激突、主人公対決!1
全ては、この一言から始まった…。
「なぁ。リズとクウって主人公だけど、どっちも主人公らしくないよな」
「また突拍子のない事を…まぁ、否定出来ないけど」
「弟のお前は否定してやれよ」
初っ端から突拍子もない会話を行うのは、親友コンビのカヤとレイシャだ。尚、場所はどこぞの世界にある喫茶店だ。
さて、どうしてこんな話をしたのかと言うと…二人のキャラを知っている方は察しがつくだろう。
リズは主人公と言うには傍若無人な振る舞いを行い、女性であるにも関わらず恥じらいもなければ女と言う自覚もない。
次にクウ。主人公ポジであるにも関わらず、普段の性格は軽率で女誑し。協調性はあるにしろ、仲間内ですら舐められてるしトラブルを作りまくっている。
性格や思考、性別年齢は全く違うが、カヤの言う通り世に出ている主人公とは遠くかけ離れた存在に成り下がっている。
「あの2人でどっちが主人公らしいか競わせれば面白そうなんじゃね?」
「いや、2人とも面倒がってやりたがらないと思うけど」
「そこは…まぁ、クウ辺りは煽れば簡単に頷きそうだろ、リズに関してはグラッセに一任すれば問題ない」
何気なく呟いた疑問だったのに、話をしているうちに内容がでかくなってしまう。
「取りあえずクウに関してはウィド辺りにアポ取って脅は…ゴホン、協力して貰おうじゃないか」
「今『脅迫して貰おう』って言おうとしただろ!!?」
物騒な言葉に、すかさずレイシャがツッコミを入れる。
そんなこんなでカヤが立てた計画の噂が仲間たちに広がり、何時の間にかクウvsリズで主人公らしさを競うと言う話が持ち上がった。
そしてある日――
「リズ、今度お前とクウのどちらかが主人公らしいか競うイベントが開催されるんだろ」
「………は? ナニソレドユコト?」
ディスティニーアイランドの実家(リクの家)に帰って台所でおやつを作っていたリズに向かって、ムーンが衝撃的な言葉を放つ。
覚えのない対決の話をされて困惑を浮かべていると、ムーンも同様に疑問を浮かべる。
「え、カヤとレイシャ主催でやるって聞いたぞ」
「今初めて聞いたけど!!? 何でそんな面倒な話が出てんの!? そもそも主人公らしさなんて必要ないわよ、私は私らしく生きてるだけだし、と言うか一々そんなの考える事自体面倒。よって私は棄権しまーす」
「それがだな、何故か皆ノリノリで楽しみにしてるんだよ」
「何でよーーーーーーーーーー!!?」
作れる筈の逃げ道を防がれ、絶叫するリズ。
こうなったら殴り込んででも止めようと決意を固めた瞬間、後ろから肩を掴まれる。振り返ると、グラッセが黒い笑みを浮かべていた。
「リズ、往生際悪いぞ? 決着はちゃんと付けなきゃ駄目だろ」
「私引き受けるなんて一言も言ってないけど!? あーもー、分かった! やればいいんでしょやれば!!」
グラッセまで乗り気なのを見て、諦めついでにリズは叫ぶしか出来なかった。
そして、同じ頃――レイディアントガーデンのオパールの家にて。
「クウ、カヤとレイシャから招待状です」
クウが備え付けのソファで寛いでいると、突然ウィドが一通の手紙を差し出してきた。
「招待状? なになに…はぁ!? 主人公対決ぅ!?」
「まあ、私としては面し…実に下らなく意味のないイベントだとは思いますが」
「今『面白そう』とか言おうとしなかったか?」
思わずツッコミを入れるが、ウィドは無視して事のあらましをクウに説明する。
「カヤ主催の主人公対決する手伝いに任命されて、あなたを連れてこいと言われまして。そう言う訳で、同行してくれますよね?」
「はぁ? 俺そんなの興味ねーよ。世に出ている主人公らしくない性格なのは自分が一番分かってるしな。じゃソーユーコトデ」
「ええそう言うと思ってましたよ…だが逃がさん! 姉さん!」
「ごめんなさいね、クウ。ブリザラ!」
どこに潜んでいたのか、スピカが現れてクウの足元に氷の魔法を放つ。避ける暇なく、両足が床に貼り付けるように凍らせられた。
「んなぁ!? スピカ!!」
「折角の機会だもの。私としては参加して欲しいの。だから大人しく、来てくれない?(チャキリ)」
「これぞ姉弟の連携です(キンッ)」
「だー、この腹黒姉弟がぁぁぁ!!! 行く、行くから剣構えるんじゃねーーー!!!」
こうして、クウもまた二人に脅される形でイベントに参加する事となった。
そして、当日。
主人公対決として行われる場所は、レイディアントガーデンの商店街広場。
自分の仲間に連れられて(脅されてとも言う)やってきたリズとクウ。その周りには彼らの仲間達。更に観客席らしき所では顔を引く付かせているレイシャと、ノリノリで無表情のままナレーションするカヤがいた。
「本日はー!! リズvsクウによる主人公対決だー!!」
「カヤ、せめて表情出して」
完全に表情と声色があっておらず、レイシャは接し方が分からなくなってしまう。
「赤コーナー! 普段は女タラシで泣かせてきた女は数知れずなズボラ!! だが戦闘になると某ジャンプの主人公のように強くなる男! クウー!!」(※ウィドさんのメモ情報)
「おいカヤ後で覚えてろ…マジぶん殴るからな…!!」
「青コーナー! 我らが主人公にしてスーパー鈍感の名を司る破天荒女! 別名破壊神のじゃじゃ馬ことリズー!!」
「喧嘩売ってんなら買うぞコラァァァ!!?」
明らかにふざけた紹介文に二人が怒鳴るが、カヤは平然と話を進めた。
「さーて、お互いがやる気出してる所でー! 最初から飛ばしていくぜー!!! まず第1戦目は王道の戦闘だ!! お互い本気で戦えー!!」
「Σ(゜o゜) いきなり!! 普通戦闘って最後じゃないの!!?」
カヤが考えた対決方法はレイシャもしなかったようで、驚きを露わにする。
そんな中、嫌々全開だったリズは急に恐ろしい笑顔を浮かべ、クウに向かって拳を鳴らした。
「よっしゃ!! 初っ端から戦闘なら、溜まったストレス発散してやるよ…!!!」
「ア、オレキケンシマス」
命の危険を感じて、クウは片言で棄権を申し立てる。
「棄権は認められてませーん」
「ふざけんな、カヤァ!! 開始早々死ねって言うのかてめえー!!! てか、主人公競い合うならもっと別の…芸能〇格〇けチェックみたいなもんがあるだろー!?」
「んな在り来たりなモン俺がやるわけねぇ!!! 俺が求めるのは面白さのみだ!!!」
「無表情でとんでもない事言い出した俺の親友」
いつもの冷静と聡明さはどこへやら。今回のカヤはどこかぶっ壊れてるのかもしれない。
何言っても無駄だ。クウはその事に気づいて顔を背ける。だが、その先にあったのは笑顔で応援する四人の女達だった。
「大丈夫、クウなら勝てるわ!」
「そうです! クウさんが負ける筈ありません!」
「ボクの師匠は世界で一番強いんだからー!」
「相手が誰だろうが、目に物見せてくれるぞリズとやら!!」
「もう止めて! それ応援じゃない、俺の寿命を縮めてるから!!」
スピカ、レイア、ツバサ、シルビアの自信やら挑発も混じった応援にクウは顔を真っ青にさせる。え? なぜ敵に攫われている筈のシルビアまでここにいるか? 番外編と言う事でお願いします。
「後本気で死合いしろなんて一言もいってねぇだろ…ちゃんとこっちで用意した武器で戦ってもらう」
「今回はこの武器…ストラグルソードでストラグルバトルしてもらうよー!!!」
そう言いながらレイシャは前に出て、日本の青い棒…ストラグルソードを持ってきて、二人に手渡す。
「ストラグルバトル? ああ、あのボールを多く集めた方が勝ちって奴か」
「これなら死人も出ないだろうと言う判断だよ、リズ姉ちゃんー」
「た、助かった…これなら、どうにか死なずに済む…」
「よーし、ならクウ――そこに直れ」
クウがホッとしたのもつかの間。リズは魔王譲りのオーラ出しながらストラグルソードを構えてきた。
「おおっと、リズ選手、実父から直伝された魔王オーラを出しましたー!!」
「やっぱ棄権したい…」
そうして、勝負が始まる。
開始早々、機動力のあるリズが一気に攻め込んで攻撃当ててはボール拾う。素早さで言えばクウに勝っている。対するクウは、パワーはあるが現在右手も翼も使えない状態だ。適度な反撃はするが、既に勝負を諦めてるのか自分から攻める事はしなかった。
「終わりだァ!!!!」
そして残り数秒、リズは宙で回転してソードをクウに振り下ろす。
防いだり回避も出来る攻撃を、クウは敢えて受けてボールをばらまいた。
「そこまで!! この勝負は青コーナー! リズ!!」
時間切れとなり、持っているボールの所持数も明らか。カヤは高らかに宣言する。
ギャラリーであるグラッセ達もリズの勝利で囃し立てる中、クウは倒れたまま大の字で寝転がった。
「あー、負けた負けたー」
「んー、正直手抜いてる感じがされたから納得出来ないけどね」
「いや、素早さはお前が高いからどっちみち俺が負けるって……本気でやったらあそこの親馬鹿うるさそうだし…」
後半は小声で呟き、ある方向に目を向ける。
そこには、怒りで黒いオーラを出しているロクサスとニコニコとほほ笑むナミネがいた。
「…勝負に手を抜くのは感心しないな」
「手を抜く方が家の旦那は切れますよー」
「だー! ロクサスは黙ってろ!! 余計な事したら二度と話さないからね!!?」
「ごふっ!!!」
「父さんが血を吐いた!!? 救急班ー!!!」
レイシャが悲鳴を上げると、グラッセ、テルスによって吐血したロクサスを離れた場所に移動させて安静に寝かせた。
「はーい、親バカ1人回収しまーす」
「容態は…何で心臓止まりそうになってるの!!?」
「「はぁ!?」」
テルスの叫びに、たまたま近くにいたルキルとオパールも反応する。
「娘の容赦ない言葉が原因と聞いてますが…何なんでしょうね?」
「何でお前そんなに落ち着いているんだ!! 誰でもいい、蘇生装置(AED)持って来い!」
「心臓マッサージするわ! あばら折れるけど我慢なさい!」
「大丈夫です、この人ラスボス3人と戦闘して全身骨折したけど数日で完治した化物ですから」
必死にルキルとオパールもロクサスの治療に参加する光景に、クウは密かに決意した。
(もう生き残る事だけ考えよう! 変に考えたら終わりだ!)
何だかんだで、乗り気でなかったクウもやる気を見せたのだった。
第一回戦から場所を変え、次にやってきたのはトワイライトタウンの時計台前。
未だに無表情のまま進めるカヤから、第二回戦の対決内容が発表された。
「第2回戦は主人公に必要な心!! 『優しさ』で競いますー!!!」
「あ、これ私棄権していい?」
「だから棄権は認めてませんー!!」
直後、前のクウと同じような会話が真顔のリズによって行われる。
「『優しさ』がどういう風な奴に分類されるかわからない以上、私が優しく出来るかー!!!」
「優しさか、なら得意だ。なにせ俺には女性の心が手に取るように分かるからなぁ」
困っているリズと違い、クウは得意のキメ顔で言いのける。心なしか、キラリーンと言う効果音らしき幻聴も聞こえてきそうだ。
「……………」
「リズ選手、クウ選手のキメ顔にドン引きして鳥肌立ってますー!!」
「うわっ、蕁麻疹もでてる」
「何でだよ!? 納得いかねー!!」
固まるリズに、カヤとレイシャが実況するのでクウは怒りを露わにする。
「すまん、気持ち悪いから吐いて来る…おえええええ( ゜д゜)」
「…救急班、ケアをお願いします」
本当に吐き上げてしまったリズに、テルスとグラッセは同情を込めて背中を擦った。
「そう言えばリズはナルシストが苦手だったわねー」
「テルスさん、吐いてる場合の処置ってどうすればいいんですっけ?」
「そこまで嫌かよ!? この顔でどれだけの女を落としたと「「「サンダガ」」」ぬわぁ!?」
自慢話を言っていたクウのすぐ傍で、三つの巨大な雷が落ちた。
「クウ、自慢話はそこまでにして頂戴」
「今は勝負に集中ですよー?」
「そうだよ師匠。ナンパの勝負じゃなくて、優しさの勝負なんだから」
「…ハイ」
笑顔の中に圧力を込めたスピカ、レイア、ツバサに、クウはただ頷くしか出来なかった。
「………アイツバカか、自滅しやがった」
そう呟くムーンの横には、今も尚吐き続けるリズが。
「おろろろろ( ゜д゜)」
「おー、出せ出せ」
■作者メッセージ
この番外編は、リラさんとのチャットにて生まれた悪ふざ…キャラ設定等の話を元に作成しました。
話題は「リズもクウも世に出ているような正統派主人公キャラじゃないな」と言う内容からです。それが話し合っていく内に対決話となり、チャットが終わる頃にはボリュームある内容となった為、折角だしこちらの方で出す流れとなりました。リラさんから許可は貰ってます。
この後も話はまだまだ続きます。シリアスはなくギャグ作品ですので、気軽に読んでくださると嬉しいです。
話題は「リズもクウも世に出ているような正統派主人公キャラじゃないな」と言う内容からです。それが話し合っていく内に対決話となり、チャットが終わる頃にはボリュームある内容となった為、折角だしこちらの方で出す流れとなりました。リラさんから許可は貰ってます。
この後も話はまだまだ続きます。シリアスはなくギャグ作品ですので、気軽に読んでくださると嬉しいです。