海賊とクリスタルの航海日誌2
浜辺に寄せて返す波の音が心地よく響く。
上を見上げれば炎天下が降り注ぐ快晴日和。前を見れば一面真っ青な大海原。
左右に顔を動かせば、白い砂浜とヤシの木。後ろには人の手が行き届いてない所為で木や草が無造作に生い茂っていた。
「リク、ここどこ?」
「俺に聞くな」
「海が広がってる…」
砂浜に座り込んで目の前に広がる海を眺める、ソラ、リク、カイリの三人。
家の中にいたのに、気づいたらこんな場所に放り出されたのだ。思考が追い付いていなくても仕方ない。
しばらく三人で海を眺めていたが、だいぶ落ち着いたのかまずはソラが口を開いた。
「俺達の島じゃない…よな?」
「少なくとも違うだろう」
「じゃあ、別の世界に来ちゃったとか?」
「仮にそうだとして、どうやってだ? 闇の回廊も、異空の海を渡った覚えもないはずだ」
ソラへの問いかけを一つ一つ切り捨てるリク。今までは年上の人達ばかりが周りにいたおかげか、何割にも増して頼もしく思える。旅に出る前は当たり前の光景だったのに。
懐かしさを覚えるカイリだが、ふと辺りを見回した。
「ねえ、他の皆もこの世界に来てるのかな?」
「そこまでは分からない。とにかく、ここでじっとしていても何も始まらないだろう。この島を探索してみよう」
リクが重い腰を上げると、ソラは目を輝かせながら勢いよく立ち上がった。
「よーし、探検だー!」
「ソラ、遊びじゃないんだぞ」
まずは砂浜を辿るようにグルっと一周して、距離を確かめる。
一部は入り江や岩礁で途切れていたが、おおよその距離は測れた。次にソラ達は中心部に進む。
カイリもいるのでソラとリクが先陣で茂みをかき分けたり、邪魔な枝を切ったりして道を作る。そうして歩くと洞窟を見つけて中を探索する。
外と違ってヒンヤリとした空気が包んでいるし、内部もそこまで暗くもない。ウキウキ気分で進むソラの後ろで、リクとカイリはこれまでの現状について話していた。
「洞窟があったのは幸いだな…これで雨風は凌げる」
「果物もあったから、食料の確保も出来たね」
「後は飲み水と、この島の脱出法だな。この洞窟に水があればいいが…」
リクが一抹の不安を見せていると、先を歩いているソラが急に足を止めた。
「二人とも、何か聞こえない?」
ソラの言葉に、二人も耳を澄ます。
すると、キンキンと金属がぶつかり合ったり水飛沫の音が奥の方から聞こえてくる。
「これは…争っている音か?」
「誰か戦ってるのかも!」
冷静に判別するリクの呟きに、カイリが焦りを見せる。
急いで三人は走り、洞窟の奥へと進む。音は段々近くなり、ハッキリと聞こえてくる。
「――あー、もー! うっとおしいったらありゃしない!」
「あれ、この声って…」
聞き覚えのある女性の悲鳴にカイリが反応していると、こちらに向かって何かが飛び込んできた。
「うわっ!?」
「ハートレス!?」
それは海賊風のハートレス…以前、フックの海賊船にいたパイレーツと言う種類のもので、それが足元に倒れ込むと消えていった。恐らく吹き飛ばされたのだろう。
いきなりの事に驚くソラとカイリだが、リクは一人嫌な物でも思い出すかのように頭を押さえだした。
「う、頭痛が…!」
「リク、どうしたんだ!?」
「えっ、リク!?」
ソラの声に反応するように、誰かが飛び込んでくる。
長い金髪に緑の瞳…いつもの軽装ではなく、腹出しの赤のインナーと黒の皮のホットパンツ付きのミニスカートとブーツ、短い袖の金の縁で黒のジャケットに左目の眼帯にドクロマークの海賊帽。手に持っているのは、タガーではなくカトラス風の剣。腰に付けてある皮のベルトには銃が収められている。
衣装は違うが、それは紛れもなくオパールだった。
「オパール!?」
「オパール、その格好どうしたの!?」
「あ、これ? ふっふーん、海賊仕様にジョブチェンジしたの! この海のお宝はあたしの物よ!」
「「ジョブチェンジ?」」
聞きなれない単語にソラとカイリが首を傾げると、まだ残っているハートレスが迫ってくる。
話は一時中断と向き合うオパール。ソラも隣でキーブレードを取り出すと、嫌な過去の思い出をどうにか振り切ったリクも復活した。
「オパール、お前剣なんて扱えるのか?」
「失礼ね。まあ、今まではナイフ系だったからそう言われるのも分かるわ。けど、今回のあたしは一味違うわよ!」
自信満々に飛び出すと、剣で斬りかかる。
普段のオパールの戦い方は、素早さと不意打ちによるナイフでの攻撃。そしてアイテムを組み合わせて様々な効果を発揮する合成だ。だが、今の彼女はソラ達と同じように前線で武器を振るって戦っている。
今までと違う戦いを見せるオパールに、カイリは後ろで歓声を上げる。
「凄い! かっこいい!」
「そして新技! トライチャージ!」
突進するようにハートレスに迫ると、三つの連撃を勢いよく叩きつける。
それなりに残ってたハートレスは、ソラとリクの増援もあってすぐに倒されたのだった。
「どーよ!」
「オパール、そんな事出来たんだな!」
得意げに腰の鞘に剣を収めるオパール。ソラもカイリと同じように目を輝かせる。
しかし、一人冷静なリクは呆れかえったような溜息を吐きながらキーブレードを消した。
「それで、その変な衣装やここに来た経緯とか説明してくれるのか?」
「変な衣装って失礼ね! 海賊よ、か・い・ぞ・くっ! まあ、説明はするけど」
リクに力説するが、説明は必要と分かっているようでオパールも気を取り直して緩んでいた顔を元に戻した。
「まず、この世界に来た理由だけどあたしもよく分かってないの。気づいたらここにいたって感じ? で、次にこの衣装だけど…ちょっとこの先にあった宝箱から手に入れたクリスタルをゲットしたら、こうなったって言うか。前に聞いた事あるんだよねー、自分の元から持っている能力…あたしで言うと盗賊に近い能力でしょ? その能力を、全く別に変える事が出来るアイテムとかあるの。それをジョブチェンジって言うのよ。さっき見て貰ったけど、今のように戦っても特に違和感ない…って言うより、しっくり来てるの。だからそう名称したって訳」
一名が頭から煙を出して混乱しているが、リクとカイリはオパールの現状と能力変化に納得した。
「要は、その衣装だけでなく戦い方が変わったんだな」
「でも大丈夫なの? 今までの戦い方が使えないって事でしょ?」
「そうね…素早さも落ちたし、どう言う訳か合成とか使えなくなったけど」
「その代わりに力は上がっている…なあ、それって体重が「トライチャージ!!」はぐぉ!?」
いきなりオパールに技込みでぶん殴られて、吹っ飛ばされるリクだった。
「あんた、その先の言葉言ってみなさい!! ぶっ飛ばすわよ!!」
「リクってばサイッテー、女の敵!! リリスがリクを目の敵にする理由がよく分かった!!」
「なんで…こうなるんだ…!」
オパールだけでなくカイリからも攻め立てられてしまい、リクは撃沈するしかなかった。
「話を戻して…前の力は使えないけど、特に問題はないわ。寧ろ新鮮! 剣をこうも振り回すのって結構楽しい!」
「うん、その気持ち俺も分かる! なんかこう、今までと違った戦い方ってワクワクするよな! フォームチェンジとかよくやったなー!」
何か似たような経験があるのか、オパールと意気投合するソラ。二人でワイワイ盛り上がっていたが、話の脱線を感じたリクが空気に割り込んだ。
「とにかく、オパールに会えて良かった。この様子なら、他の人も来ている可能性があるな」
「そうだね、早く合流しなきゃ」
「そう言えば、皆はどうやってここに来たの?」
カイリも気を取り直した所で、オパールが問いかける。その質問に、三人はこれまでの経緯を話す。
「そっか…じゃあ、この島にはあたし達しかいないのかな?」
「探索した以上、そうなるな。俺達だけなのか、それとも別の場所にいるか…」
この島には自分達しかいないと分かり、困り果てるリク。しかし、オパールからは予想しない言葉が返ってきた。
「別の場所ね…もしかしたら、他の島かもしれないわ」
洞窟の先にあったのは、海に繋がる岩礁で出来た入り江。
波打ち際に乗りかかるように座礁した一隻の船。船の端には大砲が設置されており、帆には大きくドクロのマークが描かれている。
そこまで大きくはないが、4人が乗るには少し大きいサイズの海賊船にソラとカイリは興奮する。
「うっわあ!! 海賊船だー!!」
「オパール、これどうしたの!?」
「この入り江で見つけたのよ、ほら来て!」
船の近くの岩を使って、器用に船へと飛び移るオパール。三人も真似をして海賊船へと足を踏み入れる。
甲板は古いが、そこまで痛んでいない。船の具合を確かめていると、操舵席にいるオパールが手を振って呼んでくる。そこまで行くと、近くの台に一枚の紙を広げた。
茶色く煤けた紙に書かれているのは、方角と点々とした染み。その一つに赤くバツ印が書かれている。この地図が何なのか、リクはすぐに分かった。
「これは、海図か?」
「そ。この船にあったのはこの海図と、クリスタル。どちらもこの下の船長室にあって、クリスタルの方は鍵のかかった宝箱からゲットした途端に光って海賊の力を手に入れたの」
「お前な、何でもかんでも飛びついて…その内酷い目に遭うぞ」
キーブレード無しでも鍵開けが出来るピッキング能力に、つい口を挟むリク。
オパールの悪い癖を注意すると、案の定不機嫌そうにむくれた。
「結果的には良かったんだからいいじゃない! んで、この海図。印が付いている所があたし達がいる島でしょうね。それで他にも島がある」
「じゃあ、他の島を目指してこの船で出発か?」
「そうよ、ソラ。島を巡りながらみんなと合流、そして最終的に…」
「元の世界に帰るでしょ、分かってるよオパール!」
「え?」
先の言葉を被せる様にカイリが言うと、なぜかオパールは目を丸くした。
「え?」
「……そ、そうね。元の世界に帰る方法探さないとね! あ、あははっ!」
カイリが聞き返して固まっていたが、我に返ったのか明後日の方向を見て笑い声をあげるオパール。
何かおかしい、真っ先に感じたのはリクだった。
「おい、オパール。お前何か隠してないか?」
「か、隠してる…? な、何の事かしら〜…?」
リクから目を逸らすオパール。行動も挙動不審っぽく見えるのは気のせいではない。
流石のソラとカイリも怪しいものを見る目でジーっと見つめる。
「わ、忘れてただけよ! ほら、今のあたし海賊だし! こう、気分が盛り上がってるだけって言うか…! だからそんな目で見ないでよ!」
「お前、本当にオパールか? 偽物とか敵に操られているとかないよな?」
「んな訳ないでしょ!! あたしは自分の欲望に忠実なだけよ!! と言うか、ソラに言われると流石のあたしも傷つくんですけど!!」
「オパール、本当の事言うなら昔撮ったリクの隠し撮り写真渡すけど?」
「ぐっ! うぐぐ…!」
「いや待てカイリ! 何時の間にその写真を!?」
葛藤するオパールを尻目に、リクは盗撮されていた事実に驚きを隠せない。
だが、自分の欲望とやらに忠実なオパールの心の壁は強かった。
「いや、本当に忘れてただけだから…! 帰る方法だって、ちゃんと探すから、うん…!」
「ふーん、これでも?」
ピラリ、とカイリによって一枚の写真がオパールの前に差し出される。
それは一年前、故郷の海で水着姿で遊んでいるリクの写真だった。無邪気に遊んでいるからだろう、笑顔が眩しい逸品である。
「う…うあああああああん!! クリスタルと海図以外にも航海日誌見つけました島を巡ると世界中から奪った数々の宝が眠る宝物庫の島に繋がる道が開くそうですそんなお宝空賊でも海賊でも欲しいに決まってるでしょお願い手伝ってぇ!!」
こうして、オパールはノンブレスで本音をぶちまけると三人に土下座して頼み込んだ。
交渉のためにカイリが持っていたリクの写真もちゃっかりと懐に仕舞い込んで。
■作者メッセージ
今日はKHuxのダークロードの配信日。この日に番外編の続き出せてよかった。
もちろんユニクロはxの時代からプレイしているので、当然やりました。ゼアノートの物語だそうですが…果たして同期の何人が今の時代に関わる人なんでしょう、シグバールとかルクソードとかマールーシャにラクシーヌにヴェン、ユニクロからKH3、怒涛の展開すぎでしょう…。
それはそうと、やった感想は…オートで進めるってのがいいですね。作業片手に進めれるのは現代人にとってありがたい。物足りなさはあるかもですが、もともとユニクロもありますからね。ちょうどいいくらいです。
ゼアノートの話だけれども…最初の部分では、まだ闇はそんなに感じてない。これからどんどん闇の思考にはまるんだろうな…そしてエラクゥスとは…Bbsとしては年老いた時に離別するのは分かりますが、ね。若い頃を楽しみたいと思います。
もちろんユニクロはxの時代からプレイしているので、当然やりました。ゼアノートの物語だそうですが…果たして同期の何人が今の時代に関わる人なんでしょう、シグバールとかルクソードとかマールーシャにラクシーヌにヴェン、ユニクロからKH3、怒涛の展開すぎでしょう…。
それはそうと、やった感想は…オートで進めるってのがいいですね。作業片手に進めれるのは現代人にとってありがたい。物足りなさはあるかもですが、もともとユニクロもありますからね。ちょうどいいくらいです。
ゼアノートの話だけれども…最初の部分では、まだ闇はそんなに感じてない。これからどんどん闇の思考にはまるんだろうな…そしてエラクゥスとは…Bbsとしては年老いた時に離別するのは分かりますが、ね。若い頃を楽しみたいと思います。