夢旅人誕生日企画・Part2 (後編)
そんなこんなで、とうとう与えられた一時間が残り僅かに迫る。
いよいよ料理人にとっては緊張する、審査員にとっては滅亡の時間が訪れた。
「はい、ここで終了ですっ!!」
「皆さん、料理は出来ましたか?」
紫苑とローレライが声をかけると、いち早く出来ていたのかシオンが皿を持って近づいた。
「ハーイ! あたしはチョコケーキ作って見たよー」
((((もはや石炭じゃねえか))))
シオンの持ってる皿に乗った両手で持てるぐらいの黒い塊に、思わず四人は率直な感想を心の中で入れる。
「私はちょっと捻って、フルーツケーキにしてみたわ」
((((何このゲテモノ料理?))))
続いてアナザが持ってきたさまざまな濁った色の楕円系の固体形状物に、四人は引いてしまう。
「アタシはシフォンケーキ! 美味しそうでしょ!?」
((((何か突き出ているんですけどっ!?))))
アーファが持っているふわふわのスポンジケーキには、何やらスイカやアボカド、更には魚や肉の骨だけでなく鉄の棒やら壁の破片やらが埋め込まれている。
「私はシンプル差を強調してチーズケーキよ」
((((形は一番いい…けど、どうしてこんな色になるぅ!!?))))
最後にスピカが見せたのは、見た目は美味しそうな…毒々しい七色のチーズケーキだった。
こうして完成したケーキを審査員達の前に置くと、笑顔で言った。
「「「「さっ、みんな食べて?」」」」
死の宣告とも言える言葉に、ゼツはゆっくりとクウに目を向けた。
「こ、ここは年の高い順で…!!」
「先に俺から食べろと!? 普通は低い順だろ!?」
「なら、公平にじゃんけんで…!!」
「いや、それだと――!!」
どうにかオルガが別の案を出そうとするが、リクに止められてしまう。
こうして犠牲の押し付け合いが始まる中、黙って見ていたスピカが手を上げた。
「――『バハムート零式』」
その言葉と共に、彼女達の背後に何かが落ちる。
男四人が目を向けると、そこには通常よりも巨大で神々しい竜が雄叫びを上げていた。
「ス、スピカさん…!!? 確か、そんな【召喚】使えない筈では…!!?」
「そんな事はどうでもいいわ。それよりも…――誰でもいいから、早く食べて頂戴? 全員『テラフレア』受けたい?」
ガタガタと震えるクウに言い付けるなり、攻撃開始の合図を放とうとするスピカ。
もはや考える時間など与えられないと悟り、クウは即座にゼツを見た。
(だ、誰でもいい!! この状況をどうにか打破するんだっ!!)
(でもどうやって!? 料理を攻撃したら、確実にあの竜の餌食になるぞ!?)
(だからと言って、このままでも餌食は確実だ…!? 誰か一人、犠牲になって食べるしかないんじゃないのか…!?)
(そうだな…誰か一人を、犠牲に…――待て、まだ手は残ってる!!)
(((本当かっ!!?)))
オルガに同意するように言っていたが、途中でリクは何かを思いつく。
三人がすぐに目で問うと、リクは一つ頷いて目を閉じる。
すると、リクの周りでさまざまなスピリット達が現れた。
「きゃあ!?」
「何、この動物!?」
突然登場したワンダニャンやコウモリバットなどに驚くアナザとアーファ。
それを見て、リクは若干卑屈った笑顔を見せた。
「わ、悪いな! 駄目だろー? 食べたいからって勝手に出てきたら…!!」
「キュ!?」
「キー!?」
リクの言葉に批判するように、それぞれ首を振ったり嫌そうな鳴き声を上げるスピリット達。
そんな光景に、やりたい事が分かったのかオルガとゼツは即座に作ったケーキを持った。
「か、可愛いなぁこいつら! そうだ、アーファのケーキ食べるか!? いいよな、アーファ!?」
「アナザ、一緒にこいつらに食べさせないか!? どう見てもお腹空いてそうだしさ!!」
「でも、本当に可愛いわね…さあ、遠慮なくお食べ?」
「あたし、一度でいいからドリームイーターにエサやりしたかったんだー!! はい、美味しいよー?」
オルガとゼツの言葉に共感したのか、スピカとシオンもケーキを持ってスピリットに餌付けする。
だが、スピリットもバカではない。危険な物質だと見抜き、すぐさま逃げ出そうとするのだが…。
「逃げるなよ、お前ら?」
「そうそう。主人の言う事はちゃーんと聞けよ?」
いち早く、クウとリクが先回りしてそれぞれ輝かしい笑顔で武器を見せつける。
まるでどこぞのラスボスのような姿に、スピリット達も怯んでしまう。
「ゼツ、回復アイテムの用意は?」
「ああ、スタンバイは出来てる」
逃げられないスピリット達に、追い打ちをかける様にオルガとゼツが用意された回復アイテムを持ちだす。
じりじりと暗黒物質を持って不気味な笑みで近づく四人に、スピリット達は悲鳴とも言えぬ鳴き声を上げたとか上げなかったとか…。
「…どうにか、完食したな…」
「被害が凄まじいがな…」
全ての回復アイテムを使い切り、リクとゼツは肩で息をする。
そんな二人の前には、辛うじて生きているスピリット達が山のように積み重なっていた。
「それにしても、あんなに食べてくれるなんて作った甲斐があったよね〜」
「ええ、また食べさせたいくらいだわ」
尚、この現状を作り出したアーファとアナザは上機嫌で笑っている。まったく料理によって齎される被害に対しての自覚が無いのが恐ろしい。
とにかく、尊い犠牲達に審査員達が黙祷を送るとオルガとクウが背を向けた。
「じゃあ、今日はこれで解散と…」
「んじゃま、お疲れ様〜」
そうして、それぞれの場所に帰ろうとした。
だが…。
「あら? どうしてそうなるの?」
「そうだよ、まだみんな食べてないじゃない」
「「「「ハイ?」」」」
思わぬスピカとシオンの言葉に、四人は目を丸くして振り返る。
すると、アーファとアナザも一つの小皿を取り出した。
「ほら、こんな事あろうかと皆の分はちゃーんと残してるよ!」
「まだ審査もしてないでしょ? ちゃんと食べて決めなさい」
そう言って差し出したのは、四人が作ったケーキの一切れサイズの物体だ。
回避した筈の危機の襲来に、全員は顔を真っ青にさせた。
「そ、そんな…!?」
「お、おい…!? 回復アイテムは…!?」
リクが絶望する中、クウは即座にオルガとゼツを見る。
しかし、二人は希望を打ち消すように首を横に振った。
「駄目だ…あいつらに全部使って、もう一つも残ってない…!!」
「もう、終わった…」
ゼツが言い終わると共に、それを肯定するように彼女達から只ならぬオーラが宿り出した。
「そうそう…」
「食べなかったら…」
「どうなるか…」
「分かってるわね?」
アーファはグローブを、アナザは刀を、シオンはキーブレードを、スピカは闇の細剣を取り出して攻撃の構えを見せる。
この回避不可能の状況に、男性陣に残された選択は覚悟を決める事だった。
「最後の最後で、このオチ…」
「覚悟…決めるしかないな」
「に、逃げるなよ…?」
「逃げる気なら、こんな事しないっての…」
オルガは心剣を、ゼツは左の拳を握り、リクは闇の力を高め、クウはキーブレードを取り出した。
「行くぞ…――神威開眼っ!!!」
「シェルリア、俺に力をっ!!!」
「闇よっ!!!」
「ネタバレ最終強化ぁ!!!」
それぞれの力を解放すると共に、四人に光と闇が包み込む。
そうしてオルガの手には『ベルゼビュート・ゼロヴァ』が、ゼツの周りにはレーヴァテイルの使うヒュムノス語の文様が帯となって身を包み、リクはDモードとなっており、クウは…ネタバレになるので言えませんが、かなり強い力を纏っています。
こうして出来る限りの強化をしおえると、目の前にある最凶の物体にフォークを突き刺し…。
「「「「せーのぉ!!!」」」」
一気に口の中に放り込んだ。
「「「「……ぐるおがはぁあああああああああああっ!!!??」」」」
直後、何とも言えぬ悲鳴が四人の口から吐き出され、スピリット達のようにその場に倒れてしまう。
やがて口から魂が抜ける四人に、さすがの紫苑も苦笑を浮かべた。
「…どうやら、誰も耐えられなかったみたいですね」
「そうですね。さて、今回の誕生日企画は如何でしたか?」
「合同編に向けて本編では最終回もまじか。これからも夢旅人、そしてNANAさんの作品をよろしくお願いします」
「それでは、我々の作品を呼んで下さる読者の皆さん。また何処かでお会いしましょう」
最後にローレライがそう言って手を振ると、紫苑も同じく手を振る。
その後ろでは、今にも天国に昇ろうとする男性陣達を尻目に楽しそうに今回の料理の感想を述べる料理人達がいたとかいなかったとか…。
いよいよ料理人にとっては緊張する、審査員にとっては滅亡の時間が訪れた。
「はい、ここで終了ですっ!!」
「皆さん、料理は出来ましたか?」
紫苑とローレライが声をかけると、いち早く出来ていたのかシオンが皿を持って近づいた。
「ハーイ! あたしはチョコケーキ作って見たよー」
((((もはや石炭じゃねえか))))
シオンの持ってる皿に乗った両手で持てるぐらいの黒い塊に、思わず四人は率直な感想を心の中で入れる。
「私はちょっと捻って、フルーツケーキにしてみたわ」
((((何このゲテモノ料理?))))
続いてアナザが持ってきたさまざまな濁った色の楕円系の固体形状物に、四人は引いてしまう。
「アタシはシフォンケーキ! 美味しそうでしょ!?」
((((何か突き出ているんですけどっ!?))))
アーファが持っているふわふわのスポンジケーキには、何やらスイカやアボカド、更には魚や肉の骨だけでなく鉄の棒やら壁の破片やらが埋め込まれている。
「私はシンプル差を強調してチーズケーキよ」
((((形は一番いい…けど、どうしてこんな色になるぅ!!?))))
最後にスピカが見せたのは、見た目は美味しそうな…毒々しい七色のチーズケーキだった。
こうして完成したケーキを審査員達の前に置くと、笑顔で言った。
「「「「さっ、みんな食べて?」」」」
死の宣告とも言える言葉に、ゼツはゆっくりとクウに目を向けた。
「こ、ここは年の高い順で…!!」
「先に俺から食べろと!? 普通は低い順だろ!?」
「なら、公平にじゃんけんで…!!」
「いや、それだと――!!」
どうにかオルガが別の案を出そうとするが、リクに止められてしまう。
こうして犠牲の押し付け合いが始まる中、黙って見ていたスピカが手を上げた。
「――『バハムート零式』」
その言葉と共に、彼女達の背後に何かが落ちる。
男四人が目を向けると、そこには通常よりも巨大で神々しい竜が雄叫びを上げていた。
「ス、スピカさん…!!? 確か、そんな【召喚】使えない筈では…!!?」
「そんな事はどうでもいいわ。それよりも…――誰でもいいから、早く食べて頂戴? 全員『テラフレア』受けたい?」
ガタガタと震えるクウに言い付けるなり、攻撃開始の合図を放とうとするスピカ。
もはや考える時間など与えられないと悟り、クウは即座にゼツを見た。
(だ、誰でもいい!! この状況をどうにか打破するんだっ!!)
(でもどうやって!? 料理を攻撃したら、確実にあの竜の餌食になるぞ!?)
(だからと言って、このままでも餌食は確実だ…!? 誰か一人、犠牲になって食べるしかないんじゃないのか…!?)
(そうだな…誰か一人を、犠牲に…――待て、まだ手は残ってる!!)
(((本当かっ!!?)))
オルガに同意するように言っていたが、途中でリクは何かを思いつく。
三人がすぐに目で問うと、リクは一つ頷いて目を閉じる。
すると、リクの周りでさまざまなスピリット達が現れた。
「きゃあ!?」
「何、この動物!?」
突然登場したワンダニャンやコウモリバットなどに驚くアナザとアーファ。
それを見て、リクは若干卑屈った笑顔を見せた。
「わ、悪いな! 駄目だろー? 食べたいからって勝手に出てきたら…!!」
「キュ!?」
「キー!?」
リクの言葉に批判するように、それぞれ首を振ったり嫌そうな鳴き声を上げるスピリット達。
そんな光景に、やりたい事が分かったのかオルガとゼツは即座に作ったケーキを持った。
「か、可愛いなぁこいつら! そうだ、アーファのケーキ食べるか!? いいよな、アーファ!?」
「アナザ、一緒にこいつらに食べさせないか!? どう見てもお腹空いてそうだしさ!!」
「でも、本当に可愛いわね…さあ、遠慮なくお食べ?」
「あたし、一度でいいからドリームイーターにエサやりしたかったんだー!! はい、美味しいよー?」
オルガとゼツの言葉に共感したのか、スピカとシオンもケーキを持ってスピリットに餌付けする。
だが、スピリットもバカではない。危険な物質だと見抜き、すぐさま逃げ出そうとするのだが…。
「逃げるなよ、お前ら?」
「そうそう。主人の言う事はちゃーんと聞けよ?」
いち早く、クウとリクが先回りしてそれぞれ輝かしい笑顔で武器を見せつける。
まるでどこぞのラスボスのような姿に、スピリット達も怯んでしまう。
「ゼツ、回復アイテムの用意は?」
「ああ、スタンバイは出来てる」
逃げられないスピリット達に、追い打ちをかける様にオルガとゼツが用意された回復アイテムを持ちだす。
じりじりと暗黒物質を持って不気味な笑みで近づく四人に、スピリット達は悲鳴とも言えぬ鳴き声を上げたとか上げなかったとか…。
「…どうにか、完食したな…」
「被害が凄まじいがな…」
全ての回復アイテムを使い切り、リクとゼツは肩で息をする。
そんな二人の前には、辛うじて生きているスピリット達が山のように積み重なっていた。
「それにしても、あんなに食べてくれるなんて作った甲斐があったよね〜」
「ええ、また食べさせたいくらいだわ」
尚、この現状を作り出したアーファとアナザは上機嫌で笑っている。まったく料理によって齎される被害に対しての自覚が無いのが恐ろしい。
とにかく、尊い犠牲達に審査員達が黙祷を送るとオルガとクウが背を向けた。
「じゃあ、今日はこれで解散と…」
「んじゃま、お疲れ様〜」
そうして、それぞれの場所に帰ろうとした。
だが…。
「あら? どうしてそうなるの?」
「そうだよ、まだみんな食べてないじゃない」
「「「「ハイ?」」」」
思わぬスピカとシオンの言葉に、四人は目を丸くして振り返る。
すると、アーファとアナザも一つの小皿を取り出した。
「ほら、こんな事あろうかと皆の分はちゃーんと残してるよ!」
「まだ審査もしてないでしょ? ちゃんと食べて決めなさい」
そう言って差し出したのは、四人が作ったケーキの一切れサイズの物体だ。
回避した筈の危機の襲来に、全員は顔を真っ青にさせた。
「そ、そんな…!?」
「お、おい…!? 回復アイテムは…!?」
リクが絶望する中、クウは即座にオルガとゼツを見る。
しかし、二人は希望を打ち消すように首を横に振った。
「駄目だ…あいつらに全部使って、もう一つも残ってない…!!」
「もう、終わった…」
ゼツが言い終わると共に、それを肯定するように彼女達から只ならぬオーラが宿り出した。
「そうそう…」
「食べなかったら…」
「どうなるか…」
「分かってるわね?」
アーファはグローブを、アナザは刀を、シオンはキーブレードを、スピカは闇の細剣を取り出して攻撃の構えを見せる。
この回避不可能の状況に、男性陣に残された選択は覚悟を決める事だった。
「最後の最後で、このオチ…」
「覚悟…決めるしかないな」
「に、逃げるなよ…?」
「逃げる気なら、こんな事しないっての…」
オルガは心剣を、ゼツは左の拳を握り、リクは闇の力を高め、クウはキーブレードを取り出した。
「行くぞ…――神威開眼っ!!!」
「シェルリア、俺に力をっ!!!」
「闇よっ!!!」
「ネタバレ最終強化ぁ!!!」
それぞれの力を解放すると共に、四人に光と闇が包み込む。
そうしてオルガの手には『ベルゼビュート・ゼロヴァ』が、ゼツの周りにはレーヴァテイルの使うヒュムノス語の文様が帯となって身を包み、リクはDモードとなっており、クウは…ネタバレになるので言えませんが、かなり強い力を纏っています。
こうして出来る限りの強化をしおえると、目の前にある最凶の物体にフォークを突き刺し…。
「「「「せーのぉ!!!」」」」
一気に口の中に放り込んだ。
「「「「……ぐるおがはぁあああああああああああっ!!!??」」」」
直後、何とも言えぬ悲鳴が四人の口から吐き出され、スピリット達のようにその場に倒れてしまう。
やがて口から魂が抜ける四人に、さすがの紫苑も苦笑を浮かべた。
「…どうやら、誰も耐えられなかったみたいですね」
「そうですね。さて、今回の誕生日企画は如何でしたか?」
「合同編に向けて本編では最終回もまじか。これからも夢旅人、そしてNANAさんの作品をよろしくお願いします」
「それでは、我々の作品を呼んで下さる読者の皆さん。また何処かでお会いしましょう」
最後にローレライがそう言って手を振ると、紫苑も同じく手を振る。
その後ろでは、今にも天国に昇ろうとする男性陣達を尻目に楽しそうに今回の料理の感想を述べる料理人達がいたとかいなかったとか…。
■作者メッセージ
夢旅人様の誕生日作品、如何でしたでしょうか?
今回はとある漫画からアイデアを取り入れたので、かなりのギャグテイストで詰めましたが楽しんで頂ければこちらとしても幸いです。
最後に、私から夢さんに一言…お誕生日、おめでとうございます! よき一年でありますように!
今回はとある漫画からアイデアを取り入れたので、かなりのギャグテイストで詰めましたが楽しんで頂ければこちらとしても幸いです。
最後に、私から夢さんに一言…お誕生日、おめでとうございます! よき一年でありますように!