格〇けチェックパロ・2
「ちくしょう……俺もAを選んでいたらぁぁ……!!」
高級から普通のソファに変わった席で、戻ってきてからもロクサスはシクシクと泣いている。しかし、ウィドとリズは無視して司会を進めた。
「さて。この一流の中に普通の方が混ざっていたようですが気にせず行きましょう」
「次のチェックは骨董品よ! 今回はヒント付きのVTRを流させて貰うわね!」
リズがそう言うと、全員の前に巨大なモニターが現れて事前に撮影したであろう映像が流れ始めた。
【第2のチェック項目は骨董品となります。1つはキーブレード墓場から発掘した貴重な石板。もう1つはハロウィンタウンから持ってきた落書きが描かれた石板となります。2つの見分け方について、自称考古学者のウィドさんにアドバイスを頂きます】
そうすると画面が変わり、華やかな部屋で椅子に座って目の前の机の上に両肘を置いて顔の前で手を組んだポーズをした、いつもの白の神父服のウィドの姿が。
【見分けるコツですか? 当然、古き物から発せられる歴史の声を聴く事ですね。古くから存在し、後世に残そうと時代を生き抜いたそれらには必ず歴史の声が宿っているのです。――どのような声か? それはもう時に荒々しく図太く、時に死にそうなほどにか細い。そう、それがどのような声だろうと一流ならば分かる筈です、と言うか分からなければならないだろう!! 我々の時代まで伝えようと悠久の時を過ごしても尚残した歴史の声を無視するなど映す価値なしどころか知性の無い獣レベル――!!(強制終了)】
学者モードになって暴言になってきた所で映像が途切れる。
全員が真っ暗になった画面から司会席のウィドを見ると、こちらを睨んでいた。
「と言う訳で、人間ならば何が何でもこの問題は当てなさい。いいですね?」
『『『人間かどうかを問われるの(か)、この問題!?』』』
いきなり全チームのハードルが激上がりになる中、ウィドは腕を組む。
「何を言う。リズだって歴史の声が分かるから殿堂入りしているのです。そう、彼女も私と同じ考古学を愛するものと同義。歴史に深い愛を持っていると言う事です」
「娘をそんな変態な趣味にさせるなぶっ殺すぞッ!!」
「変態な趣味とはなんだ返り討ちにするぞッ!?」
「学者モードはストップだ先生ーーーー!?」
「ロクサスもストッーーープ!! このスタジオが跡形もなく消滅する!?」
殺意全開で戦闘態勢に入る2人を、ルキルとソラが押さえにかかる。
その後、暴走するロクサスをリズが飛び蹴りを顔面に蹴り込んで仕留め、ウィドの方もセヴィルが古そうな書物を差し出す事で学者モードを解除した。
「えー、この項目も代表者1名に判定をして頂くわ。代表者はそれぞれ一流からシオン様、アクア様、ルキル様。普通からソラさんとなります」
ランクが普通になった事でリズの呼び名が変わったが、呼ばれた人達は緊張を浮かべていた。
「大丈夫かなぁ……?」
「2ランクダウンの方がまだマシだわ……!」
「よりによって俺か……!!」
「じゃ、じゃあロクサスの事よろしく……」
シオン、アクア、ルキルが立ち上がり、ソラも気絶しているロクサスを気にかけつつ立って移動を始める。
今回は4人全員が挑戦と言う事で一緒にやってきた部屋には、既に2つの石板が置かれている。完全に目利きでの判定に、全員が渋い顔で2つの石板を見比べ始める。
「駄目だ、どれも落書きに見える……!!」
「言わない方が良い、今の先生に聞かれたら攻撃してくるからな……!」
完全に諦めの境地に立つソラに、ルキルが注意する。
残り2人も頑張って目利きをしていたが時間が来てしまい、いよいよ全員が札を上げる。
「「A」」「「B」」
Aはソラとシオン。Bはアクアとルキルが上げた。
「ルキル、Bなのか?」
「前に先生に叩き込ま――教えられた事があるからな。それをBに感じた」
「え? まさか歴史の声が聞こえたの?」
「んな訳あるか!? そんな幻聴聞こえるのは先生だけだ!!」
ソラに答えていたルキルだが、シオンの聞き捨てならない言葉に心外とばかりに叫ぶ。
ちなみにその叫びは、メイン会場にいるウィドにバッチリ聞かれていた。
「今歴史の声を幻聴って言ったわよ、ルキル?」
「ルキルは後でお仕置きです」
呆れるリズの横で音もなく分厚い本を持って答えるウィド。
チェック部屋にモニターを戻すと、ルキルは頭を押さえながら2つの石板を見る。
「見つけた石板は発掘されたって言ってただろ? Bと違って、Aは指紋のような模様が沢山あったんだ。少なくとも、遺跡で発掘するものは絶対に素手で触ったりはしない――と、先生に教えられた事があったからな」
「なるほど……じゃあ俺もBにしよう!」
「あたしも!」
「ヤメロ。これ以上俺に胃痛を押し付けるな」
まだ変更が出来ると言う事で笑顔でBに変えたソラとシオンに、過度なストレスを感じてかルキルが歯軋りして胃を押さえたのだった。
「結果発表ー!」
最初と同じように、リズが部屋の前にやってくる。いよいよやってきた運命の時間に、4人はBの部屋で待機しながら固唾を呑んでいる。
そんな4人を見抜いているかのように、リズはニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながら両方のドアノブを握る。
「さーて、正解はどっちかしらね。正解はぁ……こっち!!」
そう言って開けたのは、Aの扉。
かと思ったら速攻で閉めて、入れ替わりにBの扉を素早く開けて中に入った。
「全員おめでとー!」
「ホ、ホントに俺達正解!?」
「間違ったかと本気で思った……!!」
リズがフェイントを交ぜた事で、安心より不安の方がソラとシオンの心を大きく占める。
「当たってて良かったわ。ありがとう、ルキル」
「とりあえず危機は回避出来たぁ……!!」
安心するアクアとは別で、リズは思い出したようにルキルに死の宣告を告げる。
「一流キープは出来たけど、後でお仕置きするってウィド言ってたわよ」
「どの道帰りたくないッ!!」
「おかえりなさい。見事にこの問題を正解して私も鼻が高い思いです。それはそれとして、企画が終わり次第覚えてなさいルキル」
「ハイ……!!」
笑顔を浮かべるウィドに対し、恐怖で委縮するルキル。飛び火だけは勘弁と、他の人達はスルーを決め込んだ。
「さて。次の問題は料理――今回も映像を用意しているわ」
「そう言う訳で、早速流していきましょう」
リズとウィドがそう話すと、再びモニターにVTRが流れ始めた。
【次のお題はチャーハンとなります。この問題では正解・不正解の他に、間違えたら即『映す価値無し』となる絶対アカン枠も用意しています。皆さんはこの3つから正解のチャーハンをお選びください】
美味しそうなチャーハンの映像が流れる共に、トライライトタウンに新しく出来たレストランが映される。
【正解はトワイライトタウンにあるレミーによるシェフが作成したチャーハンとなります。不正解はサンフランソウキョウの中華店でテイクアウトしたチャーハン】
レミーがシェフの頭を使ってチャーハンを素早く炒めて完成したチャーハンを盛り付ける映像が終わると、今度はサンフランソウキョウでのお店の映像が流れる。
次に映し出された映像は。
【絶対アカンの料理人はこちら――真剣な表情でチャーハンを炒めてる素人、ムーンさんが作ったものです】
《いや料理人プロ級じゃん!?》
厨房でチャーハンを作るムーンの料理映像が流れると同時に、息ピッタリの観客のツッコミが響き渡った。
【やるからには本気出したぜ、まぁ、チャーハンは余りやらないんでそこまで自信ないが】
《嘘つけ!!》
自信なさげなムーンの台詞に、再び観客のツッコミが襲い掛かる。
こうして映像が終わる中、身内であるリズは顔を引くつかせていた。
「え、これ映す価値なし下手したら続出しねぇ?」
「流石に企画が成立しなくなるので、せめて2ランクダウンくらいにしなさい」
「このままだと映す価値無しだらけになるので、この問題の絶対アカンを急遽2ランクダウンに変更しまーす」
流石のウィドとリズも鬼ではないようで、ルール変更を言い渡す。逆に言えば、このお題は超高難易度になっているようなものだ。
身内でもあるソラ達は顔を真っ青にしてるし、ただでさえ間違えちゃいけないリク達もこれでもかと顔を蒼白にしている。唯一怯えてないのは、ムーンの料理の腕前を分かってないアクアとテラ、そして今も余裕を保っているセヴィルのみだ。
「難易度が高いので、この問題はチーム全員で挑戦して頂きます。まずは普通のソラ&ロクサスさんチームから、その後一流のお三組に順番に判定をして貰います。まずは全員控室に移動してください」
「今度こそ絶対に当ててリズと出会ってみせる……!!」
「ロクサス、趣旨変わってるよ……」
出番と言う事で別の意味でやる気を出すロクサスの横で、シオンが呆れる。
そうして4組が移動を終えてスタジオに司会しかいなくなると、ウィドが1枚の紙を取り出した。
「さて。先に皆さんにだけ正解の答えを教えようと思います。正解は――A。不正解はC、絶対アカンはBとなります」
「さあ、みんながどんな答えを見せてくれるか楽しみねー!」
意地の悪い笑みを浮かべながらモニターに注目するリズ。そうしていると、まず最初に入ってきたのはソラとロクサスだった。
テーブルに用意されていたのはシャドウとワンダニャンの目隠し。ソラがワンダニャン、ロクサスがシャドウの目隠しを付けて、スタッフ役のダクスが持ってきた3種類のチャーハンを味見する。
どのチャーハンも口を顰めながら食べていたが、目隠しを取った2人は決まったと言わんばかりの顔をする。
そうして出した答えは。
「「Bで!」」
何と2人同時にBを選ぶ。そうだよなとうんうん頷くソラとロクサスだが、会場ではリズとウィドが爆笑しているなど気づいていない。
「「Bよ」」
しかし、続いてのカイリ&シオンペアもまさかのBを。
「「Bね(だな)」」
更に、テラ&アクアペアまでBを選んだことで、何と3組連続で絶対アカンを選ぶ事態になった。
「ここまでムーンの料理に見事に騙されちゃってるわね……どっかの高級料理店でシェフに転職してもいいんじゃないかしら?」
「これは全員2ランクダウンの準備をした方が良いですかね?」
Bの控室に集まっている人達を見ながら、リズとウィドはそんな事を思ってしまう。
このまま番狂わせで終わってしまうのか。そんな面持ちで最後のチームであるリク・ルキル・セヴィルがやってくる。
3人も目隠しをしながら味見をし、出した判定は――。
「A」「B」「C」
「意見が分かれた!?」
「マジで!?」
ここで全員が違う答えを出し、まさかの事に驚くウィドとリズ。改めて確認すると、Aはセヴィル、Cはルキル、Bはリクがそれぞれ札を上げている。
一方、こちらも混乱が起こっていた。
「いや、絶対Bだろ!? 美味しさが全然違うし、Aは絶対あり得ない!」
「はぁ!? Bがやたらと美味しすぎるからCにしたんだよホンモノ! けどAがあり得ないのは俺も認める!!」
リクとルキルが怒鳴りながら意見をぶつけ合っていると、Aを選んだセヴィルが目線を合わせず口を開く。
「そこの子供2人、長年のキーブレードマスターとして1つだけアドバイスしてやろう」
そう言うと、眼鏡を光らせながら不穏なオーラを出す。
「美味しさと高級は、全くの別物だぞ?」
「「…………Aで」」
もはや有無を言わさぬ言葉に、即座にAの札に交換する2人。
こうして一組だけ正解の部屋に行けたのだが、Aの部屋に入ったリク達にBの部屋にいるソラ達が騒ぎ出した。
「ええっ!? リク達Aに行ったの!?」
「うそー!? Aは絶対アカン枠ってみんなで話してたのに!?」
「いえ、人数はこっちが多い。考えすぎて間違えた可能性も0じゃない……はず、よね?」
「俺達、本当に正解なのか……!?」
あり得ないとソラとシオンが騒ぐ中、アクアとテラは自分達の選択を疑い出す。
しかし、それは誰もいなかった部屋に来てしまったリクとルキルも同じだった。
「それはこっちの台詞なんだが……!?」
「なあ、本当にあんたを信じていいんだよな? そうだよな?」
「そう騒ぐな、結果発表になれば分かる」
セヴィルは正解を確信しているようで、堂々と真ん中に座るのだった。