リラ様誕生日企画・Part4-1
*今回の誕生日作品は、銀○のある話のパロディ作品となっております。作品を作るにあたって大分加工はしましたが、本家並み…とはいきませんが、少しだけ下ネタが混ざっています。それでもよろしければ、下へとスクロールしてお進みください。
輝ける庭と呼ばれる世界――レイディアントガーデン。
名前からして、光のような場所を想像するだろう。しかし、そんな町にも少なからず闇は存在する。
「――こんなもの? 全く、どの世界でも男って言うのは碌でもない事するんだから」
「あ、ありがとうございます…」
冷めた目でパンパンと手を払う少女――リズ。その近くには座り込んで頭を下げる女性がいる。
そんな二人のすぐ傍で、ボコボコにされた男達が起き上がっていた。
「ちくしょう…! こんなガキの女に負けるなんて…!」
「次会ったら容赦しねーぞ!! 覚えてやがれ!!」
「はぁ…」
悪党の台詞を吐いて去っていく男達に、リズはうんざりしながら溜息を吐く。
明らかにあちらが怯える女性に手を出そうとしたし、見た目で判断して舐めてかかったのが悪い。なのに、返り討ちにしたらこれだ。反省する事なく、妙な言いがかりをつけて再び襲いにかかるだろう。
襲われていた女性と別れ、リズは再び町を歩きだした。その表情は先程の騒動の所為か何処か暗い。
「お嬢さん、占いはいかがですか?」
ふと、住宅街から商店街に続く通路の方で声をかけられる。
振り返ると、壁際に全身を白いローブで覆った占い師がテーブルを構えて座っている。
「占い?」
「ええ――占いとは未来をより良くする為の道しるべ。多少なりとも、あなたの不安や悩みを解消したりも出来ます。今陰りを見せているあなたには、悪くはない話ですよ?」
「ふーん…まっいいわ、ちょっとだけならやってみようかな」
「では、こちらに――お聞かせください、あなたの悩みを」
占い師に椅子を進められ、早速リズは座る。
少しだけ興味を持ち占い師を観察すると、じっとこちらを見ている。こんなチンケな店なのに本格的な佇まいにリズも自然と背筋を伸ばした。
「それで悩み、よね。うーん…悩みなのかな。これ」
少しだけ歯切れが悪いが、それでも今抱えている事を口にしてみた。
「なんかさ、女だからってバカにされるし、弱く見られるし、私が思うまま行動したら女だから考えて動けーって最近は仲間がうるさいし……私、何で女に産まれて来たのかな?なんてちょっと思うようになっちゃって…」
「ふむ…貴女としては、男が良かったと?」
「そりゃそうだよ。男なら自由に行動出来そうだし、力だって強くなるし、下に見られる事だってなさそうだし」
これまでの相手側の態度や、まともな思考を持つグラッセ一家、さらに仲間達の言動を思い返して今までの不便さをぶちまける。
話をしていて気を良くしたからか、リズは次に言われた事に耳を疑った。
「その悩み…解決できるとしたらどうします?」
「…は?」
「あなたが望むと言うのならば、私はその束縛から自由にしてあげる事が出来ます。そう、全てはあなた次第。あなたの意思で、変えられぬ理の世界を変える事が出来るんです」
「な、何よ。さっきから訳が分かんない…もう私帰る」
話を聞いていたが何だか気持ち悪くなり、リズは椅子から立ち上がる。
しかし、占い師がその腕を掴んでリズを止める。慌てて掴んだ手を払うが、占い師は尚も言いかかる。
「見ぬ振りをして、それがあなたの望む未来ですか? 逃げた先に待つのは偏見と言う名の縛られた窮屈な自由、そこで生きる世界が本望と言うのですか?」
「さっきから何よ!! グダグダ訳分かんない事言いやがって!! 男に出来るのならしてみなさいよ!!」
「――いいでしょう」
直後、占い師の口元が怪しくつり上がる。
怪しいと警告を鳴らす直感が確信に変わる。そうリズが感じ取ったと同時に、町の上空に淡いピンクの光が現れる。
突然現れた光にリズだけでなく、町の人達も騒めき始める。
「なに、あれ!?」
「上空に浮かぶあの光は我らが神の贈り物。あなたが本当のあなたへと変わる洗礼。さあ、何も恐れることなどありません――新しい自分へと生まれ変わるのですっ!」
宣言すると共に光は地面に直撃し、町全体が光で覆いつくされる。あまりの衝撃に、リズは悲鳴を上げる間もなく気を失ってしまった…。
何だか騒がしい声がして、意識が浮上する。
ゆっくりと体を起こしながら目を開ける。どれくらい眠っていたのかはよく分からない。
「な、何よ…今の光? あれ?」
何か、身体や声に違和感を感じる。それに、町の人達もパニックになっているのか騒いでいる。
ゆっくりと起き上がり、横のガラス張りの店のショーウィンドを見ると――目の前に自分に似た“少年”がこちらを見返していた。
「………あ、ごめん。私に似た男の人でつい」
何故か反射的に頭を下げてしまう。
…あれ? もしかして相手も頭を下げた? ああ、そうか。これはショーケースで鏡になっているからか。
そう理解しているが、リズは目を逸らし続ける。目の前の人物に――現実に。
(………いやいやいやいや。そんな訳ない! そんな事ある筈がないわよ!? そうだ、これは夢だ! 幻だ! 私は――!!)
言い聞かせながら、リズは徐に手を伸ばし――。
――ある筈のない体に付いた、“ソレ”を握ってしまった。
「嘘だーーーーーーーーーっ!!?」
さすがの鈍感のリズもこれには信じられず、目の前のショーケースに頭を突っ込ませる。頭から血が噴き出すが、それでも叩き続ける。
夢だ、夢なのだ! ほら私グラッセやムーンとお風呂に入ったし! 面白半分で握って千切ろうとした事もあるし! その感触が夢で再現されただけなのだ! 痛みは感じなくなってるし、視界も赤く染まってる。よし、いずれは目を覚ます――
「おい、ガキ。何やってんだよ、店の人に怒られるぞ」
必死で目を覚まそうとしているのに、背後から女性が制止させるように肩を掴んできた。
「うるさい!! 放してぇ!!」
邪魔されて、思わずその手を払おうとする。
そうして伸ばした手は「ムニッ」と覚えのある弾力を掴んでしまった。
「わっ! ごめん!」
「は? 何で謝るんだ?」
「だって私男の姿で…あなたの胸触ったから…!」
「おいおい、女ならともかく男同士で胸なんか触っても別に――」
そこで、女性の声が止まる。
血塗れの顔で振り返ると、何故か女性は自分の胸元を見て困惑していた。
「なんだ…これ…?」
絶句している女性は、肩よりも少し長めの黒髪に黒目のとても美形な顔立ち。
服装は全体が黒だがサイズが合わずにぶかぶか。だけど、どうしてだろう。見覚えがありすぎる。
いや、本当は分かってる。その証拠に、目の前の女性も目を細めた上で顔を青ざめて自分を見ているのだから。
「…あ、あんた…」
「お前、まさか…」
直後、二人分の悲鳴が起こったのは言うまでもない。
突然謎の光によって性別が変わってしまった事で、町の人は今もパニックに陥っている。
リズは宿の二階の一室でそれを眺めていると、後ろで誰かが部屋に入ってくる音がした。
「…どうだった?」
「――うん、まあ。こんだけデカイと揉み応えあるな…!」
「あ、そう…――で、何であんたがこんな所にいる訳? クウ?」
スケベらしい回答に対し、呆れを浮かべて振り返る。
姿は完全に女性へと変わっていたが、そこにいるのは間違いなくクウだった。
「ツ…シャオに連れてこられたんだ…。俺達だけじゃなく、ソラ達全員でな。ここで宿とって、自由行動していてこの騒ぎだ…」
「じゃあ、ここには誰もいないの?」
「いや、確かシャオが部屋番をしていた筈」
「ししょーーーーーーーーーーーう!!!」
噂をすれば何とやら。小さな影が部屋に入って来てクウに飛び込んできた。
「うごぉ!?」
「ゴキブリが出たーーーーーー!!! 助けてーーーー!!!」
「んだよ、ゴキブリくらいで…ほら、あっちに行ったぞ」
「あー、怖かった…」
抱きついていたシャオが、一瞬で大塚ボイスの渋い声へと変わった。
しかも体付きもごつい大男…いや、なんか見覚えがある顔付きだった。
例えるなら、こう…後ろに影を携えるラスボスのような、よくリクに付きまとうストーカーのような。
「えええええええええぇ!!! 誰この女の人!!?」
「そりゃこっちのセリフだぁ!!? 何でアンセムになってんの!!? 性別変わるんだからシャオになるんじゃねーのかぁぁぁ!!?」
服装までもが完全に偽アンセムと化したシャオの姿に、堪らず悲鳴を上げるクウ。傍から見たらアンセムが嫌がる女性に抱き着いているようにしか見えない。
恐ろしい光景に一瞬思考が止まりかけるが、どうにか持ち前の鈍感メンタルで耐えきるとリズは渋い表情となる。
「この宿にずっと居てこのありさま…建物にいても被害が免れなかったって事は…」
「何の騒ぎだよ……だ、誰だあんたら!? て言うかアンセム!?」
その時、扉の開く音と共に知ってる声が響き渡る。
振り返ると、そこにいたのは変わり果てた幼馴染の姿だった。
「グ、グ、グ…グラッセ…!!」
「あぁ…グラッセ、お前も…!!」
「え、え?」
リズだけでなく、クウも注目するとグラッセが困惑する。
何故なら、今目の前にいるグラッセは…。
「グラッセの髪が、《茶色》になっただと…!?」
そう。グラッセの髪色が赤から茶色に変わってしまったのだ。ちなみに、性別は全く変わっていない。
だと言うのに、驚愕するアンセムと共に二人も絶望したようにその場で膝をついた。
「グラッセが男らしくなるとは!! 何たる不覚だぁ!!」
「すまねぇ、グラッセ!!」
「守れなくてごめんねグラッセぇぇぇ!!!」
「なにこれ? 何で髪色変わっただけでこんなに言われるんだぁぁぁ!!!」
髪の色しか変わってないグラッセのツッコミが宿中に響き渡ったのは言うまでもない。