海賊とクリスタルの航海日誌3
色々考えた結果、三人はオパールの頼みを引き受ける事にした。船が無ければ進めないのもあるが、お宝と言う言葉にソラとカイリも興味が湧いたからだ。
ただ、リクは協力する条件として『巻き込まれた仲間を探し出す』『元の世界に帰る手がかりもちゃんと探す』と言い聞かせた。それともう一つ、隠し撮りしていた写真を返せとも。
渋々取り出したオパールの手から奪い取ると、リクはビリビリに破いて粉々にした。「お宝写真がぁ…」とか嘆いたオパールを、ソラとカイリは黙って宥めたとか。
「食料乗せたよー」
「こっちもバッチリ!」
そして今。この島から出航する準備が終わった。
皆で書き集めた何日分かの食料をカイリが別の部屋に詰め込み、ソラは船の座礁した部分で待機している。
「本当に大丈夫なのか? 座礁した船をまた海に戻すとか、ソラの力だけじゃ限度があるだろ」
「あたしは海賊よ。海を支配出来ないで、お宝が取れるかっての…総員持ち場につけー! これより出航よー!」
自信満々にリク言ってのけると、オパールは号令をかける。掛け声を合図に、ソラはキーブレードを取り出した。そしてオパールもまた、手を前に掲げて文様を描くように動かす。
「エアロガ!」
船の底の部分に向けて、壊れない程度に風の魔法で船を浮かせる。すると、陸の部分から水位が上がり始める。
「うわっ! カイリ、ロープ!」
急に膝元までが水で沈み、手を伸ばすソラ。すぐにカイリは用意してあるロープを投げる。
ソラが甲板に上がる頃には、船は上手く水の上に浮かんでいた。
「よーし、初めてだったけど成功! このまま進ませる、宿命のボルトラン!」
オパールが甲高く指笛を吹くと、背後から高波が迫りよって船にぶつかる。
その勢いと波に乗っかる形で、彼らの船は広い海へと出航した。
島を出て早速ドクロマークの描かれた帆を全開にする。広げた帆は潮風を受けて、海を進んでいく。カイリは甲板から顔を覗かせる。
「わあぁ…! 凄いね、ちゃんと進んでる!」
問題なく進む海賊船に、オパールは操舵席で舵輪を握った。
「それじゃ、まずは北西の島に向かって進むわよ。そこでお宝へのアイテムを手に入ればいいんだけど」
「皆を探すのも忘れるなよ?」
「もー、覚えてるってばー」
リクに釘を刺されつつも、舵を思いっきり切って北西に向けて進んでいった。
航海を始めて2時間。周りは全て海しか見えない、同じような景色が続いている。
操縦や見張りはオパールとリクに任せ、ソラとカイリは船の柵に寄りかかるように海をぼんやりと眺めていた。
「暇だなぁ…」
「暇だねぇ…」
「何時になったら着くんだろうな?」
「方角は分かっても、距離までは分からないもん。食料は多めに積み込んだけど…」
「いざとなったら魚でも取れば大丈夫。そうだ、どうせ暇だし釣りでもすれば…あ、釣り竿が無いか。参ったな…」
うーん、と困った顔でソラが頭を抱える。それが可愛らしくてカイリがクスクス笑っていると、視界の端に海と空以外の色が小さく映った。
「…あ、ソラ。あれじゃない?」
カイリが指を差すと、ソラもつられて目を向ける。
遠すぎてまだボンヤリとしか見えないが、確かに島があった。
「本当だ! リクー、オパールー、島が見えたぞー!」
「聞こえてるぞ」
やっと見えた目的地にソラは振り返って叫ぶ。リクもまた島を見つけていたようで冷静に返す。
このまま目的地に到着――かと、思われた。
「あれ?」
不意に、ソラの隣にいたカイリが小さく首を傾げなければ。
「どうしたんだ、カイリ?」
「今、島の方で何か光った気が…」
ソラに答えていると、何やら空気を裂くような音が遠くから聞こえて来た。
「なんだ?」
空から聞こえてくる音に、ソラは顔を上げる。
すると、島の方角からこちらに向かって光の矢が数本ほど向かってきているではないか。
「っ、オパール! 舵を切れ!」
「言われなくても!!」
「「わわっ!」」
リクのとっさの指示に、オパールは即座に舵を右に切る。これにより、ソラとカイリがバランスを崩して転倒してしまう。
急いで舵を切った事で、船はその場から右の方向へと進む。そして、本来向かっていた方向に光の矢が海に着弾して水飛沫を上げながら爆発を起こした。
「攻撃されてる!?」
「くそ、誰だ!」
甲板に倒れたままソラが驚く間にも、リクは島の方向を警戒する。
「いっけぇ!!」
すると、今度は真上から何かが船のマストに激突してきた。
「きゃああ!」
船は激しく揺れ動き、マストの一部も落ちてカイリは悲鳴を上げる。
突然の敵襲に全員が武器を抜いていると、頭上から声がした。
「そこの海賊、大人しく立ち去るんだ!」
「今なら手荒な事は…って、あれ?」
警告をしてきたのに、急に間抜けな声を出してくる。
妙に聞き覚えのある声に四人が一斉に顔を向けると、なんとキーブレードライドをして空中に浮かんでいるテラとヴェンだった。
「テラ、それにヴェン!!」
「ヴェンも来てたんだ!」
思わぬ再会に喜ぶリクとソラ。一方、当の二人はと言うと目を疑うとばかりに四人を凝視していた。
「みんな、なぜ海賊に…」
「え、えーと。これには深いようで深くない訳が…」
テラへの説明に困り、頭を掻くソラ。事情があるとヴェンは分かったらしく、テラと相談を始める。
「どうしよう、テラ? これ、いいのかな?」
「うーむ…」
「二人とも、海賊を前に何を…って、あなた達!?」
続けてやってきたのは、同じくキーブレードを乗り物にしたアクアだ。これまた同じように、海賊船の四人を見つけて驚いている。
それに構わず、ソラはにこやかに笑顔を作る。
「アクアもヴェン達といたんだな!」
「ねえ、アクア。これどうしよ? ソラ達だとは思わなかった…」
「うーん…」
ヴェンの言葉に、アクアもまたテラと同じように顔を顰める。
そんな空気を知ってか知らずか、ソラはヴェン達に向かって大声で話し始める。
「あのさー、俺達お宝を探しているんだ! そのためにお宝に続く為のアイテムが必要なんだけど、この島に無かったー?」
「お宝に続く為のアイテム?」
「テラ、もしかして『アレ』かな?」
心当たりがあるのか、ヴェンがテラに聞き返す。
すぐに見つかった情報の手がかりに、カイリはヴェンに問いかけた。
「何か知ってるの?」
「まあ、一応…だけど」
どう言う訳か、言葉を濁すヴェン。テラとアクアもまた、微妙な顔をして目を逸らしている。
さっきから仲間であるのに煮え滾らない反応しか返ってこない。ソラ達も首を傾げていると、オパールが溜息を吐いた。
「はぁ、まだるっこしいわね」
そう言うと、腰に差してある剣を抜いてヴェン達に突き付けた。
「だったら勝負よ! お宝の為なら略奪だってするのが海賊ってもんよ! 邪魔するなら海に沈んで貰うわ!」
「オパール、何を言い出すんだ!?」
いきなり味方に対して宣戦布告を叩きつけたのだ、リクも目を丸くする。
それはヴェンとテラも同じだったが、アクアだけは違った。
「いいえ…海に沈むのはあなた達の方よ。今すぐ海賊を止めるなら、島に上がらせる事は可能よ」
「海賊を止める? いくらアクアの頼みだからって聞けないわ! あたしは海賊としてこの世界に眠るお宝を手に入れる! そう決めたんだから!」
「オパール、巻き込まれた皆を探すのは?」
「それはそれ、これはこれ!」
清々しいほどにカイリに言い切ると、アクアもまた覚悟を決めたのかハンドルを握り直した。
「考えを改めないのなら仕方ないわ。テラ、ヴェン! この海賊船を沈めるわよ!」
「ほ、本当にいいの、アクア!?」
「こうなった以上は仕方ない! やるぞ、ヴェン!」
狼狽えるヴェンだが、テラも腹を括ったようでアクアと共に鎧の姿になる。やる気になった二人に、ヴェンも肩のパッチを叩くと鎧を身に着けて戦闘態勢を取る。
オパールもまた、三人に剣を突き付けたまま指示を出す。
「砲台よーい、あの三人を迎え撃てー! リク、操縦任せたわよ!」
「なんでこうなるんだ!? ああ、もう!」
こうなってしまえば収集が付かないと諦めたのか、リクは操舵席で舵を取る。
ソラはまだ壊れていないマストを垂直に上り、ヴェンへとキーブレードを振るう。
「それっ、っとぉ!?」
だが、攻撃はヴェンの乗り物によって簡単に弾かれる。
「ソラには悪いけど、空中を自由に移動出来る俺の方が小回りが効くから、さっ!」
更にエアレイヴで回転を加えた体当たりを繰り出した。まともに防御も出来ず、ソラは甲板に叩きつけられてしまう。
「うう…!」
「キーブレードの乗り物って卑怯じゃない!? こっち攻撃が届かないんだけどー!」
相手側の有利な状況に、オパールが悲鳴を上げる。
相手は空中を飛び回って攻撃を仕掛けてくる。大砲を打ち込んでも、テラとヴェンは避けるし、アクアに至っては先端を弓の形状にしてウィングアローで撃墜される。
「だったら、サンダガ!」
「よっと!」
「ふっ!」
「リフレク!」
これならとソラが広範囲の雷を大量に落とすが、それさえもヴェン、テラは避けてアクアも魔法で防御する。
「ヴェン、やるぞ!」
「うん、一緒にっ!」
そして、テラとヴェンのアタックが左右の船体に襲い掛かる。この攻撃に耐えきれず、船には損傷が出来てしまう。
このままでは本当に海に沈められると、リクは舵を取りつつオパールに叫ぶ。
「どうするんだ!?」
「面舵いっぱーい、この場から撤退する! 全員船にしがみ付いて振り落とされるわよ!」
指示を出すと、手を動かして文様を描き出す。何をしたいのか分かり、ソラとカイリは柵にしがみ付いてリクは舵を限界まで切る。
邪魔しようとヴェン達が再び近づくが、その前にオパールの指笛が鳴った。背後から津波が起こり、慌てて三人は散り散りに避難する。その間に、大きな波に海賊船が乗っかる形でその場から勢いよくソラ達は逃げていったのだった。
「は、早い…」
逃げ足の速さにヴェンが呆然と見送る中、アクアは身に纏っていた鎧を解除した。
「流石にこれ以上島から離れる訳にはいかないわね。戻りましょう」
敵を逃がす形だったが戦いが終わり、アクアは島にUターンしていく。
テラも後に続く中、先ほどの四人を思い返した。
「成り行きで戦ったが…これで良かったのか?」
「しょうがないでしょ。海賊のあの子達の船なんて近づけたら…」
答えを返すアクアの顔は、どこか心配している様子だった。
ただ、リクは協力する条件として『巻き込まれた仲間を探し出す』『元の世界に帰る手がかりもちゃんと探す』と言い聞かせた。それともう一つ、隠し撮りしていた写真を返せとも。
渋々取り出したオパールの手から奪い取ると、リクはビリビリに破いて粉々にした。「お宝写真がぁ…」とか嘆いたオパールを、ソラとカイリは黙って宥めたとか。
「食料乗せたよー」
「こっちもバッチリ!」
そして今。この島から出航する準備が終わった。
皆で書き集めた何日分かの食料をカイリが別の部屋に詰め込み、ソラは船の座礁した部分で待機している。
「本当に大丈夫なのか? 座礁した船をまた海に戻すとか、ソラの力だけじゃ限度があるだろ」
「あたしは海賊よ。海を支配出来ないで、お宝が取れるかっての…総員持ち場につけー! これより出航よー!」
自信満々にリク言ってのけると、オパールは号令をかける。掛け声を合図に、ソラはキーブレードを取り出した。そしてオパールもまた、手を前に掲げて文様を描くように動かす。
「エアロガ!」
船の底の部分に向けて、壊れない程度に風の魔法で船を浮かせる。すると、陸の部分から水位が上がり始める。
「うわっ! カイリ、ロープ!」
急に膝元までが水で沈み、手を伸ばすソラ。すぐにカイリは用意してあるロープを投げる。
ソラが甲板に上がる頃には、船は上手く水の上に浮かんでいた。
「よーし、初めてだったけど成功! このまま進ませる、宿命のボルトラン!」
オパールが甲高く指笛を吹くと、背後から高波が迫りよって船にぶつかる。
その勢いと波に乗っかる形で、彼らの船は広い海へと出航した。
島を出て早速ドクロマークの描かれた帆を全開にする。広げた帆は潮風を受けて、海を進んでいく。カイリは甲板から顔を覗かせる。
「わあぁ…! 凄いね、ちゃんと進んでる!」
問題なく進む海賊船に、オパールは操舵席で舵輪を握った。
「それじゃ、まずは北西の島に向かって進むわよ。そこでお宝へのアイテムを手に入ればいいんだけど」
「皆を探すのも忘れるなよ?」
「もー、覚えてるってばー」
リクに釘を刺されつつも、舵を思いっきり切って北西に向けて進んでいった。
航海を始めて2時間。周りは全て海しか見えない、同じような景色が続いている。
操縦や見張りはオパールとリクに任せ、ソラとカイリは船の柵に寄りかかるように海をぼんやりと眺めていた。
「暇だなぁ…」
「暇だねぇ…」
「何時になったら着くんだろうな?」
「方角は分かっても、距離までは分からないもん。食料は多めに積み込んだけど…」
「いざとなったら魚でも取れば大丈夫。そうだ、どうせ暇だし釣りでもすれば…あ、釣り竿が無いか。参ったな…」
うーん、と困った顔でソラが頭を抱える。それが可愛らしくてカイリがクスクス笑っていると、視界の端に海と空以外の色が小さく映った。
「…あ、ソラ。あれじゃない?」
カイリが指を差すと、ソラもつられて目を向ける。
遠すぎてまだボンヤリとしか見えないが、確かに島があった。
「本当だ! リクー、オパールー、島が見えたぞー!」
「聞こえてるぞ」
やっと見えた目的地にソラは振り返って叫ぶ。リクもまた島を見つけていたようで冷静に返す。
このまま目的地に到着――かと、思われた。
「あれ?」
不意に、ソラの隣にいたカイリが小さく首を傾げなければ。
「どうしたんだ、カイリ?」
「今、島の方で何か光った気が…」
ソラに答えていると、何やら空気を裂くような音が遠くから聞こえて来た。
「なんだ?」
空から聞こえてくる音に、ソラは顔を上げる。
すると、島の方角からこちらに向かって光の矢が数本ほど向かってきているではないか。
「っ、オパール! 舵を切れ!」
「言われなくても!!」
「「わわっ!」」
リクのとっさの指示に、オパールは即座に舵を右に切る。これにより、ソラとカイリがバランスを崩して転倒してしまう。
急いで舵を切った事で、船はその場から右の方向へと進む。そして、本来向かっていた方向に光の矢が海に着弾して水飛沫を上げながら爆発を起こした。
「攻撃されてる!?」
「くそ、誰だ!」
甲板に倒れたままソラが驚く間にも、リクは島の方向を警戒する。
「いっけぇ!!」
すると、今度は真上から何かが船のマストに激突してきた。
「きゃああ!」
船は激しく揺れ動き、マストの一部も落ちてカイリは悲鳴を上げる。
突然の敵襲に全員が武器を抜いていると、頭上から声がした。
「そこの海賊、大人しく立ち去るんだ!」
「今なら手荒な事は…って、あれ?」
警告をしてきたのに、急に間抜けな声を出してくる。
妙に聞き覚えのある声に四人が一斉に顔を向けると、なんとキーブレードライドをして空中に浮かんでいるテラとヴェンだった。
「テラ、それにヴェン!!」
「ヴェンも来てたんだ!」
思わぬ再会に喜ぶリクとソラ。一方、当の二人はと言うと目を疑うとばかりに四人を凝視していた。
「みんな、なぜ海賊に…」
「え、えーと。これには深いようで深くない訳が…」
テラへの説明に困り、頭を掻くソラ。事情があるとヴェンは分かったらしく、テラと相談を始める。
「どうしよう、テラ? これ、いいのかな?」
「うーむ…」
「二人とも、海賊を前に何を…って、あなた達!?」
続けてやってきたのは、同じくキーブレードを乗り物にしたアクアだ。これまた同じように、海賊船の四人を見つけて驚いている。
それに構わず、ソラはにこやかに笑顔を作る。
「アクアもヴェン達といたんだな!」
「ねえ、アクア。これどうしよ? ソラ達だとは思わなかった…」
「うーん…」
ヴェンの言葉に、アクアもまたテラと同じように顔を顰める。
そんな空気を知ってか知らずか、ソラはヴェン達に向かって大声で話し始める。
「あのさー、俺達お宝を探しているんだ! そのためにお宝に続く為のアイテムが必要なんだけど、この島に無かったー?」
「お宝に続く為のアイテム?」
「テラ、もしかして『アレ』かな?」
心当たりがあるのか、ヴェンがテラに聞き返す。
すぐに見つかった情報の手がかりに、カイリはヴェンに問いかけた。
「何か知ってるの?」
「まあ、一応…だけど」
どう言う訳か、言葉を濁すヴェン。テラとアクアもまた、微妙な顔をして目を逸らしている。
さっきから仲間であるのに煮え滾らない反応しか返ってこない。ソラ達も首を傾げていると、オパールが溜息を吐いた。
「はぁ、まだるっこしいわね」
そう言うと、腰に差してある剣を抜いてヴェン達に突き付けた。
「だったら勝負よ! お宝の為なら略奪だってするのが海賊ってもんよ! 邪魔するなら海に沈んで貰うわ!」
「オパール、何を言い出すんだ!?」
いきなり味方に対して宣戦布告を叩きつけたのだ、リクも目を丸くする。
それはヴェンとテラも同じだったが、アクアだけは違った。
「いいえ…海に沈むのはあなた達の方よ。今すぐ海賊を止めるなら、島に上がらせる事は可能よ」
「海賊を止める? いくらアクアの頼みだからって聞けないわ! あたしは海賊としてこの世界に眠るお宝を手に入れる! そう決めたんだから!」
「オパール、巻き込まれた皆を探すのは?」
「それはそれ、これはこれ!」
清々しいほどにカイリに言い切ると、アクアもまた覚悟を決めたのかハンドルを握り直した。
「考えを改めないのなら仕方ないわ。テラ、ヴェン! この海賊船を沈めるわよ!」
「ほ、本当にいいの、アクア!?」
「こうなった以上は仕方ない! やるぞ、ヴェン!」
狼狽えるヴェンだが、テラも腹を括ったようでアクアと共に鎧の姿になる。やる気になった二人に、ヴェンも肩のパッチを叩くと鎧を身に着けて戦闘態勢を取る。
オパールもまた、三人に剣を突き付けたまま指示を出す。
「砲台よーい、あの三人を迎え撃てー! リク、操縦任せたわよ!」
「なんでこうなるんだ!? ああ、もう!」
こうなってしまえば収集が付かないと諦めたのか、リクは操舵席で舵を取る。
ソラはまだ壊れていないマストを垂直に上り、ヴェンへとキーブレードを振るう。
「それっ、っとぉ!?」
だが、攻撃はヴェンの乗り物によって簡単に弾かれる。
「ソラには悪いけど、空中を自由に移動出来る俺の方が小回りが効くから、さっ!」
更にエアレイヴで回転を加えた体当たりを繰り出した。まともに防御も出来ず、ソラは甲板に叩きつけられてしまう。
「うう…!」
「キーブレードの乗り物って卑怯じゃない!? こっち攻撃が届かないんだけどー!」
相手側の有利な状況に、オパールが悲鳴を上げる。
相手は空中を飛び回って攻撃を仕掛けてくる。大砲を打ち込んでも、テラとヴェンは避けるし、アクアに至っては先端を弓の形状にしてウィングアローで撃墜される。
「だったら、サンダガ!」
「よっと!」
「ふっ!」
「リフレク!」
これならとソラが広範囲の雷を大量に落とすが、それさえもヴェン、テラは避けてアクアも魔法で防御する。
「ヴェン、やるぞ!」
「うん、一緒にっ!」
そして、テラとヴェンのアタックが左右の船体に襲い掛かる。この攻撃に耐えきれず、船には損傷が出来てしまう。
このままでは本当に海に沈められると、リクは舵を取りつつオパールに叫ぶ。
「どうするんだ!?」
「面舵いっぱーい、この場から撤退する! 全員船にしがみ付いて振り落とされるわよ!」
指示を出すと、手を動かして文様を描き出す。何をしたいのか分かり、ソラとカイリは柵にしがみ付いてリクは舵を限界まで切る。
邪魔しようとヴェン達が再び近づくが、その前にオパールの指笛が鳴った。背後から津波が起こり、慌てて三人は散り散りに避難する。その間に、大きな波に海賊船が乗っかる形でその場から勢いよくソラ達は逃げていったのだった。
「は、早い…」
逃げ足の速さにヴェンが呆然と見送る中、アクアは身に纏っていた鎧を解除した。
「流石にこれ以上島から離れる訳にはいかないわね。戻りましょう」
敵を逃がす形だったが戦いが終わり、アクアは島にUターンしていく。
テラも後に続く中、先ほどの四人を思い返した。
「成り行きで戦ったが…これで良かったのか?」
「しょうがないでしょ。海賊のあの子達の船なんて近づけたら…」
答えを返すアクアの顔は、どこか心配している様子だった。