【Re:開闢の宴】終盤突入企画・戦闘能力分析編 5
「さて、リクの治療も終わりましたし【テラ編】の紹介と行きましょうか」
頭から熱湯をぶっ掛けられて重傷を負ったリクに回復魔法をかけ終えたアクアとレイアを見て、ウィドは再び司会用のレポートを持ち出す。
それを見て、疲れがピークに達したのか神無とムーンが重い溜息を吐いた。
「ああ…さっさと終わらせてくれ…」
「参加しなかったリズとグラッセが羨ましく思えてきた…」
「気持ちは分からない事もないが…とにかく、先に行くぞ。じゃ、最初はテラからだ」
クウも同情しつつ先を促すと、スクリーンに情報が映し出された。
【テラ】 攻撃:90 魔力:40 耐久:80 敏捷:40 戦術:75 知識:55
特殊アイテム&スキル
『キーブレード』:伝説の鍵型の武器。さまざまな扉や鍵穴などを開く・閉じる能力を持っている。
『鎧』:闇の浸食から守る鎧を身に纏う。
『キーブレードライド』:キーブレードを乗り物に変形させ、世界を結ぶ回廊の移動に使う。ちなみに、世界に居ても変形は可能。
「さすが、攻撃中心なだけあって攻撃と耐久が高いな」
「キーブレード使いですから、戦術も高めのようですし」
無轟とゼロボロスがステータスを見て感心する中、当の本人は何処か暗い表情で顔を俯かせた。
「しかし、その他に関してはまだまだ皆と差があるんだな…これだから、俺はキーブレードマスターに選ばれなかったのか?」
「いや、選ばれないのはもっと、こう…別の何かだと俺は思うんだが?」
「ま、全てはゼアノートが元凶なんですけどね」
すぐにクウがフォローを入れると、ウィドが腕を組みながらボソリと正論を呟いた。
「おのれ、ゼアノート…わが師を消しただけでなく、マスターへの道すらも閉ざすとは!!」
「お、おいテラ…そのゼアノートに変貌してるぞ…?」
後ろに大きな影を携えて銀髪に変わるテラを、クウが顔を引くつかせて宥めに入る。
この二人の様子に、ヴェンは不思議そうに頭の後ろに腕を組んだ。
「なんかさ、クウってテラの事気に入ってるのかな?」
「クウさんとテラさん、何だか似てるからですかね?」
「似てるのかしら…?」
レイアが嬉しそうに言うと、アクアが困ったように首を傾げる。
ムーンも同じなのか、何処か呆れた目でニコニコと笑うレイアを見た。
「確かにクウも闇を持ってるが、テラは礼儀正しいし誠実なタイプだろ? どう見ても、女たらしで軽薄なクウと真逆じゃねーか」
「んだと、このガキ。ホント、そう言う嫌ーな所も父親とソックリなんだなー?」
「うっせぇ!!! ロリコンは黙ってろぉ!!!」
「誰がロリコンだこのクソガキィィィ!!!」
売り言葉に買い言葉とはこの事か。ムーンとクウが睨み合っていると、ウィドが目を逸らしながらレポートを持った。
「さて、次はそのロリコンのステータスを見ましょうか」
「ウィド、てめぇまで!!! つーか俺がロリコンなら、お前はシスコぐおっ!?」
言葉の途中で、クウの顔面に分厚い本が投げつけられる。
思わず顔を押さえて蹲っていると、ウィドが黒い笑顔で彼の前に立った。
「な・に・か?」
「な…何でも、ありません…っ!」
怪しく目を光らせるウィドに全員が恐れを抱いている間にも、スクリーンに情報が映し出された。
【クウ】 攻撃:85 魔力:50 耐久:60 敏捷:85 戦術:75 知識:65
特殊アイテム&スキル
『フェークダーク』:厚めの皮で作られた黒い手袋。薄い金属を仕込んであるので、防御も可能。
『キーブレード』:伝説の鍵型の武器。さまざまな扉や鍵穴などを開く・閉じる能力を持っている。しかし、今は理由があって使えなくなっている。
『黒夜のコート』:黒い厚手のトレンチコート。見かけは何処にでも売っているコートに見えるが、実は闇の浸食を防ぐ効果を持つ。
『具現化』:その名の通り、自分の中にある闇を具現化させる力。クウの場合、黒の双翼や黒い羽根のナイフを作り出す。
「どうだ、この俺のステータス!! それなりに上位に部類されてるだろぉ!!」
クウが得意げにステータスを見せていると、ゼロボロスと無轟がそれぞれ頷いた。
「まあ、クウも格闘家ですからね。攻撃・敏捷のステータスが上にくるのは必然でしょうね」
「魔法力は低いが、格闘以外でも魔法を使えてあのナイフ投げ。大体が闇属性だが、まさに近・中・遠距離と立ち回りは完璧だろう」
「それでも、どうしてこんなにステータスが高いんだよ…」
二人が関心を寄せる中、ルキルが何処か納得しない表情を浮かべる。
今まで紹介されたステータスでは、どれか一つは必ず平均以下があった。それなのに、クウの場合一番低い魔力すらも平均を保っているのだ。どう見ても贔屓にしか見えない。
そんなルキルに、ウィドは頭を押さえながら機密情報を取り出した。
「作者の機密情報では、元・キーブレード使いって事もあるんですが――…も――の…し……ク……バ…ですしね…」
「先生、よく聞こえなかったんだが…」
かなり小さい声でうやむやに呟くウィドに、ルキルが不思議そうに首を傾げる。
しかし、ウィドは再び言う気は無いようで即座に機密情報を仕舞って顔を逸らす。どうやら、かなりのネタバレ情報のようだ。
そうしていると、ソラは頭の後ろに腕を組んでステータス情報を見ていた。
「確かにステータスは強いけど、人間としては最低だよなー。彼女いるのにナンパするし」
「ああ、女たらしな上に何処かだらしなく喧嘩っ早い。そんな性格だから、キーブレードにも愛想つかされたんだろう」
「へーえ、そうか…お前らの言いたい事はよーく分かった…!!」
ソラに続く様にリクまでも冷静に分析した事を言うと、クウが青筋を浮かばせて拳をポキポキと鳴らす。
何時でも攻撃出来る体制に入るクウに、リクは腕を組んで鼻で笑った。
「どうする気だ? ここで俺達と戦うか?」
「さすがにこれだけの女性がいる前で、そんな事はしねーよ。ただ…ウィドと似たよーな事はさせて貰うぜ?」
「どう言う事だ?」
言葉の意味が分からず、訝しげに顔を歪めるリク。
ソラも疑問符を浮かべていると、クウが懐から何やら分厚い黒い本を取り出した。
「おーっとぉ! こーんな所にソラとリクの秘蔵写真集がー!」
「「んなぁ!!?」」
「「ひ、秘蔵写真っ!?」」
予想もしなかった行動にソラとリクが驚く中、カイリとオパールが目の色を変えてクウに注目した。
「ああ。本編での旅の写真はもちろん、日常生活や戦闘時にペット(ドリームイーター)の世話、あとこの前の相談の女装、なーんでも揃ってるぜ?」
「「クウ、すぐに見せてっ!!!」」
説明が終わるなり、カイリとオパールはクウから写真集を奪い取る。
まるで獲物を狙うハイエナのような目で中に納められる写真を見る二人に対し、ソラとリクは顔を真っ赤にさせてクウを睨んだ。
「ず、ずるいぞクウ!!」
「一体いつ撮ったんだぁ!!?」
「さーてなぁ? これらの写真を一枚800マニー、今ならおはよう・おやすみ・留守電・アラーム・着信とさまざまな携帯ボイス付きだがどうする?」
「「「5グロスくださいっ!!!」」」
クウの商談に、三人分の声が一斉に響き渡る。
何故か余分に聞こえた声に全員が目を向ける。そこには、いつの間にかカイリとオパールに混じって青い髪の少女の姿があった。
「リ、リリィ!? どうしてここに!!?」
「気にしなくていいの、そんな事!! クウさん、この携帯にお願い!!」
何の前触れもなく現れたリリィに目を丸くするリクに、軽く釘を刺すと自分の携帯を取り出す。
そんなリリィの脳裏に、自身の中にいるリリスの声が響いた。
《ちょっと!! 貴様はもう消えているんだから、さっさと私に意識を寄越せ!!》
「リリスは黙ってて!! こんなチャンス、逃したら次はないんだから!!」
《クッ、これもそれもあいつの所為…!! 意識が戻ったらその写真、藁人形にでも張り付けて呪ってやる…!!》
「もう本編で十分呪ってるじゃないのっ!!!」
「呪い!? 一体どんな会話しているんだっ!!?」
リリスの声はリリィ以外の人には聞こえていないようで、二人の聞こえない会話にリクは顔を青ざめる。
この二人(三人?)の様子に、神無は思わず苦笑を浮かべた。
「…二股の一人が敵って大変だな」
「神無が言えるセリフですか、それ?」
含みのある笑顔でゼロボロスが問うと、神無は苦笑を浮かべたまま固まってしまう。
それもそうだろう。彼の妻であるツヴァイも元は敵キャラ、しかも軍の団長と強さもあちらが上だったのだから。ただ、それを言えば神月やゼツの恋人である紗那やシェルリアも元は敵キャラだったのだが。
ついでに言えば、彼の幼馴染である月華も当時は思いを寄せていたが結局は出会ったばかりのツヴァイに取られてしまった。こうして思い返すと、今のリクの状況といろいろ接点がぐはぁ!!?
「フラグ立ってるからって、余計な事言うんじゃないわよ!! クウ、あたしのスマホから先にして!!」
「私も携帯とウォークマンに!!」
地の分を思いっきり殴りつけるなり、オパールはクウにスマホを渡す。それに便乗するように、カイリも代金の入った封筒と一緒に携帯とウォークマンを取り出す。
こうして恋する乙女三人が暴走する中、ソラが難しい顔で腕を組んでいた。
「えーと、5グロスっていくつなんだ?」
「1グロスは12ダース、1ダースは12個、後は自分で計算しなさい」
「えー!? 分かんないよー!!」
アクアが甘やかさない程度にヒントを出すと、ソラは頭を押さえて絶叫を上げる。
段々と騒がしくなるスタジオに頭が痛くなったのか、ウィドが米神を抑えながら三人から代金を受け取ったクウを見た。
「それよりクウ、そのお金をどうする気ですか?」
「ん? そりゃあ、次にナンパした時のデート資金「『シャイニング・クロス』!!!」「『覇弾』!!!」ぎゃああああああっ!!!??」
何処か得意げにクウが話した直後、巨大な光の十字架と無数の光弾が彼に襲い掛かった。
そうして攻撃が収まると、クウはその場でズタボロになって倒れていた。尚、離れた所ではレイアが睨んでおり、同時に何者かがスタジオの入口の扉から出ていく音も耳に入った。
「い、今なにが…?」
「無視しなさい。幼気な少女達から巻き上げたお金をくだらない事に使う男、ほっといた方が世の中の為です」
あまりの光景にルキルが言葉を失うが、ウィドは冷めた目で次の準備を進めた。
「まぁ、自業自得だよな…」
「女ってすげー…」
神無とムーンも言葉を失うが、クウに同情する気は一切なかった。