新年早々ドタバタなお正月・2
「と…とにかく、ゲームを開始しましょう。まずはシリーズ第一作目である【KH】のカルタですぅ…」
制裁が終わり、半分ほど包帯を巻いて松葉杖で身体を支えながら話を進める作者。
初っ端からかなりの重傷を負うが、キャラ達は気にする事無くチームを作って作戦会議を始めた。
「さて、俺達のチームは誰が出る?」
「ハイハイハーイ! 俺、俺がやりたーい!!」
テラが意見を求めるなり、待ってましたと言わんばかりにソラが勢いよく手を上げる。
やる気満々のソラに、リクは訝しげな目を向けた。
「ソラが? 出来るのか?」
「いいんじゃないかな? だって、KHはソラが主人公なんだし。それに私もやるから、ソラのフォローは任せて!」
「よし。頼むぞ、カイリ」
「俺そんなに信用無いの!?」
続いてカイリが手を上げると、リクは安心したように態度を変える。
二人の会話に思わずソラが叫ぶ中、別のチームも作戦会議をしていた。
「んで、誰が最初に出るんだ?」
「そうねぇ…最初だから、それなりにカルタが出来る人がいいわね」
「だったら、俺がいくか」
フェンの質問にスピカが考え込んでいると、クウが振袖を軽く捲って前に出た。
「クウが? 大丈夫なんですか?」
「バーカ、俺は格闘家だぞ? 鍛えられた俊敏力と反射神経を舐めるなよ?」
ウィドが不安そうに聞くと、クウは鼻を鳴らす。
こうして代表一人が決まっていると、続けて立候補する人物が現れた。
「では、私も行きましょうか」
「エンさんが!?」
何と敵キャラ内では頂点に立つエンが立候補し、思わずレイアが驚いてしまう。
それは他の人も一緒でポカンと目や口を開かせていると、エンは静かに微笑んだ。
「任せて下さい…――リヴァル〜、お父さんがお年玉プレゼントするからな? お父さんの勇姿見ていてくれよ〜?」
「ばぶ!」
(((出たよ、親バカが…)))
デレデレと息子の頭を撫でるエンに、思わず心の中で呆れを見せるメンバー達であった。
代表者も決まり、作者もカルタも並び終える。
作者は読む方のカルタの束を手に取ると、正座して代表者たちを見回した。
「さあ、手は膝の上に付けてくださいね。では行きますよ…」
ソラ、カイリ、クウ、エン、ゼクシオン、ルクソードの面子を見回し不正が無いのを確認すると、カルタの束に目をやる。
周りの空気が緊張で張り巡らせる中、作者は口を開いた。
《キーブレードの勇者になったら、子供の「ふっ!」》
読んでいる途中で黒い手がカルタの一枚を捉える。
そのままカルタを取ると、ゼクシオンは何処か嬉しそうにしていた。
「ざっとこんな物ですね」
「やるな、ゼクシオン」
誰よりも早くカルタを取ったゼクシオンにルクソードも賞賛の言葉を送る。
他の人達は悔しそうにしているが、一人だけ痛そうに胸を押さえる人物がいた。
「………」
「気持ちは痛い程分かるぞ、ホンモノ」
「よくよく思い返してみれば、あんたってこの時敵だったわね…」
敵になりかけていた頃のセリフに重い空気を纏うリクにルキルが優しく肩に手を置く中、オパールは苦笑いを浮かべる。尚、どの時に言うセリフかは是非ともプレイしてその目でお確かめください。
さて、一部が何とも言えない空気になるが、作者は構わず次のカルタに目を通した。
《いいだろ、勝った方がカイリと「ハイィ!?」》
作者が次のカルタを読み上げるなり、ソラは焦ったように手を伸ばす。
そして、目当てのカルタに頭から突っ込んでいった。
「ぜぇ…ぜぇ…!!」
「ソラ!? もう、頭からスライディングしてまで取る事ないでしょ!?」
派手すぎるソラの行動に、すぐにカイリが注意する。
だが、ソラは聞いてないのか顔を真っ赤にして取ったカルタを必死で隠そうとする。この様子に、一部の人達が思わず笑ってしまった。
「男の子って、こうして見ると可愛いわね」
「ああ、俺も応援したくなるよ」
アクアとテラもソラの行動の理由に気づいたのか、クスクスと温かい目で見ている。
今もソラが慌てふためくが、作者は無視するようにカルタを読み上げた。
《ソラ、行ってこ「頂きぃ!」》
読み上げたカルタに、今度はクウが反応して手を伸ばした。
「させぬぅ!!」
「どわぁ!?」
だが、隣にいたエンが突如ダブルセイバーを取り出して薙ぎ払うようにクウを遠くに吹き飛ばす。
突然の行動に他の人達も呆気に取る中、エンは平然とカルタを取りリヴァルに振り向いた。
「どうだ、リヴァル!! お父さん取った「待てやゴラァァ!!」ぐっ!?」
キラキラと目を輝かせるエンに、吹き飛ばされたクウが少々動きにくい和服を着ているにも関わらず思いっきり蹴りを入れる。
怒りも合わさった攻撃にエンが動きを止めると、クウはそのまま襟首を掴んで睨みつけた。
「おい、てめぇ…何で俺に攻撃するんだよ? そこまでして子供にいいカッコ見せたいってか、えぇコラ?」
「ふん、貴様のようにむやみやたらと女性に手を出す下心丸出しのジゴロよりも何百倍もマシでしょう?」
「んだと?」
「やるか?」
何やら不穏な空気に変わり、二人はバチバチと激しく睨みつける。
さすがにこのままではいけないと感じたのか、作者が恐る恐る声をかけた。
「あ、あのぉ…? お二人とも、ここは冷静に…」
「「部外者は黙ってろっ!!! 闇に葬られたいかぁ!!?」」
「ハ、ハイィ!!?」
二人分の怒鳴り声に、作者はビクリと身を縮ませる。
完全に喧嘩腰の二人に、スピカとセヴィルは溜息を吐いて頭を押さえた。
「嫌な予感がするわね…」
「俺も同じ気持ちだ、スピカ…」
その結果―――
《ソラは変わら「取った「やらせるかぁ!!」ごふぅ!?」》
《キングダムハーツよ、わた「これで「沈めよ親バカがぁ!!」ぬぅ!?」》
《繋がるここ「「どけええぇ!!」」》
作者がカルタを読み上げる度に、どちらかが手を伸ばすたびに片方が妨害と言う名の攻撃を繰り出す。
そうして対抗する間に、目を付けたカルタは四人の誰かに取られてしまう。
もはや悪循環に落ちてしまった光景に、同じチームのメンバーも言葉を失った。
「何ですか、このありさま…」
「もはや、犬猿の仲ってレベルではないですね」
「混ぜるな危険だよ…」
ウィド、クォーツ、シャオが思い思いに呟くが、状況は何も変わらず波乱な光景だけが続いていた。
「えーと、これにて【KH】のカルタは終了です。けど…お二方、大丈夫です?」
全てを読みあげ、チームごとで取ったカルタを数え終えると作者はある二人を見る。
そこでは、ボロボロの状態で四つん這いで肩で息をしているクウとエンがいた。
「「……ぁー……」」
「精根尽き果ててるわね、こいつら」
「ったく、変な争いで俺達の足引っ張りまくってんじゃねーっての」
声も出ない程疲れ切った二人に、リリスとフェンが軽蔑の眼差しを送る。まあ、二人の所為で殆どカルタが取れなかったのだから当然だろう。
このまま変な空気になってはたまらないと、作者はクウとエンをレイアに任せて次のカルタを取り出した。
「とにかく、次は【COM】のカルタです。準備の間に、代表二人決めてくださいねー?」
そう言って作者が床にカルタを並べ始めると、チームごとで作戦会議が始まった。
「さて、誰を選べばいいものか…」
「ゼクシオンとルクソードのおかげである程度カードは稼ぎましたが、負けているのは事実です」
ゼムナスとサイクスが考えていると、ある人物が挙手をした。
「だったら俺が出るぜ。【COM】と言えば俺だろ?」
何処か自信ありげに言ったのは、【COM】からの登場人物であるアクセルだ。
そんなアクセルに、続いて手を上げる人物がいた。
「ならば、私も参加しよう。先輩としての強さ、ここで見せ付けてくれよう」
同じく自信ありげにヴェクセンが前に出るが、一部のメンバーは嫌そうな顔を浮かべた。
「えー? あんたがー?」
「ロクサス、シオン。次の勝負であなた達に賭けます。是非とも頑張ってくださいね」
「待てぇい!! 私ではそんなに不満だと言うのかぁぁぁ!!?」
ラクシーヌとゼクシオンの言葉に、ヴィクセンが怒りを露わに怒鳴り散らす。
【13機関チーム】が騒がしくなる中、【オリキャラチーム】は頭を唸らせていた。
「さて、どうする?」
最下位の状況を打破しようとセヴィルが意見を求めていると、一人の人物が手を上げた。
「ハーイ! あたし、あたしが出るー!!」
「オパールが?」
元気よく手を上げるオパールに、スピカが首を傾げる。
オパールは一つ頷くと、腰に手を当てて胸を張った。
「だって、【COM】と言えばリクが主役を務めたりするでしょ? だったら、パートナーであるあたしが――」
「それなら、私も出る!! 本編では恋人である私の方が、ぜーったいオパールよりも役に立つから!!」
オパールの言葉を遮る様に、リリィが大声を上げて立候補する。
直後、オパールから何かが凍りつく音が響く。だが、それを表に出さす笑顔を張り付けてリリィを見た。
「リリィは経った数日間しか一緒にいなかったじゃない。ここは、本編で一緒に旅してきたあたしの方が――」
「そうは言うけど、結局振られてるでしょ!? こっちはキスまでしてるんだし、絶対私の方がいい!!」
「いーえ、あたしがやる!!」
「ううん、私が出る!!」
『二人で出る』と言う考えは何処へやら。両者一歩も引かず、先程のクウとエンのように睨みあう。
これではさっきのようになってしまうと感じたのか、すぐにクォーツが止めに入った。
「ま、まあ落ち着け二人とも」
「そうですよ。二人には、こちらで決めて貰います」
さらにウィドも言うと、細く切った二枚の紙を手に握って差し出した。
「「これ…くじ引き?」」
「さっきのクウとエンのように喧嘩をされてはたまりませんからね。さ、恨みっこなしで引いてください」
「「…分かった」」
渋々ながらも了承すると、それぞれの紙を掴んで一気に引いた。