クリスマスの戦い (後編)
「ク、クウ…いいのか?」
「あの二人の腕前を見くびるなって。さーて…二人が作ってる間に、時間稼ぎするぞっ!!」
パン、と拳を掌で叩くなり、アンチブラックコートに向かって駆け出すクウ。
アンチブラックコートが腕を剣のように変えるが、その後ろでエンが躍り出ていた。
「遅い! 『トワイライトエッジ』!」
ダブルセイバーを双剣に変え、光と闇の斬撃を喰らわせる。
この不意打ちにアンチブラックコートが闇を纏って反撃を行う。だが、エンはそれを後ろに跳んで避けた。
「最終章での新技、いち早く披露させて貰うぜ! 『ヘルズナックル』!」
「『ダークインパルス』!」
「手伝うわ! 『ゴーストドライブ』!」
反撃を終えたアンチブラックコートにクウが闇を纏った拳をぶつけて怯ませると、テラは闇を纏って床下に潜り、アクアは瞬間移動する。
そして、アンチブラックコートの足元で巨大な闇の腕を突き出して攻撃し、アクアは周りを囲む様に次々と光の刃で突き刺して攻撃する。
やがて敵を串刺しにしてアクアが離れた場所でキーブレードを持ちなおすと、光の刃が弾けて爆発を起こす。だが、これらの猛攻でもアンチブラックコートはまだ消えなかった。
「持ってきたわよ、クウ!!」
その時、階段を駆け上がる音と共に何やら異臭が四人の鼻につく。
振り返ると、スピカの持ってきた皿の上に何やら赤紫色をしたドロドロの物体が乗せられていた。
「い、何時にも増して悍ましいわね…!?」
「後はあいつの動きを――」
アクアが顔を引き攣らせる間に、クウがアンチブラックコートを見ると。
「『フリーズ・ゼロ』」
エンの魔法が発動し、何と顔の部分以外が全て凍りつく。
氷によって拘束されたアンチブラックコートに、エンは横目でクウを見た。
「これでいいのでしょう?」
「ああ!! おらぁ、喰らえぇぇぇ!!!」
即座にスピカから暗黒物体の皿を取り上げるなり、クウは思いっきり投げつける。
ビシャリ、と顔面に料理が飛び散ると、アンチブラックコートは全身を震わせながら甲高い悲鳴らしき声を上げながらそのまま消滅してしまった。
「どうだぁ!! さすがのナイトメアも暗黒兵器には敵わないようだなぁ!!」
「「あん…こく…!?」」
クウが胸を張って腕を組んでいると、後ろから二人分の青筋が浮き立つ音が聞こえる。
だが、さまざまな罠を掻い潜った後にボスとのバトルで心身共に疲れたのか、他の人も気づかない。
「何がともあれ、これでようやくプレゼントを渡せるな…」
「ええ、二人の料理には感謝しないとね」
「リヴァル!! 今お父さんが行くからな!!」
テラとアクアがそれぞれ袋を持ち直し、エンも拳を握って親バカ全開となる。
そうして四人はいよいよ子供部屋の前へと。
「「ちょっと待ちなさい」」
冷たく響く言葉をかけられ、四人は思わず足を止める。
恐る恐る振り返ると、黒いオーラを纏ったウィドとスピカが剣を握りながら顔を俯かせていた。
「私達の料理をそんな風に言うんのは失礼じゃないですか…?」
「他の人も、反論しないのを見る限り同意してるって事でいいのよね…?」
怒りで肩を震わせながら、四人に向かって刃を光らせる姉弟に恐怖を感じない訳が無かった。
「「「「あ…あはは…っ!?」」」」
四人は顔を引く付かせ、どうにか作り笑いを浮かべる。
直後、背負っていた袋を部屋の前に捨てると子供部屋を通り過ぎる様に二人から逃げ出した。
「「待ちなさーーーーいっ!!!」」
―――時間は経ち、朝日が昇った頃…。
「ソラ、起きて!!」
「キュ〜!」
二人分の声と共に、ソラの体が揺さぶられる。
眠そうに瞼を擦ると、目の前にはカイリとワンダニャンが顔を覗き込んでいた。
「ふわぁ…どしたの、カイリ…?」
「ほら見て、プレゼント!! 部屋の前に大量に置いてあったの!!」
「え!? マジ!?」
カイリの言葉に飛び上がると、ここにいる全員がプレゼントの箱を持っている。
ソラも近くにあった大き目の箱の包装紙を破ると、そこには欲しかったプレゼントがあった。
「うわぁ! ずっと欲しかったP○3だ!! サンタさん、ありがとー!!」
「これで、リメイク版KHが出来るね!」
来年のKHに向けての準備に喜ぶソラとカイリに、リクが近づいて声をかけた。
「ところで、ソラ。昨夜は魘されてたのか? 凄い顔で寝ていたが…」
「何だろ…なんか、変に寒気がする夢をみた気分…」
「もしかして風邪引いたのか?」
ヴェンも心配そうに顔を覗かせていると、元凶であるオパールが苦笑いを浮かべた。
「まあまあ、いいじゃない! さ、早く朝食でも作りに――」
どうにか話を誤魔化そうと、オパールはドアを開けて出て行ってしまう。
だが、途中で言葉が止まってしまい、すぐに他の人も部屋を出た。
「オパール、どうし…エ?」
リリィが固まったオパールに声をかけるが、途中で止まってしまう。
何故なら、階段の下は家具や物がゴチャゴチャに散乱しており、床や壁は武器や魔法を使ったのか破壊されている。
さらに、黒焦げの人影が四人突っ伏しるようにその中で倒れていた。
「テラ、アクアァ!!? しっかりしてぇぇぇ!!?」
「クウさん!? どうしてこんなボロボロに!?」
即座にヴェンとレイアが駆け寄る中、シャオは目を丸くしてこの惨状を見ていた。
「…なに、これ?」
「…ちょっと、やりすぎたかしら?」
半分以上の原因が姉弟だと言う事も知らず、反省するオパールだった。
■作者メッセージ
これにて、クリスマスの番外編は終わりです。
執筆の時間も少なかったので、微妙なオチになってしまったかもしれません。そこはすみません。
それでは、良いクリスマスを。
執筆の時間も少なかったので、微妙なオチになってしまったかもしれません。そこはすみません。
それでは、良いクリスマスを。