ハッピーハロウィンinビフロンス Part2
次に子供組一行が来たのは、下層にある談話室。
そこでは、神無・ツヴァイ・神月・ヴァイ・紗那・菜月・凛那・ローレライ・王羅・ゼロボロス・シンメイ・ヴァイロンがいた。(無轟・紫苑はお休み)
「よう、来たな! 待ってたぜ!」
「神無さん、トリック・オア・トリート!!」
「お菓子くれなきゃ悪戯するよー!」
心剣士メンバーの一員であるオルガとアーファが声をかけると、すかさず紗那とツヴァイがお菓子の入った袋を取り出した。
「はいはい、ちゃーんと用意してるわ」
「どうぞ、カップケーキよ」
「それと、わらわも特別に用意しておいたぞ」
「私達に伝わるレシピで作った、ドラゴンパンよ。ハロウィンに合わせて、カボチャの生地で作ってあるわ」
『『『やったー!!』』』
更にシンメイとヴァイロンの計らいで用意された竜の顔の形のパンに、全員が喜びの声を上げる。
子供達がそれぞれお菓子を貰っていると、不意に凛那が話しかけていた。
「それにしても、皆凄い衣装だな。ソラやアルマは自前だとして…残りのメンバーの衣装は全部オルガが作ったのか?」
「まあな! 素材から型作りまで全部やらせて貰ったぜ!!」
腕を組んで胸を張るオルガに、ヴァイは驚きの声を上げる。
「そうなの!? これだけの人数の衣装作るって、大変だったんじゃ!?」
「なんの! こうして皆でコスプレ出来る嬉しさに比べたら、それぐらいの苦労なんて全然さ!!」
「…本当にこの人が『神威開眼』出来る程の実力を持ってるの?」
このオルガの発言に、怪訝な表情を浮かべるアイギス。
そんな彼女と気持ちは一緒なのか、ペルセも呆れ気味にアーファにコソコソと話しかける。
「アーファさん、オルガさんって昔からこんな人だったっけ…?」
「うーん…昔はオシャレ等には興味あったけど、ここまで酷くは無かった筈…」
「それって、オルガさんのコスプレ好きは最近発症したって事ですか?」
「確かに、前にオルガさん達と旅した時はこう言った事ありませんでしたし…」
シンクの問いにイオンが答えていると、話を聞いていたゼロボロスがにやりと笑った。
「って事は、オルガは最近そう言った趣味を抑える封が無くなったって感じなんだな。それこそ、内側から何かが無くなったとか? ……って、お前らどうした?」
話している途中で、一部の心剣士メンバーの様子がおかしくなったのに気づくゼロボロス。
他の皆も首を傾げていると、紗那が隣にいる神月に目配せする。
「ねえ…神月」
「紗那…お前もそう思うか」
「オルガの趣味が表沙汰にならなかった理由…!」
アーファが肩を震わせると同時に、彼らは一斉にある人物に目を向けた。
(((ローレライのおかげ…!!?)))
「み、皆さん? どうして私の方を…?」
只ならぬ視線に気づき、ローレライは平然を出すが背中に冷や汗を掻く。
次の瞬間、何とアーファが涙目になってローレライの両手を握りしめた。
「ローレライ!!! お願い、オルガの中に戻ってー!!!」
『『『ええええぇぇーーーーーーーっ!!!??』』』
この発言に、オルガ達だけでなく関係の無いソラ達までもが絶叫を上げた。
「アーファさん、正気ですか!?」
「ローレライが俺に何したか覚えてるよな!? 目の前で俺の身体奪って意識を追いやったんだぞ!?」
「それ以前に、これ以上敵キャラ増やす気か!?」
王羅を筆頭にオルガと神無も考え直させようとするが、逆にアーファが睨み返す。
「何言ってるの!? 今のローレライは味方でしょ!? 融合して一つになれー!!」
「セリフがヴァニタスになってる!?」
思わずヴェンがツッコミを入れるが、それだけオルガのコスプレに対してストレスが溜まっていたようだ。
そんなアーファに、ローレライは申し訳なさそうに作り笑いを浮かべた。
「あのぉ…非常に申しにくいんですが、私がオルガの中に入たのは魂の存在だったおかげなんです。こうして肉体を手に入れた今、再びオルガの中に入る事は出来なくて…」
「そう言う事よ。諦めて頂戴」
ローレライに続く様に、ヴァイロンも呆れ気味にアーファを宥める。
本来、ローレライは大昔に肉体を失い魂だけの存在だった。再び世界に戻る為に自身の「器」となる存在を探し…目を付けたのがオルガだったと言う訳だ。
二人の説明に、どう言う訳かアーファは顔を俯かせた。
「それってさ、言い換えれば死んで生まれ変わったって事だよね?」
「ええ、まあ…そんな感じですね」
「そう。だったら…あんたを殺せばまたオルガの中に入れるって事よね…!!」
(((殺気っ!!?)))
アーファから滲み出る黒いオーラに、全員が気迫の正体を感じ取る。
その間にも、アーファは拳を上段に構えている。このままではまずいと、菜月が後ろから羽交い絞めにした。
「待て待て待てぇぇぇーーーー!!? アーファ、お前人殺しの十字架背負う気かぁ!!?」
「放せぇぇぇ!!! オルガのあの趣味にはもう耐えられないのよー!!!」
ジタバタと暴れるアーファに、話がついて行けずに成り行きを見守っていたリクとソラも止めに入った。
「とっ、とにかく落ち着いてくれ、な?」
「そ、そうだって! 過ぎた事をどうこう言ってもしょうがないだろ!?」
「う〜…!!」
KHのメイン主役二人の言葉が効いたのか、唸りながらも落ち着きを取り戻すアーファ。
どうにかこうにかで嵐が過ぎ去ったのを感じ、オルガは頭を下げた。
「二人とも、ありがとな…――そうだ! お礼と言っちゃ何だが今度一緒に女装でもしないか? メイド服とドレス衣装を送るから、それで記念写真を――」
「前言撤回だ。無理やりにでもローレライをオルガの中に入れるぞ」
「うん、了解」
一瞬で二人が黒いオーラを立ち上らせると、ローレライに向かってキーブレードを取り出した。
「ま、待ってください!? さっき言いましたよね、私は元からオルガの中に入っていたって――!?」
「知ってるか? キーブレードマスターなら他者から心取り出せるし、他の奴に心を植え付ける事も可能なんだぜ?」
「あなた達はこの段階ではキーブレードマスターではないでしょう!?」
「大丈夫! 【KH3】だと俺キーブレードマスターなってるって話だから!!」
「軽いネタバレ情報は止めてくれません!?」
「と言うか、こいつらゼアノートと同じ事しようとしてるぞ!?」
「ソラ、リク!? お願いだから考え直してー!!」
まるで人が変わってしまったかのようなリクとソラに、慌てて神無とカイリが止めていた時だった。
「――さっきから煩いぞお前達ぃぃぃ!!!」
一つの怒鳴り声と共に、大量の赤黒い刃が至る所に突き刺さる。
幸いにも誰も傷ついていないが、予想もしない攻撃に誰もが怯んでしまう。そんな中、少女の声が辺りに響いた。
「次に騒いだら、掠るでは済まさないわよ?」
目を向けると、そこにはウラドが心剣を持って睨んでいる。その隣ではウィドもまた腕を組んで睨んでおり、後ろにはテラ・アクア・クウが苦笑いを浮かべている。
「せ、先生…」
「どうして、ウラドもここに…?」
明らかに不機嫌な二人を見て、ルキルとアイギスが声をかける。
「ワタクシがあなた達にお菓子を渡す為に、彼らと待っていたの。それなのに急に騒がしくなったから来てみたら、何とまあくだらない理由だこと…」
「くだらない!? 女装されるのがくだらないって言うのか!?」
「そうだって!! 【2.5HD】も【KH3】の情報も出てるのに、そんなのされたら溜まった物じゃはぐぉ!!」
「ソラ!? いきなり何をうごぉ!?」
今起こった事を簡潔に説明すると、ウィドが口答えしたソラの頭を本で殴りつけ、更にリクを遠くに蹴っ飛ばしました。
「いい加減に黙らんかっ!!! 次のリマスターも新作も出せない身体になりたいかぁ!!?」
「「すみませんでした…!」」
先程のアーファとは比べ物にならないウィドの只ならぬ気迫に、ソラとリクは縮こまりながら謝るしかなかった。
だが、二人が騒がしかったにしては怒り方が尋常ではない。未だに二人を睨むウィドを見つつ、ルキルはクウ達に聞いた。
「先生…どうしてあんなにイライラしてるんだ?」
「あいつ、今現在仲間に不信感持ってるって言う敵に似た役だろ? そんな状態で本編進めずにこんな番外編書く作者に苛立ってな…」
「実際、待機してた部屋の中は凄くピリピリしてて…」
「正直、息が詰まったな…」
ため息交じりに訳を話すクウ、アクア、テラの表情が疲れているように見えるのは気の所為ではないだろう。
他の人も何も言えなくなる中、レイアはある事に気付いた。
「あのー、オパールさんは何処にいるんですか?」
「あいつは…『あたしを18歳って言う設定にした作者をボコってくる』って言って、そのままどっかに…」
『『『あぁ…』』』
クウの言葉に、全員(一部除く)の脳裏にその時の光景が嫌でも思い浮かぶ。きっと今頃、愛の暴走で酷い目に遭っている事だろう。
「話が逸れちゃったわね。さ、私達もお菓子を用意してるわ!」
この場の空気を変えようと、アクアは笑顔で大きめの箱を取り出す。
そうして中を開けると、何とアイスクリームで作ったホール状のケーキが入っていた。
「うわー! このケーキ、アイスで出来てるー!」
「凄いでしょ? ハロウィン用に作ったの」
「皆で切り分けて食べてくれ」
目を輝かせるヴェンに、アクアとテラがニコニコと笑う。
そんなケーキに乗せた板チョコを見ると、チョコペンで綺麗に【KH2.5HDよろしく!!】と書かれている。
「このチョコ、宣伝では…」
「言っちゃ駄目」
フィフェルの発言に、即座にアイギスが口を押える。
何がともあれ、ヴェンが代表でケーキを受け取っていると、ウラドがある物を取り出した。
「ワタクシからは、こちらのスコーンよ。紅茶と一緒に召し上がるといいわ」
そう言って、全員分のスコーンを取り出す。焼き立てなのか、湯気が漂って香ばしい匂いが鼻を擽る。
吸血鬼と言う事であまり期待してなかった事もあり、美味しそうなお菓子にレイアとカイリは歓声を上げた。
「良い匂いですね〜!」
「でも意外。吸血鬼だから、こう言ったイベントとか参加しないと思ってたけど…」
「あら? ハロウィンは人ならざる者達が現れる日でもあるのよ? 本来は子供を浚ったり魂を取ったりするらしいけど、ワタクシはそう言うのには興味ないから」
「興味が無くて、本当に良かった…」
率直なウラドの感想に、ヘカテーはボソリと思った事を呟く。
こうしてウラドからもお菓子を貰うと、アルマが声をかけた。
「あの…そろそろ、上の方に…」
「そうですね。次に行きましょう」
下層にいる全ての人達からお菓子を貰い、ハオスも頷く。
すると、ヴェンは笑顔でテラとアクアに声をかけた。
「テラ、アクア! 俺、他の人からもお菓子貰ってくるから!」
「行ってらっしゃい」
「ヴェン、気を付けてな」
保護者の優しい声を背に、子供達は次の目的地である中層へと向かって行った。