ハッピーハロウィンinビフロンス Part4
「ベルモンド、リヒター、ギルティからもドーナッツやプリンに飴玉を貰ったし、ようやく上層だね!」
「どんなお菓子貰えるんだろうな!」
魔方陣を経由して上層に着くなり、アーファとオルガが笑い合う。
え? どうして三人は抜かしたか? 出来れば大人の都合でお願いします。
「確か、広間で待つって事だけど…――あそこだな」
メモ紙を見ながらリクが探すと、少し先に広間の扉を見つける。
いよいよ待ちに待った神様のお菓子に、ソラとヴェンが一気に扉を開けた。
「トリック・オア・トリー…ト?」
「お菓子くれなきゃ……え?」
だが、部屋の中を見た途端、意気揚々としていた二人が固まってしまう。
他の人も不思議そうに中を覗くと、驚くべき光景が広がっていた。
「ようこそ、可愛い子供達。待ってたわ」
部屋の真ん中で、イリアドゥスが微笑みを浮かべている。
その周りでは、半神達が泡を吹いていたり、目を回してぶっ倒れていたり、備え付けの机に突っ伏していたり、血文字で床に「しぬ」と恐ろしい事を書いている。
予想していたのとは全然違う光景に、イオンとペルセが恐る恐るイリアドゥスに聞いた。
「あ、あのぉ…つかぬ事、お聞きしますが…」
「何が、あったんですか…?」
「さあ? どう言う訳か、みんな勝手に倒れてしまって。あなた達の為に作ったお菓子を試食して貰っただけなのだけれど」
イリアドゥス自身も訳が分からないと言った感じに首を傾げると、嫌な予感を感じつつもアルマが聞き返した。
「今、何て…?」
「私もハロウィンと言う日を楽しもうと思って、あなた達の為に自らお菓子を作ったの。これがそうよ」
そう言うなり、イリアドゥスは大きめのタッパーを取り出す。
その中には…得体のしれない液体がビチャビチャと音を立てて蠢いている。
ハートレスでもノーバディでもアンヴァースでもナイトメアでもない、明らかに生きた何かにシンクはどうにか口を開く。
「…何ですか、これ?」
「ラスクと言うモノよ」
「もう一回…いいですか?」
全身に冷や汗を掻きながらヘカテーも呟くと、イリアはキョトンとしながらも言い切った。
「ラスクよ」
(((これの何処がラクスーーーっ!!!??)))
全員は心の中で絶叫を上げながら再度ラスクらしきものを見る。
ラスクとは本来、パンを薄切り・または厚切りにして表面にバターを塗り砂糖を眩してカリカリに焼き上げるお菓子だ。間違っても、タッパーの中でヌルヌルと蠢く怪しい液体などではない。
「か、母様の料理より酷い…!?」
「ああ…先生の料理がマシに思える」
「アーファも相当だが、上には上がいたんだな…!!」
「オルガ、どう言う意味?」
これには青い顔で殺人料理人である身内を思い出すフィフェル、ルキル、オルガ。
失礼な発言にアーファが拳を握る中、イリアドゥスは平然と目の前でタッパーの蓋を開けた。
「そう言う事だから、はいどうぞ」
『『『うぐぅ…!!?』』』
蓋を開けた途端に襲い掛かる悪臭に、全員が血の気を引きながら鼻を摘まんだ。
(す、すごい臭い…!!)
(鼻が曲がって気持ち悪い…!?)
(吐きそう…!!)
(持ち帰る以前の問題ですよ…!! こんなの、よく半神達は食べれましたね…!!)
あまりにも酷い臭いにシャオ、アイギス、アルマ、イオンが目線で会話する。
「どうした? さっきから鼻を摘まんでコソコソ話して?」
何も話さなくなったメンバーにイリアドゥスが怪訝な目をする。そうしている間に、ラスクらしき物体はタッパーから半分程這い出てしまう。
もはや食べ物ではない。誰もがそう思っていると、突然ソラが手を上げた。
「お、俺! お菓子よりイリアに悪戯してみたいなー、なんて…!!」
『『『ソラ(さん)《父さん》!!?』』』
思わぬ発言に、全員が悲鳴に近い声を出す。約一名、何か別の言い方をしていたが今の状況では誰も気にしないだろう。
「お前何を考えてる!?」
「そうよ、相手は神様でしょ!?」
即座に幼馴染みであるリクとカイリが部屋の片隅に引っ張って説得するが、逆にソラは涙目で訴える。
「だって俺、あんなの食べたくないし持ちたくもない…!」
((それは同感だけど…))
さすがの二人もソラの意見に否定を出せずにいると、イリアドゥスがふむと考えだす。
「悪戯、か…――お菓子を渡せば悪戯しなくて済むと言う話だけど、そちらにも少し興味がある。いいわ、お菓子を貰わない場合の悪戯と言うのをやってみて頂戴」
「“やってみて”と言われても…」
タッパーの蓋を閉じて(その際、物体の一部が床に落ちて変な音を立てて溶かしたが)笑みを浮かべるイリアドゥスに、アーファが冷や汗を掻く。
気持ちはシンクも一緒なのか、顔を引く付かせる。
「どうするんですか…悪戯を受ける気満々になっているんですが?」
「え、えーとぉ…? リクぅ――」
「自分で考えろ」
困ったようにソラが視線を送るが、バッサリと切り捨てるリク。
しかし、ソラのおかげであの物体を貰わずに済むのだ。すぐにフィフェル、アイギス、ハオスが顔を見合わせて悪戯の内容を考える。
「えーと…顔に落書きとか?」
「なら、ボロイ衣装に変えるのは?」
「では、持ち物をすり替えるとかはどうです?」
「途中から【どう○つの森】のイベントになってない!?」
シャオがツッコミを入れていると、同じように考えていたヴェンが顔を上げた。
「そうだ! 中身がビックリ箱のプレゼント渡すのはどうだ!」
「いいね、それ! 凄く悪戯っぽい!!」
「面白そう…です…」
ヴェンの案に賛成なのか、アーファとアルマが乗り気になる。
「でも、そんなのどうやって用意するんだ? もうすぐしたらハロウィンが終わるぞ?」
ルキルの言う通り、夜はかなり更けている。ハロウィンが終わるまで、もう一時間もないだろう。
これにメンバーが固まっていると、オルガが何処からか色とりどりの布きれを取り出した。
「包むのは箱じゃなくても問題ないだろ? 衣装を作って余った布があるから、袋くらいはすぐに作れる。問題は中身だが…」
中身に困っていると、ハオスが胸を叩いた。
「それなら、僕に任せて貰えますか?」
「う、ううぅ…――ハッ!? 私は!?」
しばらくして、回復したのか目覚めたヴェリシャナ。
飛び起きる様に起き上っていると、後ろから声がかけられる。
「起きた、ヴェリシャナ?」
「母さ…ま?」
すぐに振り返ると、ヴェリシャナの表情が固まる。
それもそうだ。悠然と立つイリアドゥスの後ろに、白い仮面を被った大量の化け物が山を作るように積み重なっていたのだから。
「ああ、こいつら? 彼らから悪戯と称して彼らから『ビックリ箱』を貰ったの。で、袋の口を開けたら襲い掛かって…すぐに返り討ちにしたから安心して」
フフッと何事も無いように笑うイリアドゥスだが、ヴェリシャナからは黒いオーラが漂っていた。
「母様に対して、何と言う悪戯を…!!」
「拳骨だけじゃ済まないな…!!」
いつの間にか起きていたのか、ブレイズも大剣を取り出して怒りに比例した炎を纏わせる。
この様子を、広間の扉の隙間からソラ達が冷や汗を垂らしながら見ていた。
「おい…何かヤバい事になっていないか?」
「イリアドゥスならこれぐらいしないと驚かないと思ったんですが…当てが外れましたね」
「外れたどころじゃないよ…!! 早く逃げないと――…きゃあああっ!!?」
ルキルとハオスの会話にカイリが声をかけた途端、扉に青い炎の弾丸がぶつかる。
突然の攻撃に全員が吹き飛ばされていると、壊れた扉から怒りを露わにしたブレイズが飛び出した。
「見つけたぞぉ!!! この悪戯ガキどもぉぉぉ!!!」
『『『ヒイイイィ!!! ごめんなさーーーいっ!!!』』』
鬼神と化したブレイズに、全員は散り散りになって逃げて行く。
こうして、ハロウィンの最後は子供達の悲鳴と破壊音で締めくくったそうな…。
【おまけ】
「ただいま〜!」
ハロウィンも終わり時刻が変わった頃に、テラ達の部屋にオパールが満面の笑顔で帰って来た。
嬉しそうにするオパールに、クウはやれやれと肩を竦める。
「やけに上機嫌だな、そんなに作者をボコボコに出来たのか良かったのか?」
「ああ、それ? どうでも良くなっちゃった〜」
「「「はい!?」」」
衝撃の言葉に、テラ、アクア、クウが目を丸くする。
ハロウィンが始まる前は、リクと一緒に参加できないとかで作者に思いっきり不満を持っていたのに、どうしてそうなったのか?
そうして驚く三人だが、オパールのポケットからはみ出た“ある物”を見つけて納得した。
(((あの作者、リクのカードで買収したか…)))
ギリギリまでハロウィンイベントをプレイしたのか、【KHχ】のリクR 強化カードを見て呆れを浮かべる三人だった。
■作者メッセージ
と言う訳で、どうにかハロウィンの話が終了です。31日までに書き上げると言って起きながら、日付超えてしまってすみません…。
今回は少しはっちゃけて、KH最新作の情報だけでなくいろいろな他作品ネタはもちろん【KHχ】ネタも使ってみました。本来はネタの為(!?)にリクSR を頑張ってはいたんだけどね…余りにもメダル交換の数が多いから、他のカードにつぎ込んで…仕方ないから持ってたR を強化の方に回しました…。(目逸らし)
今回この話を書いたのはハロウィンもありますが、実は作品内でのキャラの整理をする為でもあります。半神は時間の都合で全員はかけませんでしたが、もちろん登場するキャラだけでなく、基本各キャラがどこに部屋を置いているのかも分かって頂ければと思います。
今回は少しはっちゃけて、KH最新作の情報だけでなくいろいろな他作品ネタはもちろん【KHχ】ネタも使ってみました。本来はネタの為(!?)にリクSR を頑張ってはいたんだけどね…余りにもメダル交換の数が多いから、他のカードにつぎ込んで…仕方ないから持ってたR を強化の方に回しました…。(目逸らし)
今回この話を書いたのはハロウィンもありますが、実は作品内でのキャラの整理をする為でもあります。半神は時間の都合で全員はかけませんでしたが、もちろん登場するキャラだけでなく、基本各キャラがどこに部屋を置いているのかも分かって頂ければと思います。