海賊とクリスタルの航海日誌12(完結)
「さーて。ここからは拷も……尋問の時間よ、ミデス」
「この腹黒!! 性悪!! 恋人である黒翼の前でよくこんな恐ろしい事出来ますわね!?」
オパールによって甲板で倒されたミデスは、現在スピカの間接剣によって体を縛られており海に向かって投げ出されて宙づりにされている。所謂公開処刑だ。
「あーら、クウは私の性格知った上で恋人になったんですもの。今更取り繕う必要がどこにあるのかしら? あっ、力が緩んじゃった」
「キャー!! この状態で海に落とそうとしないで!?」
「……お前ら、見るな。あれは教育に悪い、寧ろマネしちゃいけない奴だ」
「子供組は今すぐここから離れなさい」
海賊よりも悪逆な事を仕出かしているスピカに、クウとアクアは即座に子供組に見せないよう視界を遮る。
「とにかく。私達を本の世界から出す事。それと財宝に変えた人々も元いた世界でちゃんと戻しなさい。嫌なら、レイアに頼んで巨大なタコを召喚させて餌になって貰うわよ」
「分かったわよ!! やればいいんでしょ!! でもその前に、女王もやる事があるでしょう!!」
「やる事?」
「お金の為とはいえ圧倒的に不利な中であなたに手を貸した。もう上乗せしろとは言わないから、その分の報酬は払って頂戴――こっちの世界に戻れた以上、あんな所に戻る気はないし」
抵抗する気が無くなったミデスに、スピカは黙って引き上げて甲板に戻して武器を消す。
「分かったわ。報酬はちゃんと払うわよ」
そう言って、ツカツカと仲間達に近づいていく。
「オパールが」
グイっとオパールの腕を掴むと引っ張り、スピカは笑顔で指を差して言い出した。
「はぁ!? なんであたし!? スピカさん払えるんでしょ!?」
「流石に今手持無沙汰で…それに私達、仲間でしょ?」
「そんな言葉で借金の建て替え、引き受ける訳ないでしょ!?」
「そぉう。それじゃあ仕方ないわねぇ…」
困ったように頬に手を当てるスピカだが、オパールを含めたこの場にいる全員が理解していた。
何か、恐ろしい事をやろうとすると。
「私の借金分、重労働の仕事でリクに稼いで貰いましょう」
案の定、スピカはリクの腕を掴んで皆に見せるように引っ張り出した。
「はぁ!? なんで俺!?」
「んなぁ!?」
リクと一緒に妙な叫び声を上げるオパール。だが、スピカは2人の様子にニコヤカに笑うだけだ。
「あらー? リクなら体力も力もあるでしょ? とりあえず漁船なんてどうかしら? それとも鉱山がいいかしら? うふふふふ」
「ぐ、ぐぎ、ぐぎぎぎぎぎ…!!」
歯軋りするオパールに、スピカは黒い笑みを見せつける。
「どうする、オパール。あなたが借金肩代わりしてくれるか? もしくはリクに借金分働いて貰うか?」
「んがあああああ!! 持ってけドロボー!!」
流石に金より恋を選んだオパールは、マニーの入った革袋をミデスに叩きつける。
早速中を広げると、そこには大量のマニーが。ざっと見ただけでも数万はあるだろう。これにはミデスも上機嫌で懐に仕舞った。
「おほほほほ。これで私と女王の契約は終了ね。もう追う事もないから安心なさいな!」
「貯めに貯めてた、あたしのマニーがぁぁぁ…!!」
「よく言うでしょ? 冒険には、犠牲がつきものだって」
「な、何か良く分からないがありがとう、オパール…」
(((えげつない……)))
ガックリと項垂れるオパールの姿に、リクを除く全員が心の中で思った。
一方、ミデスは一冊の本を右手に取り出す。その本は自分達が現実の世界で読んでいた本とそっくりだ。そして風を使う様にパララとページを捲ると、光が溢れてくる。
「では、未払い分の報酬も貰いましたし約束通り元の世界にお返しいたしますわ」
「そっか。この世界ともお別れかー」
「思えばあっという間だったなー」
寂しい気持ちが沸き上がったのか、ソラとヴェンは甲板から海を眺める。
「あ、そうだ。ミデス、最後だから聞くけどこのクリスタルって何なの?」
オパールは懐からジョブチェンジ用の宝石を取り出す。それを見て、彼女は「ああ」と呟く。
「私ではなく、この本が用意したものですわ。魔法の本は……読む人達に対して疑似的な冒険をさせたかったんでしょうね。それを私は私の欲望で歪めただけ。今の内に言って置きますが、元の世界に帰れば――その力は――」
話の途中でどんどん光が溢れ出し、やがて何も見えなくなった。
「み、みんなっ!!」
次に聞こえたのは、エアリスの悲鳴。
気づくと、全員がオパールの家のリビングで床に倒れていた。
「戻って…これた?」
「みたいだな…」
ツバサとテラが起き上がり、他の人達も次々と起き上がる中、エアリスは狼狽えていた。
「大丈夫? 急にいなくなったから、心配したよ?」
「ごめん、エアリス……数日もいなくなってたから心配したよな」
「数日? ソラ達が消えて、数分しか経ってないけど?」
「え?」
思わずソラが時計を見ると、自分達が消えたであろう時間帯からそんなに針が進んでいない。
この事実も驚きだったが、もう一つ目に見えた変化があった。
「あっ、私の服が…!」
なんと、レイアの衣装が元のローブ姿に戻っていた。それは他の4人も同じで、服を漁ってジョブチェンジする為のクリスタルを探している。
「なんでー! あたし、確かに手に持っていたのにー!」
「私のクリスタルも石板も、持っていた筈なのに無くなっていますね…」
「そうだ、あの本! エアリス、魔法の本はどこ!?」
ウィドも肩を落とした所で、オパールは魔法の本を探す。
「確か私が持っていたんだけど……急に本が光ったら、皆が現れて。代わりに本は消えちゃったの」
「そんなぁー!! お宝ゲット出来なかったし、マニーはちゃっかり無くなってるし、ジョブチェンジのクリスタルも激レア写真も手に入らなかったし――あたしは何の為に冒険したのよー!!」
報酬が何もない現実に、頭を抱えて叫ぶオパール。
嘆くオパールに、声をかけたのはソラだった。
「でもさ、オパール。一緒に海賊して楽しかったじゃん」
「それは…まあ」
「なら、それでいいじゃん! 俺は、皆と冒険出来て楽しかった!」
明るさ全開で純粋に思った事を伝えるソラ。そんなソラに、オパールも本の中で起こった出来事を思い返す。
皆で共に旅をした海。時にすれ違いで戦い、仲間を集って、皆を奪われて――そうして、大事な仲間を取り返した。
海賊として海を舞台にした冒険。その記憶は確かに、胸に刻まれている。
「そうね…うん。色々あったけど、楽しかったなぁ」
冒険したからと言って、毎回財宝が手に入る訳ではない。どこかの国や世界を救う訳でもない。
お宝なんかの報酬は確かにあれば嬉しい。でも、冒険の楽しみはそれだけじゃない。
仲間と共に作り、語れる思い出。そんな冒険譚こそ、ロマンと言えるものなのだろう。
「この腹黒!! 性悪!! 恋人である黒翼の前でよくこんな恐ろしい事出来ますわね!?」
オパールによって甲板で倒されたミデスは、現在スピカの間接剣によって体を縛られており海に向かって投げ出されて宙づりにされている。所謂公開処刑だ。
「あーら、クウは私の性格知った上で恋人になったんですもの。今更取り繕う必要がどこにあるのかしら? あっ、力が緩んじゃった」
「キャー!! この状態で海に落とそうとしないで!?」
「……お前ら、見るな。あれは教育に悪い、寧ろマネしちゃいけない奴だ」
「子供組は今すぐここから離れなさい」
海賊よりも悪逆な事を仕出かしているスピカに、クウとアクアは即座に子供組に見せないよう視界を遮る。
「とにかく。私達を本の世界から出す事。それと財宝に変えた人々も元いた世界でちゃんと戻しなさい。嫌なら、レイアに頼んで巨大なタコを召喚させて餌になって貰うわよ」
「分かったわよ!! やればいいんでしょ!! でもその前に、女王もやる事があるでしょう!!」
「やる事?」
「お金の為とはいえ圧倒的に不利な中であなたに手を貸した。もう上乗せしろとは言わないから、その分の報酬は払って頂戴――こっちの世界に戻れた以上、あんな所に戻る気はないし」
抵抗する気が無くなったミデスに、スピカは黙って引き上げて甲板に戻して武器を消す。
「分かったわ。報酬はちゃんと払うわよ」
そう言って、ツカツカと仲間達に近づいていく。
「オパールが」
グイっとオパールの腕を掴むと引っ張り、スピカは笑顔で指を差して言い出した。
「はぁ!? なんであたし!? スピカさん払えるんでしょ!?」
「流石に今手持無沙汰で…それに私達、仲間でしょ?」
「そんな言葉で借金の建て替え、引き受ける訳ないでしょ!?」
「そぉう。それじゃあ仕方ないわねぇ…」
困ったように頬に手を当てるスピカだが、オパールを含めたこの場にいる全員が理解していた。
何か、恐ろしい事をやろうとすると。
「私の借金分、重労働の仕事でリクに稼いで貰いましょう」
案の定、スピカはリクの腕を掴んで皆に見せるように引っ張り出した。
「はぁ!? なんで俺!?」
「んなぁ!?」
リクと一緒に妙な叫び声を上げるオパール。だが、スピカは2人の様子にニコヤカに笑うだけだ。
「あらー? リクなら体力も力もあるでしょ? とりあえず漁船なんてどうかしら? それとも鉱山がいいかしら? うふふふふ」
「ぐ、ぐぎ、ぐぎぎぎぎぎ…!!」
歯軋りするオパールに、スピカは黒い笑みを見せつける。
「どうする、オパール。あなたが借金肩代わりしてくれるか? もしくはリクに借金分働いて貰うか?」
「んがあああああ!! 持ってけドロボー!!」
流石に金より恋を選んだオパールは、マニーの入った革袋をミデスに叩きつける。
早速中を広げると、そこには大量のマニーが。ざっと見ただけでも数万はあるだろう。これにはミデスも上機嫌で懐に仕舞った。
「おほほほほ。これで私と女王の契約は終了ね。もう追う事もないから安心なさいな!」
「貯めに貯めてた、あたしのマニーがぁぁぁ…!!」
「よく言うでしょ? 冒険には、犠牲がつきものだって」
「な、何か良く分からないがありがとう、オパール…」
(((えげつない……)))
ガックリと項垂れるオパールの姿に、リクを除く全員が心の中で思った。
一方、ミデスは一冊の本を右手に取り出す。その本は自分達が現実の世界で読んでいた本とそっくりだ。そして風を使う様にパララとページを捲ると、光が溢れてくる。
「では、未払い分の報酬も貰いましたし約束通り元の世界にお返しいたしますわ」
「そっか。この世界ともお別れかー」
「思えばあっという間だったなー」
寂しい気持ちが沸き上がったのか、ソラとヴェンは甲板から海を眺める。
「あ、そうだ。ミデス、最後だから聞くけどこのクリスタルって何なの?」
オパールは懐からジョブチェンジ用の宝石を取り出す。それを見て、彼女は「ああ」と呟く。
「私ではなく、この本が用意したものですわ。魔法の本は……読む人達に対して疑似的な冒険をさせたかったんでしょうね。それを私は私の欲望で歪めただけ。今の内に言って置きますが、元の世界に帰れば――その力は――」
話の途中でどんどん光が溢れ出し、やがて何も見えなくなった。
「み、みんなっ!!」
次に聞こえたのは、エアリスの悲鳴。
気づくと、全員がオパールの家のリビングで床に倒れていた。
「戻って…これた?」
「みたいだな…」
ツバサとテラが起き上がり、他の人達も次々と起き上がる中、エアリスは狼狽えていた。
「大丈夫? 急にいなくなったから、心配したよ?」
「ごめん、エアリス……数日もいなくなってたから心配したよな」
「数日? ソラ達が消えて、数分しか経ってないけど?」
「え?」
思わずソラが時計を見ると、自分達が消えたであろう時間帯からそんなに針が進んでいない。
この事実も驚きだったが、もう一つ目に見えた変化があった。
「あっ、私の服が…!」
なんと、レイアの衣装が元のローブ姿に戻っていた。それは他の4人も同じで、服を漁ってジョブチェンジする為のクリスタルを探している。
「なんでー! あたし、確かに手に持っていたのにー!」
「私のクリスタルも石板も、持っていた筈なのに無くなっていますね…」
「そうだ、あの本! エアリス、魔法の本はどこ!?」
ウィドも肩を落とした所で、オパールは魔法の本を探す。
「確か私が持っていたんだけど……急に本が光ったら、皆が現れて。代わりに本は消えちゃったの」
「そんなぁー!! お宝ゲット出来なかったし、マニーはちゃっかり無くなってるし、ジョブチェンジのクリスタルも激レア写真も手に入らなかったし――あたしは何の為に冒険したのよー!!」
報酬が何もない現実に、頭を抱えて叫ぶオパール。
嘆くオパールに、声をかけたのはソラだった。
「でもさ、オパール。一緒に海賊して楽しかったじゃん」
「それは…まあ」
「なら、それでいいじゃん! 俺は、皆と冒険出来て楽しかった!」
明るさ全開で純粋に思った事を伝えるソラ。そんなソラに、オパールも本の中で起こった出来事を思い返す。
皆で共に旅をした海。時にすれ違いで戦い、仲間を集って、皆を奪われて――そうして、大事な仲間を取り返した。
海賊として海を舞台にした冒険。その記憶は確かに、胸に刻まれている。
「そうね…うん。色々あったけど、楽しかったなぁ」
冒険したからと言って、毎回財宝が手に入る訳ではない。どこかの国や世界を救う訳でもない。
お宝なんかの報酬は確かにあれば嬉しい。でも、冒険の楽しみはそれだけじゃない。
仲間と共に作り、語れる思い出。そんな冒険譚こそ、ロマンと言えるものなのだろう。
■作者メッセージ
やっと……一年かけてやっと完結。何やってんだろうなぁ自分…。本編書く気力ないし、ダブクロも中途半端で…FGO日記とかやってるけど、うん……そっちも別のに感けててちょっと停滞中。
本来は8月中に出す予定だったけど、最後の最後で文字数の関係で9月になってしまった……ま、まあやらないよりかはマシ。夏イベ風の番外編完結したし、良しとしよううん。久々に短いですが冒険譚系書けてよかった、はい。
最後はKHが絡む、ガッツリFGO関連のオマケを載せておきます。
ルキル「で……久々の登場で、何でカラオケセットがあるんだ?」(とある部屋でカラオケセット用意)
先輩マスター(作者)「まだ平安京だけど、オベ〇ンPUが出てね……触媒がofficial〇〇爵の『Pr〇te〇der』聞きながら回すと当たるって言うね……大丈夫、お前はCV宮野ボイスだ。歌は上手いし、人生もピッタリだろ?」(グッ)
ルキル「俺を触媒にするのかよ!?」
先輩マスター「はい、と言う訳で心を込めて歌っていただきましょー!! 曲はofficial〇〇爵の『Pr〇te〇der』!!」
スズ「オーベ、〇ン!! オーベ、〇ン!!」(召喚サークルの前で手拍子)
ルキル「歌えばいいんだろ歌えば!! グッバイ! 君の運命の人は僕じゃない!」(ヤケクソ)
作者「−−と言う話を『Pr〇te〇der』聞いてたら思いついた」
リラ「なに作ってんの!?wwww」
作者「これでオベ〇ン召喚したら凄くない? リク=レプリカ触媒化だよ?」
リラ「むしろそれで当たったら凄いよ!www」
最終日。私のカルデアに本当にオベ〇ンがやって来ました(弁解すると、〇ャストリアマイルームにしてたから…そっちの可能性も、あるにはあるかと…)
本来は8月中に出す予定だったけど、最後の最後で文字数の関係で9月になってしまった……ま、まあやらないよりかはマシ。夏イベ風の番外編完結したし、良しとしよううん。久々に短いですが冒険譚系書けてよかった、はい。
最後はKHが絡む、ガッツリFGO関連のオマケを載せておきます。
ルキル「で……久々の登場で、何でカラオケセットがあるんだ?」(とある部屋でカラオケセット用意)
先輩マスター(作者)「まだ平安京だけど、オベ〇ンPUが出てね……触媒がofficial〇〇爵の『Pr〇te〇der』聞きながら回すと当たるって言うね……大丈夫、お前はCV宮野ボイスだ。歌は上手いし、人生もピッタリだろ?」(グッ)
ルキル「俺を触媒にするのかよ!?」
先輩マスター「はい、と言う訳で心を込めて歌っていただきましょー!! 曲はofficial〇〇爵の『Pr〇te〇der』!!」
スズ「オーベ、〇ン!! オーベ、〇ン!!」(召喚サークルの前で手拍子)
ルキル「歌えばいいんだろ歌えば!! グッバイ! 君の運命の人は僕じゃない!」(ヤケクソ)
作者「−−と言う話を『Pr〇te〇der』聞いてたら思いついた」
リラ「なに作ってんの!?wwww」
作者「これでオベ〇ン召喚したら凄くない? リク=レプリカ触媒化だよ?」
リラ「むしろそれで当たったら凄いよ!www」
最終日。私のカルデアに本当にオベ〇ンがやって来ました(弁解すると、〇ャストリアマイルームにしてたから…そっちの可能性も、あるにはあるかと…)