格〇けチェックパロ・1
ここは見るからに煌びやかな豪華なスタジオ。見えない場所には大勢の観客が。
その司会席となる場所に、黒のスーツを着た青年と少女がいた。
「ようこそ、KH格付けチェックのスタジオに。MCのウィドと」
「毎回全問正解し続けて一流獲得した結果殿堂入りされたから、今年から司会する事になったリズよ!」
黒スーツに変わらず銀髪を後ろで1つに括ったウィド、少しだけ華やかに髪型をセットした金髪の少女のリズ。2人の挨拶からこの企画がスタートする。
「いやー、まさかこんな企画が通って日の目を見る事になるとは思わなかったわ。こう言うの、やってみたかったのよねー」
「ええ。まさかこうして、こう言った場が設けられるとは思いませんでした。『ドレスなんて物来たくないからウィドと同じ男物のスーツが良い!!』なんてリズから我儘飛び出した時は流石に呆れましたが――さて、この格付けチェック、詳しい説明は不要でしょう。今回お呼びしたKH界隈の一流の皆様なら、こちらでご用意した様々な見極めもきっと分かるでしょう。では、チームの紹介に参ります」
「まずは、私の所から。私の所からは20年後のソラさん&ロクサスチーム、カイリさん&シオン母さんチームよ」
リズがチームを紹介する。そこには顔を両手で抑えて泣きまくっているロクサス(大人)と困惑するソラ(大人)。そして、共に笑顔を浮かべるカイリ(大人)とシオン(大人)のペアが高級そうな椅子に座っていた。
「うちの娘が司会なのはいいけど、ナミネと一緒のチームが良かったぁぁぁ……!!」
「ごめん、ロクサス……」
「頑張ろうね、シオン!」
「まっかせて!」
各自チームの意気込み(?)を聞くと、ウィドも同じように紹介に映る。
「次は私達の所ですね。私達の所からはアクア&テラチーム、リク&ルキルチームとなります」
「私はキーブレードマスターでもあるわ、一流目指して頑張りましょう!」
「そうだな。マスターから鍛えられた実力、戦闘だけではない事を見せよう!」
「未来のソラ達との競い合いとか、変な気分だな――足引っ張るなよ、ニセモノ」
「それはこっちの台詞だ、ホンモノ。しかしこう言うの、落ち着かないな……」
やる気満々のアクアとテラ。複雑な顔をしつつも勝つ気でいるリクとルキル。どちらも同じように高級椅子に座っている。
チームの紹介が終わった事で、ウィドは手元の資料を見ながらこの企画の説明を行う。
「さて。現在皆様は一流からスタートですが、失敗した場合順に【普通】【二流】【三流】【映す価値無し】の5段階となっております。今回の格付けですが、KHにちなんだ問題を全部で5問用意してます。順に、ワイン・骨董品・料理・音楽・食材となります。未成年はお酒は飲めないので、テラ……いえ、テラ様のみこちらでご用意した『ゼアノート化薬』を飲んでから挑戦して貰います」
「そんな薬飲ませて大丈夫なの!?」
格付けらしく言い直しつつウィドが取り出した茶色の怪しげな薬に、アクアが抗議の声をあげる。
その言葉を予想していたのか、ウィドは1枚のメモを取り出す。
「一応本人の自我ありで外見と年齢だけ変わるのと、10分くらいで効果が切れる……とこの説明文に書いてあるので、内容を信じるなら大丈夫かと」
「そもそも、そんな危ない薬誰が作った!?」
「………………さあ、格付けチェック始めて行きましょう!」
「「「本当に誰が作った(の)!?」」」
テラの言葉まで無視して先に進めようとするウィドに、アクアとリクまでツッコミを入れる。
幸先がいきなり不穏になる中、ルキルが手を上げる。
「1ついいか、先生。俺達はどう頑張っても未成年で酒は飲めないんだが?」
10年経った姿のテラノートならまだしも、リクもレプリカであるルキルも本編では未成年のまま。どう頑張ってもお酒を飲める年齢にはなれない筈だ。
「ええ。その辺りをもちろん配慮して、あなた達のチームのみ大人を1人追加する事にいたしました」
「大人?」
「まさか、アンセムじゃないよな……!?」
疑問を浮かべるルキルとは正反対に、リクは脳内に浮かんだ自分に執着しては体を奪おうとしてる人物を思い浮かべる。顔を青ざめると、ウィドは肯定するように頷く。
「はい。あなた達に関係ある大人なので本人を呼ぶか、テラと同じように薬を飲んで貰おうと思いましたが――そうやってキーブレード取り出してでも断固拒否する未来しか見えなかったので、特別枠として別の大人に出演して貰う事にしました」
真っ黒なオーラを出して威嚇してキーブレードを構える2人に、ウィドは予想通りと言わんばかりの目を向けてから、どうぞと声掛けをする。
スタジオに入ってきたのは、腰まであるストレートの長い茶髪に青の目、それに黒の眼鏡を掛けた青年。服装は青いコートに黒のズボンに、腕や足などに黒いベルトを幾つも巻いて体に合わせるよう留めている。
元組織メンバーであり、スピカの師であり、敵キャラであるセヴィルだ。
「と言う事で、こちらの助っ人枠に呼ばれたセヴィルだ。オリキャラの部類で申し訳ないが、彼らのチームに加わらせて貰おう」
「まさかのセヴィルが?」
「まあ、俺としてはアンセムでないなら誰でもいい。寧ろ助かる」
意外だと声をあげるルキルと、安堵するリク。
敵キャラでもある人物の参加に、事情を知らないロクサスは同じ参加者としての目線でセヴィルの観察を始める。
「へー。なんか凄そうだな、あの人」
「ええ。現在セヴィルはこれまでの格付けで一流を9回連続で取っていて、リズと同等のGA〇UT枠ならぬ殿堂入りにリーチになっている状態です」
「「え……?」」
ウィドの説明に、同じチームになった2人が固まる。
それとは別に、シオンが抗議を始めた。
「えー!? そんな大人が味方とか、リク達のチームズルくない!?」
「いえいえ。まだ殿堂入りするかどうかは今回の格付けにかかっていますから。そうですよね、セヴィル?」
「ああ、そうだな。例年通り俺とクロのチームなら殿堂入りも夢ではないんだが、最後の挑戦はお互い別チームでと言う不安要素ありの状態で一流を取らなければいけなくなった」
ウィドに頷きながら理由を話すと、同チームの2人の肩に手をぽんと置く。
「俺の殿堂入りの為にも、期待しているぞ? 未来のキーブレードマスター」
笑顔に反して、セヴィルの全身からプレッシャーが滲み出ている。
シオンは強力な味方に思っているが、そうじゃない。
味方に見せかけて、1問でも外したら即終了の爆弾を強制的に押し付けられたようなものだ。
「おい、ホンモノ……アンセムの方が何倍もマシだったんじゃ……!?」
「言うな、ニセモノ……もう既に胃が痛い……!!」
「お父さん達ならやれるでしょ! さあ、やっていくわよー!!」
ヒュと息が締まるのと同時に血の気を引かせる過去の父親とレプリカに対し、無情にも養娘のリズは笑顔で元気よく開始の合図を出したのだった。
「最初の問題はワインです。正解の高級ワインはアレンデール産の1瓶300万マニーするブランド品です。不正解はトワイライトタウンで買った2000円のワインとなります」
ウィドの説明と共に画面に映し出されたのは、見るからに高級そうなワインの瓶と、如何にも安物ですと言う見た目のワインの瓶の2種類だ。
流れる映像ではどちらも赤い液体にしか見えず、ロクサスは困った顔をする。
「ワインなんて普段飲まないな……」
「でも高級って事は美味しいって事でしょ? 大丈夫じゃないかな?」
全員が緊張感を持つ一方で、呑気に答えるシオン。
そうこうしている内に、スタッフから準備が整ったと報告が。
「こちらはチームの代表者に飲んで頂きます。一流の方から、ロクサス様、カイリ様、テラ様、セヴィル様となります」
「まずはロクサス様、テラ様、お2人チェック部屋にお越しください」
「分かった」
「まさか、この為だけにこんな姿になるなんて予想しなかったぞ……」
リズが声を掛けると、ロクサスと薬を持つテラが移動を始める。残りは司会者と一緒にモニターでチェック部屋を見る事に。
少しすると案内されたロクサスと一緒に、移動した時に薬を飲んだであろう銀髪の紙になったテラも席に着く。
そうして2人はスタッフによって用意されたグラスに注がれている2種類のワインを飲み始める。
「そもそもロクサスが酒飲んでる所見た事無いのよね…」
《あの人お酒そこまで好んで飲まないのよリズ》
「!!?」
リズの呟きに天から声が返ってきた。
「何か今聞こえたような……?」
「無視なさい。触れてはいけない何かでしょう」
思わず首を傾げるルキルに対し、ウィドがバッサリと今の現象を切り捨てる。
そうこうしていると、ワインを飲み終えた2人が判定を出した。
「Aだ」
「Bで」
「おお、ここで意見が分かれた!」
Aを出したテラと、Bを出したロクサス。観客の「おおー」と言う声と一緒にリズが興奮しながらモニターを見る中、2人は理由を問われる事に。
「何故か? うーん、何となくAが高級そうに思えたから、かな? そもそもお酒を飲むのが初めてなんだ」
「俺も普段飲まないから、BはAより美味しいって感じたからだな。しかし、ここで別れるか……」
「不安でしかないな……」
いきなり正解が分かれた事で、2人は不安のままAとBの控室に向かう事に。
「では、最後の2組行きましょうか。カイリ様とセヴィル様、お願いします」
「分かった」
「は、はい……!」
残った挑戦者にウィドが声を掛けると、セヴィルは自然体に、カイリは緊張しながらチェック部屋に。
控室も含めたみんながモニター越しに見守る中、2人のワインの飲み比べを行う。静かに飲むカイリと違い、セヴィルはグラスでワインを回しながら香りまで確認する。
「――なるほど?」
(隣の人の圧が凄くて、味が全然分からない……! 何であっちの私こんな人と敵対してるの?)
今一緒にいる過去のリク達の世界の自分に心の中で問いかけつつ、プレッシャーに尻込みしながらもカイリはどうにか両方のワインを口にする。
セヴィルも両方のワインを飲み終え、2人は同時に札を上げる。
「「Aで」」
「カイリも一緒だ! これはやったね!」
セヴィルと同じ回答を出した事で勝ちを見出すシオン。
一方、カイリは理由を問われて顔を引き攣らせた。
「え、えっと? どうして? それは……!」
「Aは全体的に酸味や渋みなど基本の4種が纏っているが、アルコールの度数が高い。Bは酸味が少なく甘口で飲みやすく、アルコールが少ない。飲みやすさはBが圧倒的だが、そもそもアレンデールは雪国だ。身体を温める為にアルコールの度数を高くした酒類を多く生産しているし、その上で4種が整った味は中々作れるものではない。だからAだ」
「…………あっちのリク達、何でこんな人相手にしてるの?」
的確だけでなく丁寧にワインの説明をするセヴィルに、カイリは真顔になってしまった。
「それはこっちが聞きたいわ……!」
「俺達はまだ戦ってないだけマシだった……!」
「これで本当に正解だったら、俺達の胃がヤバイぞ……!」
もはや余裕で殿堂入りに届く実力を見せつけたセヴィルに、アクア、リク、ルキルが顔を俯かせながら震えている。
その様子を見て、リズは首を傾げる。
「敵対はともかく、因縁持ってるのってここにいるウィドがその1人じゃ」
「全部クウの所為でしょうさあ結果発表しましょうか」
「大人なのにそうやって全責任押し付けるのどうかと思うわよ?」
リズの言葉を遮る形で無理やり信仰を進めたウィドに、流石にジト目を向けるのだった。
「結果発表ー!!」
控室の廊下に、リズの声が響き渡る。
Aの控室のテラ・カイリ・セヴィル、Bの控室のロクサスに緊張が走る。
「細かい説明は不要よね。私が入った部屋が正解の部屋になりまーす! 正解はこっち!」
「「早い!?」」
説明して即座にガチャと扉を開けるリズに2人分のツッコミが。
リズが入ったのは、Aの部屋だった。
「三人ともおめでとー!」
「良かったー!」
「まあ当然だな」
「無事に当てられて何よりだ……ロクサスは残念だったが」
『ううう、リズに会いたかった……!』
喜ぶ3人に対し、1人外したロクサスはそのまま撃沈したのであった。
その司会席となる場所に、黒のスーツを着た青年と少女がいた。
「ようこそ、KH格付けチェックのスタジオに。MCのウィドと」
「毎回全問正解し続けて一流獲得した結果殿堂入りされたから、今年から司会する事になったリズよ!」
黒スーツに変わらず銀髪を後ろで1つに括ったウィド、少しだけ華やかに髪型をセットした金髪の少女のリズ。2人の挨拶からこの企画がスタートする。
「いやー、まさかこんな企画が通って日の目を見る事になるとは思わなかったわ。こう言うの、やってみたかったのよねー」
「ええ。まさかこうして、こう言った場が設けられるとは思いませんでした。『ドレスなんて物来たくないからウィドと同じ男物のスーツが良い!!』なんてリズから我儘飛び出した時は流石に呆れましたが――さて、この格付けチェック、詳しい説明は不要でしょう。今回お呼びしたKH界隈の一流の皆様なら、こちらでご用意した様々な見極めもきっと分かるでしょう。では、チームの紹介に参ります」
「まずは、私の所から。私の所からは20年後のソラさん&ロクサスチーム、カイリさん&シオン母さんチームよ」
リズがチームを紹介する。そこには顔を両手で抑えて泣きまくっているロクサス(大人)と困惑するソラ(大人)。そして、共に笑顔を浮かべるカイリ(大人)とシオン(大人)のペアが高級そうな椅子に座っていた。
「うちの娘が司会なのはいいけど、ナミネと一緒のチームが良かったぁぁぁ……!!」
「ごめん、ロクサス……」
「頑張ろうね、シオン!」
「まっかせて!」
各自チームの意気込み(?)を聞くと、ウィドも同じように紹介に映る。
「次は私達の所ですね。私達の所からはアクア&テラチーム、リク&ルキルチームとなります」
「私はキーブレードマスターでもあるわ、一流目指して頑張りましょう!」
「そうだな。マスターから鍛えられた実力、戦闘だけではない事を見せよう!」
「未来のソラ達との競い合いとか、変な気分だな――足引っ張るなよ、ニセモノ」
「それはこっちの台詞だ、ホンモノ。しかしこう言うの、落ち着かないな……」
やる気満々のアクアとテラ。複雑な顔をしつつも勝つ気でいるリクとルキル。どちらも同じように高級椅子に座っている。
チームの紹介が終わった事で、ウィドは手元の資料を見ながらこの企画の説明を行う。
「さて。現在皆様は一流からスタートですが、失敗した場合順に【普通】【二流】【三流】【映す価値無し】の5段階となっております。今回の格付けですが、KHにちなんだ問題を全部で5問用意してます。順に、ワイン・骨董品・料理・音楽・食材となります。未成年はお酒は飲めないので、テラ……いえ、テラ様のみこちらでご用意した『ゼアノート化薬』を飲んでから挑戦して貰います」
「そんな薬飲ませて大丈夫なの!?」
格付けらしく言い直しつつウィドが取り出した茶色の怪しげな薬に、アクアが抗議の声をあげる。
その言葉を予想していたのか、ウィドは1枚のメモを取り出す。
「一応本人の自我ありで外見と年齢だけ変わるのと、10分くらいで効果が切れる……とこの説明文に書いてあるので、内容を信じるなら大丈夫かと」
「そもそも、そんな危ない薬誰が作った!?」
「………………さあ、格付けチェック始めて行きましょう!」
「「「本当に誰が作った(の)!?」」」
テラの言葉まで無視して先に進めようとするウィドに、アクアとリクまでツッコミを入れる。
幸先がいきなり不穏になる中、ルキルが手を上げる。
「1ついいか、先生。俺達はどう頑張っても未成年で酒は飲めないんだが?」
10年経った姿のテラノートならまだしも、リクもレプリカであるルキルも本編では未成年のまま。どう頑張ってもお酒を飲める年齢にはなれない筈だ。
「ええ。その辺りをもちろん配慮して、あなた達のチームのみ大人を1人追加する事にいたしました」
「大人?」
「まさか、アンセムじゃないよな……!?」
疑問を浮かべるルキルとは正反対に、リクは脳内に浮かんだ自分に執着しては体を奪おうとしてる人物を思い浮かべる。顔を青ざめると、ウィドは肯定するように頷く。
「はい。あなた達に関係ある大人なので本人を呼ぶか、テラと同じように薬を飲んで貰おうと思いましたが――そうやってキーブレード取り出してでも断固拒否する未来しか見えなかったので、特別枠として別の大人に出演して貰う事にしました」
真っ黒なオーラを出して威嚇してキーブレードを構える2人に、ウィドは予想通りと言わんばかりの目を向けてから、どうぞと声掛けをする。
スタジオに入ってきたのは、腰まであるストレートの長い茶髪に青の目、それに黒の眼鏡を掛けた青年。服装は青いコートに黒のズボンに、腕や足などに黒いベルトを幾つも巻いて体に合わせるよう留めている。
元組織メンバーであり、スピカの師であり、敵キャラであるセヴィルだ。
「と言う事で、こちらの助っ人枠に呼ばれたセヴィルだ。オリキャラの部類で申し訳ないが、彼らのチームに加わらせて貰おう」
「まさかのセヴィルが?」
「まあ、俺としてはアンセムでないなら誰でもいい。寧ろ助かる」
意外だと声をあげるルキルと、安堵するリク。
敵キャラでもある人物の参加に、事情を知らないロクサスは同じ参加者としての目線でセヴィルの観察を始める。
「へー。なんか凄そうだな、あの人」
「ええ。現在セヴィルはこれまでの格付けで一流を9回連続で取っていて、リズと同等のGA〇UT枠ならぬ殿堂入りにリーチになっている状態です」
「「え……?」」
ウィドの説明に、同じチームになった2人が固まる。
それとは別に、シオンが抗議を始めた。
「えー!? そんな大人が味方とか、リク達のチームズルくない!?」
「いえいえ。まだ殿堂入りするかどうかは今回の格付けにかかっていますから。そうですよね、セヴィル?」
「ああ、そうだな。例年通り俺とクロのチームなら殿堂入りも夢ではないんだが、最後の挑戦はお互い別チームでと言う不安要素ありの状態で一流を取らなければいけなくなった」
ウィドに頷きながら理由を話すと、同チームの2人の肩に手をぽんと置く。
「俺の殿堂入りの為にも、期待しているぞ? 未来のキーブレードマスター」
笑顔に反して、セヴィルの全身からプレッシャーが滲み出ている。
シオンは強力な味方に思っているが、そうじゃない。
味方に見せかけて、1問でも外したら即終了の爆弾を強制的に押し付けられたようなものだ。
「おい、ホンモノ……アンセムの方が何倍もマシだったんじゃ……!?」
「言うな、ニセモノ……もう既に胃が痛い……!!」
「お父さん達ならやれるでしょ! さあ、やっていくわよー!!」
ヒュと息が締まるのと同時に血の気を引かせる過去の父親とレプリカに対し、無情にも養娘のリズは笑顔で元気よく開始の合図を出したのだった。
「最初の問題はワインです。正解の高級ワインはアレンデール産の1瓶300万マニーするブランド品です。不正解はトワイライトタウンで買った2000円のワインとなります」
ウィドの説明と共に画面に映し出されたのは、見るからに高級そうなワインの瓶と、如何にも安物ですと言う見た目のワインの瓶の2種類だ。
流れる映像ではどちらも赤い液体にしか見えず、ロクサスは困った顔をする。
「ワインなんて普段飲まないな……」
「でも高級って事は美味しいって事でしょ? 大丈夫じゃないかな?」
全員が緊張感を持つ一方で、呑気に答えるシオン。
そうこうしている内に、スタッフから準備が整ったと報告が。
「こちらはチームの代表者に飲んで頂きます。一流の方から、ロクサス様、カイリ様、テラ様、セヴィル様となります」
「まずはロクサス様、テラ様、お2人チェック部屋にお越しください」
「分かった」
「まさか、この為だけにこんな姿になるなんて予想しなかったぞ……」
リズが声を掛けると、ロクサスと薬を持つテラが移動を始める。残りは司会者と一緒にモニターでチェック部屋を見る事に。
少しすると案内されたロクサスと一緒に、移動した時に薬を飲んだであろう銀髪の紙になったテラも席に着く。
そうして2人はスタッフによって用意されたグラスに注がれている2種類のワインを飲み始める。
「そもそもロクサスが酒飲んでる所見た事無いのよね…」
《あの人お酒そこまで好んで飲まないのよリズ》
「!!?」
リズの呟きに天から声が返ってきた。
「何か今聞こえたような……?」
「無視なさい。触れてはいけない何かでしょう」
思わず首を傾げるルキルに対し、ウィドがバッサリと今の現象を切り捨てる。
そうこうしていると、ワインを飲み終えた2人が判定を出した。
「Aだ」
「Bで」
「おお、ここで意見が分かれた!」
Aを出したテラと、Bを出したロクサス。観客の「おおー」と言う声と一緒にリズが興奮しながらモニターを見る中、2人は理由を問われる事に。
「何故か? うーん、何となくAが高級そうに思えたから、かな? そもそもお酒を飲むのが初めてなんだ」
「俺も普段飲まないから、BはAより美味しいって感じたからだな。しかし、ここで別れるか……」
「不安でしかないな……」
いきなり正解が分かれた事で、2人は不安のままAとBの控室に向かう事に。
「では、最後の2組行きましょうか。カイリ様とセヴィル様、お願いします」
「分かった」
「は、はい……!」
残った挑戦者にウィドが声を掛けると、セヴィルは自然体に、カイリは緊張しながらチェック部屋に。
控室も含めたみんながモニター越しに見守る中、2人のワインの飲み比べを行う。静かに飲むカイリと違い、セヴィルはグラスでワインを回しながら香りまで確認する。
「――なるほど?」
(隣の人の圧が凄くて、味が全然分からない……! 何であっちの私こんな人と敵対してるの?)
今一緒にいる過去のリク達の世界の自分に心の中で問いかけつつ、プレッシャーに尻込みしながらもカイリはどうにか両方のワインを口にする。
セヴィルも両方のワインを飲み終え、2人は同時に札を上げる。
「「Aで」」
「カイリも一緒だ! これはやったね!」
セヴィルと同じ回答を出した事で勝ちを見出すシオン。
一方、カイリは理由を問われて顔を引き攣らせた。
「え、えっと? どうして? それは……!」
「Aは全体的に酸味や渋みなど基本の4種が纏っているが、アルコールの度数が高い。Bは酸味が少なく甘口で飲みやすく、アルコールが少ない。飲みやすさはBが圧倒的だが、そもそもアレンデールは雪国だ。身体を温める為にアルコールの度数を高くした酒類を多く生産しているし、その上で4種が整った味は中々作れるものではない。だからAだ」
「…………あっちのリク達、何でこんな人相手にしてるの?」
的確だけでなく丁寧にワインの説明をするセヴィルに、カイリは真顔になってしまった。
「それはこっちが聞きたいわ……!」
「俺達はまだ戦ってないだけマシだった……!」
「これで本当に正解だったら、俺達の胃がヤバイぞ……!」
もはや余裕で殿堂入りに届く実力を見せつけたセヴィルに、アクア、リク、ルキルが顔を俯かせながら震えている。
その様子を見て、リズは首を傾げる。
「敵対はともかく、因縁持ってるのってここにいるウィドがその1人じゃ」
「全部クウの所為でしょうさあ結果発表しましょうか」
「大人なのにそうやって全責任押し付けるのどうかと思うわよ?」
リズの言葉を遮る形で無理やり信仰を進めたウィドに、流石にジト目を向けるのだった。
「結果発表ー!!」
控室の廊下に、リズの声が響き渡る。
Aの控室のテラ・カイリ・セヴィル、Bの控室のロクサスに緊張が走る。
「細かい説明は不要よね。私が入った部屋が正解の部屋になりまーす! 正解はこっち!」
「「早い!?」」
説明して即座にガチャと扉を開けるリズに2人分のツッコミが。
リズが入ったのは、Aの部屋だった。
「三人ともおめでとー!」
「良かったー!」
「まあ当然だな」
「無事に当てられて何よりだ……ロクサスは残念だったが」
『ううう、リズに会いたかった……!』
喜ぶ3人に対し、1人外したロクサスはそのまま撃沈したのであった。
■作者メッセージ
今回のネタですが、リラさんも一緒に今回のネタを作りました。と言うのも、某番組が放送される事に共に話題にし、今年は書いてみようと言う事で作ってみました。もちろんこの後も続きます。
KHと言いながら互いのオリキャラも数名混じっていますが、一応KHをモチーフにした形で作成しようと頑張っています。
ちなみにセヴィルがGA〇UT枠なのは、リラさんから「リズとムーンとカヤは毎回一流を取って殿堂入りになる」と言う話を聞き、私の所だとセヴィルとクロなら該当するだろうなと言う会話からです。
KHと言いながら互いのオリキャラも数名混じっていますが、一応KHをモチーフにした形で作成しようと頑張っています。
ちなみにセヴィルがGA〇UT枠なのは、リラさんから「リズとムーンとカヤは毎回一流を取って殿堂入りになる」と言う話を聞き、私の所だとセヴィルとクロなら該当するだろうなと言う会話からです。