遠い昔での新年会?(後編)
女性陣に騙され、二人のキーブレード使いが過去の世界を奔走して何週間か経った頃。
【デイブレイクタウン】の噴水のある広場に、ある一人の青年がその地に降り立った。
「曙光きらめく街――キーブレード使いが集まる場所――未来を記す予知書――五人の指導者――」
一つ一つ言葉を発しながら歩き、ゆっくりと顔を上げる。
その目は…ギラギラと怪しく光っている。
「きゃはははは!!! これぞ古代のロマン!! 歴史の晴れ舞台!! どれもこれも素晴らしいってハナシだ!!! あぁ、私の中にある考古学者の血が騒ぎ出すぅ!!! ふははははは!!!」
ソラが聞いたらラクシーヌ、ロクサスが聞いたらシグバール、リクが聞いたらゼアノートと答えるであろうセリフを叫ぶ、長い銀髪を後ろで一つに括った青目の青年。
作品を呼んでる方には彼が誰なのかもうお分かりだろう。そう、ウィドだ。
「闇の中に隠れた歴史の真実が今ここに!! お前のやった事は、全部お見とうしだ!!! 謎は全て解き明かす、じっちゃんの名に賭けてっ!!!」
しまいには貧乳マジシャンや名探偵の孫のセリフを叫ぶウィド。学者モードが行き過ぎて、キャラが壊れてしまったようだ。逆を言えば、それだけ感動しているのだろう…多分。
「ではさっそく調査を――ん?」
意気揚々と街の中を探索しようとした時、彼の視界にある物が目に留まった。
「師匠ー!! しっかりしてー!!」
新年早々何処かに行ってた筈のシャオ。そんな彼が、何やら黒い物体を揺さぶっている。
そうして地面に落ちている黒い物体をじっくりと見て、瞬時にウィドは判断した。
「ああ、ただのゴミか」
そう言うなり、シャオが揺さぶる黒い物体を思いっきり踏みつけながらスタスタと素通りして行った。
「ええええっ!!?」
「いででででっ!!? ウィドてめぇ!!」
知り合いとは思えない行動にシャオが悲鳴を上げる中、踏まれた物体―――クウは潔く起き上ってウィドに怒鳴り付けた。
「ゴミかと思ったらクウですか。いやー、そんなナリをしてるからボロ雑巾かと思いましたよー?」
「ブチ殺スゾコラ」
涼しい顔で何の悪ぶれも無く言い切るウィドに、クウは目を光らせて黒い殺気を全身に纏わせる。
完全に闇の化け物と化したクウの姿にシャオが後退りするが、ウィドは憶ともせずに肩を竦めた。
「で、どうしてこんな町中でボロボロになっていたんですか?」
「ハートレスも大分倒したから、レイドボス亜種って言う珍しい大型ハートレスと戦ってたんだよ。楽勝かと思ったら、体力半端ねえわ攻撃力強いわ…ルクスが大量に溜まる分、ボッコボコにされて…」
「でも、師匠も頑張ってくれたおかげでモグメダルも大体溜まったよ! 新年からコツコツと溜めた甲斐があったね!」
未だに身体が痛むのかクウが肩を抑える横で、シャオはニコニコ笑いながら大量のモグメダルを取り出す。
新年から今までずっとルクス集めやミッションをやっていたおかげで、どうにか彼女達が欲しいカード分の枚数のモグメダルを集める事が出来た。これならば彼女達も喜んでくれるだろう。
シャオがそう思っていると、ある程度怒りが収まったクウは改めてウィドを見た。
「んで、お前はどうしてこんな場所に来たんだ?」
「決まってます。折角この時代に来れたのですから、“予知書”を探そうと思って」
「「予知書?」」
初めて聞いた言葉にクウとシャオがオウム返しに聞くと、ウィドは一つ頷いて語り出した。
「遥か昔―――丁度この時代、キーブレード使いを導く5つの指導者が存在した。その指導者はある人物から名前と共に、未来が記されたと言う“予知書”を託されたそうです」
「うさんくせー…」
「師匠、それは禁句――!?」
思わずクウの口から出た本音に、慌ててシャオが塞ごうとする。
しかし、それよりも早くウィドがクウの襟首を掴み上げた。
「胡散臭いとは何だ!!! 胡散臭いとはっ!!! 貴様は歴史への探究心がどれほど素晴らしいモノかまったく理解出来てないようだなぁ!!!」
「あーあ、始まったぁ…」
学者モードとなって暴走を始めるウィドに、シャオは頭を押さえてしまう。
「んな事言われても…どうせあれだろ? 最後は《みんな幸せになります》とか《光の力で闇は払われた》とかそんなもんだろ?」
「――そう書かれてあったら、キーブレードなんて必要ないでしょうに…」
「え?」
何やら、ウィドの口からボソリと不吉な言葉が放たれたのは気のせいだろうか?
クウだけでなくシャオも今の発言に固まっていると、ウィドが掴んでいた手を放して場を取り繕うように軽く咳払いをした。
「オ、オホン……最後のページに何が書いてあるかは、私も詳しくは知りません。ただ、予知書には何らかの力があるそうです。私は考古学者として、その予知書の謎を解明しようと思いここにやってきたと言う訳です。下心を持つあなたと違ってね?」
「そりゃ、少女達の涙には敵わない――…って違うぞ!! 俺だって新年早々からメダル集めさせられてんだ!! そう言う事言うの止めてくんねえか!?」
「まったく…ん? なんですか、それ?」
呆れて溜息を吐いた時、クウの腕に付けられたバンクルに気付く。
同じくシャオもウィドの視線の先に気づき、クウのバンクルに首を傾げた。
「あれ? 師匠、そんなの付けてたっけ?」
「ああ、チリシィって奴から貰ったんだよ。こいつを付けてキーブレードでハートレス倒すと、ギルトってのを集められるんだ。で、量や質に応じて力を増幅する事が出来る代物さ」
「いいなー、ボクも欲しーい!!」
「ギルト…?」
クウの説明にシャオが目を輝かせている中、何故かウィドの目が細くなる。
「ウィド? お前、もしかしてギルトって知ってるのか?」
「クウ…ギルトって何か分かってます?」
「へ? んな事言われても、知らない「罪」え?」
聞こえた単語にクウだけでなくシャオも顔を向けると、ウィドは思いがけない言葉を言い放った。
「“罪”って意味なんですよ、『ギルト』と言う言葉は」
ある意味恐ろしい言葉に、二人の顔から血の気が引く。
その間にも、ウィドは顎に手を当てて考え込む様にブツブツと呟き始める。
「ハートレスから罪を解放するのではなく、集めている……それで力を得ていると言う事は、闇の力と直結していると見てもいいかもしれない……昔のキーブレード使いは、何故そのような事を…?」
さまざまな情報を元に推測を立てるウィドに、嫌な予感をヒシヒシと感じるクウ。
「あの〜…もしかしてなんですけど…これ、マズイ代物?」
言い換えてみれば呪いの品やら闇の道具等に匹敵するかもしれない装備品に、クウは腕のバンクルをウィドに見せつける。
「まあ、いいんじゃないんですか? 郷に入れば郷に従えと言いますし…本当にマズイ代物なら、被害を受けるのは持ち主であるあなただけでしょうし♪」
「全くよくねーよ!?」
「とにかく、どうせメダルはそれなりに集めたのでしょう? それならば、私に付き合えぇ!!! わははははは、調査開始じゃああああああっ!!!!」
勝手に会話を終わらせるなり、ウィドは再び学者モードとなってクウの腕を掴んできた。
「誰がそんな生き地獄付き合うかっての!? シャオ、助け――!?」
別の意味でクウの顔が真っ青になってしまい、助けを求めようとシャオに目配せをするが。
「あー!! ボク皆の所にモグメダル持って行かなきゃー!!!」
「一人だけ逃げんなぁぁぁ!!!!!」
巻き込まれたくないとばかりに、シャオは自分の師を置いて遠くに走り去ってしまっていた。
すぐさまクウが怒鳴りつけるが、その間にもウィドによって街の奥へと引っ張られてしまう。
イベントを終え、これからキーブレード使いと考古学者の二人の歩む先に何が起こり、何を見つけるのだろうか。
彼らの行く末は―――時と共に明かされる。
「結局続くのかよこの話ーーーっ!!?」
「わはははは!!! 考古学者に不可能はなーーーーい!!!」
「いやだぁーーーーーーーっ!!!」
■作者メッセージ
これにて、新年イベントの話は終わりです。次に投稿する際はχ関連の話を書けたら嬉しいなぁ(願望
少し前にχでは新たなイベントだけでなく、ストーリーも更新されました。内容を今回取り入れて書いてみましたが…いろいろと凄かったなぁ。
ちなみに、自分の作ったアバターではなくオリキャラを主要人物して書いたのは、正直こっちの方が書きやすいからです。アバターだと一つのチームに所属している状態で書く事になりますから、それよりかは第三者視点の方がいいかなと。
少し前にχでは新たなイベントだけでなく、ストーリーも更新されました。内容を今回取り入れて書いてみましたが…いろいろと凄かったなぁ。
ちなみに、自分の作ったアバターではなくオリキャラを主要人物して書いたのは、正直こっちの方が書きやすいからです。アバターだと一つのチームに所属している状態で書く事になりますから、それよりかは第三者視点の方がいいかなと。