番外編・後編
――――などといいつつ、抵抗できないレイアであった。
「このあとめちゃくちゃ………以下略。なおCERO指定に引っかかるため描写は伏せさせていただきます……と」
オパールはペンを置き、古書を閉じる。
諸般の事情でこの場からいなくなったクウとレイアに向けて投げキッスをひとつくれてやる。
「さぁ……次に我が無限の楽園《アンリミテッド・パラダイム・ワークス》に入門したい欲しがりさんは誰かしらん?」
「キミね……! おいたが過ぎるよ!」
キーブレードで空を切って身を翻し、愚兄――――もとい、シャオが立ち上がった。
敵意と怒気を露わにするシャオを前に、古書を抱き薄笑いを浮かべるオパール。悲しいかな、その表情は完全に悪役のソレだった。
「クックック……いいの? シャオ、私は今、この世界の因果《ルール》をこの手にしているのよ?」
「バカにするなよ! ボクだって勇者だ! 世界のバランスとかそういう意味じゃなく、やっていいことと悪いことの区別を付ける心くらい持っている!!」
「私の手にかかれば――――愚兄の因果、ここで断ち切れるというのに?」
「なん…………だと…………」
「クックック……シャオ。ギャグ補正の的にされた哀れな勇者。あなたの穢れきった因果を消してリライトしてあげてもいいのよ」
「うっ…………うぁ…………」
「いやいやいや」
頭を押さえて崩れ落ちるシャオ。その背中をさするようにルキルが手を置いた。呆れ加減に。
「マジなにやってんだ。お前勇者だろ。ホンモノの勇者だ。風評被害程度で揺らぐ心でどうするんだ?」
「…………さすがだなルキル。まるで勇者博士だ」
「ぶっとばすぞ愚兄」
「かはっ」
天丼で自滅してうつ伏せにぶっ倒れるシャオ。その様を、ルキルはゴミを見る目で見下した。
半ば自殺的にだがマインドブレイクして白目をむいているシャオにすっと白い手が差し伸べられた。
「さぁ、手を取るのだシャオ。あなたに世界の半分をくれてやるわ」
「お、オパール……オパール様……!」
「即堕ち!?」
シャオ、入信完了。
ふらふらと立ち上がったシャオは、ギラギラと目を光らせキーブレードの刀身を舌舐めずりする。
「ひゃっはっは。オパール様に逆らう俗物はいねーかぁ。俗物はいねーかー」
「いや、俗物はお前だろうが」
「黙れ邪神の狂信者め。我はオパール様より洗礼名を頂いた黄金聖勇者《ゴールドヒーロー》。双子座……即ちタロットの『恋人』の暗示を受けたアムブリエル・ザ・ラバーズ――――」
「いやっ……! なんかお前もう絶対変な宗教に入ってるぞ!?」
「もはや問答無用!! 真なる神の鉄槌を受けろ! くたばれフラッシュ!」
「ぐぉ!?」
頭のネジが吹き飛び別の何かを詰め直して強制的に溶接されたようなシャオ。
驚異的な動き――――具体的に言うと体を虹色に発光させてキーブレードを背中に背負い、秒速2000発のパンチを繰り出す動き――――でルキルに肉薄する。
オパールはペンを置き、また古書を閉じる。
「クックックァッ……最早私に敵はいないわぁ。この力を使い、外なる神として世界を秘密の花園として管理するのも悪くわないわね。クトゥルー的に、旧神になるのもいいわね。まずはこの古き世界にラグナロクを起こして新たな天地創造の一週間を――――」
などと、妄言を吐いているオパールであったが。
次の瞬間には自分の体が鎖で巻き取られていることに一切気がつかなかった。
「あれ?」
ワンテンポ遅れて身動きが取れなくなったことに気がついた。
その手から古書が奪い取られる。
「あっ……だめっ!」
「黙りなさい。……まったく、好き勝手にしてくれて」
オパールの死角からウィドの声が飛ぶ。オパールは舌打ちした。
「くっ……そういえば遺跡好き設定が消えたウィドなんてただの常識ある先生じゃないの。変態じゃない変態なんてただの凡人じゃないの!」
「なんだかムカつくほど失礼なことを言われた気がしますが……それはそうと、これもまた、なかなかの失われた古き魔法ですね。禁断魔法……というよりジャンクションの類に似ていますが」
「だめだって! ああもう! 動けねーし! なんなのよこの鎖!」
「ホールドという失われた白魔法ですよ。魔法先生ならそれくらい使えて当然です」
「えっ!? なにそれ洗濯魔法じゃないの!?」
「それはボールド。…………しかしなんでしょう。由緒ある歴史と趣に満ちた古き魔法をバカにされるのは、なぜだかイライラしますね……!」
「あ、やっぱり魂レベルで定着していた初期設定ってなかなか消えないのね。油汚れみたいに」
「さて……はじめますか、私の魔法ショーを。黒と白だけでは足りませんね。赤青緑と幻術なども如何です? ついでにめたもるや忍術もつけてあげますよ。教師らしく丁寧に、わかりやすく――――本物の暴力を教えてあげよう」
「このひとでな――――」
その後、オパールの声を聞いたものは誰もいなかった。
残ったのは状態異常満載のカエル一匹だけなのだから仕方ない。
「…………さて、いったいなにを変えたんでしょうねオパールは。私の記述に間違ったところは一切なさそうですが……おや、この本によると次は『パピヨン仮面』と名乗る姉さんが出てくるそうですね。…………うん。消しときましょう」
古書の1ページを破って焼き捨て、再び宝箱の中に戻すウィド。
半狂乱の周りのメンバーをしばき倒し、さっさとテレポで脱出した。
――――いろいろあって、なんとかなった。
* * * * *
「ってなにさこれ!!」
舞台裏。
パピヨンマスクが壁に思い切り投げつけられた。
「私の出番は!? 颯爽登場してもう一波乱するはずだったじゃない!! ちゃんとオファーもらってんのよ私は!! 私が絡んでギャグの皮被ったシリアスにしてからなんかいい雰囲気で終わらせる流れじゃなかった!?
――――え? 思ったより設定羅列する流れがつまんなかったからさっさと畳んだ?
企画レベルのミスじゃないの!! むりやり機械仕掛けの神《デウス・エクス・マキナ》っぽくネタにしてまとめるなんて蝶サイテー!!」
そうはいっても。
いろいろあって、なんとかなったのだもの(でうす)
「このあとめちゃくちゃ………以下略。なおCERO指定に引っかかるため描写は伏せさせていただきます……と」
オパールはペンを置き、古書を閉じる。
諸般の事情でこの場からいなくなったクウとレイアに向けて投げキッスをひとつくれてやる。
「さぁ……次に我が無限の楽園《アンリミテッド・パラダイム・ワークス》に入門したい欲しがりさんは誰かしらん?」
「キミね……! おいたが過ぎるよ!」
キーブレードで空を切って身を翻し、愚兄――――もとい、シャオが立ち上がった。
敵意と怒気を露わにするシャオを前に、古書を抱き薄笑いを浮かべるオパール。悲しいかな、その表情は完全に悪役のソレだった。
「クックック……いいの? シャオ、私は今、この世界の因果《ルール》をこの手にしているのよ?」
「バカにするなよ! ボクだって勇者だ! 世界のバランスとかそういう意味じゃなく、やっていいことと悪いことの区別を付ける心くらい持っている!!」
「私の手にかかれば――――愚兄の因果、ここで断ち切れるというのに?」
「なん…………だと…………」
「クックック……シャオ。ギャグ補正の的にされた哀れな勇者。あなたの穢れきった因果を消してリライトしてあげてもいいのよ」
「うっ…………うぁ…………」
「いやいやいや」
頭を押さえて崩れ落ちるシャオ。その背中をさするようにルキルが手を置いた。呆れ加減に。
「マジなにやってんだ。お前勇者だろ。ホンモノの勇者だ。風評被害程度で揺らぐ心でどうするんだ?」
「…………さすがだなルキル。まるで勇者博士だ」
「ぶっとばすぞ愚兄」
「かはっ」
天丼で自滅してうつ伏せにぶっ倒れるシャオ。その様を、ルキルはゴミを見る目で見下した。
半ば自殺的にだがマインドブレイクして白目をむいているシャオにすっと白い手が差し伸べられた。
「さぁ、手を取るのだシャオ。あなたに世界の半分をくれてやるわ」
「お、オパール……オパール様……!」
「即堕ち!?」
シャオ、入信完了。
ふらふらと立ち上がったシャオは、ギラギラと目を光らせキーブレードの刀身を舌舐めずりする。
「ひゃっはっは。オパール様に逆らう俗物はいねーかぁ。俗物はいねーかー」
「いや、俗物はお前だろうが」
「黙れ邪神の狂信者め。我はオパール様より洗礼名を頂いた黄金聖勇者《ゴールドヒーロー》。双子座……即ちタロットの『恋人』の暗示を受けたアムブリエル・ザ・ラバーズ――――」
「いやっ……! なんかお前もう絶対変な宗教に入ってるぞ!?」
「もはや問答無用!! 真なる神の鉄槌を受けろ! くたばれフラッシュ!」
「ぐぉ!?」
頭のネジが吹き飛び別の何かを詰め直して強制的に溶接されたようなシャオ。
驚異的な動き――――具体的に言うと体を虹色に発光させてキーブレードを背中に背負い、秒速2000発のパンチを繰り出す動き――――でルキルに肉薄する。
オパールはペンを置き、また古書を閉じる。
「クックックァッ……最早私に敵はいないわぁ。この力を使い、外なる神として世界を秘密の花園として管理するのも悪くわないわね。クトゥルー的に、旧神になるのもいいわね。まずはこの古き世界にラグナロクを起こして新たな天地創造の一週間を――――」
などと、妄言を吐いているオパールであったが。
次の瞬間には自分の体が鎖で巻き取られていることに一切気がつかなかった。
「あれ?」
ワンテンポ遅れて身動きが取れなくなったことに気がついた。
その手から古書が奪い取られる。
「あっ……だめっ!」
「黙りなさい。……まったく、好き勝手にしてくれて」
オパールの死角からウィドの声が飛ぶ。オパールは舌打ちした。
「くっ……そういえば遺跡好き設定が消えたウィドなんてただの常識ある先生じゃないの。変態じゃない変態なんてただの凡人じゃないの!」
「なんだかムカつくほど失礼なことを言われた気がしますが……それはそうと、これもまた、なかなかの失われた古き魔法ですね。禁断魔法……というよりジャンクションの類に似ていますが」
「だめだって! ああもう! 動けねーし! なんなのよこの鎖!」
「ホールドという失われた白魔法ですよ。魔法先生ならそれくらい使えて当然です」
「えっ!? なにそれ洗濯魔法じゃないの!?」
「それはボールド。…………しかしなんでしょう。由緒ある歴史と趣に満ちた古き魔法をバカにされるのは、なぜだかイライラしますね……!」
「あ、やっぱり魂レベルで定着していた初期設定ってなかなか消えないのね。油汚れみたいに」
「さて……はじめますか、私の魔法ショーを。黒と白だけでは足りませんね。赤青緑と幻術なども如何です? ついでにめたもるや忍術もつけてあげますよ。教師らしく丁寧に、わかりやすく――――本物の暴力を教えてあげよう」
「このひとでな――――」
その後、オパールの声を聞いたものは誰もいなかった。
残ったのは状態異常満載のカエル一匹だけなのだから仕方ない。
「…………さて、いったいなにを変えたんでしょうねオパールは。私の記述に間違ったところは一切なさそうですが……おや、この本によると次は『パピヨン仮面』と名乗る姉さんが出てくるそうですね。…………うん。消しときましょう」
古書の1ページを破って焼き捨て、再び宝箱の中に戻すウィド。
半狂乱の周りのメンバーをしばき倒し、さっさとテレポで脱出した。
――――いろいろあって、なんとかなった。
* * * * *
「ってなにさこれ!!」
舞台裏。
パピヨンマスクが壁に思い切り投げつけられた。
「私の出番は!? 颯爽登場してもう一波乱するはずだったじゃない!! ちゃんとオファーもらってんのよ私は!! 私が絡んでギャグの皮被ったシリアスにしてからなんかいい雰囲気で終わらせる流れじゃなかった!?
――――え? 思ったより設定羅列する流れがつまんなかったからさっさと畳んだ?
企画レベルのミスじゃないの!! むりやり機械仕掛けの神《デウス・エクス・マキナ》っぽくネタにしてまとめるなんて蝶サイテー!!」
そうはいっても。
いろいろあって、なんとかなったのだもの(でうす)