、突然レイアが立ち上がって必死な目でウィドを見た。
「クウさんはそんな人じゃないです!! 確かに女の人に目は無いですし、何処かぶっきらぼうですし、人の気持ち考えないで無茶しますし…――それでも、私達の事をちゃんと考えてくれたり、守ってくれたりします!! 本当はクウさん、とても優しくて頼りになる人なんですからっ!!」
「う、くっ…!?」
レイアの嘘偽りのない純粋な眼差しに、さすがのウィドも怯んでしまう。
何も反論出来なくなったウィドに、成り行きを見ていたオパールは何処か呆れた溜息を零した。
「何て言うか、愛って凄いわね…」
(((あんたが言うかっ!!?)))
人の事を言えないオパールの呟きに、思わずリズ達三人がツッコミを入れた。
「わ、分かりました…では、そこの三人。さっさとレイアの相談を解決させてください」
嫌そうな表情ながらもウィドが言い終えると、リズ達のターンがスタートした。
「もっと恋人になる、か……ねっ、いっその事デートとかしてみたら?」
「デ、デート…ですか」
リズの案にレイアが顔を僅かに赤らめる。
「(ビキッ)」
それと同時に、ウィドの額に青筋が浮かぶ。
「いやいや、デートだと反応が薄いだろ。いっその事、キスはどうだ?」
「キ、キス…!?」
続けて出たグラッセの案に、レイアは一気に顔を真っ赤にする。
「(バキン)」
尚、相談コーナーから離れた司会席でウィドが備え付けのコップを握りしめて粉々に割っているのに、司会の二人以外は誰も気づかない。
「さすがにキスは早すぎる…ここは、パオプの実を食べさせ合うって言うのもあるが」
「パオプの実、ですか?」
「ああ。【ディスティニーアイランド】に生えている実なんだが…その実を食べさせ合った二人は、どんなに離れていても必ず結ばれるって話をリズ達に聞いたんだ」
「ほぇ〜、そんな伝説があるんですか…!」
最後のムーンの案に、レイアが感心したように感嘆の声を漏らす。
「(ギチギチギチギチ…)」
「ウィドさん…あの、憎しみからは何も生まれませんよ…!?」
剣と鞘を擦り合わせるような耳障りな金属音に、どうにかシャオは勇気を振り絞って声をかける。
だが、黒いオーラを纏わせて剣の鞘を握って小刻みに震わせるウィドに宥める声は届かない。
「あの男…っ!! 姉さんの事を考えてこれまで大目に見てきたが…何時か、断罪するっ…!!!」
もはや目が血走り、全身からは殺気すらも滲ませている。
ここに本人がいたら即座に殺しかねないウィドの様子に、オパールも青い顔で冷や汗を掻いた。
「…あの断章の話、こっちの世界で現実になりそうね…」
「あ、あはははは…――オパールさんも人の事言えないけど…」
「何か言った?」
「ううん何でもっ!!!」
すぐさまシャオが首を振って誤魔化していると、リズの口から恐ろしい言葉が吐き出された。
「ねえ、どうする? ここにクウを呼んで、全部試してみる?」
「「エ…!?」」
リズの発言に、思わず二人は固まってしまう。
その時、ウィドが笑みを浮かべる。そう…狂気に満ちた笑みを。
これを見て即座にシャオが我に返ると、リズ達に訴えた。
「ちょ…!? さ、さすがにそれはマズイよ!! これ以上被が…じゃなくて、これ以上人は呼べなモガァ!!?」
言葉の途中で、ウィドによってシャオは口を塞がれてしまった。
「シャオ、リズにしてはいいアイデアだと思いません? そうですよねぇ、このまま訳の分からないドス黒い感情を溜めこむよりは、キチンと解消しないと心が闇に呑まれてしまいますし…」
(もう闇に染まってるのはボクの気のせいっ!?)
口を塞がれているからか、心の中でシャオはツッコミを入れる。決して怖いとか被害を被るとかは…まあ、半分ぐらいあるだろう。
さて、何処からどう見てもエラクゥスと対峙するテラのように闇のオーラに包まれたウィドに…誰も気づいていなかった。
「では私、クウさん呼んできますねっ!!」
「行ってらっしゃーい! グラッセー、喉乾いたしジュースでも買いにいかない?」
「そうだな。ついでにアイスも買いに行くか」
「いいな、アイス! 折角だし、この前雑誌に載ってたジェラート店にいこうぜ! あそこ、一度行ってみたかったんだよ〜」
クウを呼ぶためにスタジオから出たレイアを見送るなり、リズ達は和気藹々とムーンを先頭にジェラート店へ行く為にスタジオを出て行った。
「何で誰もこの空気に気づかないのさっ!? このままだとこのスタジオが殺戮現場になっちゃうぅぅぅ!!!」
一気に人数が減ったスタジオでウィドの手から解放されたシャオが絶叫を上げると、最後の綱とばかりにオパールに目を向けた。
「オパールさん! こうなったらボク達でどうにか――!!」
「さーて、あたしもさっきのリクの写真現像しにいこーと」
「ちょっと逃げないでぇ!!? ボク一人じゃどうにも出来ないよぉ!!!」
遠い目を浮かべてスタジオを出ていくオパールに、シャオは泣きそうな顔で叫ぶ。
しかし、その声も届かず扉は無情にも閉ざされる。まるで惨劇回避の未来が閉ざされたように見え、シャオはその場に座り込んだ。
「も、もう駄目だ…!! 神様、ボク何か悪い事した…?」
少なくとも、シャオは何一つ悪くない。悪いのは何の考えも無く女性に手を出したクウと、いい歳して姉離れ出来ないウィドが出会ってしまった事だろう。
そんな中、ウィドが剣を引き抜いて刃を光らせる様に、シャオが何処か諦めたように天を仰ぐ。
そうしていると、神に祈りが届いたのか不意に脳裏に一つの打開策が生まれた。
(効くか分からないけど…――今は神にも縋なきゃ!!!)
不安な感情を無理やり抑え込むと、シャオは再び立ち上がってウィドに叫んだ。
「ウィドさーんっ!! さっき、別室にいるレプキアさんが【レプセキア】にある古来から存在する神殿を案内してくれるって――っ!!!」
「なぁぁにいいいいぃぃ!!? どこだレプキアァァァ!!! 遺跡を出せぇぇぇーーーーっ!!!!!」
シャオが文字通り“カミ”を使った作戦に出ると、ウィドは目の色を変えてスタジオを飛び出していった。
自分で考えた作戦なのに思わずポカンとしながらウィドを見送っていると、丁度入れ替わるようにレイアがスタジオに戻って来た。
「お待たせしました! クウさん、早くー!」
「おいおい、呼び出すなり何なんだよ…って、シャオ? どうした?」
「き…危機一髪ってこの事を言うんだねー、って…」
何処か遠い目で呟くシャオに、クウとレイアは不思議そうに首を傾げた。
「――で、ウィドは戻ってこないままモシャモシャあたし達の提案をムグムグ二人で決めた訳ねゴクゴク…!」
「リズ、はしたないから食べ終わってから喋って…」
器用にイチゴのジェラートを食べながらジュースを飲むリズに、シャオが疲れた表情で注意する。
説明が遅れたが、ここにいるのはシャオとリズ、そしてグラッセとムーンの四人だ。レイアとクウは先に戻り、オパールとウィドは未だに戻ってきていない。
話を戻し、グラッセが色鮮やかなミックスフルーツのジェラートを食べながらシャオに聞いた。
「で、結局どれにしたんだ?」
「デートはクウさんが難しい顔して保留、キスは二人とも真っ赤にしてクウさんがビリビリに案の紙を破っちゃって…で、最後に残ったムーンの案と見比べて選んだ結果が――」
そこで言葉を切ると、シャオが二枚の紙を三人に見せつける。
それぞれにリズとムーンの案が書かれており…――ムーンの方に丸印が書かれていた。
「おっしゃあ!!! 俺の勝利だぁ!!! ありがとな、クウっ!!!」
どうにか特別ゲスト出演に選ばれ、ムーンは嬉しさのあまりバニラ味のジェラートを握りながらガッツポーズを作った。
「うっわ、意外。クウって、こう言うの選んじゃうんだー」
「ヘタレかと思ったが、ちゃんと男の部分もあるんだなー…」
そんな中、リズとグラッセがクウの選択に関心する。
パオプの実のまじないは、島出身の人に言って見ればプロポーズのようなものだ。女たらしの性格には無縁と言ってもいい。
この二人に、シャオは黙って目を逸らした。
(どうせおまじない的な奴だから、これでいいってボソっと言ってたけどね…――あれ? そう言えばボク、具体的なパオプの実の事教えたっけ…?)
島出身、もしくは関係ある人ならいいが、それ以外の人が島の至る所にある種類豊富な木の実からパオプの実を判断出来る筈がない。
よくよく思い返すと、ムーンの案に決めてすぐ説明する暇もなくクウがレイアを連れて行ったような…。
その事を思い出していると、黙ったシャオにムーンが声をかけてきた。
「どうした、シャオ?」
「う、ううん…何でもない…」
目を逸らしながらも、どうにか言葉を返すシャオ。そして、願わくば本物の実を食べない事をこっそりと祈っておく。
そうこうしていると、リズとグラッセがこちらに笑顔を見せていた。
「今回は負けちゃったけど、あたし達の分まで楽しんで来てね、ムーン!!」
「シャオ、ムーンの事頼むぜ」
「う、うん! 今回みたいな大きなドタバタは無いと思うから、そこは安心してよ!!」
「ありがとなリズ、グラッセ!! お前達の分まで、いろいろ情報仕入れてくるからな!!」
こうして、いろいろあったが出演者も無事に決まり、今回の番外編が終了した…。
■作者メッセージ
これにて、リラ様のキャラを借りての番外編は終了です。
ただ、今の本編での状態ではまだ戦闘能力の話は早いので、次の私の番のバトンが終わった後にそちらは投稿して行く予定です。
それまでは何らかの番外編でのネタが思いついたら、そちらを投稿して行こうかと思ってます。