夢旅人誕生日企画・Part3 (中編)
「さて、コスプレの楽しさを知って貰った所で…――今度はテーマに沿ってみんなにコスプレして貰うぜ!」
そう言うと、オルガは再び大量の衣装を用意した。
「ここに、今回用意した夢旅人の好きな作品である【遊戯王ZEXAL】・【アルトネリコシリーズ】・【戦姫絶唱シンフォギア】・【灼眼のシャナ】・【無双シリーズ】・【ゴッドイーター】・【武装神姫】の衣装があるから、各自二人一組になって衣装を選んで着てくれ。ちなみに、一部のキャラは俺が指定する服を着てくれ」
「指定って…」
「いいからいいから♪ んじゃ、さっそく開始ー!!」
選ぶ権利が無い事にリクが訝しるが、気にしないとばかりにオルガは笑顔で衣装へと歩み寄った。
「って、オルガさんも参加するの!?」
「当たり前だろ!! そうじゃなかったら、二人一組なんて出来ないし俺も楽しめない!! ほれ、さっさとやろうぜ!!」
目を丸くするシャオを余所に、オルガは手を振って催促する。
これには他の人も若干呆れを見せるが、全員は次の衣装を選び始めた。
衣装選びから15分経った頃。
最初に着替え終わりステージに現れたのは、ヴェンとリクだった。
「オルガに言われてカイトの衣装着てみたけど…――俺、何か不似合いな感じがする…」
「俺は片桐大介の格好か…」
どうやら二人ともオルガに言われて着た様で、【遊戯王ZEXAL】の衣装を纏っている。
ちなみに、ヴェンはキッチリとした全身白のスーツと指貫グローブと靴。さらに、頭には王冠の様な緑の飾りが付いている。リクは白いシャツの上に赤いジャケットを羽織り、青いジーンズを穿いている。
着慣れないのかそれぞれ衣装を見回すと、不安げにヴェンが口を開いた。
「こんな衣装で、本当に大丈夫なのか…?」
「さあな…オルガに抗議しても『大丈夫だ!! 俺の作者なら喜ぶ!! 断然する!!』って…」
「どこからその根拠が来るんだろ…?」
輝かしいオルガの笑顔を思い出したのか、二人同時に盛大な溜息を吐いた。
「ふふっ、何だかんだ言いつつも楽しそうね」
声がかけられ二人は思わず振り返ると、着替え終わったスピカとシャオがいた。
スピカの衣装は、青と白を基調としたミニスカのナース風衣装に学帽子。手には何故か注射器を握っている。シャオは黄色の大きめの帽子にヘッドフォンを被り、黒を基調とした腹だしの長袖に茶色の半ズボン、茶色の指貫グローブを付けた衣装だ。
シャオは普通として、スピカの衣装は何処となく目のやり場に困る。男二人はすぐに顔を背けると、リクが声をかけた。
「スピカさん…その恰好…!?」
「どうかしら? 【アルトネリコ】では私と同じ名前の人がいるから、2の衣装を選んだの。あ、この注射器はあくまでも小道具だから安心して?」
「ボクも【アルトネリコ3】からタツミを選んだよ!! ちょっと動きにくいけど、こう言うのってかっこいいよねー!」
よほど衣装が気に入ったのか上機嫌になるシャオを、ヴェンは羨ましそうに見ていた。
「何かいいなー、そう言う衣装」
「そうかな? 二人の衣装もボクはかっこいいと思うけど?」
シャオが純粋に思った事を言いのけると、二人分の足音がこちらに近づいてきた。
「ほら、アクア! 何時までも恥ずかしがらない!!」
「やだ! そう引っ張らないで…!」
「オパールも来たか……はああああぁ!!?」
続いてやってきた人物にリクが振り向いた瞬間、何故か絶叫が上がる。
すぐに視線を向けると、ヴェンとシャオもリクと同じように目を見開いた。
「す、凄い…!」
「そ、それ…衣装なの!?」
オパールはオレンジを基調とした黒と白の半袖半ズボンのスーツに白いマフラーのような布、手は肘まである白の手袋や足も膝ぐらいまである白のブーツ、頭にはカチューシャの様な装甲衣装だ。アクアもまた蒼を基調としたオパールと似たような装甲衣装をそれぞれ着ている。
男三人の視線に恥ずかしそうに身を縮こませるアクアとは反対に、オパールは胸を張って衣装を見せつけた。
「あたしとアクアは、【戦姫絶唱シンフォギア】から選ぶ事にしたの! で、あたしは立花響の衣装! こういう変身モノ憧れてたんだー!!」
「私も、その…オパールに言われるままに、風鳴翼を…! へ、変じゃないかしら…!?」
顔を真っ赤にして俯くと、不安そうに聞くアクア。
最初は驚いていたヴェンだが、このアクアの様子にクスリと笑った。
「そんな事ないよ! アクア、どこからどう見ても強そうだよ!」
「喜んでいいのか、よくないのか…微妙だわ…」
ヴェンの言葉に落胆している中、リクは呆れ気味にオパールに話しかけていた。
「にしても、よくそんな衣装着ようと思ったな」
「いいじゃない、変身して戦うのは昔から女の子の憧れなの!! テラ達だって鎧で変身するんだし、あんただって【KH】や【COM】じゃ『Dモード』で変身してたじゃない」
「痛々しい過去を掘り返さないでくれないか!?」
「何の話をしてるの?」
黒歴史とも言える部分を抉るオパールにツッコミを入れていると、カイリが声をかけてくる。
見ると、カイリとレイアは揃って茶色の長袖にミニスカートのセーラー服を着ている。だが、カイリだけ黒のニーハイに黒いマントのような物を羽織っており、首には黒いペンダントをぶら下げて手には日本刀を握っている。
「あら、二人のその服。もしかして制服?」
「どう、シャナの衣装! こういう剣握ると、バッサバッサと敵を倒したくなるよねー!」
「私も、吉田一美から選んでみました。制服って、実は憧れていたんです」
スピカの質問に笑顔で答える二人に、リクは頭を押さえて溜息を吐いた。
「カイリ。嬉しいのは分かるが、ソラみたいに調子に乗って刀で余計な物壊すなよ?」
「失礼ね! そんな事しませんー!」
頬を膨らませてむくれるカイリの隣では、ヴェンが興味津々でレイアの衣装を見ていた。
「制服か、羨ましいなー!」
「えへへ…!」
「アクア!? その恰好は…!?」
「テ、テラ!?」
突然響いたテラの叫びに、アクアが反応して振り返る。
そこにいたテラは身体を覆う緑と黒の鎧を着こみ、上から威厳のある白いコートを羽織っている。更に、緑の冠に顔の右側に黒い仮面を付けている。隣にいたルキルもまた上と下に白い服を着て、その上に青と緑が混じった金の装飾が付いたマント付きの上着を羽織っており、鉄鋼ブーツと手甲を付けている。
まるで武人のような衣装に、ヴェンは尊敬の眼差しを浮かべた。
「わー! テラの衣装、かっこいいー!」
「どうだ? オルガに言われて、【真・三國無双7】の司馬師の服を着たんだ。猛将伝の発売も近いからな」
「俺はそいつと繋がりのある司馬昭を選んでみた。こう言う服も悪くはないな」
「二人ともかっこいいー!」
「あー! みんなもう集まってるー!」
「オイオイ、これまた凄い格好だな」
目を輝かせてシャオが言うと同時に、今度はソラとクウの声が聞こえた。
ソラはピンクの長シャツに、破れた青のジーンズと黒のブーツ。首に黒いリボンを使ってネクタイのようにしている。何故か右手には大き目の赤い腕輪を付けている。対するクウは黒いインナーの上に白いシャツ、その上からファーの着いた紫のジャケットを羽織っている。下は黒いズボン、頭には紫の防寒帽。右手にはソラと違って白黒の腕輪をつけている。
「どう!? オルガに言われて【ゴットイーター】のカレルって奴の服着てみた! どうせなら、クウみたいにもっとかっこいい服着てみたかったけど…」
「俺はソラと違って2で出たキャラ、ギルバードの服だ。黒髪だから選んでみたんだが」
全員の視線に気づいてソラとクウが衣装を見せていると、カイリとレイアが笑顔で頷いた。
「そう言うラフな衣装でも、ソラは似合うよ」
「はい! どんな服でも、クウさんが着るならかっこいいです!」
「ええ。二人ともちゃんと似合ってるわ」
更にスピカからも太鼓判を押されるので、クウは恥ずかしそうに顔を背けた。
「そ、そうか……にしても、レイアはともかくスピカ。お前なんて恰好を…」
「そうだ! アクア、その衣装はさすがに…!」
顔を引く付かせながらスピカのコスプレを見るクウに、テラも話を戻す様にアクアを見る。
二人の視線に狼狽えるアクアだが、スピカは平然とした顔で言いのけた。
「あら、いいじゃない。本人が気に入って衣装を着ているんだから、他人がどうこう言う筋合いはない筈よ?」
「わ、私はオパールに言われるまま着ただけで! 好きで着ている訳では…!」
「えー! こう言うのは揃って着た方が楽しいじゃない!」
すぐにアクアが言い訳すると、オパールが唇を尖らせる。
このやり取りに思わず他の人達がクスクスと笑っていると、ヴェンはある事に気付いた。
「と言うか、オルガはまだ来ないのか?」
「先生もいないな…着替え終わっても良い頃なのに」
ルキルも未だに姿を見せないウィドに疑問を浮かべると、カイリは隣にいたレイアに聞く。
「そう言えば、あと何が残ってたっけ?」
「えーと、確か…【武装神姫】ですね」
「武装神姫? それってどんな話だっけ?」
内容を知らないようでソラが問いかけた時、何故かクウの顔が青ざめる。
この異変にすぐにスピカが気づき、不思議そうに声をかけた。
「クウ、どうしたの? 顔色が悪いわよ?」
「いや…武装神姫って早い話フィギュアが元なんだが、アニメやゲームの世界では小型の美少女ロボットを戦わせる話なんだよ…!」
『『『美少女ロボットを戦わせる…?』』』
その説明に、全員が上の空になって想像した。