夢旅人誕生日企画・Part2 (前編)
いつもあとがきや特別な話で使うのとは違う、幾つものキッチンが設備された特殊なスタジオ。
その真ん中に、ある二人の男性が立っていた。
「皆さん、ようこそ。夢旅人誕生日企画へ。今回は我らが産み親である夢旅人の為に、厳選されたキャラ達が料理で対決をして貰います。申し遅れました、私はローレライと申します」
「僕はゼロボロスですが、今回は混合を避ける為に【紫苑】と名乗らせて貰います。どうぞ宜しくお願いします」
そう言いながら短めの黒髪と赤い瞳の男と、黒のセミショートで瞳が紫の青年がそれぞれを挨拶した。
「さて、今回作るのは誕生日には定番の《バースデーケーキ》です。まずは挑戦者達の前に、作者に代わる審査員をご紹介しましょう!!」
ローレライが大声で言うと、部屋の一角が明るくなる。
そこには四人の審査員が座っており、紫苑が紹介を始めた。
「まずは、かつて世界を救った心剣士であるオルガ!!」
「よう! 今回はよろしく頼むぜ!!」
「続いて、同じく世界を救いレプキア達とも交流を持つ反剣士のゼツ!!」
「まあ、何だ…上手い料理が出てくるのを楽しみにしてる」
「次はKHキャラのライバル役であり、【3D】では主役級の働きを見せたリク!!」
「俺、こんな所に出てもいいのか…?」
「最後は、黒の双翼を操る闇の格闘家であるクウ!!」
「甘い物は基本苦手なんだが…――女性が作るのだったら、喜んで食べさせて貰うぜ」
こうして紫苑による審査員の紹介が終わると、ローレライが奥のカーテンに目を向けた。
「審査員の紹介は以上……次は、選ばれた料理人達の登場ですっ!!」
ローレライが手を上げると、カーテンが開いた。
「オルガ、今日は腕によりをかけるからね!!」
「ゼツ、楽しみにしていてね。母として、ふさわしい料理作ってあげるわ」
「やっとまともに登場出来たー!! よーし、頑張るぞー!!」
「ええ、正々堂々と戦いましょう」
それぞれ上からアーファ、アナザ、シオン、スピカが笑顔を浮かべて入場した。
「「「「ちょっと待てぇぇぇーーーーーーーっ!!!??」」」」
直後、審査員全員から抗議の声が上がった。
「何でよりによってこのメンバー!?」
「明らかに人選ミスしてないか!?」
オルガとゼツが青い顔で司会者二人に詰め寄る。
すると、ローレライは不思議そうに首を傾げて説明した。
「人選ミスなんてしてませんよ? だって、誰が一番“マズい”かって勝負ですから」
「「ちょっと、どういう意味よっ!!!」」
聞き捨てならないセリフに、すかさずアーファとアナザが睨みながら詰め寄る。
「失礼ね、そこまで料理下手じゃないわよ?」
「そうだよ、罰ゲームみたいじゃない!!」
そんな中、スピカは不満げに腕を組み、隣ではシオンが頬を膨らませている。
この四人の様子に、さすがのオルガとゼツも焦りが萎えて呆れを浮かばせた。
「あいつら、自覚ゼロかよ…」
「だからこそ性質が悪いな…」
二人が深々と溜息を吐いていると、リクが全身に冷や汗を掻きながら司会者に目を向けた。
「お、おい…ままままさかとは思うが…今回のシオンって、その…!?」
「ええ。ご想像の通り、リラ様式のシオンです」
「何してくれてたんだあの作者ぁぁぁーーーーーっ!!!??」
ニッコリと満面の笑顔で答えた紫苑に、リクはこれでもかと絶叫を上げる。
それもそうだ。リラ様の作品のシオンの料理の腕前はとにかく酷いの一言だ。読んでいない方は、是非ともその目でお確かめください。
「スピカの料理食べるぐらいなら、普通に甘い物食った方がまだマシだ…!!」
三人に負けぬ暗いオーラでクウも頭を押さえていると、ローレライが声をかけた。
「まあまあ、そう気を落とさずに。ちゃんと策は取ってありますから」
「本当か!?」
思いがけない救いの言葉に、オルガが喰い付く。
他の三人も目を向けると、紫苑が笑顔で後方を指した。
「ええ。この通りポーション類の回復アイテムに加え、特別にフェニッ○スの尾やライ○ボトル、他にもフレッシュ○ージ、1UP○ノコ、げんきの○たまり、地○しの玉もご用意いたしました」
「アフターケアはバッチリですので、安心してください」
「策ってそっちか!?」
「と言うか、俺達が戦闘不能になるのはもはや必須!?」
最後のローレライの補足に、思わずリクとオルガがツッコミを入れる。
だが、二人の言葉に気にもかけずに紫苑は料理人達に指示を出した。
「それでは皆さん、今から一時間の内にケーキを作ってください。では、スタートです!!」
「俺達、生きて帰れるかな…?」
「さあな…?」
ゼツとクウが思った事を呟くと同時に、料理対決が幕を開けた。
「さて、まずは食材選びですね」
「皆さん、どんなケーキを作ってくれるんでしょうねー?」
((((どうかまともな材料選びますように…っ!!!))))
紫苑とローレライが若干ニヤニヤしながら解説する中、審査員四人は必死になって祈る。
しかし、全員頭の片隅では分かっていた。こんな祈り、ただの気休めにしかならないだろうと。
「えーと、まず果物は必須だよねー? これと、これと…」
「アーファ!? 何故にスイカやアボカドをチョイスする!?」
「あら? 果物だけがケーキの材料じゃないわ。ここは野菜も使わないと…」
「アナザ!? 確かに野菜を使ったケーキはあるがどうして大根やゴボウをモガァ!?」
オルガに続きゼツもツッコミを入れた途端、ローレライによって口を塞がれた。
「ゼツ? あなたは審査員ですから作り方を教えるのは無しですよ? 他の人もいいですね?」
((((この鬼畜野郎ぉぉぉ!!!))))
笑顔で注意するローレライだが、その顔には黒い何かを張り付けている。
これにはリクすらも心の中で罵声を浴びせるが、そうしている間にも彼女達は恐ろしい方向へと進んでいく。
「うーん、リクは島で暮らしてるし魚とか好きだよねー? あ、お肉も入れた方が…」
(本当にベタな考え方だな、シオン!!)
「そう言えば、食糧不足の改善する為に微生物のケーキがあったわね…――ここは私も実践しましょう♪」
(微生物でアンヴァースっ!!? ヴァニタスの負を混ぜる気かスピカァァァ!!?)
魚だけでなく肉を掴むシオンと、逃げようとするアンヴァースを笑顔で鷲掴みするスピカにそれぞれが心の中で叫ぶ。
完全に幸先が曇る所か嵐に突入してしまうが、もちろん彼女達は気づく訳がない。
「よーし! さっそく作るぞー! えっと、アタシ達の作者が好みそうなケーキだっけ?」
「そう言えば、夢旅人は甘い物が苦手だったわ。だったら、砂糖の代わりに塩も用意した方がいいわね」
「あ、何かシーソルトアイス味風になって美味しそうだね! うーん、今から海の水採りに行こうかな?」
「あら、逆に甘やかして好き嫌いさせるのもどうかと思うわ。ここは苦手克服の為に、あえてチーズケーキを作りましょう。確か、チーズはカビの生えた物がいいのよね…」
アーファの疑問を元に、アナザ、シオン、スピカが料理の準備をしながら相談を始める。
一見すれば微笑ましいが、会話の内容を聞く限りもはや悪い魔女の会合にしか見えない。
((((あ、もう駄目だこれ…))))
現に今、審査員は絶望に立たされている。
こうして四人が希望を失っている中、司会者二人から思いがけない言葉が発せられた。
「さて。作っている段階に差し掛かった所で、少し質問を宜しいですか?」
「皆さんは今回の対決の為に、事前にいろいろとしてきたと伺いましたが…」
((((ようやく俺達に救いの手がっ!?))))
紫苑とローレライの質問に、四人の目に光が宿り出す。
すると、アナザが一つ頷いて何処か含みのある笑みを浮かべた。
「ええ。一応、シェルリアやミュロスの料理風景を見て私なりに分析してきたわ」
「その、分析って…?」
恐る恐るゼツが聞くと、アナザはそっと胸に手を当てた。
「料理する時の彼女達にあって、私に無かったもの…――それは『詩』よっ!! 料理をしている彼女達は、鼻歌をしながら料理をして愛を込めていたの!! レーヴァテイルだからこそなせる業を、私も今日ここで実践するわ!!」
「確かにレーヴァテイルは詩に力が篭るが料理とは全く関係ねえぇぇぇ!!!」
何やら間違った分析にゼツが叫んでいると、シオンが首を傾げてアーファを見た。
「ねえ、アーファ。『れーばている』って何?」
「うーん、アタシも詳しくはちょっと…紫苑とローレライは分かる?」
「説明したいのは山々ですが、今回は時間がないので止めておきます」
「まあ、その内夢旅人かこちら側の作者が説明してくれるでしょう」
司会者が苦笑しながら二人に言っていると、アナザは早速歌を歌いながら食材(ほとんどがケーキに関係ないような野菜)を切りだした。
「私は至つて冷静に激しく黒い怒りの奈落の底にあり続けたい〜♪ 凍てる業火灼かれながら私を飾る首飾りはおまえを縛る鋼鉄の鎖〜♪」
「アナザァ!!? 元ラスボスキャラだからってどうしてそんな歌をチョイスするんだ!!? どうせならもっと楽しい歌にしてくれぇぇぇ!!?」
何やら不吉な歌を歌うアナザに、ゼツは必死になって叫んだ。
「…呪いが篭りそうだな」
「ああ、絶対に食べたくはないな…」
何処か暗い顔をしながら、オルガとリクは思った事を呟く。
それはローレライも同じなのか、すぐに顔を逸らして今度はシオンに目を向けた。
「シオンも誰からか習いましたか?」
「もちろん! あたしはサイクスから習って来たよ!」
「サイクス、か…?」
「いや、シャオの話ではあっちのサイクスは料理が上手いって話だったから、あるいは…!!」
機関内の実力者である人物にリクは不安になるが、逆にクウは希望を寄せる。
対極の感情を持つ二人が固唾を呑んで見守っていると、紫苑も会話の中に入ってきた。
「それで、どのような事をしてきたのですか?」
「それはねぇ…じゃじゃーん!!」
そう言うと、シオンは通常よりもかなり大きなサイズの調理器具を取り出した。
「ヴィクセンからはお鍋! マールーシャはお玉を借りてきたよ!」
「それユニーク武器じゃないかっ!!?」
「しかもケーキ作りに一切関係ない器具だし!!!」
自信満々に見せるシオンに、すかさずリクとオルガが心から叫ぶ。
だが、シオンは聞いていないのかさらに荷物袋を漁った。
「そうそう。ゼクシオンのサンドイッチ、あとアクセルのピザにサイクスのバナナも持ってきたんだー。どう、美味しそうでしょ?」
「本当にヒロインなのか、あの子…?」
「…機関は一体何を教えていたんだ…!!」
ゼツが呆気に取られる横で、クウも痛そうに頭を押さえつけていたとか。
その真ん中に、ある二人の男性が立っていた。
「皆さん、ようこそ。夢旅人誕生日企画へ。今回は我らが産み親である夢旅人の為に、厳選されたキャラ達が料理で対決をして貰います。申し遅れました、私はローレライと申します」
「僕はゼロボロスですが、今回は混合を避ける為に【紫苑】と名乗らせて貰います。どうぞ宜しくお願いします」
そう言いながら短めの黒髪と赤い瞳の男と、黒のセミショートで瞳が紫の青年がそれぞれを挨拶した。
「さて、今回作るのは誕生日には定番の《バースデーケーキ》です。まずは挑戦者達の前に、作者に代わる審査員をご紹介しましょう!!」
ローレライが大声で言うと、部屋の一角が明るくなる。
そこには四人の審査員が座っており、紫苑が紹介を始めた。
「まずは、かつて世界を救った心剣士であるオルガ!!」
「よう! 今回はよろしく頼むぜ!!」
「続いて、同じく世界を救いレプキア達とも交流を持つ反剣士のゼツ!!」
「まあ、何だ…上手い料理が出てくるのを楽しみにしてる」
「次はKHキャラのライバル役であり、【3D】では主役級の働きを見せたリク!!」
「俺、こんな所に出てもいいのか…?」
「最後は、黒の双翼を操る闇の格闘家であるクウ!!」
「甘い物は基本苦手なんだが…――女性が作るのだったら、喜んで食べさせて貰うぜ」
こうして紫苑による審査員の紹介が終わると、ローレライが奥のカーテンに目を向けた。
「審査員の紹介は以上……次は、選ばれた料理人達の登場ですっ!!」
ローレライが手を上げると、カーテンが開いた。
「オルガ、今日は腕によりをかけるからね!!」
「ゼツ、楽しみにしていてね。母として、ふさわしい料理作ってあげるわ」
「やっとまともに登場出来たー!! よーし、頑張るぞー!!」
「ええ、正々堂々と戦いましょう」
それぞれ上からアーファ、アナザ、シオン、スピカが笑顔を浮かべて入場した。
「「「「ちょっと待てぇぇぇーーーーーーーっ!!!??」」」」
直後、審査員全員から抗議の声が上がった。
「何でよりによってこのメンバー!?」
「明らかに人選ミスしてないか!?」
オルガとゼツが青い顔で司会者二人に詰め寄る。
すると、ローレライは不思議そうに首を傾げて説明した。
「人選ミスなんてしてませんよ? だって、誰が一番“マズい”かって勝負ですから」
「「ちょっと、どういう意味よっ!!!」」
聞き捨てならないセリフに、すかさずアーファとアナザが睨みながら詰め寄る。
「失礼ね、そこまで料理下手じゃないわよ?」
「そうだよ、罰ゲームみたいじゃない!!」
そんな中、スピカは不満げに腕を組み、隣ではシオンが頬を膨らませている。
この四人の様子に、さすがのオルガとゼツも焦りが萎えて呆れを浮かばせた。
「あいつら、自覚ゼロかよ…」
「だからこそ性質が悪いな…」
二人が深々と溜息を吐いていると、リクが全身に冷や汗を掻きながら司会者に目を向けた。
「お、おい…ままままさかとは思うが…今回のシオンって、その…!?」
「ええ。ご想像の通り、リラ様式のシオンです」
「何してくれてたんだあの作者ぁぁぁーーーーーっ!!!??」
ニッコリと満面の笑顔で答えた紫苑に、リクはこれでもかと絶叫を上げる。
それもそうだ。リラ様の作品のシオンの料理の腕前はとにかく酷いの一言だ。読んでいない方は、是非ともその目でお確かめください。
「スピカの料理食べるぐらいなら、普通に甘い物食った方がまだマシだ…!!」
三人に負けぬ暗いオーラでクウも頭を押さえていると、ローレライが声をかけた。
「まあまあ、そう気を落とさずに。ちゃんと策は取ってありますから」
「本当か!?」
思いがけない救いの言葉に、オルガが喰い付く。
他の三人も目を向けると、紫苑が笑顔で後方を指した。
「ええ。この通りポーション類の回復アイテムに加え、特別にフェニッ○スの尾やライ○ボトル、他にもフレッシュ○ージ、1UP○ノコ、げんきの○たまり、地○しの玉もご用意いたしました」
「アフターケアはバッチリですので、安心してください」
「策ってそっちか!?」
「と言うか、俺達が戦闘不能になるのはもはや必須!?」
最後のローレライの補足に、思わずリクとオルガがツッコミを入れる。
だが、二人の言葉に気にもかけずに紫苑は料理人達に指示を出した。
「それでは皆さん、今から一時間の内にケーキを作ってください。では、スタートです!!」
「俺達、生きて帰れるかな…?」
「さあな…?」
ゼツとクウが思った事を呟くと同時に、料理対決が幕を開けた。
「さて、まずは食材選びですね」
「皆さん、どんなケーキを作ってくれるんでしょうねー?」
((((どうかまともな材料選びますように…っ!!!))))
紫苑とローレライが若干ニヤニヤしながら解説する中、審査員四人は必死になって祈る。
しかし、全員頭の片隅では分かっていた。こんな祈り、ただの気休めにしかならないだろうと。
「えーと、まず果物は必須だよねー? これと、これと…」
「アーファ!? 何故にスイカやアボカドをチョイスする!?」
「あら? 果物だけがケーキの材料じゃないわ。ここは野菜も使わないと…」
「アナザ!? 確かに野菜を使ったケーキはあるがどうして大根やゴボウをモガァ!?」
オルガに続きゼツもツッコミを入れた途端、ローレライによって口を塞がれた。
「ゼツ? あなたは審査員ですから作り方を教えるのは無しですよ? 他の人もいいですね?」
((((この鬼畜野郎ぉぉぉ!!!))))
笑顔で注意するローレライだが、その顔には黒い何かを張り付けている。
これにはリクすらも心の中で罵声を浴びせるが、そうしている間にも彼女達は恐ろしい方向へと進んでいく。
「うーん、リクは島で暮らしてるし魚とか好きだよねー? あ、お肉も入れた方が…」
(本当にベタな考え方だな、シオン!!)
「そう言えば、食糧不足の改善する為に微生物のケーキがあったわね…――ここは私も実践しましょう♪」
(微生物でアンヴァースっ!!? ヴァニタスの負を混ぜる気かスピカァァァ!!?)
魚だけでなく肉を掴むシオンと、逃げようとするアンヴァースを笑顔で鷲掴みするスピカにそれぞれが心の中で叫ぶ。
完全に幸先が曇る所か嵐に突入してしまうが、もちろん彼女達は気づく訳がない。
「よーし! さっそく作るぞー! えっと、アタシ達の作者が好みそうなケーキだっけ?」
「そう言えば、夢旅人は甘い物が苦手だったわ。だったら、砂糖の代わりに塩も用意した方がいいわね」
「あ、何かシーソルトアイス味風になって美味しそうだね! うーん、今から海の水採りに行こうかな?」
「あら、逆に甘やかして好き嫌いさせるのもどうかと思うわ。ここは苦手克服の為に、あえてチーズケーキを作りましょう。確か、チーズはカビの生えた物がいいのよね…」
アーファの疑問を元に、アナザ、シオン、スピカが料理の準備をしながら相談を始める。
一見すれば微笑ましいが、会話の内容を聞く限りもはや悪い魔女の会合にしか見えない。
((((あ、もう駄目だこれ…))))
現に今、審査員は絶望に立たされている。
こうして四人が希望を失っている中、司会者二人から思いがけない言葉が発せられた。
「さて。作っている段階に差し掛かった所で、少し質問を宜しいですか?」
「皆さんは今回の対決の為に、事前にいろいろとしてきたと伺いましたが…」
((((ようやく俺達に救いの手がっ!?))))
紫苑とローレライの質問に、四人の目に光が宿り出す。
すると、アナザが一つ頷いて何処か含みのある笑みを浮かべた。
「ええ。一応、シェルリアやミュロスの料理風景を見て私なりに分析してきたわ」
「その、分析って…?」
恐る恐るゼツが聞くと、アナザはそっと胸に手を当てた。
「料理する時の彼女達にあって、私に無かったもの…――それは『詩』よっ!! 料理をしている彼女達は、鼻歌をしながら料理をして愛を込めていたの!! レーヴァテイルだからこそなせる業を、私も今日ここで実践するわ!!」
「確かにレーヴァテイルは詩に力が篭るが料理とは全く関係ねえぇぇぇ!!!」
何やら間違った分析にゼツが叫んでいると、シオンが首を傾げてアーファを見た。
「ねえ、アーファ。『れーばている』って何?」
「うーん、アタシも詳しくはちょっと…紫苑とローレライは分かる?」
「説明したいのは山々ですが、今回は時間がないので止めておきます」
「まあ、その内夢旅人かこちら側の作者が説明してくれるでしょう」
司会者が苦笑しながら二人に言っていると、アナザは早速歌を歌いながら食材(ほとんどがケーキに関係ないような野菜)を切りだした。
「私は至つて冷静に激しく黒い怒りの奈落の底にあり続けたい〜♪ 凍てる業火灼かれながら私を飾る首飾りはおまえを縛る鋼鉄の鎖〜♪」
「アナザァ!!? 元ラスボスキャラだからってどうしてそんな歌をチョイスするんだ!!? どうせならもっと楽しい歌にしてくれぇぇぇ!!?」
何やら不吉な歌を歌うアナザに、ゼツは必死になって叫んだ。
「…呪いが篭りそうだな」
「ああ、絶対に食べたくはないな…」
何処か暗い顔をしながら、オルガとリクは思った事を呟く。
それはローレライも同じなのか、すぐに顔を逸らして今度はシオンに目を向けた。
「シオンも誰からか習いましたか?」
「もちろん! あたしはサイクスから習って来たよ!」
「サイクス、か…?」
「いや、シャオの話ではあっちのサイクスは料理が上手いって話だったから、あるいは…!!」
機関内の実力者である人物にリクは不安になるが、逆にクウは希望を寄せる。
対極の感情を持つ二人が固唾を呑んで見守っていると、紫苑も会話の中に入ってきた。
「それで、どのような事をしてきたのですか?」
「それはねぇ…じゃじゃーん!!」
そう言うと、シオンは通常よりもかなり大きなサイズの調理器具を取り出した。
「ヴィクセンからはお鍋! マールーシャはお玉を借りてきたよ!」
「それユニーク武器じゃないかっ!!?」
「しかもケーキ作りに一切関係ない器具だし!!!」
自信満々に見せるシオンに、すかさずリクとオルガが心から叫ぶ。
だが、シオンは聞いていないのかさらに荷物袋を漁った。
「そうそう。ゼクシオンのサンドイッチ、あとアクセルのピザにサイクスのバナナも持ってきたんだー。どう、美味しそうでしょ?」
「本当にヒロインなのか、あの子…?」
「…機関は一体何を教えていたんだ…!!」
ゼツが呆気に取られる横で、クウも痛そうに頭を押さえつけていたとか。