遠い昔での新年会?(前編)
雪が積もった青い屋根の立つ住宅地。遠くに見えるは巨大な城。そう、ここはキーブレード使いの拠点の世界―――『デイブレイクタウン』。
新年を迎えたばかりのこの町も、沢山の風船はもちろん『HAPPY NEW YEAR!』と言う風船で作られた大きな弾幕、噴水のある場所にはさまざまなキャラクターの飾られた巨大なツリーがあったりと、今やお祭りの賑わいを見せている。
この日はキーブレード使い達も新年の挨拶を交わす中、広場の一角に不思議な団体がいた。
「みんなー!! 報酬が、欲しいかー!!!」
「「「「おおーっ!!」」」」
「その為に身を削る覚悟は、あるかー!!!」
「「「「おおぉーっ!!!」」」」
そこにいるのは拳を振り上げている作者。その周りには、カイリ、ナミネ、シオン、オパールがいて、同じように拳を振り上げている。
そうして燃えている彼女達から少し離れた場所では、今回連れて来られたクウとシャオが呆れたように見ていた。
「あっちは凄い熱気だけど…どうして、ボクこんな場所にいるんだろ〜?」
「オリキャラ内でキーブレード使えるの、俺達だけだからだろ…――ついでに、女性達にあんな目で頼まれたらな…」
「本当に師匠って女性に弱いよね〜……ま、みんなが欲しがってる報酬はボクも興味があるからいいけどさ」
やれやれと肩を竦めるなり、シャオはさっき渡された『モグトレード』のリストを見る。
『モグメダル』と言う特殊なメダルと交換する事の出来る報酬。時期によって毎回変わるのだが、今回は特に目を引くレアカードがあった。
「お前らー!! ソラ&リク(KH2版)のカードが欲しいかー!!」
「「もちろーんっ!!!」」
「ロクサスのカードが欲しいかー!!」
「「欲しーいっ!!!」」
それぞれカイリとオパール、ナミネとシオンの黄色い声に、シャオも乾いた笑みを浮かべてしまう。
作者達の声援を聞いての通り、今回のトレードはKH2バージョンでのソラ&リクのSRプラスカード。そして、ロクサスのSRカードだ。彼女達にしてみれば、ブロマイド並みに手に入れたいカードであるのは間違いない。見た目もかっこいいのだし。
「と言う訳で、そこの二人後は宜しくー!!」
「「「「宜しくねー!!」」」」
「「ちょっと待てっ!!」」
聞き捨てならない言葉を耳にし、二人は即座にツッコミを入れた。
「何だって新年早々、無理やり引っ張り出された俺達がそんな事しないといけないんだ!?」
「そうだよ!! 確かに報酬は気になってるけど、さっきの言葉はそっちに向けての物じゃないの!?」
新年早々言いなりにされては堪らないと、五人に文句をぶつけるクウとシャオ。
すると、カイリ、オパール、シオン、ナミネは急に瞳をうるうるさせてクウに近づいた。
「クウ、お願い…!」
「あたし達、どうしてもレアカードが欲しいの…!」
「頼りに出来るの、あなたしかいなくて…!」
「だめ…?」
「よーし、この俺にドーンと任せろぉ!!! 行くぞ、シャオ!!! ソラでもリクでもロクサスでも何でも手に入れるぞぉーーーーーっ!!!」
「うわあああぁ!!?」
女の涙を見て何かが吹っ切れたのか、クウはシャオを引っ張って何処か走り去ってしまう。
無理やり連れて行かれるシャオの悲鳴が虚しく響く中、作者は黒い笑みを浮かべて白いハンカチを振って見送った。
「行ってらっしゃ〜い。みんな、もういいよー」
そう言って四人に振り返ると、彼女達は目をゴシゴシさせて涙を拭きとった。
「うーん、ちょっと目薬多く入れちゃったかな?」
「男って本当に単純よねー」
「じゃあ、二人が戻って来るまで食事でもしようよ」
「いいねー、行こ行こっ!」
キャッキャと笑い合う四人を見て、成り行きを見ていた誰もが【女は怖い】と思ったそうな…。
一方―――そんな事があったと知らずに騙されたクウとシャオは、森の生い茂るワールドに来ていた。
「ししょ〜? 大口叩いて飛び出したのはいいけど、どうする気なの〜?」
「問題はそれなんだよな…そう言えば、あいつらの欲しいカードってどうやって手に入れるんだ?」
【KHχ】について何も知らないクウの問いに、恨めしそうに見ていたシャオも再びリストを取り出した。
「えっとね、いろんな所で手に入る『モグメダル』って言うのを集めたら、ある場所で交換するんだってさ」
「なるほどな。ちなみに、どれだけメダルが必要なんだ?」
シャオの説明に頷きつつ、クウはリストを覗き込む。
そうしてモグトレードの項目を見た途端、表情を凍りつかせた。
「ロクサスで、150モグメダル…ソラ&リクに至っては600モグメダル…だと…!?」
「それでもまだマシな方だよ。一番高い報酬は3000モグメダルするんだから…」
予想してなかった数字に固まってしまうクウの下で、シャオは遠い目で一番高い報酬である【イェン・シッドSRプラス】(カード強化に必要な素材カード)を見る。
とんでもない事を引き受けてしまったと今になってクウは理解するが、もはや後の祭りだ。女性陣達に大口を叩いた以上、やり遂げなければ男ではない。
「とにかく、日にちはまだあるから…――どうにかしてメダルを集めるぞ。で、どうやって集めればいいんだ?」
「え? さすがにボクもそこまでは…」
どうやらシャオもメダルの集め方を知らないようで、困ったように顔を俯かせる。
初っ端から詰まってしまい、思わずクウが頭をガシガシと掻いていた時だった。
「やあやあ、こんにちは。何かお困りかな?」
突然足元から声をかけられ、すぐに二人が顔を向ける。
すると、黒と灰色の縞々の模様にピンクのバックを首から下げた不思議な生き物がいた。
何処となくモーグリにも似ている生き物に、クウは訝しげの表情を浮かべた。
「何だ、この生き物?」
「僕はチリシィ。君達、見ない顔だね? キーブレード使いのようだけど、何か困った事でもあるのかい?」
チリシィと名乗る不思議な生物は、クウとシャオに小さく首を傾げる。
見た目と違い、キーブレードを知っていると言う事は只者ではないだろう。シャオはそう結論付けつつも、チリシィに今の現状を説明した。
「えーと、ボク達モグメダルって言うのを集めたいんだけど、どこにあるか知らない?」
「モグメダルが欲しいのかい? 集め方を知らない所を見ると、どうやらキーブレード使い初心者みたいだね。仕方ない、この僕がいろいろと教えてあげるよ」
「何かこの生き物ムカつくんだが…」
「師匠、ここは抑えて…!」
胸を張るチリシィに対して拳を鳴らすクウに、シャオは後ろから抑えつけたと言う。
「モグメダルの集め方としては、基本“ルクス”を溜める事だね。後は一定の期間で出されるミッションもそうだね。他にもいろんな方法はあるけど、まずはこの二つをやる事をお勧めするよ〜」
こうしてチリシィが丁寧に説明すると、分からない事があったようでシャオが手を上げた。
「ねえ、ルクスってなーに?」
「ルクスって言うのは、闇を払う光の事さ。主にハートレスを倒したり、レイドボスと言う大型ハートレスを攻撃する事で手に入れられるのさ」
「攻撃? 倒すじゃなくて?」
すかさずクウが質問をぶつけると、チリシィはやれやれと肩を竦めた。
「あんなのは一人で倒せる代物じゃないよ。実際に戦ってみれば分かるけど……それで、君達はどっちの方法を選ぶんだい?」
「師匠から先に決めて。ボクはどっちでも構わないから」
「じゃあ…――俺はルクスを集める方法で行くか」
「って事は、ボクはミッションの方だね」
こうして二人がそれぞれの行動を決めると、チリシィは何処からか一枚のリストを取り出した。
「今の時期のミッションだと、ハートレスを倒したり素材や宝箱を手に入れたりと言った感じだね。はい、これがミッションのリスト。ちゃんと一つ一つこなさないとだめだよ〜?」
「分かった! 師匠、後でねー!」
チリシィからミッションのリストを貰うと、シャオは大きく手を振りながらその場を去って行く。
一人と一匹がシャオを見送ると、クウは頭の後ろに腕を組んだ。
「で、俺は普通にハートレス退治とレイドボスか…」
「だったら、君にはコレを渡しておくよ」
そう言うと、次のチリシィは一つのバンクルを取り出してクウに差し出した。
「何だ、これ?」
「『ストレングスバンクル』さ。これを付けて特定のハートレスを倒すと、“ギルト”と言うモノを集める事が出来るんだ。いろんなハートレスを倒してギルトを沢山集めれば、レイドボスにより大きなダメージを与える事が出来るのさ。ギルトは一定の期間を過ぎたら使えなくなるから、その際はまた集め直してね」
「なるほどな。って事は、まずはハートレスを倒してギルトって奴を集めて、そこからレイドボスに立ち向かえばいいんだな」
「そうそう。ちなみに、これがギルトターゲットのリストなんだけど……このリスト全部埋めるだけで【モグメダル200枚】貰えるんだよね〜」
「何ぃ!? うぉし、やってやらぁ!! 何処だハートレスゥゥゥ!!!」
高額な報酬に目が眩んだのか、クウは目の色を変えて奥へと走り出して行く。
あまりにも早いスピードに砂埃が巻き起こるが、気にしてないのかチリシィはふぅと溜息を吐いた。
「キーブレード使いにしては、不思議な人達だ。にしても…どうも“アレ”を渡すと不安になってくるよ」
そんな哀愁の混じったチリシィの呟きは、誰にも聞こえないまま消えて行った…。
■作者メッセージ
新年、あけましておめでとうございます。バトン交代したのに、本編ではなく番外編から先に投稿してしまいました(苦笑
今回の話は、見ての通り【KHχ】を元に作成しました。クリスマスは巨大なツリーにイルミネーション、新年では冒頭のようなカーニバル風。マイページでの変わりようにはあまりにも素晴らしかったもので…。
ついでに報酬にも目を奪われ、チリシィのイベントもちょこっと出たのでこうして一つに織り込めるように頑張りました。尚、こちらでの次の投稿は少し時間を置いてからにしようと思っています。
今回の話は、見ての通り【KHχ】を元に作成しました。クリスマスは巨大なツリーにイルミネーション、新年では冒頭のようなカーニバル風。マイページでの変わりようにはあまりにも素晴らしかったもので…。
ついでに報酬にも目を奪われ、チリシィのイベントもちょこっと出たのでこうして一つに織り込めるように頑張りました。尚、こちらでの次の投稿は少し時間を置いてからにしようと思っています。